著者
大林 民典 杉本 篤 瀧川 千絵 関谷 紀貴 長澤 准一 尾崎 喜一
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.J73-J79, 2015 (Released:2015-06-15)
参考文献数
25
被引用文献数
1 6

血中 (1→3)-β-D-グルカンの測定依頼があった 415 件の残余試料を用いて,新製品ファンギテック® Gテスト MK II 「ニッスイ」と,生産中止となったファンギテック® Gテスト MK を比較・検討した.両者の最大の違いは,旧製品では東アジア原産のカブトガニ Tachypleus tridentatus の血球由来の原料が使われていたのに対し,新製品では北米原産のカブトガニ Limulus polyphemus が使われている点である.両試薬の測定範囲 (いずれも4.0 pg/ml~500 pg/ml ) において,新試薬の旧試薬に対する Passing-Bablok 回帰係数は 1.065 (95%信頼区間 : 1.015~1.111),y 切片は-0.287 (95%信頼区間 : -0.667~0.118) と,ほぼ 1 対 1 の対応がみられた.一方,個々の検体についてみると,乖離を示すものも少なくなく,β-グルカンの側鎖の多様性に対するカブトガニの種による反応性の違いが原因の一つと推測された.しかし,深在性真菌感染の関与が疑われた 40 検体についても回帰直線の両側に偏りなく分布していたこと ( χ2 =0.9,φ=1,p=0.34),また両試薬ともカットオフ値 20 pg/ml を切るとそのような検体の出現が激減することから,ファンギテック® Gテスト MK II 「ニッスイ」は MK と概ね同等であり,後継試薬として問題ないものと考えられる.
著者
池田 玲子
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.199-203, 2011 (Released:2011-08-31)
参考文献数
26
被引用文献数
1
著者
神田 奈緒子
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.137-142, 2004
被引用文献数
4

アトピー性皮膚炎患者の治療に抗真菌薬が有効であることが報告されている.アトピー性皮膚炎患者および健常者の末梢血T細胞の抗CD3,CD28抗体刺激によるTh1,Th2サイトカイン産生に対する抗真菌薬の作用について検討した.抗CD3,CD28抗体で刺激したT細胞のIL-4,IL-5の放出量はアトピー性皮膚炎患者では健常者と比較して高かった.アゾール系抗真菌薬ケトコナゾール,イトラコナゾール,ミコナゾール,非アゾール系抗真菌薬テルビナフィン,トルナフタートはアトピー性皮膚炎患者および健常者T細胞のIL-4,IL-5の放出を抑制したが,IFN-γ,IL-2の放出は抑制しなかった.アゾール系抗真菌薬は非アゾール系抗真菌薬より強力な抑制作用を示した.これらの抗真菌薬はJurkat T細胞においてIL-4, IL-5 promoter活性を抑制した.cAMPアナログは抗真菌薬のIL-4,IL-5産生抑制作用を解除した.抗CD3,CD28抗体刺激によりT細胞内のcAMP濃度は一過性に増加し,抗真菌薬はこのcAMPの増加を抑制した.アゾール系抗真菌薬はcAMPを産生するacenylate cyclaseを抑制し,非アゾール系抗真菌薬はcAMPを分解するcyclic nucleotide phosphodiesterase活性を増強した.抗真菌薬はcAMPシグナルの抑制を介してT細胞のIL-4,IL-5産生を抑制し,アトピー性皮膚炎患者のTh2偏位を是正すると考えられる.
著者
藤広 満智子
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.46, 2006

