著者
SAITO Tosihisa
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.315-327, 1979-09-25

The Japanese female-brachypterous oecophorid species are revised. Two species, Diurnea cupreifera (BUTLER) n. comb. and Cheimophila fumida (BUTLER), are redescribed, and D. issikii is described as new. An account of the immature stages of D. cupreifera is given. Xenomicta MEYRICK is newly placed in synonymy with Diurnea HAWORTH.
著者
松浦 誠
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.43-54, 1971-05-30

本稿では, 日本産のスズメバチ属(Vespa)ハチ類6種について, 1954年以来観察した350巣の記録をとりまとめた。1. Vespaでは種によって営巣場所に一定の選好傾向がみられ, 地上の非遮蔽空間を選好する種類と地上または地下の遮蔽空間を選好する種類に区別できた。2. 非遮蔽空間を選好する種類はV. analis insularisとV. xanthopteraの2種であった。前者は常に非蔽空間に営巣し, 86.0%(74/86)の巣は地表に近い草木の枝または茎に巣を設けた。後者のV. xanthopteraでは80.7%(134/166)の巣が非遮蔽空間にみられ, 68.1% (113/166)の巣は建造物の外部に営巣していた。また19.3% (32/166)の巣は地上または地中の遮蔽された空間に営巣しており, 邦産Vespa中, 営巣場所の選択にもっとも融通性を備えていた。3. 常に遮蔽空間に営巣する種類はV. crabro flavofasciata, V. tropica pulchraおよびV. mandariniaの3種であった。このうち前2種は地上および地下の広狭を問わず, いずれの遮蔽空間にも営巣していたがV. mandariniaでは常に地中の狭い既存空洞に営巣していた。4. V. simillimaはV. xanthopteraと同じように, 遮蔽空間および非蔽遮空間のいずれにも営巣していたが, どちらをより選好するかは, 観察例が少なく明らかでない。5. 非遮蔽空間選好種では, 外被は各巣盤を完全に被護しているが, 遮蔽空間選好種では, 外被は薄く下段の巣盤は被護されることなく常に露出していた。6. 営巣場所と方位との相関は各種ともみられなかった。7. 営巣場所の地表面よりの垂直距離についてみると, 空中巣のV. analis insularisでは2m以内の高さに84.5%の巣が分布していた。一方V. xanthopteraでは2∿7mの高さに79.5%の巣がみられた。遮蔽空間選好種のV. crabro flavofasciataとV. tropica pulchraの空中巣は4.5m以下にみられた。地中巣は, V. xanthoptera, V. crabro flavofasciata, V. tropica pulchraおよびV. mandariniaの4種とも, 地表より60cm以内の比較的浅い部分に分布していた。8. 地上または地中の遮蔽空間に建設された巣では, 営巣空間への入口と巣を結ぶ通路の長さは, 3∿420cmで, この間を巣の個体は歩行して巣に達した。9. 前年の同種の営巣跡に再び営巣を繰り返す例がV. xanthoptera, V. crabro flavofasciataおよびV. analis insularisの3種に観察された。10. Vespaの同種および異種間において1地域に相互に近接して営巣する例がみられた。
著者
細谷 忠嗣 神保 宇嗣
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.48-57, 2010-06-25

2010年は国際生物多様性年であり,10月には名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議(CBD COP10)が開催される.現在,人間活動によって生じた地球温暖化などの環境変化や開発による生態系の破壊,密猟や乱獲などによる生物多様性の急速な喪失が,生物多様性の危機として大きな問題となっており,「2010年目標」の評価や「ポスト2010年目標」の策定,遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)など本会議には大きな関心が集まっている.この会議に向けて,日本でも日本生物多様性観測ネットワーク(J-BON)や東・東南アジア生物多様性情報イニシアティブ(ESABII)などの関連する大きなプロジェクトが立ち上げられている.分類学には,これらの生物多様性条約に関わるプロジェクトへの貢献が期待されている.こうした問題解決への参画は,分類学への関心を高め,その地位を向上させるだけでなく,新しい研究分野開拓という形で学問自体の進展にもつながるであろう.本特集では,生物多様性条約関連プロジェクトに参画している研究者がその概要と分類学者との関係のあり方を紹介していくことで,分類学者として生物多様性条約とその関連活動にどのように向き合い,そして参加していくべきかを考えていく.
著者
細谷 忠嗣 神保 宇嗣
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.48-57, 2010

