著者
渡辺 啓 大村 孝之 池田 智子 三木 絢子 勅使河原 喬史
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.185-191, 2009-09-20 (Released:2011-12-09)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

W/O乳化は油性の成分を皮膚に展開しやすく,高いエモリエント性などの特徴がある重要な基剤である。このような機能性の一方で,W/O乳化には技術的に改善すべき課題が存在する。本研究では,乳化剤として複数の水酸基を有する親油性の界面活性剤であり,水との共存系で二分子膜が立方晶型に充填した特異なバイコンティニュアスキュービック液晶を形成することが知られているフィタントリオール(3, 7, 11, 15 -tetramethyl- 1, 2, 3 -hexadecanetriol)に着目した。その結果,非極性油,極性油,シリコーン油などさまざまな油分系において,97%もの高内水相比でありながら安定なW/Oクリームを調製することに成功した。乳化メカニズムを解明するため,水,油,フィタントリオール3成分系における相平衡を詳細に検討した。この結果,本乳化系においては,バイコンティニュアスキュービック液晶と構造的な相関性の高いバイコンティニュアスマイクロエマルション相を外相として有するという興味深い乳化メカニズムが明らかになった。さらに,皮膚に塗布時の溶媒の揮発に伴う組成変化により,薄い液晶膜が皮膚上に展開し,さまざまな機能が付与されることが明らかになった。本技術により,重要な機能であるエモリエント性,オクルーション効果がありながら,べたつき,油っぽさがない,極めてさっぱりとした良好な使用感触のクリームが初めて調製可能となった。
著者
石戸谷 豊昌 岡田 正紀
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.64-66, 2001

角層の自然剥離は, 角層中のプロテアーゼによりデスモゾームが加水分解することによって起こり, 乾燥による水分不足がプロテアーゼ活性を阻害し, 角層の剥離不全をきたすことが知られている。そこで被験者に睡眠不足をストレスとして与え, 就床時に嗜好性の高い香りをルームフレグランスの剤型として用い, 香りが角層中のプロテアーゼ (トリプシン) 活性にどのような影響を及ぼすかについて検討した。その結果, 香りの存在する場合の方が, 存在しない場合に比較して角層中のプロテアーゼ活性が有意に高かった。快適な香りが心理面に好影響をもたらし, 良質な睡眠により正常時の心身状態に近づいたためではないかと思われた。
著者
牧 祐介 森田 美穂 浅井 咲子 森田 哲史
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.12-17, 2017 (Released:2017-03-22)
参考文献数
10
被引用文献数
1

目元のくすみに悩む女性は多い。その理由としては,女性は日頃のアイメークなどに際し目元を注視する機会が多いことに加え,実際にくすみの程度が大きいことが考えられる。特に上眼瞼は,顔の中でもアイメークやその除去など摩擦や圧迫などの物理刺激に晒されている部位である。われわれは,上眼瞼におけるくすみの発生にはこれらの物理刺激が関与しているのではないかと考えた。そこで本研究では,物理刺激によるメラノサイトの活性化に着目し,上眼瞼のくすみの発生メカニズムを明らかにすることを目的として研究を行った。その結果,3 次元培養ヒト皮膚モデルに対する荷重負荷はメラニン生成を促し,ここに一酸化窒素が関与していることが明らかになった。さらに,一酸化窒素消去作用のある素材を用い,化粧品に配合して有効性評価を行ったところ,上眼瞼におけるくすみ改善作用がみられた一方,頬に対する作用はみられなかった。これらの結果から,上眼瞼のくすみ発生には,日常的に繰り返される物理刺激とそれに伴って生成される一酸化窒素が関与していることが明らかになった。
著者
後藤 眞
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.68-71, 2009-06-20 (Released:2011-12-07)
参考文献数
5

炎症性サイトカインであるTNFαなどが,メタボリック・シンドローム,動脈硬化,糖尿病など老化に密接に関連した疾患群の病因として有力視され,カロリー制限により,線虫をはじめ多くの多細胞動物でも寿命延長が観察され,熱産生を行うエネルギー代謝,炎症の解析が進み,自然免疫系を介する慢性炎症が老化の原動力として最近注目を集めている。本レビューでは,メタボリック・シンドローム,関節リウマチ,ウエルナー症候群を具体的な炎症性老化モデルの例として解説する。
著者
坂口 三佳 末永 えりか 川口 幸治
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.106-111, 2019

