著者
富沢 章 大宮 正太郎 福富 宏和 林 和美 石川 卓弥
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.3-14, 2013-01-05

シタベニハゴロモの野外における生態を調査した.本種は年1化で,卵越冬する.幼虫は5月下旬から8月初旬にかけて出現する.成虫は7月下旬から11月下旬まで認められ,寿命は3-4ヵ月と推定された.幼虫はおもに新梢部の枝や葉軸から吸汁するので枝先に多く,成虫は樹幹部に集団を形成する傾向が認められた.交尾および産卵行動は9月後半から11月まで認められ,夕方から夜間に行われた.卵は被覆物質で被われた卵塊としてシンジュの枝や幹の雨が直接当たらない下面に産み付けられた.幼虫・成虫を通しての寄主植物としてシンジュとセンダンが確認された.また,エゴノキとアカメガシワでは,成虫においてのみ樹幹部からの吸汁が認められた.
著者
税所 康正
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.185-188, 2012-07-05 (Released:2018-09-21)

My website "Cicadae in Japan" was awarded the 2008 Japan Entomological Society Akitsu Prize. This site introduces cicadidae-list of Japanese cicadas, explanations, photographs and calling songs of each species.
著者
横田 智 山尾 僚 鈴木 信彦
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.252-263, 2012-10-05

ワーカー多型の進化とその生態学的意義を解明するために,ワーカーに二型(メジャーおよびマイナーワーカー)がみられるオオズアリの分業体制を定量的に解析すると共に,メジャーの重要性が高い餌条件下で,カースト比やメジャー形態の可塑的変化が生じるのかを検証した.室内でサイズの異なる餌(大きい餌:フタホシコオロギ成虫,小さい餌:大きい餌を凍結粉砕したもの)を与え,餌場に現れたワーカーの個体数やメジャー比,行動様式,餌の解体の有無などを観察した.大きな餌を与えた場合,メジャーが餌場に多く現れ,マイナーが運搬行動に従事し,メジャーが解体行動に従事するという明確な分業がみられた.メジャーがいるコロニーでは,ほとんど場合餌が解体されたのに対し,メジャー不在のコロニーでは解体が生じたのはわずかであり,いずれも女王によるものであった.63日間,大きな餌を与えたコロニーと小さな餌のみを与えたコロニーのメジャー比及びメジャーの頭幅を比較したところ,メジャー比には違いはみられなかったが,頭幅には餌の大きさに相関した違いが生じた.腹部に栄養を貯蔵したメジャーがいるサブコロニー,貯蔵していないメジャーがいるサブコロニー,メジャーがいないサブコロニーをそれぞれ飢餓条件に置いて生存率を記録した結果,貯蔵したメジャーがいるコロニーが最も生存期間が長かった.以上の結果から,オオズアリの採餌におけるワーカーの明確な分業体制とメジャーによる食物貯蔵機能が明らかになり,メジャー形態の可塑的変異も確認された.メジャーカーストは餌の解体や栄養貯蔵に重要な役割を担っており,餌資源の獲得や維持に大きく貢献していると考えられた.
著者
高橋 佑磨 渡辺 守
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.13-17, 2008-03-25
被引用文献数
2

アオモンイトトンボの雌には,雄に似て鮮やかな青緑色の個体(雄型雌)と,隠蔽的な茶色の個体(雌型雌)の2型が出現する.この色彩2型に対する雄の配偶者選好性は学習によって可逆的に変化するとされてきたが,どのような経験が学習に関与するのかは明らかにされていなかった.羽化直後から雌と接触させずに飼育したアオモンイトトンボの雄(未経験雄)に対し,雄型雌と雌型雌を呈示する二者択一実験を行ったところ,雄の選択に偏りは認められず,雌に対する雄の選好性に生得的な偏りはないと考えられた.次に,未経験雄を,午前中,1頭の雌とともに小さなケージに入れ,その日の午後,または翌朝に同様の二者択一実験を行った.同居中にその雌と交尾した雄は,午後の二者択一実験で,同居していた型と同型の雌を選択したが,雌の拒否のために交尾できなかった雄の選択性には偏りが認められなかった.また,翌朝に行った二者択一実験では,同居中に交尾した雄の選択性に偏りが認められなくなった.したがって,雌の色彩2型に対する雄の選好性は,交尾の経験により変化し,一晩で消滅することがわかった.
著者
村田 浩平 土屋 守正 増島 宏明
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.75-87, 2007-12-25

