著者
三品 拓人
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.29-42, 2022-04-30 (Released:2022-04-30)
参考文献数
34

本論文は,中規模の児童養護施設において何が「家庭的」であるのかということ,そして「家庭」がどのように参照されるのかということを,参与観察データから明らかにするものである.施設の小規模化や個別化を実現することにより達成されるとされる「当たり前の生活」という観点に注目した.その結果,児童養護施設において「家庭」が参照される場面として,次の2つの場面が見られることを提示した.1つ目は,「施設内で使われる物の大きさと形」である.例えば,ドレッシング,炊飯器,お風呂などの大きさが「普通の家庭」の大きさや形と比較され,職員がその適切性を問題視する場面があった.2つ目は,「施設における指導の判断の基準」である.例えば,子どもの体調が悪い時の対応,ポケットに手を突っ込んでいる時に注意をするかなどであった.以上のように,児童養護施設の日常生活において「家庭」が参照される一側面が明らかになった.
著者
小玉 亮子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.154-164, 2010-10-30 (Released:2011-10-30)
参考文献数
35
被引用文献数
1

長く教育学研究のメインストリームは学校であり,家族というテーマは,必ずしも市民権を得てこなかった。アリエスの『子供の誕生』(1960=1980)は,日本語で翻訳されるやいなや,非常に大きな反響を得た。ちょうど,子どもの問題が社会問題化した時期とも重なり,この著作は,従来の子ども理解の相対化のための理論的根拠を与えるものとなった。アリエス以降,自明のものであった近代的子ども観,近代家族,近代学校が問い直され,教育学の在り方それ自体に対する問題提起がなされた。同時に,子ども問題への社会関心の高まりに呼応して,家族をターゲットとした教育政策も次々と打ち出されるようになった。教育学研究においても,教育政策においても,家族はその重要なテーマとして位置づけられてきた。しかし,家族や学校への研究上・政策上の関心の高まりは,同時にそれらへのバッシングと結びついてきた側面があったことは否めないのではないだろうか。
著者
余田 翔平
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.139-150, 2014

本稿では,再婚率の(1)趨勢,(2)階層差,(3)趨勢変化の階層差に着目して記述的分析を行った.『日本版総合的社会調査(JGSS)』にイベントヒストリーモデルを適用した結果,以下の知見が得られた.第1に,近年の離死別コーホートほど,再婚ハザードは低下している.第2に,男性よりも女性のほうが,低学歴層よりも高学歴層のほうがそれぞれ再婚経験率が高い.第3に,学歴と再婚経験との正の関連は近年の離死別コーホートほど明確に現れており,一方で再婚経験率の性差は縮小傾向にある.<br>以上を踏まえると,日本社会では「離死別者の非再婚化」が進展しており,未婚化・晩婚化のトレンドとあわせて考えれば,無配偶の状態に滞留するリスクがライフコースを通じて高まっていると推測される.さらに,こうしたライフコースの変化は社会全体で一様に広がっているわけではなく,階層差を伴っている.
著者
久保田 裕之
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.78-90, 2009-04-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
39
被引用文献数
3 2 2

「家族の多様化」論の前提となる,家族に関する選択可能性の増大という認識は,家族が依然として選択不可能な部分において個人の生存・生活を保障している点からみれば一面的である。法・制度に規定された家族規範は,現代においても,婚姻をモデルとした性的親密性・血縁者のケア・居住における生活の共同というニーズの束として複合的に定義されており,個人の主観的な家族定義もまた,この家族概念をレトリカルに参照せざるを得ない。さらに,貧弱な家族外福祉を背景として,主観的家族定義における親密性の重点化により,親密性と生存・生活の乖離が生じることが現代の「家族の危機」の一因となっている。そこで,政策単位としても分析単位としても複合的な家族概念を分節化し,従来の家族の枠組みを超えて議論していくことが重要である。家族概念を分節化することで,家族概念の単なる拡張を超えて,家族研究の対象と意義を拡大することができる。
著者
竹村 祥子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.57-60, 2009

