著者
村越 紀之
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.87-94, 2015-06-20 (Released:2017-03-21)
参考文献数
14
被引用文献数
2

健常な毛髪の表面は,18-MEAで構成された脂質層が存在するため撥水性が高く,ツヤがあって滑らかな風合いをもたらす。しかし,物理的なダメージや化学的なダメージを受けると脂質層が剥がれ親水性のタンパク質の層が露出するため,ツヤがなくなり,毛髪が絡まりやすく,パサつきなどを感じるようになる。また,毛髪の構造がダメージを受けると,毛髪内在の成分が漏出しやすくなり,毛髪が細径化してハリコシが低下するようになる。つまり,毛髪のダメージは表面の疎水性が親水性へと変化することで生じると考えられる。そこで,毛髪の親水化がどのような場合に生じるのかを,イオン性の蛍光試薬を処理してタンパク質の露出部位や浸透のしやすさで確認したので,その結果を紹介する。
著者
酒井 裕二 鈴木 将史 小原 康弘
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.95-103, 2006
被引用文献数
2

エマルション化粧品は, 肌に水分を与える保湿効果と, 肌の水分を逃がさない閉塞効果の二つの基本的機能を有する。これらの効果は, エマルションの親水領域と親油領域の比に影響される。そのため, 両効果は拮抗した関係となり, 同時に高めることは困難であった。そこでわれわれは, ポリグリセリン系界面活性剤, セチルアルコール, ポリグリセロール (13) ポリオキシブチレン (14) ステアリルエーテルおよびD相乳化法を用いることにより, エマルション膜の親油領域に水を多く分散させ, その親水領域を強固にすることで, ポリオキシエチレン系界面活性剤を用いたものより保水効果と閉塞効果が優れたエマルションを開発した。またポリオキシエチレン系界面活性剤を用いたエマルションは, 塗布されるとエマルション粒子が消失するのに対して, 本エマルション膜は, 粒子の残存がレーザー顕微鏡により確認された。さらに1ヵ月間の連用により, 角層細胞のはがれやすさ, 角層細胞の並び方も改善されることが明らかとなった。
著者
岡本 亨
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.187-193, 2016

角層の乾燥は肌荒れを引き起こす。角層保湿はスキンケア化粧品にとって重要な機能である。角層保湿においては,角層に水を保持することと,皮膚からの水の揮散を防ぐことが重要である。スキンケア基剤の物理化学的な性質はこれらと密接に関係しており,適切な基剤設計を行うことで保湿作用を高めることができる。保湿剤は角層保湿において重要な役割をもっている。保湿剤は角層に貯留されることで保湿機能が高まることから,角層への浸透性を高めるためには,保湿剤の角層への分配を高める成分を水相に配合する手法が有効である。また,αゲル基剤は少量の適用でも優れた角層保湿効果を示す優れた基剤である。炭化水素油分のような疎水的な成分で肌を閉塞すると,皮膚からの水分蒸散が妨げられて肌表面に水分を保持することができる。閉塞効果は分子量の高い油分で高まるが,基剤を肌上に均一に展開することが重要である。さらに,保湿剤の浸透と水分のオクルージョン効果を両立した基剤としてαゲル基剤の超微細エマルションについて紹介する。これらのコンベンショナルな手法に加えて,角層細胞間脂質の修復に関する新たな知見について議論する。
著者
岡野 由利
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.91-97, 2016

スキンケア化粧品の基本的な機能は皮膚の保湿である。皮膚の乾燥が肌荒れだけではなく,皮膚の老化の一因となっていることは,われわれは経験的に知っている。角層には水分を保つ機構が存在するが,その詳細が解明され始めたのは,20世紀の半ばになってからであった。市場の化粧品のコンセプトはこの皮膚科学の発展を商品に応用したものが多い。そのため,過去においては,天然保湿因子(NMF)と皮脂を模して,水分と保湿剤,油脂を含有する製剤がスキンケア商品として用いられてきた。皮膚科学の発展に伴い,セラミド,NMFを配合した製品,顆粒層に存在するタイトジャンクションに注目した素材を配合した製品,角層細胞の成熟に注目した製品が開発され,上市されてきた。さらに,過去には死んで剥がれ落ちると考えられていた角層が,スキンケア行為によって濡れてゆっくりと乾くことにより,バリア機能が向上し,皮膚の状態が健全に保たれることも報告された。本稿では,保湿にかかわる皮膚科学の進歩と関連したスキンケアコンセプトの変化について歴史的な変化も含めて述べる。
著者
澤根 美加 大田 正弘 山西 治代 本山 晃 高倉 伸幸 加治屋 健太朗
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.188-196, 2012-09-20 (Released:2014-09-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1