<p>毛髪は熱,紫外線,摩擦など外的ダメージを日常的に受けており,シャンプーやコンディショナーなどの毎日のヘアケアでダメージを防止することが求められている。シャンプーにカチオン性ポリマーを配合することにより,洗髪時にシャンプー洗浄成分とカチオン性ポリマーの複合体(コアセルベート)が形成され,すすぎ時の髪のきしみ感が低減されることが知られている。特に,近年注目されている"ノンシリコーンシャンプー"ではシリコーンの代わりにコンディショニング効果を担うためカチオン性ポリマーが配合されているが,シリコーン配合シャンプーと比較して洗い流し時にきしみを感じるといった声がいまだ多い。一方,シャンプー後のコンディショナー塗布時には毛髪表面に残存したコアセルベートの電荷が正の方向になるため,電荷反発でコンディショナーが付着しにくいといった問題がある。これらを解決すべく,疎水基を有する新規ポリマーを設計し,毛髪に対する効果を動摩擦係数や接触角などを測定することによりシャンプーすすぎ時のみならず,シャンプー後に使用するコンディショナーの効果も向上させることができる新規カチオン性ポリマーを開発したので報告する。</p>
著者
池田 英史 西浦 英樹
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.9-18, 2013-03-20 (Released:2015-08-22)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

近年,敏感肌を自覚する女性が増えており,敏感肌をターゲットにした市場も広がっている。しかし,敏感肌化粧品の安全性評価は明確なin vitro試験法が存在しないことから,実際の敏感肌者で評価を行っていることが現状である。そのため,敏感肌を想定したin vitro試験法の確立が望まれている。また,化粧品業界では,動物愛護の観点から動物を使用しない動物実験代替法を用いることが増えている。このような背景から,今回われわれは敏感肌の症状の一つであるバリア機能の低下に着目し,3次元培養表皮モデルLabCyte EPI-MODEL 13日培養品および6日培養品を用いて,敏感肌を想定した安全性評価ツールとしての可能性を検討した。6日培養品は13日培養品に比べ,角層が薄く,セラミド量も顕著に低い値を示し,TEWL値も高い傾向を示した。また,in vitro皮膚刺激性試験の結果から,角層の薄い6日培養品はほとんどの化学物質および化粧品製剤において,13日培養品よりも高い刺激感受性であることを示した。さらに被検物質の暴露時間を長くすることで,より明確な結果になることを確認した。これらの知見は,LabCyte EPI-MODEL 6日培養品を用いることで,化学物質および化粧品製剤の潜在的な皮膚刺激レベルを評価することができ,敏感肌化粧品開発における安全性評価ツールの一つになり得る可能性を示唆している。
著者
山下 真司 松井 康子 戸叶 隆雄 吉岡 正人
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.219-223, 2012-09-20 (Released:2014-09-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

ヘアアイロンやコテのような高温の熱を利用した毛髪のスタイリングが広がってきているが,毛髪はこのような熱によりダメージを受けてしまう。そこで本研究では,毛髪の熱ダメージおよび,毛髪のアミノ酸組成における熱ダメージの指標について検討した。熱により毛髪中のシスチン残基からランチオニン残基が生成するため,毛髪のアミノ酸組成におけるダメージの指標として利用されてきたシステイン酸に加え,ランチオニンもダメージの指標として確認する必要があると考えられた。実際,ブリーチやパーマを施した毛髪ではシステイン酸の増加がみられたが,熱処理を行った毛髪ではシステイン酸でなくランチオニンの増加がみられた。さらに,熱処理による毛髪の水分量の低下や引張り強度の低下も確認した。以上のことから,熱処理により毛髪がダメージを受けると同時にランチオニンが増加し,熱ダメージの指標として毛髪のアミノ酸組成によるランチオニンの定量が有効であった。
著者
上條 正義
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.92-99, 2011-06-20 (Released:2013-06-20)
参考文献数
27

人のモノとの接触知覚には,手などによって触診する能動的触知覚と人の意識には関係なく接触する受動的触知覚がある。接触する行為は,接触した物体の特性を理解する一つのコミュニケーション手段であると考えることができる。経済産業省から感性価値創造イニシアティブが宣言された以降,製品に新しい価値を付加する感性価値への関心が高まり,多くの産業において感性価値創造の取り組みが活発になっている。製品に付加する価値として,接触知覚における手触り,肌触りの良さが重要な要件として注目されている。本稿では,繊維製品の風合いが人体に対して与える影響を事例として,生理反応を計測することによって手触り,肌触りストレスを評価する研究について紹介する。
著者
水野 誠
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.271-277, 2013-12-20 (Released:2015-12-21)
参考文献数
21
被引用文献数
1

