- 著者
-
武川 正吾
- 出版者
- 日本家族社会学会
- 雑誌
- 家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.1, pp.43-51, 2013-04-30 (Released:2014-11-07)
- 参考文献数
- 26
- 被引用文献数
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この報告は,家族戦略論のなかに公共政策を新しい変数として導入することを提案する.家族戦略の「構造的諸条件」の多くが公共政策の決定の結果として生み出されているからである.他方で,個々の家族戦略の集積の結果として,これらの「構造的諸条件」は単純再生産されたり,拡大再生産されたり,構造自体が変化する場合もある.日本も他の先進諸国と同様,グローバル化と個人化の影響を受けている.しかしその影響が他国と同様に純粋的な形で現れないのは,日本では「家族」が緩衝地帯としての役割を果たしているからである.このようなことが可能となった背景には,日本の福祉レジームの存在がある.しかし,その家族そのものの数が現在減少しつつある.家族変動に対する公共政策の影響は,これまで十分に評価されてきたとはいえない.しかし,公共政策の最初の一撃は,家族変動を含む社会変動にとって重要である.家族戦略と公共政策との間の正のスパイラルを確立するために,現在の日本では「公共政策による最初の一撃」が求められている.