著者
竹内 孝治 加藤 伸一 田中 晶子
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.117, no.4, pp.274-282, 2001 (Released:2002-09-27)
参考文献数
49
被引用文献数
5 5

消化管は種々の食餌性あるいは薬剤性の刺激に絶えず露呈されるという過酷な環境下にある.このような状況下においても, 消化管の粘膜恒常性は種々の機能変化およびそれらを調節する生体内因子により構成されている“粘膜防御機構”によって通常維持されている.内因性プロスタグランジン(PG)は消化管の粘膜防御機構において司令塔的な役割を演じており, 中でもPGE2が最も重要であると考えられている.本稿では, 消化管におけるPGE2の粘膜保護作用に関連するEP受容体および機能変化について, 種々の選択的なEP作動薬およびEP受容体欠損マウスを用いて得られた著者らの成績を中心に紹介する.外因性PGE2の塩酸·エタノールおよびインドメタシン誘起胃損傷に対する保護作用はEP1作動薬によって再現され, 逆にEP1拮抗薬の存在下では消失する.内因性PGE2はマイルド·イリタントによる適応性胃粘膜保護作用においても重要な役割を果たしているが, この現象もEP1拮抗薬によって完全に消失する.PGE2による胃粘膜保護作用は胃運動抑制と機能的に関連しており, この作用もEP1作動薬によって同様に認められる.しかし, カプサイシンによる神経性胃粘膜保護作用はEP2およびIP受容体との関連性が推察されている.一方, 十二指腸におけるPGE2による保護作用は重炭酸イオン分泌と機能的に関連しており, これらの作用はEP3およびEP4作動薬によって再現される.同様に, インドメタシン小腸傷害もEP3およびEP4作動薬によって抑制され, 機能的には腸運動抑制および粘液分泌亢進に起因する腸内細菌の粘膜内浸潤の抑制と関連している.PGE2による粘膜防御の詳細な発現機序については不明であるが, 胃における保護作用は主としてEP1受容体を介して, また十二指腸および小腸における保護作用はEP3およびEP4受容体を介して発現するものと推察される.
著者
山崎 真弓 磯崎 淳 田中 晶 安藤 枝里子 中村 陽一 栗原 和幸
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.1181-1184, 2017 (Released:2017-11-11)
参考文献数
17

症例は26歳,女性.幼少期より,鶏卵の誤食による誘発症状を認めていた.治療の希望があり,急速経口免疫療法の目的で当院に入院した.二重盲検負荷試験で陽性を確認し,オープン法による閾値決めを行った.生卵白乾燥粉末を症状誘発閾値の1/10量(3.0mg)より1.2倍ずつ増量し,5回/日で摂取した.1gに達したところでスクランブルエッグ8gに変更し,その後は1.5倍ずつ増量した.治療18日目に目標の鶏卵1個分(60g)に達した.治療中に蕁麻疹や軽い呼吸困難などの誘発症状を2回認めたが,抗ヒスタミン薬を内服して症状は消失した.鶏卵摂取後の運動誘発試験は陰性,鶏卵入りの加工品を摂取しても誘発症状は認めなかった.現在,1日に鶏卵1個を摂取する維持療法を継続中であり,2年の経過で誘発症状を認めていない.小児期に耐性獲得できない成人に対しての急速経口免疫療法は,選択肢として考慮される治療法である.
著者
川原 由佳里 守田 美奈子 田中 孝美 奥田 清子 本江 朝美 田中 晶子 五味 己寿枝
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.46-55, 2009-06-05 (Released:2016-08-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究の目的は, ①触れるケアをめぐる看護師の経験, ②臨床のなかでの触れるケアの位置づけ, そしてアロマセラピストの語りとの比較を通じて③看護における触れるケアの特徴を明らかにすることである. 看護師 13 名とアロマセラピスト 4 名に面接を行い, 参加者の語りを身体論的な観点から分析した. 結果, 看護師は生活援助やコミュニケーション等のさまざまな場面で, 直観的に相手のニーズを把握し, 即応的に触れるケアを行っていた. 触れている最中, 看護師は自らの手に感じられる相手の状態に集中し, 相手の心身の変化を感じとっていた. 看護師たちは触れるケアの効果を確信をもって語り, そうしたケアに看護職としての喜びを見出していたが, 治療中心, 効率性優先の臨床では, 触れるケアは特別な価値をもつものとは認識されず, その体験を誰かと共有することも少なかった. 看護師自身にも触れるケアの価値そのものが認めづらい現状が明らかになった.
著者
坂宮 章世 田中 晶善
出版者
日本熱測定学会
雑誌
熱測定 (ISSN:03862615)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.31-37, 2009-01-25 (Released:2022-11-20)