日本では,日焼け止め化粧料の紫外線防御効果はSPFやPAといった指標で表されている。これらは国の定めた基準ではなく,日本化粧品工業連合会 (粧工連) が自主基準として制定した試験法での測定結果に基づいたものである。本稿では,日本において2013年1月から追加導入されたUVA防御効果におけるPA++++表記をはじめ,紫外線防御効果に関する測定法や表記法についての最近の動向について紹介する。
著者
徳永 晋一 棚町 宏人 井上 滋登 森岡 智紀 辻村 久 丹治 範文 波部 太一 山下 修
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.190-198, 2011-09-20 (Released:2013-09-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1

毛髪表面は18-MEA (18-メチルエイコサン酸) に覆われ,疎水的かつ低摩擦に保たれている。しかし,18-MEAはヘアカラーなどのアルカリ処理で容易に失われ,毛髪表面は親水化し摩擦は増大する。それは,毛髪の指通りや櫛通り,感触の悪化に影響すると考えられる。そこで,前述のようなダメージ実感を改善するため,18-MEAを表面に高吸着させることによる疎水性・低摩擦などの表面物性を回復させる技術開発を行い,18-MEAと特定の長鎖3級アミン (ステアロキシプロピルジメチルアミン:SPDA) の組み合わせにより,それが可能であることを見出した。その高吸着性のメカニズムを明らかにするため,18-MEAとSPDAから形成される吸着膜の解析を行った。その結果,その吸着膜はアルキルを外側に向けた状態で,表面を均一に覆い,18-MEAの末端の分子運動により最表面に液体状の相を形成することで,耐摩擦性を有することを見出した。さらに,18-MEAとSPDAを含有するコンディショナーの使用テストでは,滑らかな感触に加え,浮き毛や跳ね毛を減少させるなど,ヘアスタイルのまとまりをも向上する効果をもつことを見出した。
著者
今井 健仁 中村 友紀 丸橋 佑基 中野 隆
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.9-15, 2019

<p>ヘアカラーリングで用いられる主要なブリーチ成分における,メラニン顆粒の分解パターンの違いについて透過電子顕微鏡による毛髪横断面観察から調査した。過酸化水素を共通成分とし,アンモニアおよびモノエタノールアミンでは毛髪中心部寄りのメラニン顆粒から分解され,炭酸塩および過硫酸塩では毛髪外周部のメラニン顆粒から分解されるという逆の挙動を示した。これらの違いは,メラニン顆粒は毛髪外周部に多いという分布特性のほかに,ブリーチ成分の毛髪浸透性とメラニン顆粒に対する酸化分解力の違いも関係していることが示唆された。また,アンモニアと炭酸塩を併用すると毛髪全体にわたってメラニン顆粒が均一に分解され,より効率的にブリーチ性能が発揮できる可能性が示唆された。</p>
著者
角田 聖 鈴木 千裕 佐川 由葵 水谷 多恵子 正木 仁
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.204-210, 2015 (Released:2017-03-21)
参考文献数
14

太陽からの紫外線が未成熟な皮膚老化を促進することはよく知られている。このような皮膚老化を一般的には光老化とよぶ。近年, 化粧品会社は光老化皮膚の進行リスクを抑えるため日常の日焼け止め化粧料の使用を推薦している。一般的に, 日焼け止め効果は酸化チタン, 酸化亜鉛のようなUV散乱剤と有機系のUV吸収剤によって発揮される。UV吸収剤の中でoctyl methoxycinnamate(OMC)と4-tert-butyl-4'-methoxydibenzoylmethane(BMDBM)が汎用されており, また, 使用中に光劣化することが知られている。UV吸収剤を皮膚へ塗布し太陽光に曝露されたときに生じる光劣化は, 光防御効果を低下させ, その結果, 紫外線紅斑の生成や光老化皮膚の形成を加速する。このようなUV吸収剤の光劣化を抑制するために皮膚へのUV吸収剤を塗布したような薄膜状態での光劣化挙動を理解することは重要なことである。本研究は, 上記のような現象に対する解決の糸口を見出すことを目的として実施した。UV吸収剤の中で, BMDBMはもっとも光劣化の度合いが高くなることが見出された。さらに, BMDBMの光劣化の程度は油剤の極性と負の相関を示した。この傾向はBMDBMを油剤に溶解した単純系およびシリコーン油抜きのW/O製剤系で確認された。さらに, BMDBMとUVB吸収剤を組み合わせたときの光劣化は, OMCとの組合せでUVA領域とUVB領域は同程度の光劣化の程度を示したが, 2-hydroxy-4-methoxybenzophenone(HMBP)あるいはethylhexyl triazone(EHT)との組合せでは, UVB領域に比較してUVA領域の光劣化の程度が強く確認された。また, 光安定化剤であるoctcrylene(OCR)とmethoxyoctocrylene(MOCR)はUV吸収剤と同量以上の濃度が光劣化を抑制するためには必要であることが確認された。最後に, BMDBMの光劣化には部分的にラジカル形成が関与している可能性が示唆された。
著者
山﨑 奈穂子 新出 ちはる 粂井 貴行 炭田 康史
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.25-32, 2016-03-20 (Released:2017-03-21)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