2010年は国際生物多様性年であり,10月には名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議(CBD COP10)が開催される.現在,人間活動によって生じた地球温暖化などの環境変化や開発による生態系の破壊,密猟や乱獲などによる生物多様性の急速な喪失が,生物多様性の危機として大きな問題となっており,「2010年目標」の評価や「ポスト2010年目標」の策定,遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)など本会議には大きな関心が集まっている.この会議に向けて,日本でも日本生物多様性観測ネットワーク(J-BON)や東・東南アジア生物多様性情報イニシアティブ(ESABII)などの関連する大きなプロジェクトが立ち上げられている.分類学には,これらの生物多様性条約に関わるプロジェクトへの貢献が期待されている.こうした問題解決への参画は,分類学への関心を高め,その地位を向上させるだけでなく,新しい研究分野開拓という形で学問自体の進展にもつながるであろう.本特集では,生物多様性条約関連プロジェクトに参画している研究者がその概要と分類学者との関係のあり方を紹介していくことで,分類学者として生物多様性条約とその関連活動にどのように向き合い,そして参加していくべきかを考えていく.
著者
Okada Toyohi
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.327-350, 1965-09-30
被引用文献数
4

日米科学協力研究による, 1963年度の沖繩昆虫相調査の結果のうち, 西表, 石垣, 沖繩各島において, 平嶋義宏, 緒方一喜, 山崎柄根3氏によつて採集された, 約1850頭のショウジョウバエを検する機会を得た, 従来沖繩産として2属8種のみが知られていたが, 本調査の結果7属28種が得られ, 種名のつけられたものの合計は, 8属31種となつた.カグヤショウジョウバエZygothrica asiatica (Okada)の雄の頭部は, 左右に著しく伸長しているが, それと雌の通常の頭部との比較を, D'Arcy ThompsonのCartesian Coordinate法を用いて行なつた結果, 部分的には, 横軸(縦軸)に沿う伸長は, 縦軸(横軸)に沿う短縮を伴なうという, 体物質補償の現象が認められた.
著者
窪木 幹夫
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.97-110, 1999-09-25
参考文献数
21

日本列島の気候の特徴の一つである太平洋側の気候と日本海側の気候の境界に位置する尾瀬・奥鬼怒地域でPidonia相とその垂直分布, 訪花植物, 幼虫の生活を調べた.1974年から行ってきた全国各地でのPidoniaの生態調査とウルム氷期最盛期以降の植生変遷に関する研究を参考に, この地域でのPidonia相の形成について考えた.1. 1993年7月27日から31日の調査で, 合計24種のPidoniaを確認した.2. 落葉広葉樹林のPidoniaは, その分布域が太平洋側または日本海側のどちらかの地域に片寄る種が尾瀬・奥鬼怒地域でみつかった.P. obscurior, P. insuturata, P. semiobscura, P. limbaticollis, P. oyamaeは太平洋側地域を, P. hakusana, P. hayashii, P. miwai, P. takechiiは日本海側地域を中心に分布していた.3. P. insuturataとP. hayashii, P. obscuriorとP. hakusanaのように, 系統的に近縁な種間に対応的分布関係が調査地域内でみつかった.4. 尾瀬地域のPidoniaはミズキやオガラバナのような木本類を, 奥鬼怒地域のPidoniaはオニシモツケ, シラネセンキュウのような草本類を主要な訪花植物とする傾向があった.5. 1989年7月30日, 燧ヶ岳の亜高山帯の枯れたオオシラビソの樹皮内から摂食中のP. bouvieriの幼虫が見つかった.6. 1995年7月25日, 鳩待峠付近のダケカンバの生木の樹皮内から, P. chairoの蛹室が見つかった.それらの高さは, 11例中8例が地上1m以内, 3例が1∿2.8mであった.7. 日本海側地域では冬の積雪が樹皮内で生活するPidonia幼虫を乾燥から守っている.8. 尾瀬・奥鬼怒地域のPidonia相は後氷期の森林の移動に伴って, 太平洋側と日本海側からこの地域に分布を拡大したPidoniaによって形成された.
著者
湯淺 啓温
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.112-113, 1927-09-05
著者
河内 俊英
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.536-546, 1985-09-25
被引用文献数
1

