著者
Asano-Mori Yuki
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.E97-E105, 2017
被引用文献数
3

The risk of invasive fungal infections (IFIs) is extremely high in patients with hematological malignancies due to the prolonged and profound neutropenia and immunosuppression after chemotherapy and hematopoietic stem cell transplantation. There has been increasing interest in mucormycosis despite its relatively uncommon occurrence, because occasional breakthrough infections have been observed under anti-<I>Aspergillus</I> prophylaxis. The aggressive nature of mucormycosis easily leads to high mortality because of delays in diagnosis and incorrect treatment decisions, which are due in part to lack of adjunctive diagnostic tools and having similar clinical and radiological features with invasive aspergillosis. The only currently available antifungals against Mucorales in Japan are amphotericin B formulations. Thus, comprehensive therapeutic strategies, including surgery, should be considered to achieve a successful outcome.
著者
佐野 文子 伊藤 桂子 宮治 誠 香本 頴利 小川 浩也 亀井 克彦
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 第49回 日本医真菌学会総会 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
pp.124, 2005 (Released:2005-09-07)

抗真菌活性をもつ漢方生薬としてオウバク末,キキョウ根末,センキュウ末,クレンピ末,オウゴン末を含む 17 種の漢方生薬配合薬(新中森獣医散®,中森製薬株式会社,宮崎県)は元来動物の消化器疾患の治療を目的とする薬剤であったが,粉末を当量の水とまぜてペースト状にし,Trichophyton verrucosum に感染しているウシの皮膚に連日 4 日間塗布したところ著効し,治療開始後 15 日以内に鱗屑の脱落を観察,1 ヶ月後には発毛し,治癒したという報告がある.そこで今回,人獣共通真菌症原因菌に対するこの配合薬の in vitro での抗真菌作用を調べた.配合薬のエキスは濃い褐色のため液体培地による希釈法が応用できないため,平板培地における集落の直径を測定する方法で検討した.配合薬 0.1,0.3,1.0,3.0,10.0%(V/W)の割合で添加した 1/10 サブロー平板培地に皮膚糸状菌 6 菌種 9 株,日和見真菌症原因菌 7 菌種 9 株を 1 点平板中央に接種して,25℃ もしくは 35℃ で 2 ないし 6 週間培養し,集落の直径を薬剤無添加培地と比較した結果,T. verrucosum, T. mentagrophytes,T. rubrum, T. tonsurans, Microsporum canis, Histoplasma capsulatum, Cryptococcus neoformans, Malassezia pachydermatis には 0.3-1.0% 濃度で発育抑制もしくは発育阻止効果を認めた.一方,Candida albicans, Alternaria alternata, Schizophillum commune, T, mentagrophytes var. erinacei および M. gypseum では 3-10% 薬剤添加培地での発育抑制効果を認めたが,Aspergillus fumigatus には効果を示さなかった.本配合薬は T. verrucosum に対する発育抑制ならびに阻止効果は大であり,外用薬としてウシの皮膚糸状菌症に有効であることが in vitro での活性からも証明できた.また多くの人獣共通真菌症原因菌種にも有効であった.
著者
金子 孝昌
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.297-303, 2011 (Released:2011-11-28)
参考文献数
18
被引用文献数
2 4

Malassezia 属真菌は,皮膚の脂漏部位に常在する好脂性の真菌であるが,一方で,癜風,マラセチア毛包炎,脂漏性皮膚炎,アトピー性皮膚炎の起因菌もしくは増悪因子として知られている.本属真菌はribosomal DNA/RNA解析により再分類され,さらに新菌種報告も続いた.これらは非常に類似した形態と生化学的性状を有しており,表現形質を利用した鑑別は難しいと考えられてきた.分子生物学的解析法は最も信頼性の高い同定法といえるが,一般の検査施設では利用できない状況にある.われわれは(1)分離培地の開発と簡易鑑別法の開発,(2)簡易鑑別法の検証と再構築を研究し,報告した.

