著者
大野 和朗 山口 大輔 マリヤナ ニナ 嶽崎 研 嶽本 弘之
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-9, 1999-03-25
被引用文献数
2

マメハモグリバエの幼虫寄生蜂4種6系統について, 増殖効率を明らかにするとともに, 羽化蜂を効率的に回収するためペットボトル容器を用いた羽化蜂回収容器の有効性を検討した.1) 飼育箱に一定数の雌蜂を放飼し, 数百頭の寄主幼虫を与えた場合, 雌蜂あたり次世代数には種間で有意な差は認められなかった.2) しかし, 性比はC. pentheus, D. isaeaおよびH. varicornisで雄に偏り, 雌の割合が低かった.対照的に, N. formosaでは極端に雌に偏り, 雄はわずかであった.3) D. isaea(DI-KGS)の放飼雌数を5, 10, 20頭に変えて約800頭の寄主を供試した場合, 次世代の生産に利用された寄主の割合は20頭供試区でも27%と低く, 寄主体液摂取の対象となった寄主すなわち死亡幼虫の割合は30∿50%と高かった.4) ハモグリミドリヒメコバチN. formosaの産雄性単為生殖系統(NF-KHO)および産雌性単為生殖系統(NF-KGS)の成虫数百頭を飼育箱に維持しながら, 数百頭の寄主を供試した場合, 前者の次世代数は後者の2倍近い値となった.しかし, 前者の性比は雄に偏り, 後者ではほとんどの個体が雌であった.5) ペットボトルを用いた羽化蜂回収容器にはいずれの種も80%以上の個体が試験管に回収されたが, その割合はC. pentheusで有意に低かった.6) 以上の結果から, N. formosaの産雌性単為生殖系統が大量増殖に最も適していると考えられた.
著者
前藤 薫 槇原 寛
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.11-26, 1999-03-25
被引用文献数
9

茨城県北部にある老齢自然林と皆伐後の経過年数の異なる二次林にマレーズトラップを設置して, 昆虫相を比較した.その結果, 林齢にともなう昆虫の種数と種組成の変化は, 昆虫のグループによって大きく異なることが分かった.カメムシ類とスズメバチ類では, 森林の遷移にともなう種数や種組成の明瞭な変化は認められなかった.チョウ類の種数は, 若い二次林に最も多く, 古い二次林ではやや減少した.また, 林齢によって種組成が変化した.カミキリムシ類は古い二次林で最も多くの種が捕獲され, 種組成は森林の遷移に応じて変化した.一方, クワガタムシ類は種数, 個体数ともに老齢自然林が最も豊富であった.林業地域において森林昆虫の多様性を保全するには, 昆虫の生息場所としての二次林の役割と限界について十分に理解する必要があろう.
著者
岩田 久二雄
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.233-250, 1936-09-10
著者
内藤 篤 宮崎 昌久 牧 俊郎
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.212-218, 1981-03-25

能登半島におけるコガタルリハムシGastrophysa atrocyanea MOTSCHULSKYの分布調査を1976∿1978年の3年間実施した.その結果, 1.本種は主に半島北部の奥能登丘陵地帯と, 南部の宝達山系丘陵地帯及びそれに接する北辺地域に偏って分布しており, 両分布域の中間の能都・内浦丘陵地帯, 一部の小分布域を除く大部分の中能登丘陵地帯, 能登北西部山間地帯, 能登島などかなり広範囲にわたって分布していない地域が存在することが明らかになった.2.本種の分布とこの昆虫の発生に大きく関連があると思われる食物条件, 気象条件, 土壌条件や天敵などの環境要因, 農薬散布の影響などの人為的要因について検討を加えたが, それらの要因との間に特記すべき関連を見出すことはできなかった.3.能登半島は山地山林が多くしかもそれが半島全体に複雑に分布しており, コガタルリハムシの生息可能な草地や農耕地がその間に入り組んで不連続的に存在している.このような地形は, 森林がこの昆虫の分散の大きな制限要因であることから考えると, この半島での本種の分布は人為的要素が加わらない限りほぼ固定していると思われた.
著者
岩田 久二雄
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.57-89, 1936-03-26
著者
長谷川 克 渡辺 守
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.105-114, 2008-09-25
被引用文献数
1