ナナホシテントウ, ヒメカメノコテントウおよびクロヘリヒメテントウの成長量(羽化時生体重とした), 成長速度および休眠誘起に対する日長条件の影響を調査した.ナナホシテントウ, ヒメカメノコテントウの羽化時生体重は, 20℃, および25℃では長日条件よりも短日条件下で重くなった.ナナホシテントウ, ヒメカメノコテントウおよびクロヘリヒメテントウの成虫は, 25℃では長日・短日の各条件とも休眠割合が低い.ナナホシテントウ成虫では, 20℃短日条件で卵巣成熟の遅延がみられた.産卵前期間は8L/16Dで54.6日, 10L/14Dで65.2日, 12L/12Dで31.9日を要した.ヒメカメノコテントウ成虫は, 20℃短日条件では80%以上が休眠した.クロヘリヒメテントウ幼虫の成長期間は, 25℃の短日・長日両条件において, 顕著な差異はみられなかった.ナナホシテントウ成虫の夏眠を誘起する要因としては, 梅雨時期の餌不足が重要と考えられる.日長および温度条件は, ナナホシテントウの夏眠誘起にとって, 2次的要因であろう.
著者
山崎 輝男 石井 敏夫
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.165-166, 1950-12-30
著者
幾留 秀一
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.416-428, 1979-09-25
被引用文献数
1

1975年と1976年に高知県土佐郡土佐山村において, 4月から10月まで, 月2回, 10時から15時まで, ハナバチ類の種類構成, 相対頻度, 季節消長および訪花性を知るために, 生態的調査を行なった.1. 採集されたハナバチは, 合計6科12属42種701個体であった.2. 種類数における優勢なグループは, コハナバチ科(Halictidae)とヒメハナバチ科(Andrenidae)であり, 個体数における優勢なグループは, コハナバチ科, ケブカハナバチ科(Anthophoridae)およびミツバチ科(Apidae)であった.優占種としては, Ceratina japonica, Tetralonia nipponensis, Bombus diversus, Lasioglossum mutilumおよびB. ardensの5種が認められた.この結果と他地域(高知平野, 吉備, 美並および札幌)での調査結果を比較考察した.3. 季節変動では, 種類数においてコハナバチ科, ヒメハナバチ科およびケブカハナバチ科による晩春のピークが, 個体数において, 春のケブカハナバチ科, 初夏のミツバチ科とヒメハナバチ科による春から初夏にかけての大きなピークと, 初秋のコハナバチ科とケブカハナバチ科, 秋のミツバチ科, コハナバチ科およびミツバチモドキ科による初秋から秋にかけての小さなピークが, それぞれ認められた.また, 優占5種のうち, C. japonica, B. diversusおよびL. mutilumの3種はほぼ全期間を通して, T. nipponensisとB. ardensは春から初夏の期間のみに, それぞれ訪花活動を行なっていた.4. 被訪花植物として, 23科54種が認められた.ハナバチの訪花頻度の高い植物は, キク科, ユキノシタ科およびマメ科で, 訪花個体数の62.4%を占めた.ハナバチ各科の訪花性の特徴について述べた.また, 被訪花度の高い上位の植物種は, レンゲ, ウツギ, ヒメジョオン, ツツジおよびヨメナであった.さらに, ハナバチ優占種の各種植物への訪花度について述べた.
著者
村田 浩平 野原 啓吾 阿部 正喜
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.21-33, 1998-06-25
被引用文献数
6

阿蘇地域におけるオオルリシジミの生息地は, 外輪山内壁と内輪山の標高400∿800mの地域に集中しており, クララの自生している地域に多く生息していることが解った.本種の生息地は, 毎年, 早春に野焼きを実施している草原に限られる.ルートセンサス法による個体数の年次変動の調査の結果, 早春の野焼きを継続している地域では, 本種の個体数が減少することもなく, 逆に早春の野焼きを停止した地域では, 個体数が著しく減少していることが判明した.しかし, 2∿3年のうちに野焼きを再開すると個体数が回復の方向へ推移することがわかった.阿蘇地域の本種が利用する吸蜜植物は, 現在までに8属8種を確認したが, 野焼き停止後数年を経過すると, これらの吸蜜植物ばかりでなく食草であるクララも減少し, ススキ等のイネ科植物の侵入によって生態系が大きく変化していることが観察された.また, 野焼きの停止は, クララの生長を悪化させることがわかった.このことから, 野焼きの停止による生息環境の変化は, 本種の個体数を著しく減少させる大きな要因の1つであると考えられる.早春における野焼きの実施は, 食草であるクララや吸蜜植物を保護し, 本種の生息環境を維持する上で有効な管理法であり, その実施は, 本種が羽化する2∿3カ月前に行う必要がある.また, クララの生育期間中の除草や採草も回避するべき作業であると考えられる.しかしながら, 畜産農家の高齢化や人手不足などから, 野焼きの実施地域は年々減少傾向にあり, 本種の存続には憂慮すべき状態となりつつある.現在, 熊本県, 阿蘇町および白水村によって全国的にも貴重な本種の保護を目的とした条例が制定されており, その内容は, 本種の全ステージの採集を禁止するものであるが, 採集禁止のみによる保護では甚だ不充分で, 野焼きの実施による生息環境の維持管理に意をそそぐ必要があると考えられる.
著者
幾留 秀一
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.512-536, 1978-09-25
被引用文献数
1