演者は流行が確認された2002年より、東海地方の皮膚科医に協力を呼びかけ、疑わしい患者の病巣の鱗屑や毛を貼り付けたセロテープを郵送してもらい、患者の早期発見に努めてきた。その結果58例の検体が集まり、うち41例から <I>T.tonsurans</I> が分離された。そのうちわけは、男性36例、女性5例、高校生30例、中学生以下6例、大学生以上5例であった。競技別ではレスリング21例、柔道19例、柔道部員の母親1例と、レスリングが多いのが東海地方の特徴と思われた。またそのプロトコールにより、1)部内に患者がなく対外試合で感染したケースでは1週間後に発症する。2)再発の多いケースは高校3年間に4回発症を繰り返した。3)頭部白癬は丸刈りにして初めて気づく。4)体部から採取したセロテープに毛内に寄生した胞子を認めた。5)1ヶ月テルビナフィンを内服した後でも培養は陽性になる。6)柔道場の畳に長時間正座した後の下腿の病巣から分離されたのは <I>T.rubrum</I> であった。7)セロテープに貼り付けた毛は1年7か月後に培養できる。という情報を得ることができた。
著者
楠原 正洋
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.213-217, 2009 (Released:2009-11-27)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

スポロトリコーシスは健常人におこる慢性の感染性肉芽腫であり,診断には病理組織検査と真菌培養による菌の同定が必要である.補助的にはスポロトリキン反応も有用であるが,疑陰性もあるので注意を必要とする.治療薬として第一にはヨウ化カリウム薬の内服が安価かつ効果的であるが,消化器系の副作用や,施設によっては入手困難なこともあり,次いでイトラコナゾール,塩酸テルビナフィンが選択肢となる.その他局所温熱療法も有効である.黒色真菌による深在性皮膚感染症は,菌の寄生形態によりクロモブラストミコーシスとフェオヒフォミコーシスに大別するのが一般的になりつつあるが,本邦では前者をクロモミコーシスと称する場合も多い.診療の際,クロモブラストミコーシスは鱗屑内の褐色胞子型菌要素を,フェオヒフォミコーシスは膿汁内の菌糸型を確認できるので,日々の診療での直接顕微鏡検査が重要である.菌の同定には形態学的手法と分子生物学的手法の両方が望ましい.治療では,脳転移などの重症化に注意し,確実な治療とその後の長期的な観察が重要である.症例ごとに手術療法の適応や菌種別の抗真菌薬の選択,温熱療法などとの組み合わせが必要となる.
著者
前田 潤 南條 育子 古賀 裕康 栂 哲夫 槇村 浩一 坪井 良治
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.J1-J6, 2016 (Released:2016-03-01)
参考文献数
11
被引用文献数
4 11

白癬の主要病原菌であるTrichophyton rubrum (14菌株) およびTrichophyton mentagrophytes (14菌株) に対するルリコナゾールの最小発育阻止濃度 (MIC) および最小殺真菌濃度 (MFC) を外用抗真菌薬 6 剤 (ラノコナゾール, ビホナゾール, エフィナコナゾール, 塩酸テルビナフィン, 塩酸ナフチフィンおよびリラナフタート) におけるそれぞれの濃度と比較した. T. rubrumおよびT. mentagrophytesに対するルリコナゾールのMIC90 はともに0.00098 μg/mlとなり,MFC90 においても,ともに0.0078 μg/mlとなり,試験薬剤のなかで最も強い抗真菌活性を示した.静真菌的に作用するとされるアゾール系薬剤であるビホナゾールの MFC/MIC ratioはT. rubrumで≧48.3, T. mentagrophytesでは≧19.6であり, エフィナコナゾールでも71.4および26.9であった. しかし, ルリコナゾール (13.4および6.1) およびラノコナゾール (11.1および5.0) は, 殺真菌的に作用するとされるテルビナフィン (8.0および12.6), ナフチフィン (9.1および8.6) およびリラナフタート (15.4および11.4) と同程度の MFC/MIC ratioであった. このことからルリコナゾールおよびラノコナゾールは両菌種に対して殺真菌的作用も有することが示唆された. 本研究において, ルリコナゾールは日本および米国で市販されている主要外用抗真菌薬のなかで白癬菌に対して最も強力な抗真菌活性を示し, 白癬の治療に際しての最も有効な薬剤の1つであると考えられた.
著者
呂 耀卿
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.179-185, 1990
被引用文献数
2