1990年代後半の経済の構造転換と家族の多様化により,親の経済基盤の二極化が進んでいくなか,その状況の報告をうけて以下の点について検討する必要があると考えた。一つは,首都圏の就学前児童の保護者世帯の経済的差異や母親の学歴の差異と,子どもの教育機会の差異が関連していることがどのような格差のもととなるかを考えること。二つめは,「より良い子育て」や「リスク回避戦略」として子どもに小・中学校受験をさせている親とそうでない親たちとの階層分断化,生活圏での分断化が起こる可能性があるということが首都圏特有の問題なのか,地方の家族においても潜在的に抱えている格差問題であるのかを精査していく必要があること。三つめは,母子家庭の貧困・低所得問題と母子家庭が幾重にも周縁化され,貧困の世代間再生産が起こっていることへの対処はどうすべきかを考えることである。いずれにしても,このような家族の二極化によって,子どもの不平等(格差)がどのように進むのか,日本の家族全体の格差問題であるのかを検討し,対策を立てていくことが緊急の課題である。
著者
牧野 カツコ 山根 真理
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.7-12, 2003

届出に象徴される社会的制度としての結婚が日本では一般的なものとなっているが, しかし, 晩婚化や婚姻外の性関係の広がり, 子どもをもたないカップルの増加, 中高年の離婚の増加などは, われわれに結婚とはなにかを問うている。われわれは, 性別分業にささえられた近代家族型の結婚の揺らぎを体感しつつも, その次にくる脱近代家族のイメージを確立することができずにいる。シンポジウムでは, この領域で活躍されている4人の論者を迎え, 近代社会における婚姻制度とそれを支える理論に対する立場を軸として, 討論が展開された。 (1) 近代結婚理論と脱近代的家族論との対峙が本格的になされたこと, (2) 同性間パートナーシップに関する議論が, 家族社会学会のなかで初めて本格的になされたこと, (3) 2者パートナー関係に特権的な位置を与えない未来社会の可能性が示されたこと, の3点において, 意義のある成果がみられた。<BR>今後, 脱近代社会における子どもの位置や親密関係について, 議論が深まることが期待される。
著者
風間 孝
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.32-42, 2003-01-31 (Released:2010-02-04)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

本稿は, 同性婚の政治性を明らかにすることを目的とする。まず, 近代家族が異性愛規範に基づくことにより, 同性愛者を周縁化し, 家族を形成する機会を奪ってきたことを論じた。つぎに, 近代家族を批判する立場からの婚姻制度の解体が多様性の承認につながるという主張は, 権力関係の外部を前提にしていることを指摘した。最後に, 家族制度擁護論に基づく反対論の分析を通じて3つの点を指摘した。第1に婚姻の定義に基づく同性婚の拒絶は法が特定の定義を採用する恣意性を隠蔽することによって成り立っていること。第2に生殖に基づく拒絶は同性カップルが規範的異性愛家族およびジェンダーの (再) 生産につながらないことを理由としており, それゆえに同性婚の要求は家族と規範的異性愛とジェンダーの結びつきに異議申立てを行うものであること。第3に同性婚の要求は, 近代の特徴である異性愛規範に基づいた公/私二元論の枠組みを問題化するものであること。
著者
武藤 香織
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.128-138, 2003-01-31 (Released:2009-08-04)
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

従来, 主に生命倫理学や医療社会学の分野で検討されてきた臓器移植だが, 家族社会学とのコラボレーションを求めるべく, 第12回日本家族社会学会大会において生体肝移植を取り上げたテーマセッションを設定した。本稿の目的は, そのセッションの企画意図と背景, ならびに現在の生体肝移植医療の概要を述べ, 家族社会学での議論の契機とすることである。現在, 生体肝移植の症例は2,000例を超え, レシピエントは小児の血縁者だけでなく, 成人の血縁者から非血縁者に広がり, さまざまな家族関係からドナーが選ばれるようになった。また, 脳死臓器移植における提供先に関する生前意思の尊重についての議論もあり, 親族指定の心情は理解されながらも, 運用上認められることはなかった。その一方で, 非正統的な家族・親族関係における臓器授受については議論の俎上にあがっていない。このような状況下で, 改めて医療社会学と家族社会学の垣根を超えて, 移植医療と家族の関係を問い直す必要があるだろう。
著者
知念 渉
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.102-113, 2014-10-31 (Released:2017-01-27)
参考文献数
20
被引用文献数
1

2000年代以降,「子ども・若者の貧困」に関する研究が数多く蓄積され,貧困家族を生きる子ども・若者たちの生活上の困難を明らかにしてきた.しかし,山田 (2005)が指摘するように,現代社会を生きる人々にとって,家族とは,生活に役に立つ/立たないという観点から理解できる「機能的欲求」には還元できない,自分の存在意義を確認する「アイデンティティ欲求」を満たす関係にもなっている.このような観点に立てば,従来の「子ども・若者の貧困」研究は,アイデンティティ欲求の次元における「家族であること」のリアリティを相対的に看過してきたと言えよう.そこで本稿では,「記述の実践としての家族」という視点から,文脈や状況に応じて流動する若者と筆者の間に交わされた会話を分析し,アイデンティティ欲求の次元における「貧困家族であること」のリアリティを明らかにした.そして,そのリアリティが,流動的で,相対的で,多元的であることを指摘し,その知見がもつ政策的示唆について考察した.
著者
釜野 さおり
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.200-215, 2017-10-31 (Released:2018-11-08)
参考文献数
13
被引用文献数
2