This article outlines the procedure of microbial calorimetry and its application to food microbiology and soil microbiology. The process of putrefaction of food, which can be regarded as the growth of microbes in food, and the process of carbon-source assimilation by soil microbes can be observed by a calorimetric method. From the time course of the calorimetric signal, we can obtain several values, such as the time T1/2, at which half of the total heat evolution is completed, and the time M, at which the heat-evolution rate reaches its maximum value. By analyzing the dependencies of these parameters on a chemical concentration such as sodium chloride, several repressive parameters of the chemical can be evaluated: the concentration Ki, at which the specific putrefactive or assimilative activity is half repressed; the repressive cooperativity m; and the minimum inhibition concentration MIC. This calorimetric method has the advantages that it does not require highly specialized knowledge or skills in either food or soil microbiology and that it can detect the putrefactive and assimilative activities of both “viable but non-culturable” and culturable microbes.
著者
小張 真吾 磯崎 淳 山崎 真弓 田中 晶 安藤 枝里子 中村 陽一
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.155-163, 2016
被引用文献数
2

【背景】近年, 食物アレルギー児の数は増加し, 乳幼児を預かる施設での対応が求められている. 【目的】横浜市内の幼稚園・保育所での食物アレルギー児への対応の実態を明らかにする. 【方法】横浜市内の全幼稚園・保育所を対象に, 食物アレルギー児の把握法, 食事状況, アドレナリン自己注射薬 (エピペン<sup>®</sup>) の使用などについて無記名アンケート調査を行った. 【結果】過去の同種の調査と比べ食物アレルギー児の割合は幼稚園・保育所ともに増加していた. 保育所に比べ幼稚園では除去食や代替食対応が可能な施設は少なく, 食物アレルギー児の把握も医師の診断以外で行っている施設が多かった. 保育所の中でも, 認可外保育所には同様の傾向がみられた. エピペン<sup>®</sup>処方児は幼稚園で多かったにもかかわらず, 投与可能な施設は幼稚園のほうが保育所と比較し少なかった. 食物アレルギーに関する知識は, 保育所に比べ幼稚園職員で乏しい傾向があった. 【結語】幼稚園や認可外保育所を中心に, 乳幼児保育施設において, 食物アレルギーに関する知識の啓発と食物アレルギー対応の拡充をより進める必要がある.
著者
古林 呂之 井上 大輔 田中 晶子 坂根 稔康
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

【目的】点鼻液剤の製造では、有効成分の溶解性を確保するために薬物の解離定数を考慮した液性に調整されるケースがあり、そのpH範囲は約3.5~8付近と幅広い。一方、鼻粘膜表面の粘液pHは5.5~6.5に維持されており、特にこの範囲を外れたpHに調整した点鼻液では、鼻腔内投与後の薬物の解離状態が変化し、鼻粘膜透過性に影響を生じると考えられる。本研究では、モデル薬物の鼻粘膜透過性に及ぼす投与液のpHの影響について、Calu-3細胞層を用いたin vitro透過実験による検討を行った。【方法】粘液pHの経時変化:気液界面培養法により培養したCalu-3細胞層(6-well)の表面に、pHを3.8、5.5及び7.8に調整した薬液を20 µLを滴下した後の粘液pHの経時変化を半導体 pH 電極(HORIBA)により測定した。透過実験:細胞間隙及び経細胞経路の透過マーカーとしてFD-4及び非解離性のantipyrineを用いて、薬液pHによる細胞層への影響を、粘膜側液量を1.5 mLとする定法の透過実験により評価した。モデルとしてacyclovir(ACV)及びlevofloxacin(LFX)をHBSS に溶解し、pH3.8、5.5及び7.8に調整した薬液を用いて、定法及び粘膜側に20 µL滴下する少量滴下法により透過実験を行った。【結果・考察】各pHの薬液を滴下した直後から粘液のpHは変化し、滴下後30分にはいずれの条件においてもpHは約6.4となった。また、各pH条件において透過マーカーの透過パターンに変化は観察されず、細胞層への影響はみられなかった。LFXの透過性は少量滴下法、定法共に、pHの影響は観察されず、ACVでは、定法においてpH3.8及び5.5で60分後の透過量が約4倍高くなったが、少量滴下法では透過にpHの影響はほとんど認められなかった。少量滴下法では、粘膜表面のpHが6.4付近に急速に戻されるため、ACVの透過性にほとんど影響しなかったと考えられる。現在、他のモデル薬物についても検討を進めており、発表に加える予定である。
著者
土坂 享成 木村 哲哉 今井 邦雄 妹尾 啓史 田中 晶善 小畑 仁
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 = Environmental science (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.393-398, 1999-11-30
参考文献数
14
被引用文献数
1