われわれはリン脂質の構造特性に着目し,その疎水基の膜流動性とリン脂質と共存する物質の角層への浸透性の相関について検討した。膜流動性とは,アシル基の流動性のことを指し,リポソームの2分子膜の親水基近傍や疎水基部のブラウン運動を反映していると考えられている。さらにリポソームと角層細胞間脂質成分との相互作用を評価し,角層浸透メカニズムを確認した。最初に,アシル基が飽和脂肪酸からなるDPPC,不飽和脂肪酸からなるDOPC,1分子中に,飽和,不飽和脂肪酸の両方を有するPOPC,DPPCとDOPCを,1:1のモル比で混合した脂質成分(DP+DO)の計5種類のリポソームを調製した。疎水基部位の膜流動性と共存する水溶性成分の角層への浸透性の相関を確認した結果,膜流動性が高いPOPCおよびDOPCは角層への浸透性が高く,膜流動性が低いDPPCは角層での浸透性も低かった。次に,各リン脂質が角層細胞間脂質の膜流動性に与える影響を評価した結果,各リン脂質の疎水基部位の膜流動性と相関関係が示唆され,POPCが最も高い影響度を示した。以上から角層への浸透性において,リン脂質の不飽和脂肪酸は重要な因子であるが,POPCのように1分子中に不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の両方が存在し,かつ膜形成において交互に並ぶ構造が,特に効果的に角層細胞間脂質の膜流動性に変化を与え,角層における浸透性を促進すると考えられる。
著者
中間 満雄 田中 浩 石井 泉 中田 悟
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.19-25, 2009
被引用文献数
1

活性酸素種 (ROS) は紫外線によって生成され,さまざまな皮膚障害をひき起こす。最近,一酸化窒素 (NO) やパーオキシナイトライト (ONOO<sup>-</sup>) などの活性窒素種 (RNS) が,ROSと同様にさまざまな皮膚障害に関与していることが明らかとなってきた。これまでに,紅斑,メラニン生成,バリア機能の低下,創傷治癒および乾癬などに対するRNSの関与が示唆されており,美しい肌を保つためにはRNSの制御が重要であると考えられる。しかし,RNSの寿命は非常に短いため,RNSを直接的に観測した例はほとんどみられない。本研究では,RNSに特異的な蛍光プローブを用いることにより,表皮角化細胞へのUVB照射によるRNS生成量の増加を直接的に観測した。一方,UVB照射によるRNS生成量の増加は,新規な水溶性ビタミンE誘導体である<i>dl</i>-<i>&alpha;</i>-トコフェリルリン酸ナトリウム (VEP) によって抑制された。さらに,UVB照射によるRNSの生成は,神経型一酸化窒素合成酵素 (nNOS) を介したメカニズムによって起こることが示唆された。以上から,RNSによるさまざまな皮膚障害に対してVEPが有効である可能性が考えられた。
著者
中間 満雄 田中 浩 石井 泉 中田 悟
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.19-25, 2009-03-20 (Released:2011-12-06)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

活性酸素種 (ROS) は紫外線によって生成され,さまざまな皮膚障害をひき起こす。最近,一酸化窒素 (NO) やパーオキシナイトライト (ONOO-) などの活性窒素種 (RNS) が,ROSと同様にさまざまな皮膚障害に関与していることが明らかとなってきた。これまでに,紅斑,メラニン生成,バリア機能の低下,創傷治癒および乾癬などに対するRNSの関与が示唆されており,美しい肌を保つためにはRNSの制御が重要であると考えられる。しかし,RNSの寿命は非常に短いため,RNSを直接的に観測した例はほとんどみられない。本研究では,RNSに特異的な蛍光プローブを用いることにより,表皮角化細胞へのUVB照射によるRNS生成量の増加を直接的に観測した。一方,UVB照射によるRNS生成量の増加は,新規な水溶性ビタミンE誘導体であるdl-α-トコフェリルリン酸ナトリウム (VEP) によって抑制された。さらに,UVB照射によるRNSの生成は,神経型一酸化窒素合成酵素 (nNOS) を介したメカニズムによって起こることが示唆された。以上から,RNSによるさまざまな皮膚障害に対してVEPが有効である可能性が考えられた。
著者
佐藤 賢次 永井 昌義
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.14-19, 1979