皮膚には血管・リンパ管からなる微小循環系がはりめぐらされており,皮膚は全身の臓器と同様に,血管から栄養や酸素を供給され,リンパ管から過剰な水分や老廃物を排出されることで恒常性を維持している。皮膚の恒常性維持に微小循環系は重要と考えられるが,皮膚老化への関わりとその分子メカニズムについては未知な部分が多かった。本研究では,加齢による皮膚老化が循環系機能の低下によって引き起こされ,さらにその循環系機能を血管安定化にかかわる受容体Tie2 (endotheliumspecific receptor tyrosine kinase 2) が制御することを明らかにした。まず,ヒト皮膚組織を用いて循環系変化を解析したところ,加齢で血管およびリンパ管の構造が不安定化し,機能が低下していた。さらに,そのメカニズムはTie2の活性化の低下に起因していた。Tie2は血管と同様,リンパ管機能や成熟化にも寄与しており,Tie2の活性化が血管・リンパ管の安定化に重要であった。そこで,Tie2を活性化する薬剤を網羅的に探索した結果,ケイヒエキスを同定した。
著者
五十嵐 敏夫 広瀬 統 八代 洋一 中田 悟
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.222-226, 2016-09-20 (Released:2017-03-21)
参考文献数
6

目袋は目もとに陰影を生じ,その人に老けた印象を与えることから,美容的に好ましくない。目もとは照明条件の影響を受けやすく,写真や画像を用いた二次元的な手法では高精度な評価が難しい。そこで,目もとの印象に影響を及ぼす形状特徴を解明することを目的とし,三次元形状データにおける曲面の局所的な形状を表す三次元曲率を用い,目もと印象との関連性を検討したところ,目袋と瞼頬溝において強い関連性を認めた。したがって,三次元曲率は観察方向に不変であることから,目袋と瞼頬溝の三次元曲率を用いた評価法は客観性が高く,高精度に目もと印象を定量化することが可能であることが明らかとなった。
著者
宮本 敬子 李 金華 橋本 悟 正木 仁
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.41-45, 2012-03-20 (Released:2014-03-20)
参考文献数
6

近年,抗菌作用を有する成分に対する市場ニーズは高く,その開発が望まれている。本研究では,4種類の構造の異なるジメチロールアルカン酸アルキルエステルを合成し,その抗菌力について検討を行った。さらに,これら化合物の水溶液中における表面張力測定を行い,界面活性と抗菌作用とを比較した。その結果,ジメチロールプロピオン酸ヘキシルエステルに高い抗菌作用が認められた。また表面張力測定結果から,抗菌作用の高い成分は水溶液において界面への吸着傾向が高く,界面におけるパッキングが密であることが示唆された。抗菌力試験結果から算出した,抗菌パラメーターと界面活性パラメーターとの間に高い正の相関性が認められ,界面活性パラメーターが抗菌成分のスクリーニングパラメーターになり得る可能性が示唆された。
著者
松岡 桓準 平 徳久 中村 清香 勝山 雄志 吉岡 正人
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.200-207, 2014-09-20 (Released:2016-09-20)
参考文献数
6
被引用文献数
1

アスコルビン酸は生体にとって不可欠な成分であり,化粧品分野においても抗酸化作用をはじめとする様々な生理機能を求めて多くの製剤に配合されている。しかし,アスコルビン酸は非常に不安定な物質で,しばしば着色・着臭をはじめ乳化系の破壊や製剤の粘度低下の原因となる。今回われわれは,アスコルビン酸とグリセリンを結合させた2種類のグリセリル化アスコルビン酸を開発した。これらはB16細胞を用いたメラニン生成抑制試験において高いメラニン生成抑制効果を示した。また,in vivoの連用試験ではグリセリン由来の保湿効果を示し,肌表面の紋理を整え,乾燥による目尻の小じわを目立たなくした。さらに,水溶液や粘性製剤において高い安定性を示すことも確認された。これらの結果よりグリセリル化アスコルビン酸は既存の誘導体と同様の生理活性を有するだけでなく,化粧品市場に求められる付加的機能を併せ持った保湿型アスコルビン酸誘導体であることが確認された。
著者
互 恵子 高田 定樹
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.128-134, 2013-06-20 (Released:2015-08-25)
参考文献数
13