1 0 0 0 OA 脂漏性皮膚炎

著者
清 佳浩 中林 淳浩
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.73-77, 1999-04-30 (Released:2009-12-18)
参考文献数
25

脂漏性皮膚炎の発症には,皮脂の異常,内分泌異常,ビタミン代謝異常,癜風菌などの感染,環境因子,ストレスなど様々な因子が関与しているとされている.近年,これら因子のうち癜風菌が注目を集めている,癜風菌は,現在7菌種に分類されているが,各菌種の役割,病原性はまだ確定していない.今回,脂漏性皮膚炎の診断,鑑別診断,検査,直接検鏡,風菌の培養結果,治療について述べた.Parker-KOH染色を用いた直接検鏡で,脂漏性皮膚炎病巣中に認められる胞子には,球型と卵型があった.健常人の総皮脂量に関しては,男性で皮脂の高値例が多く,胞子数も男性に有意に多く認められた.胞子数と皮脂の間には,相関関係は見られなかった.脂漏性皮膚炎の顔面の病巣からMalassezia globosa, Malassezia furfurを多く検出した.抗真菌剤は菌要素陽性例の約80%で有効以上.抗真菌剤使用例のうち著効例ではすべて胞子数が減少した.抗真菌剤による治療は,ステロイドに比べて再発率が低かった.今後,脂漏性皮膚炎に対し,ステロイドに比べて局所副作用が少なく,再発しにくい抗真菌剤がより広く用いられるようになることを期待する.
著者
佐藤 一朗 槇村 浩一 蓮見 弥生 西山 彌生 内田 勝久 山口 英世
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 第52回 日本医真菌学会総会・学術集会 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
pp.73, 2008 (Released:2009-03-06)

【目的】真菌症は免疫力の低下した患者にとって重篤な症状を起こす病害である。そのため、免疫力の低下した患者における微生物叢とその薬剤耐性を定期的に把握する必要がある。我々は外来患者の外耳道から新規Candida属酵母を得たので報告する。【材料および方法】国内病院での外来患者の外耳道から採取した耳漏スメアを分離源とした。純粋分離菌株の26S rDNA D1/D2領域(26S)および ITS1+5.8S rDNA+ITS2領域(ITS)を用いた分子系統分類を行った。そのほかの試験項目はThe Yeasts 4th edに順じた。【結果および考察】純粋分離菌JCM15448株は26Sの相同性がCandida haemulonii CBS5149T とは85.7%、C. pseudohaemulonii CBS10099Tとは83.0%であった。ITSはそれぞれ84.9、81.4%であり、系統樹ではCandida属に分類されたが同一な種は認められなかった。本菌株は42℃およびビタミンフリー培地で生育陽性であり、Candida属としては特徴的な培養性質を示した。その他の培養性質から本菌株はグループ VI(イノシトール・硝酸カリウム・エリスリトール陰性、40℃陽性)に分類された。本グループはC. albicansをはじめ病原性が報告されている種が複数属しているが、本菌株の病原性は不明である。ボリコナゾール・イトラコナゾール・フルコナゾール・フルシトシンに対する感受性は既知の種と差が認められなかった。これらの結果から本菌株をCandida属の新種と判断した。
著者
西片 奈保子 中森 健太郎 末吉 益雄 高橋 英雄 由地 裕之 佐野 文子
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.213-221, 2011 (Released:2011-08-31)
参考文献数
18
被引用文献数
1 2

Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)法に準じて,Trichophyton verrucosum 9株及びMalassezia pachydermatis 13株に対する17種生薬配合薬抽出物の最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)を微量液体希釈法で測定した.また,構成生薬17種についても同様に抽出物のMICを測定し,主たる抗真菌性生薬を特定した. 生薬重量に対して10倍量の水で煎出した抽出液を10%抽出液として調製し,これを試験最大濃度として2倍希釈系列で微量液体希釈法にて評価した.その結果,生薬配合薬抽出液の幾何平均MICは,T. verrucosumで2.51%,M. pachydermatisでは2.25%であり,構成生薬17種中ダイオウ(Rhubarb,Rheum palmatum),カンゾウ(Glycyrrhiza,Glycyrrhiza uralensis),コウボク(Magnolia bark,Magnolia obovata),オウバク(Phellodendron bark,Phellodendron amurense),及びゲンノショウコ(Geranium herb,Geranium thunbergii)の5種類に,両菌に対する発育阻止効果が認められた.
著者
小豆畑 康児 川名 秀忠 東 守洋 東 和彦 若新 英史 大矢 佳寛 佐野 文子 亀井 克彦 張ケ谷 健一
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 第49回 日本医真菌学会総会 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
pp.176, 2005 (Released:2005-09-07)

症例は 70 歳の米国人男性。来日前から中耳炎と難聴があり、来日後は咳、発熱が続いていた。某院に通院、その後、入院していたが、症状が悪化し、千葉大学医学部付属病院に転院した。血尿・蛋白尿が出現し、C-ANCA も陽性だったことから Wegener 肉芽腫症の診断がなされ Cyclophosphamide 及びステロイドによる治療が行われた。治療開始から約一ヵ月後、胸水の出現とその増加があり、上肺野には斑状影を認めた。胸水培養より特定できない真菌が検出されたため、千葉大学真菌医学研究センターにおいて精査したところ、血清抗体価、PCR、DNA シークエンスなどから Coccidioides immitis と判明した。これに対し、抗真菌薬による治療を行ったが、肺症状の悪化と低酸素血症が続いた。その後、全身状態も悪化し、胸水の出現から約一ヶ月半で死亡した。千葉大学において病理解剖が実施され、検索の結果、肺・肝臓・脾臓に内生胞子を充満したコクシジオイデスの球状体が見られた。
著者
岩田 和夫 内田 勝久 奥平 雅彦
出版者
日本医真菌学会
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.95-107, 1969-06-20 (Released:2009-12-18)
参考文献数
33
被引用文献数
1
著者
Ichiro Kawamura Katsuhiko Kamei Kyoko Yarita Misako Ohkusu Kenta Ito Mika Tsukahara Masatake Honda Kazuhisa Nakashima Hiroaki Akamatsu Hanako Kurai
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.E51-E54, 2014 (Released:2014-09-18)
参考文献数
23
被引用文献数
2 9

This report describes a case of Cryptococcus gattii VGIIb infection of the pulmonary and central nervous systems in an immunocompetent Japanese man with a travel history, and it hypothesizes the place where he was infected with C. gattii using the genotype information.
著者
小川 祐美
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.179-183, 2012 (Released:2012-08-23)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

Trichophyton tonsurans 感染症が, わが国で蔓延し始めて10年以上経過する. 当初は, 高校 ・ 大学生の格闘技選手間での集団感染が特徴であったが, 徐々に低年齢層や競技とは無関係の患者が増加している. 感染者数などは, 菌種同定の不便さから把握が困難であるが, 格闘技選手間では6 ~ 10%程度の頭部の保菌者が存在し, その80%以上が無症候性キャリアである. 実際には自ら受診する症状が出にくく, 潜在患者が多いと考えられる. 本感染症は, 体部白癬 ・ 頭部白癬が主たる病型である. 特徴は臨床症状が軽微で, 慢性化すると症状がほぼ消失し, 無症候性キャリアとなり感染源となる. 生毛内寄生を伴う体部白癬には, 特に注意が必要である. 診断は通常の白癬と同様 KOH 検査法と真菌培養で, 原因菌の分離 ・ 同定である. 治療は, 頭部の菌の有無を目安に抗真菌剤の外用 ・ 内服を柱とする. 感染予防も重要な課題である.
著者
西村 和子
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.385-391, 1994-11-15 (Released:2009-12-18)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