発達した医療体制の下で,人々の寿命は延び,糖尿病・自己免疫病なども上手に管理されて,高年者を含む免疫力低下あるいは不全の人口が殖えつつある.従って真菌症を含めての感染症は減らず,稀な菌種による感染さえ見るようになった.この趨勢は台湾にも見られ,ここ三年間の数多い症例の中から,皮膚病変を伴う珍らしいと思われる9例を紹介する.全例とも皮膚科医の報告したものである.Penicilliosis marneffei; cutaneous protothecosis; phaeohyphomycosis: Exophiala jeanselmei 2例,Alternaria sp.1例;congenital cutaneous candidiasis; cutaneous fusariosis; cutaneous aspergillosis; pemphigus foliaceus with cryptococcemiaであり,それぞれの病歴・現症・臨床検査的及び病理組織学的所見・菌学的検査結果・治療及び経過を説明し,特にそれぞれの推察され得る免疫学的背景を可及的に探索した.菌学的に興味のあるのはPenicilliosisとProtothecosisで,殊にdimorphismのある<i>Penicillium marneffei</i>は報告例が30例足らずで,主に東南亜からである.<br>発病の基礎的原因としては糖尿病・紅斑性狼瘡・天疱瘡あるいはステロイドの長期使用が主であるが,単に高年あるいは幼弱で免疫力が弱いと考えられるのもある.<br>治療はそれぞれ異なった薬や方法を用いているが,面白いことに全例成功しており,これが諸家の参考になれば幸いである.
著者
今村 宏 平谷 民雄 内田 勝久 山口 英世
出版者
日本医真菌学会
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.275-291, 1988

ピリミジン基を含む新しい3-ヨードプロパルギル誘導体である rimoprogin の <i>in vitro</i> 抗菌活性を同じ3-ヨードプロパルギル誘導体に属する既存の抗真菌剤 haloprogin およびイミダゾール系抗真菌剤として知られている isoconazole nitrate を対照薬剤として比較検討した結果, 以下の知見が得られた.<br>1) 本剤は広い抗菌スペクトルを有し, 酵母状真菌, 皮膚糸状菌, <i>Aspergillus</i> および類縁菌, 接合菌, 二形性真菌および黒色真菌を含むほとんどすべての病原性真菌に対してのみならず, グラム陽性細菌に対しても低濃度で発育阻止効果を示した. これらの菌群間で本剤に対する感受性を比較すると, 二形性真菌が最も高く, 次いで皮膚糸状菌, <i>Aspergillus</i> および類縁菌, 黒色真菌, 酵母状真菌, 接合菌の順であった.<br>2) 各種真菌に対する本剤の最小発育阻止濃度 (MIC) は接種菌量および培養時間により, 軽度しか影響を受けなかったが, 培地pHによる影響は顕著にみられ, 酸性側で高い抗菌活性を示した. また血清の添加により抗菌活性は低下したが, その程度は対照薬剤に比べて軽度であった.<br>3) <i>Candida albicans</i> および <i>Trichophyton mentagrophytes</i> を rimoprogin 存在下で培養した場合, 2.5μg/ml以上の薬剤濃度では6時間以内に明らかな生菌数の低下が認められ, 本剤が感受性菌に対して殺菌的に働くことが示唆された.
著者
五ノ井 透 ハナフィ アメド メーヤー ウィランド 三上 襄
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.78, 2008