1). 1975年と1976年に高知平野の3箇所(高知市五台山, 南国市物部, 同岡豊)において, 2月後半から10月後半まで, 月2回, 10時から15時まで, ハナバチ類の生態的調査を行った.その結果, 6科19属68種1447個体のハナバチが得られた.2). 種類数と個体数において, AndrenidaeとHalictidaeのハナバチが優勢なグループであった.優占種としては五台山地区においてTetralonia mitsukurii, 物部地区においてTetralonia nipponensis, Andrena fukaii, 岡豊地区においてLasioglossum apristum, Tetralonia nipponensisなどがあげられる.これらの結果と他地域(吉備, 美並, 札幌)の調査結果と比較考察した.3). 季節変動には, 種類数・個体数ともに春・夏・秋に顕著なピークが認められた.春のピークはAndrenidae, AnthophoridaeおよびHalictidae, 夏のピークはMegachilidae, 秋のピークはAnthophoridaeとMegachilidaeによるものである.また, 3地区の上位3∿4種の季節消長について述べた.4). ハナバチの訪花は, キク科植物に対して最も高く, 訪花ハナバチ個体数の25.3%を占め, Andrenidaeのハナバチが最も多く訪花した.被訪花度の最も高い植物はヤマハギで, 訪花ハナバチ個体数の15.6%を占め, Anthophoridaeのハナバチが最も多く訪花した.また, 優勢な7種のハナバチの各種植物への訪花について述べた.
著者
善養寺 聡彦
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.159-167, 2008-12-25

ナミテントウが晩秋の暖かい日に,明るい色の標的に向かって飛来集合することは,一般によく観察される.しかし,飛来集合する特定の日がどのように決まるかに関しては,これまで明らかにされていなかった.千葉市内の2か所における9年間の観察記録をもとに,この飛来集合を引き起こす環境条件を検討したところ,日長の短縮あるいは低温のわずかな経験では不十分であることがわかった.それよりはむしろ,ある基準温度以下の低温にさらされる経験が累積してはじめて,この行動が引き起こされると推察された.集められたデータを分析した結果,もっとも妥当性がある基準温度は14.0℃で,これ以下の累積低温量が257.8を超え,さらにその後の好気象条件(12時の気温が16.2℃以上,風力4以下,晴天あるいは薄曇り)の日に,ナミテントウの飛来集合が起こると考えられた.
著者
内藤 篤
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.255-"262-1", 1960-12-10

1959, 1960年の厳寒期に, シロイチモジマダラメイガおよびマメシンクイガの越冬幼虫の耐寒性に関する2, 3の実験を行なつた.マメシンクイガの過冷却点は-23.7℃でシロイチモジマダラメイガの-18.9℃より約5℃低かつた.両種は非耐凍性のこん虫で過冷却点に達して凍結したものは短時間で死亡した.また植氷した場合の凍結温度は, 前者は-14.5℃でやはり後者の8.6℃より低かつた.したがつてマメシンクイガの方がシロイチモジマダラメイガより耐寒性が強いと考えられるばかりでなく, 前者は土壤中での越冬深度も深いので, 一層強い寒さを凌ぐことができると思われる.このことはまた前者が寒冷地に, 後者が暖地に分布していることと無関係ではないように思われる.シロイチモジマダラメイガ越冬幼虫の低温障害は, -10℃以上ではほとんど現われないが, -15℃では数時間, -18℃では1時間位で死亡するものが多く, 生育の完うは困難であつた.したがつて自然界では-15℃以下の低温が致命的であると思われる.
著者
宗林 正人
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.221-229, 1962-11-30