前報において,カドミウム解毒に重要な役割を果たすと考えられている(γ-EC)<SUB>n</SUB>G合成酵素の性質について,水稲根を用いて検討したことを報告し,水稲根中で(γ-EC)<SUB>n</SUB>Gを合成している酵素の少なくとも一部がカルボキシペプチダーゼである可能性を示唆した。これを踏まえ,本研究では各種のカルボキシペプチダーゼに(γ-EC)<SUB>n</SUB>Gの合成能力があるかを検討した。更に,イネ由来のカルボキシペプチダーゼ遺伝子を発現ベクターに組み込み,これを大腸菌に導入してカルボキシペプチダーゼ遺伝子を発現させ,それにより(γ-EC)<SUB>n</SUB>G合成能力が増大するかを検討した。 その結果,全てのカルボキシペプチダーゼ標品において(γ-EC)<SUB>n</SUB>Gの合成が認められ,その至適pHはカルボキシペプチダーゼの分解活性のそれとほぼ同じであった。また,その合成活性はカルボキシペプチダーゼの特異的阻害剤により抑制されることが認められた。比較のために行ったアミノペプチダーゼ標品では(γ-EC)<SUB>n</SUB>Gの合成は認められなかった。一方,カルボキシペプチダーゼ遺伝子を導入した大腸菌の抽出液における(γ-EC)<SUB>n</SUB>G合成活性が,導入していない方よりも増大したことが認められた。これらのことから,カルボキシペプチダーゼが(γ-EC)nGを合成している酵素の一つである可能性が更に強く示唆された。
著者
竹内 孝治 加藤 伸一 芝田 信人 高田 寛治 田中 晶子 吉川 由佳子
出版者
京都薬科大学
雑誌
地域連携推進研究費
巻号頁・発行日
1999

ポリフェノールの一つとして、ウイスキー中に多量に含有されているエラグ酸(EA)が前年度までの検討により胃粘膜保護作用および抗酸化作用を有することが示してきたが、さらに今年度は、新たに開発された大腸デリバリー化のための圧感応性カプセルに封入したEAを用い、デキストラン硫酸(DSS)によって誘発される潰瘍性大腸炎の発症に対するEAの効果を検討した。1.圧感応性大腸デリバリーカプセルPressure-controlled colon delivery capsule(PCDC)の使用により、投与されたEAは盲腸部に到達した後に徐々にカプセルから遊離溶出することが判明した。2.ラットにDSSを7日間連続投与することにより、体重減少、大腸の短縮化ならびに下血および下痢を伴う重篤な大腸炎が発生した。DSSによる大腸炎の発生は、PCDCに封入したEA(mcEA : 1-10mg/kg)を1日2回、7日間連続経口投与することによって、用量依存的かつ有意に(>3mg/kg)抑制された。また、mcEAの投与はDSS処置下に認められる大腸の短縮化、脂質過酸化を正常レベルにまで低下させると共に、好中球の浸潤に対しても抑制傾向を示した。なお、DSS誘起大腸炎に対するmcEA(3mg/kg)の保護作用はスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD : 30000units/kg×2)の直腸内投与で得られた効果と同程度であり、また同用量のEA原末と比べて有意に強いものであった。3.これらの結果は、EAがポリフェノールとして抗酸化作用により、臨床における潰瘍性大腸炎の治療に有効性を発揮する可能性が示唆された。
著者
田中 晶子
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