マイクロサテライトは、ゲノム上に存在する数塩基単位の繰り返し配列であり、集団遺伝学やDNA鑑定において遺伝子マーカーとして用いられている。世界の各国で採取された100株あまりの<I>Cryptococcus neoformans</I> var. <I>grubii</I> (serotype A) のマイクロサテライト多型を解析し、地域による菌の分布の多様性について明らかにした。すでに公表されているH99株ゲノム配列を基に、15の典型的なマイクロサテライト部位をランダムに選択して塩基配列を解読した結果、3つの部位で2~3塩基の繰り返し配列が7~13回と異なる回数繰り返される、マイクロサテライト多型が観察された。残りの12ヶ所には多型は観察されなかった。見つけたゲノム上の3ヶ所の多型を用いて世界各国で採取された菌株をタイプ分けしたところ、日本-中国-台湾に共通する型、タイ国に特有の型、ヨーロッパ-エジプトに共通する型などを識別することができた。また、ベネズエラ-コスタリカ-ブラジルなどの中南米の各国には、多くの型が混在していることが明らかとなった。 今回多型が存在することが明らかとなった3つの部位を含め、<I>Cryptococcus neoformans</I> のマイクロサテライト多型の解析は、菌の伝播経路、感染経路の解析や地域多様性の解析、さらには、菌種の解析にも有用であると結論した。
著者
安部 茂
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.227-231, 2004
被引用文献数
7

老人における口腔カンジダ症,および吸入ステロイドの使用に伴う咽頭・食道カンジダ症は,患者が非常に多い疾患であり,しかも一部の患者では難治性となる.これら粘膜カンジダ症は,主として常在菌である<i>Candida albicans</i>が,宿主の低下した防御能をくぐり抜け,感染が成立する感染症である.鵞口瘡がこれら口腔咽頭カンジダ症の一般的な状態であり,舌,咽頭などに偽膜性の白苔を生じる.私達は新たにマウス口腔カンジダ症および咽頭カンジダ症のモデルを作成した.これら動物モデルは,口腔カンジダ症では,クロルプロマジンをマウスに投予することで,<i>C.albicans</i>の口腔内への菌の定着が容易におこるのみでなく,舌白苔などの症状を示し,その数値化が可能となるものである.すでにこの口腔カンジダ症モデルで,ウシラクトフェリン,クローブ,植物精油の経口投与により防御効果が得られており,その免疫学的機序も一部明らかにされてきている.さらに,アゾール系抗真菌剤に耐性を示す<i>Candida albicans</i>による本感染症に対しても植物精油が有効なこと,また,ヒト唾液が感染防御に働くことも明らかにされつつある.
著者
島村 剛 宮前 亜紀子 今井 絢美 平栁 こず恵 岩永 知幸 久保田 信雄 澁谷 和俊
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.J141-J147, 2016
被引用文献数
6

近年,外用爪白癬治療薬が次々に開発・上市され,長年抗真菌薬の経口投与に限られていた爪白癬治療法に新たな選択肢が増えてきている.本研究では,わが国で上市されている5%ルリコナゾール外用液および10%エフィナコナゾール外用液の特性把握のため,薬剤塗布後の爪中薬物濃度および爪中薬物の抗真菌活性を比較した.<I>In vitro</I>ヒト爪薬物透過性試験では,薬剤をヒト爪に単回投与後,爪を表面から薄切したサンプルの薬物濃度を測定し,爪中薬物濃度分布を算出した.また,<I>in vitro</I>ヒト爪スライス阻止円試験では,薬剤を1日1回14日間投与し,爪スライスを含菌培地にのせ,阻止円の有無から阻止円形成率を算出した.その結果,ヒト爪薬物透過性試験では,5%ルリコナゾール外用液は,10%エフィナコナゾール外用液にくらべ,爪全層において高い爪中薬物濃度を示し,測定ポイントごとの比較では,1.7~8.4倍の濃度差が認められた.また,ヒト爪スライス阻止円試験における,5%ルリコナゾール外用液および10%エフィナコナゾール外用液の平均阻止円形成率は,それぞれ71.0%および12.6%を示し,両剤間で統計学的な有意差が検出された.以上の結果から,2つの外用爪白癬治療薬は特性が異なり,5%ルリコナゾール外用液は,爪中への移行性および貯留性の良さが示されるとともに,爪中のルリコナゾールが抗真菌活性を維持していることが確認された.
著者
比留間 政太郎
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.36, 2005