本稿では,「性的マイノリティについての意識:2015年全国調査」のデータを用いて「同性愛・両性愛フォビア度尺度」と「家族・ジェンダー保守度尺度」を生成し,各尺度得点を被説明変数とした重回帰分析を行った(n=1074).男性である,高齢である,同棲の経験がない,政治意識が保守的である,セクシュアル・マイノリティが周りにいないと認識していると,家族・ジェンダー保守度と同性愛・両性愛フォビア度が高いことがわかった.婚姻地位,都市規模,信仰・信心の有無は,いずれの尺度においても関連性が確認できなかった.学歴,就業の有無,主な仕事の種類,宗教心の重要性,居住地域については,2つの尺度間で,また,統制する変数によって結果が異なった.検討した変数すべてを含むモデルの標準化係数を見ると,同性愛・両性愛フォビア度に対する説明力が高いのは,年齢,セクシュアル・マイノリティが周りにいるか否か,性別の順であった.
著者
服部 良子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.36-48, 2015
被引用文献数
1

本論ではケア労働に関する家族的責任支援政策の今後を考察する.1980年代までに日本の制度は男女別雇用構造を形成した.それは男性労働者は稼ぎ手で,女性は被扶養でケア労働担当という男女分業の家族制度との組み合わせの構造をもつ.これは専業主婦を男性の扶養者とする税制と社会保障制度とリンクしている.85年の基礎年金改革も専業主婦を被扶養者第3号被保険者として保険料負担を課していない.均等法対策として日本企業はコース別雇用管理を採用して85年以前からの男女別雇用管理が維持された.そしてバブル崩壊以降,正規雇用の長時間労働が継続した.またパートや派遣の非正規雇用はさらに拡大した.そのため90年代以降,少子化対策の均等法・育児介護休業法等は雇用制度のなかで十分運用されていない.また社会的ケア労働支援は保育ケア不足が継続している.介護が公的保険制度化されたのと対照的である.少子化対応や女性活躍推進政策のケア労働のため家族的責任支援政策は法令遵守の徹底が必要である.
著者
服部 範子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.70-80,119, 1990-07-20 (Released:2009-08-04)
参考文献数
30

Topics about today's family problems and women's roles are debated very actively recently. In this context, there is an interst in how “the modern family” and sexual division of labor emerged in the study of family history and women's studies.The ideology of motherhood emerged during the period of the women's liberation movement at the biginning of this century : Ellen Key was known as a typical thinker about motherhood at that time. Through her thought, I believe we can understand how people, especially women came to accept the idea of “two-sexes-different-but-equal” favorably in those days. Her position on this should be clarified in this paper. To understand this better, the socio-economical circumstances at that time in Sweden, her home country, are considered.She insisted that women shold be seen not as “humankind” but as “womanhood.” She thought mtherhood was the very essential core part of womanhood, so she insisted that every wife or mother should stay home all day long, and put her children first, and that that was very rewarding work. Such ideas are considered to contribute to the formation of the ideology that women's place is in the home, by giving high priority to love, marriage and motherhood.
著者
柳 煌碩
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.57-71, 2018-04-30 (Released:2019-04-30)
参考文献数
24

本稿では,日本社会における規範的男性性から離れ,主夫という生き方を選択した8人の男性のライフストーリーを検討し,彼らの男性性がどのような葛藤・変容を経験し,再構築されていくのか,その過程を分析した.分析の結果,主夫たちは「日本型人事管理モデル(森口)」によって生じた諸トラブル(疾患型・非疾患型)を退職のきっかけとしていることがわかった.さらに,退職と主夫への転向を巡っては,妻の容認の仕方(全面的容認・部分的容認)が非常に重要な影響を及ぼしていること,それによって主夫たちの生き方(専業・兼業)と男性性の再構築の様相(男性性を巡る不安・主夫としての自覚)も異なっていることが明らかになった.最後に主夫への移行過程を「ヘゲモニックな男性性(R. W. コンネル)」の相対化過程として位置付け,その「相対化」の三つの側面(受動性と能動性の区別・妻が期待する男性性・日本型人事管理モデルの相対化)の重要性について考察を試みた.
著者
松田 茂樹 佐々木 尚之
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.169-172, 2020-10-31 (Released:2021-05-25)
参考文献数
9