対人コミュニケーションの非言語行動は言語行動とともに,心理的意味を生じさせる。特に外見的特徴は第一印象の形成に影響する。店頭の対面場面を設定し,視線計測より,販売員の外見による顧客の印象形成を視覚的注意の応答から検討した。実験参加者は日本人や中国,北米,ドイツ等の出身者とした。販売員モデルの姿・形の外見を整えた場合と整えない場合のどちらも,顧客を想定した観察者の視線の停留の時間と回数は顔部分で最も大きく,印象評価より目線や表情が重要であった。外見を整えない場合はモデルの身体部分への注視が増加し,印象評価より姿勢や手の位置との関連が高かった。対面相手の顔は文脈の影響を受けないが,身体は文脈の影響を受け,非言語情報となることが示唆された。美容コンサルテーションの販売員と顧客の関係性では,文脈に合わせ,外見を整えることで,顧客の視線が商品に誘導されることが示され,販売につながることが予想された。
著者
林 照次 松木 智美 松江 浩二 新井 清一 福田 吉宏 米谷 融
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.355-373, 1993-12-16 (Released:2010-08-06)
参考文献数
19
被引用文献数
6 7

We measured changes in facial wrinkles and skin texture by aging, sunlight exposure and applicaion of cosmetics.With a replica photographing system and image analysis, we measured wrinkles for parameters of depth and the ratio of wrinkled area (RWA: showing amount of wrinkles). As for skin texture, we measured depth and distance of furrows, ratio of furrow depth (RFD: showing amount of skin texture) and anisotropy.As a result of measuring changes in wrinkles due to aging, it was found that the process of wrinkle formation was classified roughly into 2 stages. In the initial stage of wrinkles, RWA incseased greatly in the 30s, due to many fine wrinkles 0.15mm or less in depth. Then, the second stage showed the acceleration in the increase of wrinkle depth which seemed to be caused by a vicious circle in solar elastosis. It was also observed that, compared to the office workers, the outdoor workers showed higher values of RWA in the initial stage and of wrinkle depth in the second stage.The result of measuring changes of textures revealed that the amount of furrows decreased with aging and morphology after 60s differed from that of natural furrows and resembled to the morphology observed in the initial stage of wrinkles. As for the influence of sunlight exposure, the furrows in the outdoor workers of 30s and 40s became more indistinct in comparison to those of the office workers.Then, as a result of examining changes in wrinkles by the continuous application of moisturizing lotion and eye cream, relatively small wrinkles below 0.15mm depth decreased in both cases probably due to increase in hydration in the stratum corneum. We thought this effect reduced the degree of vicious circle in solor elastosis and delayed the appearances of deep wrinkles. From these results, it was thought that skin care around the age of 30s, when small wrinkles started to increase, was extremely important to control wrinkle appeararances.
著者
吉田 正人 鈴田 和之 上門 潤一郎 新井 幸三
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.190-199, 2014-09-20 (Released:2016-09-20)
参考文献数
18
被引用文献数
2

化粧品分野では,毛髪の損傷低減,損傷した毛髪の修復などに様々なタイプのケラチンタンパク質が応用されている。側鎖に非対称性のジスルフィド基をもつ水溶性のS-カルボキシメチルアラニルジスルフィドケラチン (CMADK) タンパク質が,羊毛繊維のチオグリコール酸ナトリウム塩による還元処理と,それに続く過酸化水素による酸化処理により合成された。SDS-PAGE法により,この新しい誘導体化タンパク質の分子量は約64 kDaおよび48 kDaであることがわかった。また,CMADKタンパク質に含まれるジスルフィド基量は4.4×10-4 mol/gであった。非対称性のジスルフィド基をもつ水溶性タンパク質と毛髪中のフリーのチオール基とのSH/SS交換反応を通して共有結合しうるタンパク質による毛髪表面の修飾が期待された。毛髪のねじり応力評価法からCMADKタンパク質で処理した毛髪の剛性率は増加した。洗髪のシミュレーションモデルを用いた繰り返し処理を行っても,毛髪の剛性が維持されることがわかった。
著者
征矢 智美 野村 美佳 林 照次 長谷川 敬
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.115-124, 2004-06-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
10
被引用文献数
1 4