足白癬が難治である理由として、治療開始 1 から 2 週間後に、かゆみなどの軽減に伴い治療を中断し、再発を繰り返すためといえる。足白癬の治療効果促進のためには、患者コンプライアンスを向上させ、治療期間を短縮しても十分な効果を示す薬剤の開発が求められる。ルリコナゾールは、新規イミダゾール系抗真菌剤で、広域な抗真菌スペクトルと強力な抗真菌活性をもち、皮膚角層中で優れた薬物貯留性を示す。本薬の臨床試験は、外用抗真菌剤臨床評価法(日本医真菌学会)に基ずき、従来の薬剤塗布期間(4 週間)を半分に短縮して試験を実施した。第 III 相臨床試験では、ルリコナゾールクリーム 1% は 2 週間の薬剤塗布で対照薬(1% ビホナゾールクリーム)の 4 週間塗布に対して、真菌学的効果(76.1%)及び皮膚症状改善度(91.5%)の非劣性が検証され、塗布開始 2 週後の真菌培養成績では、対照薬に対して有意に高い消失率を示した。また、一般臨床試験、比較試験の短期間塗布試験でも、本クリームは、白癬及び皮膚カンジダ症・癜風に対して有効であり、液剤もクリームとの同等の臨床効果が得られた。副作用発現率は 2.5% であり、主なものは軽微な皮膚炎であった。ルリコナゾールクリーム 1%・液 1% は治療期間を短縮させ、患者コンプライアンスの向上が期待できる新しい外用抗真菌薬である。
著者
生冨 公明 西川 武二 中山 秀夫
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.184-187, 1980
被引用文献数
1

著者らは最近, <i>Microsporum audouinii</i> によるケルズス禿瘡の6歳外国人男子例 (スーダン国籍) を経験した. 患者は大使館員家族で, 原因菌は外国由来と考えられた. 本邦報告例を検討したがいずれも菌学的記載に乏しく, 著者らの例が <i>Microsporum audouinii</i> によるケルズス禿瘡の本邦第1例と考えた.
著者
田嶋 磨美 天谷 美里 杉田 隆 西川 朱實 坪井 良治
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.193-196, 2005
被引用文献数
7

<i>Malassezia</i>は脂質要求性の皮膚常在菌で,癜風,脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の発症に関与していることが指摘されている.今回,我々はアカツキ病の3例を経験したので,その鱗屑痂皮に含まれる<i>Malassezia</i>の菌相を解析し,健常人,アトピー性皮膚炎患者と比較検討した.症例1は,両上下眼瞼部,症例2は左鼠径ヘルニア手術瘢痕部,症例3は頭頂部のアカツキ病であった.それぞれ,病変部鱗屑からNested PCRを用いた非培養法にて<i>Malassezia</i> DNAを検出した.症例1及び3はともに,<i>M.obtusa</i>と<i>M.slooffiae</i>が検出され,症例2は<i>M.slooffiae</i>のみが検出された.健常人皮膚からは,<i>M.globosa</i>,<i>M.restricta</i>および<i>M.sympodialis</i>が高頻度に検出されのに対し,今回アカツキ病で分離された2菌種は比較的稀で,病態との関連性が示唆された.
著者
高橋 英雄 植田 啓一 宮原 弘和 渡辺 紗綾 内田 詮三 鎗田 響子 村田 佳輝 板野 栄子 高山 明子 西田 和紀 猪股 智夫 矢口 貴志 佐野 文子 亀井 克彦
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.34, 2007