今年度は、健常者の研究結果を踏まえて、意識障害患者を対象に呼吸数・脳波に加え唾液を用いてオキシトシンとコルチゾールでストレスの定量的測定を行い、快刺激が高まるタッチング刺激の実施時間・速度・部位を特定することを目的としていた。そこで、昭和大学藤が丘病院EIユニット及び脳神経内科病棟で研究を実施する為に、倫理審査申請書を作成していた。しかし新型コロナウイルス感染症が収束せず、意識障害患者を対象として臨床研究が実施できる状況ではなかった。従って意識障害患者の脳波・呼吸数及び唾液を用いてオキシトシンとコルチゾールでストレスの定量的測定を行い、快刺激が高まる刺激の実施時間・速度・部位を特定するという目的を達成することはできなかった。そこで今年度は、意識障害患者を対象とした臨床研究を実施するにあたり、非接触で、簡便にタッチング効果を検証できる測定装置について検討を行った。田中は「さする」刺激を1分間実施した時に皮膚血流が増加した(田中,2017)という研究結果を明らかにしている。この結果を基に非接触で簡便な毛細血管スコープ装置を購入した。この装置は、指先の毛細血管及び血流を測定できる装置である。この装置を用いて、「触れる」「さする」刺激時におけるタッチングが末梢血管及び血流にどのような変化を及ぼすのかについて明らかにし、今後、意識障害患者を対象とした臨床研究に繋げていくという研究実施計画に変更した。
著者
尾崎 吉郎 木畑 佳代子 田中 晶大 嶋元 佳子 安室 秀樹 横井 崇 孫 瑛洙 川上 勝之 伊藤 量基 西 憲一 野村 昌作
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.207-213, 2011-09-30 (Released:2015-12-16)
参考文献数
8

膠原病関連血管炎では肺胞出血を伴うことがあり,強力な免疫抑制により治療されるが長期の機械的人工換気が必要となる例も多い.36歳女性,46歳女性,72歳女性の3症例のびまん性肺胞出血に対し,Airway pressure release ventilationモードでの人工換気を止血の補助療法とし,著効を得た.いずれも診断後直ちにAPRVで管理し,速やかに止血され平均第8.5日で抜管が可能であった.
著者
田中 晶国
出版者
日本税法学会 ; 1951-
雑誌
税法学 (ISSN:04948262)
巻号頁・発行日
no.577, pp.121-140, 2017-05
著者
田中 晶国
出版者
Kyoto University
巻号頁・発行日
2015-03-23

新制・課程博士
著者
阿閉 義一 高山 進 河崎 道夫 渡辺 守 新居 淳二 田中 晶善
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

【1】インターネットスクール「三重仮想大学:http://www-press.hep.phen.mie-u.ac.jp/mievu」の開設(1)インターネットスクールで開講している講座・中学生向けの「自然と人間」…………………………………………………同/shizen/index.html・大学生向けの「宇宙・地球の誕生と自然の構造」……………………………同/uchuu/index.html・市民向けの「量子と宇宙」……………………………………同/ryoushiuchuu/index.html・市民向けの「量子と波」…………………………………………同/ryoushinami/index.html・市民向けの「量子・宇宙・ひも」……………………………………………………同/qus/index.html・大学生および院生向けの「あべちゃんの物理学講座」…………同/ryoushiuchuu/index.html・大学院生向けの「Introduction to High Energy Physics」………………同/ryoushiuchuu/index.html・研究者向けの「Topics on High Energy Physics」…………………………同/topics/index.html・研究会報告「非摂動論的弦模型と世代構造」…………………………………………………同/research01/index.html(2)インターネットスクールにおける「動画:同/movie/index.html」の放映・芦原すなお講演「小説とぼく」…………………………………………………1997年の三重大学学術文化祭から・共通教育シンポジウム「新しい教養教育を考える」…………………………1997年の三重大学学術文化祭から・1997年の三重大学生物資源学部公開講座…………………………林拙郎講演「三重の水と森林」他9つの映像・2000年度三重大学総合科目「宇宙・地球の誕生と自然の構造」で実施した6イベント中の3映像【2】高等・中等教育における教育実践研究(1)毎年度(1998〜2000年度)三重大学共通教育総合科目「宇宙・地球の誕生と自然の構造」を開講(2)2001年2月に三重大学教育学部附属中学校1年「総合的な学習」の時間に「自然と人間」を開講(3)1998年8月に3日間の「高校生のインターネット講座」を開講(4)1999年8月および2000年8月にそれぞれ3日間の「中学生のインターネット講座」を開講