「肌の透明感」は女性の肌状態, 肌意識に関するアンケート調査や化粧品使用前後の指標に多く使用される重要なキーワードであるが, 「透明感」が具体的に肌のどのような状態を指すかについては明確ではない。そこで, 本研究では最初に若年層と中高年層を対象に「透明感のある肌」に対する重要度調査と他の肌表現語との関連度調査を行った。その結果, 「透明感のある肌」の重要度は, 若年層では最高位であるのに対し中高年層では肌荒れしていない等の肌悩みの方が重要視されていた。反面, 「透明感のある肌」は, 肌のキメや色, うるおいなどの三つの要素を基本要件とする複合概念であるという点で両年代に差異はなかった。次に, 両年代の評定者が同じ若年モデルを観察したときの「透明感」の主観判断とモデルの実際の皮膚生理的特性との関係を調べた。その結果, 若年層では肌色におけるbの色ムラ (標準偏差), 角層水分量, 皮膚表面形態 (皮溝深さ, 皮溝量), 中高年層では, 肌色におけるLおよびaの色ムラ (標準偏差) について有意な関係が認められた。これらの結果から, 「透明感」の言語的構造に年代差はないが, 判断の手がかりである皮膚の生理特性は異なると考えられた。
著者
赤塚 秀貴 菅 千帆子
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.315-321, 2003-12-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
5

下肢部のムクミは, 女性にとって美容上大きな悩みの一つとなっている。近年, その悩みを解消する手段として, エステサロン等におけるマッサージが有用だと言われている。本報ではムクミ改善のためのセルフマッサージをより効果的にする手段を探索し, 化粧品剤型への展開を検討した。下肢部のムクミに関して自覚症状のあった健常女性10名で, ムクミを水置換法により評価したところ, 夕方にかけて2.5%の体積増加を示した。これら被験者で5分間のセルフマッサージ後に6分間の温冷処置を施した結果, 2.5%の体積減少を示したことから, この方法はムクミ改善に有効な手段であることがわかった。このような温冷処置を化粧品にて再現することを試みたところ, 従来のジェル剤型に液化石油ガス (LPG) を高濃度配合したクラッキングフォーム剤型は, 従来品よりもムクミ改善効果が高かった。
著者
互 恵子 両角 亮子 吉田 倫幸
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.9-14, 1991-07-10 (Released:2010-08-06)
参考文献数
9
被引用文献数
1

The present study examined the effect of self-administered facial massage (“Shiseido Home Massage”) on psychophysiological states. Twenty healthy females, age 19 to 48, served as subjects. Prior to the experiment, subjects learned the technique of self-administered facial massage by watching a video on skin care and by receiving direct instruction from a beauty specialist. To master the technique, subjects were asked to practice self-administered facial massage everyday for a two-week period. During the experiment, frontal EEG (Fz) was recorded during pre-rest, self-administered facial massage and post-rest conditions. Before and after recording in each condition, subjects estimated their own psychological states (mental arousal level and “feeling-refreshed” level). The frequency-fluctuation of α-waves in the EEG record was extracted using an F-V conversion system and analyzed using Fast Fourier Transform (FFT). Self-administered facial massage was found to increase the subjects' sence of well-being and the estimated level of feeling refreshed. In addition, self-administered facial massage was found to reduce mental arousal during post-rest in subjects who reported a high arousal level in the pre-rest condition, whereas it increased the arousal level during post-rest in subjects who initially reported low arousal. Also, the power spectrum of α-wave fluctuations during self-administered facial massage is of the 1/f type which can be described by a curve approximately inversely proportional to the frequency over the low frequency range. This powerspectrum relation did not hold for states of higher or lower arousal. The results suggest that the 1/f type of α-wave fluctuations in the frontal area are correlated with a feeling of wellbeing and mental arousal and that self-administered facial massage results in an improved self-assessment of psychophysiological states.
著者
屋敷(土肥) 圭子 木曽 昭典 周 艶陽 岩崎 大剛 神原 敏光 水谷 健二
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.274-280, 2009-12-20 (Released:2011-12-21)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