東/東南アジアの先進国・新興国/地域は,いま世界で最も出生率が低い.この地域の少子化の特徴は,出生率低下が短期間に,急激に起こったことである.低出生率は,各国・地域の持続的発展に影を落としている.欧州諸国で起きた少子化は,第二の人口転換に伴う人口学的変化の一部として捉えられている.しかしながら,現在アジアで起こっている少子化は,それとは異なる特徴と背景要因を有する.主な背景要因のうちの1つが,激しい教育競争と高学歴化である.この特集では,韓国,シンガポール,香港,台湾の4カ国・地域における教育と低出生率の関係が論じられている.国・地域によって事情は異なるが,教育競争と高学歴化は,親の教育費負担,子どもの教育を支援する物理的負担,労働市場における高学歴者の需給のミスマッチ,結婚生活よりも自身のスペック競争に重きを置く物質主義的な価値観の醸成等を通じて,出生率を抑制することにつながっている.
著者
森 謙二
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.30-42, 2010
被引用文献数
3

葬送領域(葬ること)において,大きなパラダイム変化が起こっている。日本の近代家族は,祖先崇拝の機能をもち続け,民法もそれを容認してきた。20世紀の末になると,少子化によって祭祀承継者(アトツギ)の確保が困難になり,祖先祭祀の機能をもち続けた日本の近代家族は解体を始める。人々は地域や家族とのつながりが希薄になって,あらゆるものが市場化・商品化するなかで,自分自身の意志によって(自己決定)によって,葬送のあり方を決めたいと思うようになった。この現象を「葬送の個人化」と呼んでおく。葬式は家族だけで行い,人の死が社会に伝えられなくなった。お墓は家族が引き継ぐものではなく,樹木葬や散骨が急速に増えてきた。他方では,貧困層ではお金がないために葬式をあげることができない人々が増えるようになった。新自由主義の展開のもとで,葬送領域でも「格差」が顕著になってきた。
著者
舩橋 惠子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.10-2, pp.55-70, 1998-07-31 (Released:2009-08-04)
参考文献数
20
被引用文献数
1

育児休業は、常にジェンダー変革的とは限らない。制度は両性に開かれていても、実際に取得するのは母親が多い。女性ばかりが取得する結果、労働市場における男女不平等が再生産される。では、いかなる条件の下で、育児休業政策はジェンダー革新的になるのだろうか。本稿では、EUおよび北欧諸国 (スウェーデン、デンマーク、ノルウェー) の経験に注目しながら、男性の子育てを促進するジェンダー自覚的な育児休業のあり方を探る。ヨーロッパの経験からは、1) 「男性稼ぎ手モデル」から「平等シェアモデル」へ、2) 「家族単位」の制度から「他者 (移譲できない個人の権利」としての制度へ、という二つの基本的な政策動向が見いだされた。北欧の経験によれば、ジェンダー変革的な育児休業制度の条件は、1) 最低6ヶ月を越える充分な期間の長さ、2) 給与に連動した高水準の給付、3) 柔軟性、4) 割当制、の4つである、、さらに、企業文化の革新、父親役割の変革、ケアラーとしての父親 (対する社会的支援などが重要であることもわかった。このような父親の育児を推進する政策に加えて、男性保育者増強政策も必要である。育児は、男女の間でも、家族と国家との間でも、分かち合いうるのである。
著者
木戸 功
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.150-160, 2011-10-31 (Released:2012-11-13)
参考文献数
76

この論文では過去20年にわたる家族社会学における質的研究の動向をふりかえり,その現状と課題を考察する.『家族社会学研究』(1989-2010)における質的研究を,論文数,データとその収集方法,方法論,主題といった観点から検討する.論文数が増加してくるのは2000年以降のことであり,そこでは個人の経験に焦点をあて,面接調査によってえられた「語り」をデータとして使用する研究が多いが,方法論や理論的な想定については十分には議論されてこなかった.こうした検討をふまえて,方法の妥当性と知見の一般化可能性という課題について議論する.調査研究過程の手続きの有意関連性を示し,理論的想定を明らかにすることの重要性を指摘するが,このことは家族社会学における知見の意義を明確にするという意味でも重要である.さらに,この知見の一般化可能性という水準において,量的研究との関係を考えることを提案する.