水族館飼育下イルカのnon-<I>albicans Candida</I> spp.保菌が健康管理および観客への安全上問題となっているので、飼育されているイルカ20頭の呼気と飼育プール水の病原性酵母叢を昨年8月および本年2月に調査した。さらに飼育関係者24名の口腔内と観客席空中浮遊菌の病原性酵母叢の調査を本年2月に行った。保菌イルカは14頭 (70%)、分離株は<I>C. albicans</I>、<I>C. tropicalis</I>、<I>C. glabrata</I>で、1頭を除き2回の調査とも保有菌種は同一で、大多数の株はアゾール薬に耐性傾向を示した。また、4個体は1呼気あたり数十から数百の病原性酵母を噴出していた。飼育プール水の検査では8箇所中5ヵ所から<I>C. albicans</I>および<I>Candida</I> spp. など、飼育関係者の口腔からは24名中5名から<I>C. albicans</I>および<I>Candida</I> spp. などが分離され、一部にアゾール薬に耐性傾向を示す株も含まれていた。観客席空中からは<I>Candida</I> spp.など数株の酵母が分離された。しかし、病原性酵母を噴出しているイルカの呼気が観客に直接かかるような状況はなく、実際に観客席空中からイルカとの共通菌種が分離されなかったため、イルカショーで発生するエアロゾルによる観客への影響は少ないと思われる。一方、イルカ、飼育環境、飼育関係者との間では<I>C. albicans</I>が共通して分離されていたので、現在,遺伝子パターンの解析を進めている。また、イルカの真菌保有の有無は健康状態の指標となりうると思われた。
著者
明見 能成
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.225-228, 2009 (Released:2009-11-27)
参考文献数
7
被引用文献数
3 3

近年non-albicans Candida 属のカンジダ血症に占める割合が増加している.当院においても1996年から2007年の間に経験したカンジダ血症58例のうち36例はnon-albicans Candida 属による症例であった.non-albicans カンジダ血症のリスクファクターとして抗真菌剤投与の既往を検討した結果,non-albicans 症例では36例全例とも,C. albicans 真菌血症では22例中18例と,non-albicans カンジダ血症でフルコナゾール(FLCZ)使用例が多い傾向が認められた.一般にnon-albicans Candida 属菌種は,カンジダ症に第一選択抗真菌剤とされているFLCZに対する感受性から,FLCZ感受性菌であるC. tropicalis,C. parapsilosis,C. guilliermondii と,FLCZに低感受性を示すC. glabrata,C. krusei に分けられる.今回,われわれが検討した36例のnon-albicans Candida 属株の抗真菌剤感受性試験でも同様の傾向が認められた.しかしながら,C. guilliermondii はFLCZ感受性菌であるがMIC値が高い傾向を示した.また,non-albicans Candida 属に有効とされるミカファンギンに対して,C. parapsilosis とC. guilliermondii はMIC値が高い傾向を示した.
著者
井上 重治 高橋 美貴 安部 茂
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.305-313, 2011 (Released:2011-11-28)
参考文献数
37
被引用文献数
5 6

抗真菌活性を有するブラジル産プロポリス2種,ニュージーランド産プロポリス,日本産プロポリス各1種の成分組成を HPLC/MS で分析した.ブラジル産はいずれも artepillin C と drupanin が主体,ニュージーランド産は pinocembrin と galangin, chrysin, alkylphenol と caffeic acid ester が主体であった.日本産プロポリスにはポリフェノールは存在しなかった.ニュージーランド産プロポリスはタイムチモール精油と比較して,白癬菌殺菌活性,カンジダ菌糸形発現阻害活性,遊離ラジカル捕捉効果が強かったが,カンジダ増殖阻止活性は弱かった.ブラジル産と日本産プロポリスの抗真菌活性は弱かったが,ラジカル捕捉活性は精油より強い.これらの結果はプロポリスには植物精油には期待しにくい特性があることを示しており,今後の抗真菌療法の開発にプロポリスを利用できる可能性を示唆するものである.