本種の生活環には完全生活環と不完全生活環の2型があり, 完全生活環ではウシコロシに産みつけられた卵は冬を越し, 3月下旬ふ化し, 4月中旬幹母の成虫が現われる.第2代はすべてはねを有し, タケ, ネザサなどの中間寄主に移住する.夏季高温時にも中間寄主上によく繁殖し, 多数のはねの無い胎生雌虫の世代をくり返し, 10月下旬にはねの有る産雌虫が現われてウシコロシに帰り両性雌を産下する.11月になれば雄虫が現われてウシコロシに帰り両性雌と交尾する.両性雌は11月中旬から産卵をはじめる.不完全生活環においては10月下旬から11月上旬中間寄主上に現われるはねの有る胎生雌虫は中間寄主の他の株に移り, はねの無い胎生雌虫を産下する.このはねの無い胎生雌虫は冬季低温時にも産子をつづけて冬を越す.ネザサに寄生した本種は常に葉の気孔からのみ口針をそう入し, ほとんど細胞内を貫通して進入し, その先端は細脈のし部のみにそう入されて平行脈にはそう入されない.このような事実はネザサの葉の構造, 特に気孔の分布, 表皮の角皮化, 平行脈および細脈の組織的差異と口針の長さなどに基因するものと思われる.
著者
橋本 健一
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-8, 2002-03-25
被引用文献数
3

1. モンシロチョウPieris rapae crucivora Boisduvalの沖縄県石垣島個体群(24°20′N)における蛹休眠誘起の光周反応, 幼虫期および蛹期の発育速度と発育零点, 休眠蛹の蛹期間について調べた.2. 15℃での臨界日長は約11時間10分であると推定された.しかし, 20℃では, 明期8時間・暗期16時間(以下, LD8 : 16), LD10 : 14でも, 休眠率は前者で, 21%, 後者で, 20%であり, LD12 : 12, LD14 : 10では休眠蛹は生じなかった.25℃では, LD8 : 16∿LD14 : 10の範囲では非休眠蛹のみを生じた.3. 幼虫期および蛹期の発育速度(V)と温度(T℃)との関係は, 幼虫期がV=0.0053T-0.0453(r=0.99), 蛹期がV=0.0088T-0.0747(r=0.99)の回帰直線式で示され, 幼虫期および蛹期の発育零点はともに8.5℃であった.4. 20℃・LD10 : 14で得られた休眠蛹の蛹期間は, 20℃・全暗で57.9±11.4日(平均値±標準偏差)であった.20℃・LD8 : 16で得られた休眠蛹の中には蛹期間が100日以上の個体もあったので, 休眠の深さの個体変異は大きいと思われた.5. 石垣島個体群の休眠の誘起は, 20℃で抑制される傾向にあり, 25℃では完全に抑制された.また, 休眠蛹の蛹期間は東京個体群と比べて短かった.このような特性は, 最寒月でも発育零点以上の温量が得られる同地の気候条件への適応と考えられる.
著者
鹿野 忠雄
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, 1930-04-05
著者
Ueno ShunIchi
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.249-263, 1964-07-20

この報文に収録した奄美群島産の歩行虫類は, 日米合同科学委員会の事業の一つとして行なわれた琉球列島の昆虫相の調査結果を主体にしている.調査の主旨からいえば, この群島の歩行虫相の特殊性や他の地域との関連などを示し得ることが望ましいが, 採集品自体もとくに大きくはなく, その内容もある程度かたよっているので, 本文には同定の結果を列挙するに止めた.なお, これ以外の資料のうちから, とくに注目すべき3新種を選んで合わせ記載したので, ここに掲げた歩行虫類は, ヒゲブトオサムシ科1種, ハンミョウ科4種, ゴミムシ科26種およびホソクビゴミムシ科2種の計4科33種になる.これらのうち, 新種および琉球列島から新たに記録される種は次の通りである.Eustra crucifera S.Uenoジュウジエグリゴミムシ(新称)Tachyta umbrosa (Motschulsky)ミナミチビカワゴミムシ(新称)Hikosanoagonum latior S.Uenoマエビロモリヒラタゴミムシ(新称)Altagonum shibatai S.Uenoシバタモリヒラタゴミムシ(新称)Haplochlaenius insularis S.Uenoアマミスジアオゴミムシ(新称)Chlaenius (Pachydinodes) hamifer Chaudoirコアトワアオゴミムシ(新称)