太平洋上空を浮遊する昆虫相に関する調査をこれまで報告例のない1月から3月にかけて東海大学海洋調査実習船望星丸により1999年,2002年,2003年の3航海実施するとともに,独立行政法人海洋研究開発機構が運行する海洋地球研究船みらいにより2005年に1航海実施し,以下のような結果を得た.1.全航海で得られた海上を浮遊する空中移動性昆虫の目別個体数は,多い順にハチ目,ハエ目,カメムシ目,チャタテムシ目,アザミウマ目,コウチュウ目であり,そのほとんどが体長1mm前後の微小な昆虫であった.2.得られた昆虫の個体数は,主な分散源と考えられるオーストラリア大陸やニューギニア島近海で多かった.また,陸地から400km以上離れた海上で得られることもあったが,多くが陸地から数十キロ以内で得られた.3.海洋上空で昆虫が得られる条件として,最も近い島から風が吹いていること,海洋上空で昆虫が得られる傾向が見られた.また,風速との関係では無風時,強風時には得られない傾向が見られた.4.航路によって得られる昆虫の個体数には違いが見られ,日本から南東への往復航路では他の航路に比べて少ない傾向が見られた.5.イチジクコバチ科の1種は,ニニーゴ島沖120kmの海上で得られ,コバチ上科の1種,アザミウマ科の1種は,ニューギニア島から40km離れた海上で生存状態で得られていることから,これらの種は,島嶼間を分散する可能性があることが示唆された.6.港に停泊中に得られた昆虫の目構成は,海洋上空とは異なり,ハエ目,カメムシ目,ハチ目の順で多く,環礁で少なく火山島で多い傾向が見られた.7.甲板では,アカアシホシカムシ,ヒメアケビコノハ,トゲハネバエ科の1種,ツヤウミアメンボ,ハネアリなどが得られ,これらは海洋島が点在する海域では,島嶼間を分散する能力を持つことが示唆された.
著者
矢野 宗幹
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.40-41, 1926-06-15
著者
馬場 金太郎
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, 1956-08-05
著者
斎藤 和夫 斎藤 光夫
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.337-342, 1967-11-30

ワモンゴキブリPeriplaneta americana L.とチャバネゴキブリBlattella germanica L.の雄性生殖細胞の染色体を観察した.使用した虫は三共株式会社農薬研究所系の成虫と老熟幼虫の雄である.染色体数はワモンゴキブリが2n=33, n=17(I), 17, 16(II), チャバネゴキブリが2n=23, n=12(I), 12, 11(II)で, 共に雄へテロ(XO)の性染色体構成をもつと考えられる.ワモンゴキブリでn=33の第2精母細胞が観察された.
著者
大庭 伸也
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.92-93, 2012-04-05

The giant water bug, subfamily Lethocerinae, which has the largest body size among Belostomatidae, is known to be a vertebrate specialist that preys mainly upon fish and amphibians. Here, I report that a giant water bug, Kirkaldyia (=Lethocerus) deyrolli (Heteroptera: Belostomatidae), was catching hold of a Japanese mamushi, Gloydius blomhoffii, in a pond. This is a first report of Lethocerinae eating a Viperid snake.
著者
大庭 伸也
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.157-164, 2002
参考文献数
13