翅に色彩2型を生じるモンキチョウの雌に対する雄の配偶者選択を,雌が未交尾の場合と既交尾の場合に分けて調べた.この選択実験において,雄とモンシロチョウの雌も本種雌の2型とともに呈示し,それらに対する行動も記録した.処女雌を呈示したとき,雄は飛来時に黄翅型を選好し,どちらの翅型に対しても同様にしつこく求愛した.一方,既交尾雌を呈示したときの飛来時の選好性には偏りが見られず,飛来後の雄は白翅型雌に対してしつこく求愛した.本種雄は雌の交尾経験の有無によって,配偶者選択を変化させていることが示唆される.雌の翅のみを呈示した場合,雌の交尾拒否行動を模した翅モデルは効果的に雄の求愛行動を減少させたが,この場合においても雄は黄翅型雌の翅を選び,求愛のしつこさは2型で変わらなかった.このことは,翅の表面という視覚的な刺激のみでは2型間への雄の好みを変更させられないことを意味している.呈示した雄やモンシロチョウの雌は飛来時,あるいは初期の行動段階において雌と区別されており,これらの個体の存在が雄の配偶者選択に影響している可能性は低い.
著者
中尾 舜一
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.201-209, 1958-12-10

In the previous paper (Nakao, 1952), the author reported the fact that the diurnal sound-producing activity of Meimuna opalifera Walker belongs to a type of rhythmicity dependent upon the environmental conditions. But a song-length of this cicada in a day is independent to the environmental conditions, because a song-length seems to be lengthened with the lapse of time in a day irrespective of the various weather conditions. However, it is appreciably influenced by the high population density of the cicadas which gives the males more chances to meet the females or vice versa. The song-length is shortened when the population density of the cicadas becomes high, and the high population density disturbs the normal diurnal variation of a song-length. This fact seems to indicate a close connection to the active interaction between the sexes.
著者
Kudoh Kohji Abe Azuma Kondoh Itaru Satoh Noriyuki Saitoh Kazuo
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.232-238, 1970-09-30
被引用文献数
1

エゾカタビロオサムシ(青森県西津軽郡森田村産), カブトムシ(青森県三戸郡南部町相内産および新潟県両津市産), およびツヤハダクワガタ(青森県三戸郡新郷村戸来岳産)の雄の染色体を観察した.エゾカタビロオサムシの精原細胞では染色体数が2n, 28であつて, 雄へテロ(XY)と考えられる.最小の点状染色体がY染色体である.カブトムシとツヤハダクワガタの第1精母細胞では染色体数が共にn, 10であつて, 性染色体対(Xy_p)を識別できる.この報告は"青森県の昆虫に関する調査(弘前大学動物形態学研究室)"の第19報である.
著者
Okajima Shuji
出版者
日本昆虫学会
雑誌
Entomological science (ISSN:13438786)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.265-279, 1999-06-25

The Old World genus Oidanothrips Moulton comprises large macropterous thrips, which have the head long and dorsally elevated and the maxillary stylets broad and often extremely long with one lateral loop or more. Despite the broad stylets, the genus is placed in the Docessissopho-thrips-lineage of the subfamily Phlaeothripinae. The genus is here revised and a key provided to 11 included species, of which 7 are described as new : O. malayensis sp. n., O. maxillatus sp. n. and O. moundi sp. n. from West Malaysia ; O. taiwanus sp. n. and O. takasago sp. n. from Taiwan ; O. nigripes sp. n. from the Ryukyu Islands, Japan ; and O. sumatrensis sp. n. from Sumatra, Indonesia.
著者
丸山 宗利 大野 豪
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.112-115, 2011-04-05

Coelophora inaequalis (Fabricius, 1775) is recorded from several localities on the islands of Okinawa-jima and Ishigaki-jima, Okinawa, Japan for the first time. This species is considered to be currently introduced from overseas and possibly already naturalized in these islands. Several color forms are known in this species, but only two forms, Tortoise-shell and Nine-spotted forms, have been found the populations in Okinawa.
著者
吉澤 和徳
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲(ニューシリーズ) (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.112-120, 2016-07-05

はじめに : 咀顎目Psocodea(図1)はかつての独立目,噛虫(チャタテムシ) 目Psocoptera (図1),食毛(ハジラミ) 目Mallophaga,虱(シラミ) 目Anoplura からなる分類群である.側系統群Mallophaga をAnoplura とあわせてシラミ類Phthiraptera とし,さらにこれを内包する側系統群Psocoptera もあわせてPsocodea として扱う体系が最近一般的になった.和名もなじみが薄いと思われるが,咀顎類(上目) の名称は山崎(2000) が,片仮名目名の需要に応えたカジリムシ目の名称は吉澤(2012) が初出である.筆者がチャタテムシ類の研究を開始した当初,咀顎目は体系学的研究がかなり遅れた目とみなされていた.しかし咀顎目での寄生性の起源解明などで研究が加速し,現在は高次系統の全体像がおおよそつかめるに至っている(図2).さらに雌ペニスの発見や(Yoshizawa et al., 2014b; 吉澤, 2015),ゲノム系統解析で咀顎目が完全変態昆虫の姉妹群に位置づけられたこともあり(Misof et al., 2014: この解釈については下記も参照のこと),かつてのマイナー目は広く注目を集める存在となった(Yoshizawa, 2015).本稿では,咀顎目の位置づけと目内の系統関係の理解の現状を解説する.紙面の都合もあり下目以上の高次関係を主に扱う.より低次の関係や,科の単系統性などの議論は,引用論文および図2を参照されたい.上述の通りチャタテムシとシラミという区分は現在の分類体系では一般に認められないが,便宜上これらを分けて解説する.
著者
村田 浩平 松浦 朝奈 岩田 眞木郎
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-10, 2007-03-25