This study concerns with the variation of transepidermal water loss when emollients are applied to the human skin.<br>Our experimental results; The effect of decreasing transepidermal water loss depends on thickness and properties of remaining film on the skin after applying cosmetic creams. Moreover, this effect correlates with the feeling of the film after applicaion, that is, the degree of &ldquo;oiliness&rdquo; by sensory test of creams.<br>We developed <i>in vitro</i> method which gave good correlation with <i>in vivo</i> method and confirmed these effects.
著者
立川 一義 大坊 郁夫
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.307-309, 2000
被引用文献数
1

『コミュニケーションの円滑化をたすける香り』をテーマに創作した香水のパーソナルスペース (以後PSと略す) 減少効果を測定し興味深い結果を得た。大学生パネラー30名の協力を得て, 香りなし, 創作香水A, 創作香水B, の3条件で, 前後左右4方向について, ストップデイスタンス法によりPS計測を行った。その結果, 香りなしに比べ, 香水A, Bはそれぞれ面積比換算で50%, 20%のPS減少効果がみとめられた。PS減少の原因を子細に論ずることはできないが, 減少効果のより大きかった香水Aと小さかったBの香りの印象を比較してみた。すると, 香水Aは刺激的, 香水Bは親しみやすいという印象としてとらえられていた。この結果は「嗜好性の高い香りほどPS減少効果が大きいのではないか」という想像に反するもので興味深い。
著者
宮沢 和之 金田 勇 飯塚 直美 梁木 利男 植村 雅明
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.301-308, 2003
被引用文献数
1

毛髪にハリコシを付与する方法として毛髪自体の育成を助ける生物学的アプローチと, 外部からある基剤を塗布して補強する物理的アプローチが考えられる。前者は軟毛の悩みを根本的に解決できる可能性があるが, 効果が得られるまでに長期間を要する, 効果に個人差がある, などの課題がある。一方, 後者は即効性はあるものの通常洗髪などにより効果が失われるなど, 持続性に乏しいため毎日の適用が必要となる。そこで即効性に優れ, しかもその効果が長期的に持続するハリコシ向上トリートメントの開発を目的として検討を行った。本基剤に求められる基本的条件として, 1. 優れた耐水性, 2. 1本1本の毛髪を独立してコートできること, の2点が挙げられる。そこで耐水性の付与を目的としてアルコキシシランの縮合反応によるネットワーク形成を利用し, 極性をコントロールすることで毛髪への付着性を向上させ, 1本ずつの毛髪を均一な皮膜でコーティング可能な基剤とした。さらに毛髪上に形成される皮膜の強度, 平滑性を検討し, 優れたハリコシ付与効果と良好な使用性を併せ持つへアトリートメントとすることに成功した。
著者
度会 悦子 五十嵐 崇訓 渡邉 美香子 矢後 祐子 福田 啓一
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.218-225, 2015 (Released:2017-03-21)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

「化粧よれ」とは, ファンデーションがほうれい線や目元などのシワに経時で溜まる化粧崩れ現象である。化粧がよれると, シワが目立ち, 疲れまたは老けた印象を与える。ゆえに, 多くの研究が着目してきた皮脂による化粧崩れ現象だけでなく, 顔の動きによる化粧よれを防止する技術が必要となる。本研究では, 化粧よれ防止技術の開発を目的とし, 化粧よれの①メカニズム探索, ②定量的評価および, ③処方への応用を行った。その結果, 化粧よれは, ファンデーションの粉が皮脂に濡れて, シワが動くことにより, ファンデーションの粉が「とれ」および「凝集」を引き起こすことで生じることを見出した。さらに, メカニズムを基に化粧よれをモデル系で再現し, 再現した化粧よれの画像をヒストグラム解析することで, 化粧よれ(ファンデーションの「とれ」および「凝集」)の定量的評価方法を開発した。最後に, この評価方法を用いて化粧品原料をスクリーニングし, 弾性ポリマーと高重合シリコーンの組み合わせが化粧よれを防ぐことを見出した。この組み合わせを処方に応用することで, 化粧よれを防ぐ化粧下地の開発へ展開することができた。