皮膚組織における皮下脂肪の増加は,リンパ管や血管を圧迫し皮膚のたるみやむくみなどのトラブルを引き起こすだけではなく,ボディラインを崩すセルライトなどを形成する。われわれは,植物抽出物のさらなる応用を化粧品に広げるために,皮下由来の脂肪細胞に対する分化誘導抑制作用および脂肪分解促進作用について検討した。本研究では,ヒト皮下由来の前駆脂肪細胞を用いて,分化誘導抑制作用について数種類の植物抽出物をスクリーニングした結果,オウレン抽出物とその主成分であるベルベリンに作用があることを見出した。さらに,前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞へ分化するさいに関与する遺伝子発現を解析した結果,オウレン抽出物およびベルベリンにこれらの遺伝子を抑制する作用が認められた。また,オウレン抽出物およびベルベリンには,成熟脂肪細胞に対して脂肪分解作用および熱産生関連遺伝子の発現促進作用を有することが明らかになった。本研究においてわれわれが検討したオウレン抽出物およびその主成分ベルベリンは,中性脂肪を増やさず,すでに蓄積した脂肪を分解することが期待され,ボディケア製品やスリミング化粧品などへの応用が示唆された。
著者
菅 千帆子 木村 知史
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.242-251, 1995-11-30 (Released:2010-08-06)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

化粧行為, 例えばメークアップをしたり香水を使ったりすることの有用性は明白なことであるが, これらの有用性を定量することは容易ではない。というのは, これらが定義したり測定したりすることが困難である心理的・生理的性質を含んでいるからである。我々は, 化粧行為により得られる喜び (pleasure) とユーザーの健康 (well-being) との関係をしらべる過程で, 化粧品を使用することが免疫学的に有用であることを示唆する結果を得た。メークアップを行うことで思わず美しくなった自分をみたとき, それが予想できなかったときほど気分は高揚する。我々は, このような体験が身体の免疫系を活性化し, 同時に免疫抗体濃度を増加させることを発見した。また, 快適な香りを嗅いだときにも同様の免疫反応が起こることも発見した。免疫抗体濃度の変化の定量には, 被験者の唾液中に含まれる免疫抗体「分泌型イムノグロブリンA (S-IgA) を測定した。化粧品における精神神経免疫学的な有用性の発見は, 皮膚表面での機能的効果を越えた化粧品の新しい有用性の探索につながると考えられる。また本研究にて得られた結果は, 化粧品がユーザーの心と身体に有用であることの一つの証拠を示したと考えられる。
著者
妹尾 正巳
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.291-296, 2011-12-20 (Released:2013-12-20)
参考文献数
8
被引用文献数
2

感性を感動を測る尺度と考えると,感性工学実現への道筋が見えるかもしれない。感性が尺度であるならば,その感性尺度で感性品質を測ることができ,その感性品質の程度量で感性価値が決まることになる。このように考えると,感性品質を高めることで感性価値の高い商品を作り出すことができることになる。現在,われわれが着目している感性品質の一つに高級感がある。高級感は量的変数としての性格が強いため計測しやすいというのがその理由である。ここでは,スキンケア化粧品の使用感と,パンフレットの文章を対象とした高級感測定の例を紹介する。
著者
岩井 一郎 桑原 智祐 平尾 哲二
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.16-21, 2008-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
8
被引用文献数
2 3

近年, カルボニル化と呼ばれるタンパク質の変性が角層で知られるようになったが, 肌への影響は不明だった。本研究では「角層の透明度」に焦点を当て, 角層タンパク質カルボニル化の影響とその対応法について検討した。まず粘着テープで採取した角層タンパク質のカルボニル基を蛍光標識し, 画像解析により数値化する方法を開発し, 外界の影響を受けやすい露光部 (顔面) 角層, 角層表層部で角層カルボニル化レベルが高いこと, in vitro UV照射により角層タンパク質がカルボニル化することを示した。さらに, 頬部角層カルボニル化レベルの高い女性では, 視感判定による透明感が低いことを示した。これらより, 外界の影響による角層のカルボニル化が透明感低下の一因と考えられた。実際に角層をin vitroでカルボニル化処理すると角層は不透明に白濁した。さらにアミノ酸L-リジンは角層カルボニル化を抑制し, ヒト皮膚においてもカルボニル化による透明感の低下を抑制した。これらより, 外界の悪影響による角層タンパク質のカルボニル化をL-リジンによって防ぐことで, 角層透明度を保ち, 肌の透明感を向上させることができると考えられた。