ヒメイトアメンボは,水田に生息する水生カメムシの1種である.本研究では,本種の飼育条件下における捕食行動を明らかにするとともに,餌昆虫の1つであるセジロウンカに対する天敵としての能力を評価すること,長日条件下(16時間明期,8時間暗期)において,23℃,25℃,30℃,35℃の異なる飼育温度における本種の繁殖能力を評価した.餌昆虫の密度に対する本種の機能の反応は,セジロウンカ,キイロショウジョウバエいずれを供試した場合も飽和型を示し,セジロウンカに対する日あたり攻撃量の最大値は1.65個体,キイロショウジョウバエに対しては1.48個体であった.捕食率(捕食数餌/密度)は,両餌昆虫とも捕食数の増加とともに減少した.セジロウンカを供試した場合の寄主発見能力,攻撃摂食時間,攻撃摂食時間から予想される日あたり攻撃量の限界値は,キイロショウジョウバエを供試した場合に比べて高かった.本種の産卵行動は,水面上や容器壁面,キムワイプ上に1卵ずつ行われた.本種の産卵前期間は,およそ1〜2日であった.産卵期間は,23℃区で10.5日,25℃区で20.8日,30℃区で19.5日,35℃区で7.5日となり,25℃区と30℃区における産卵期間は23℃区と35℃区のそれらとの間に有意差は認められなかったものの,後者では産卵期間が短くなる傾向が示された.1メスあたりの平均総産卵数は,23℃区で100.8卵,25℃区で186.2卵,30℃区で223.2卵,35℃区で55.4卵となり,23℃区および35℃区における1メスあたりの平均総産卵数は25℃区,30℃区に比べて少ない傾向を示した.卵から成虫までの生存率は,25℃区で最も高く,次いで23℃区,30℃区の順で35℃区は,全卵が孵化しないか孵化失敗により死亡した.本種の卵期間は,23℃区で8.7日,25℃区で7.4日,30℃区で5.9日であり,飼育温度が高くなるにつれて有意に減少した.幼虫期は,通常5齢までであったが,25℃区,30℃区において各1個体,計2個体のみ幼虫期が6齢の個体が見られた.1齢から終齢までの幼虫期間は,23℃区で15.6日,25℃区で13.1日,35℃区で10.9日であり,温度が高くなるにつれて有意に減少した.
著者
徳田 誠 松尾 和典 湯川 淳一
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.75-84, 2012

伊豆諸島の有人島のうち,虫えい形成タマバエ類に関する知見のなかった御蔵島および青ヶ島において調査を実施し,御蔵島から13種,青ヶ島から3種のタマバエを確認した.これらのうち,イソギクにメナガツボフシを形成するタマバエは新記録であり,バリバリノキエダタマバエは東京都初記録,タブハフクレタマバエ,ソヨゴタマバエ,エゴノキニセハリオタマバエ,キクヒメタマバエの4種は伊豆諸島初記録である.また,タマバエ科以外の虫えい形成者として,ツワブキケブカミバエを伊豆諸島から初めて記録し,ニッケイトガリキジラミとフウトウカズラクダアザミウマを御蔵島および青ヶ島から初めて記録した.

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著者
磐瀬 太郎 江崎 悌三
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, 1957-09-25
著者
石森 直人
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.115-120, 1938-07-27
著者
大原 昌宏
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.83-92, 2010
被引用文献数
1

The Hokkaido University Museum has promoted general education for taxonomy, that is, training courses for parataxonomists in Japan and Indonesia. During last six years, we conducted a total of 99 courses and the total number of participants has reached 1,271. In this paper I show (1) a chronological history of parataxonomists courses in Japan and Asia, and (2) the present situation of the courses, and also consider (3) a functional aspect of the parataxonomists courses for educating undergraduate and graduate students and citizens as candidate researchers in taxonomy, (4) effects of the courses on the public recognition of the taxonomy and biodiversity in Japan, and (5) promise of the courses.