コロンビア,ベネズエラ,ブラジルおよび中国において採集された土壌,腐植植物より病原性黒色真菌の分離が試みられた結果,南米3ヶ国の試料よりFonsecaea pedrosoi, Exophiala spp., Cladosporium trichoidesが少数,E. spiniferaとPhialophora verrucosaが相当数分離された.ベネズエラのC.carrioniiによるクロモミコーシス多発地帯ファルコン州からは特徴的にC.carrioniiが腐植植物から分離された.中国の試料はC.carrionii感染の多発地帯である山東省で収集されたが,本菌種は分離されなかった.しかしながら,F.pedrosoiが少数,P.verrucosaが多数,両アメリカ大陸以外では初めてE.spiniferaが,また新たな病原性黒色真菌としてVeronaea botryosaが相当数分離された.一方,日本の浴室環境にはもっぱらExophiala属菌が分布していた.
著者
西山 彌生
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.5-6, 2013 (Released:2013-03-08)
参考文献数
3
著者
阿部 美知子 久米 光
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.19-25, 2013 (Released:2013-03-08)
参考文献数
14
被引用文献数
1
著者
藤広 満智子
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.107-110, 2013 (Released:2013-06-11)
参考文献数
14
被引用文献数
1
著者
渡辺 哲 亀井 克彦
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.103-104, 2013 (Released:2013-06-11)
参考文献数
4
著者
矢口 貴志 滝澤 香代子 田口 英昭 田中 玲子 窪田 規 窪田 宜昭 窪田 正昭 福島 和貴
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.97-100, 2007 (Released:2007-09-26)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

銀は, 古くから細菌などの微生物に対して抗菌作用を有することが知られており, 食器をはじめ歯科用充填材などに用いられている. 今回, ナノ銀粒子を静電吸着させたコラーゲン水解ペプチド (GX-95) の病原真菌を中心とした真菌に対する抗真菌活性について検討した. その結果, 検討したすべての菌種に対し, 抗真菌活性を有することが明らかとなった. 最小発育阻止濃度 (MIC) は, fluconazole, itraconazole, flucytosine 耐性株を含めたCandida albicans に対して0.25-3.1μg/ml, Cryptococcus neoformans に対して0.05-0.2μg/ml, Aspergillus fumigatus に対して0.025-0.4μg/ml, Trichophyton rubrum に対し0.4μg/ml, Cladophialophora carrionii に対して0.05μg/ml などとなり, GX-95は幅広く強い抗真菌活性を示した.
著者
加納 塁
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.19-23, 2012 (Released:2012-03-30)
参考文献数
14
被引用文献数
7 10

皮膚糸状菌症の犬および猫からヒトが感染し,体部白癬,時にはケリオンにまで重症化する場合がある.今まで原因菌のほとんどは,Microsporum canisであったが,最近は兎,げっ歯類,ハリネズミが人気動物になりそれらの輸入時に,これまで本邦で認められなかったArthroderma benhamiaeが侵入し,全国的に拡散しヒトへの感染も報告されている. クリプトコックス症は現在のところ増加傾向は認められないが,本邦でもCryptococcus gattiiの感染動物が報告されている.獣医臨床の分野でも免疫抑制剤および抗癌剤による治療症例数の増加に伴って,本症が増加する可能性がある.動物のスポロトリクス症は,本邦では稀な疾患であるが,大量の菌が感染病巣や滲出液中に認められるため,ヒトへの感染や居住環境を汚染する危険性がある.
著者
永田 雅彦
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.45-47, 2013 (Released:2013-03-08)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

イヌから分離されるマラセチアは Malassezia pachydermatis が主体であり,その関与が予想される “マラセチア皮膚炎” と呼ばれる疾患がある.皮疹は脂漏部位の鱗屑を伴う比較的境界明瞭な紅斑を特徴とし,慢性経過を辿ると苔癬化や色素沈着を認める.その臨床はヒトの脂漏性皮膚炎に相当している.今後,ヒトと動物に共通する疾患としてその相違点を明らかにすることで,この領域における普遍的病態の理解を深めることが可能と推察された.