孵化の様子を観察した結果,タガメの卵が孵化するとき,卵殻と薄い膜を破って幼虫が出てくる.卵殻を破って出てくることを「卵殻孵化」,透明な膜を破って出てくることを「胚脱皮」と称することとした.卵塊中の全ての卵が卵殻孵化を終えるのに約20分を要するのに対して,それらの卵が胚脱皮を終えるには約5分しかかからない.その後,体を出して前脚を広げた幼虫のうち,1匹の幼虫が中後脚を動かし,卵殻から出て落下しようとすると,その接触刺激が隣接する幼虫へと連鎖的に広がっていき,卵塊レベルで孵化した幼虫が一斉に水中へと落下した.常に湿った状態では,卵殻孵化が胚脱皮よりも時間を要したのに対し,オスが保護してきた,つまり乾燥と給水を繰り返した,孵化直前の卵に水をかけると,全ての卵の卵殻が割れたことから,保護オスが給水により,卵殻孵化のタイミングを調節可能であることが示唆された.胚脱皮は破裂音を伴うので,その振動を感知した他の卵も胚脱皮すると考えられ,1個の卵の胚脱皮が周辺の卵の胚脱皮を誘発し,全ての卵の胚脱皮が短時間で起こる.以上の結果から,タガメの卵塊における一斉孵化のメカニズムには,卵殻孵化については保護オスが,胚脱皮と幼虫の水中への落下については,卵または幼虫のコミュニケーションが関わっていることが明らかになった.
著者
宋 一〓 山根 爽一 何 鎧光 陳 文雄
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.33-45, 2006-06-25
参考文献数
48
被引用文献数
1

タイワンハリナシバチ(Trigona ventralis hoozana)と台湾産トウヨウミツバチ(Apis cerana ssp.)の地理的分布を,過去の文献・標本と1994年から2005年にかけて著者らが全15縣と2市の42地点で行った調査に基づいて調べた.ハリナシバチは,台湾島を南北に貫く縦貫山脈の中部から南部にかけての山地で,海抜250〜2,500mの範囲の森林地帯で確認された.それらは,台中縣と南投縣,嘉義縣,高雄縣の4縣,22地点にわたる(高雄縣は今回正式に確認).一方,トウヨウミツバチは全島の海抜3,300m以下の地域に広く分布し,それはハリナシバチの生息域を完全にカバーしている.観察したハリナシバチの40巣(うち33巣は飼育巣)はすべて大樹の空洞に作られていた.最も高い所は20mであった.巣の発見された樹種はクスノキ科とムクロジ科,サルスベリ科,ニレ科,マツ科で,クスノキ科がもっとも多かった.ミツバチの22巣は,岩石の間隙がもっとも多く(約60%),大樹の根元の空洞や電柱や木箱などでも発見された.このように,ハリナシバチとミツバチは営巣場所の選択において,明確な違いを有し,両種の営巣場所をめぐる競争は,仮にあっても弱いものと推測された.ハリナシバチの分布が台湾島の山地に限られる理由は,台湾人が大陸から渡来して以来,特に戦前の日本統治時代から戦後の経済急成長期にかけて平地部や低山地の森林が伐採され,営巣に適する大樹が著しく減少したためと思われる。
著者
石田 直人 吉安 裕
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.55-68, 2004-06-25

ナベブタムシAphelocheirus vittatusとトゲナベブタムシA.nawaeの生活環を前者は京都市の鴨川(賀茂川)で,後者は兵庫県三田市の武庫川での野外調査と京都市下鴨での飼育実験に基づいて考察した.ナベブタムシは調査河川の中流域では1年で1世代であるが,上流域では2年で1世代と考えられる.トゲナベブタムシも武庫川(中流域)では1年で1世代と推定される.両種とも成虫の寿命は少なくとも1年はあり,雌成虫は春期〜初秋に産卵すると思われる.ナベブタムシを長日(15時間照明9時間暗期)の3温度区で飼育し,卵から羽化までの発育所要日数から算出した有効積算温量は1,789日度(発育零点:10.2℃)で,トゲナベブタムシの長日4温度区での飼育結果から算出したそれは2,000日度(発育零点:8.2℃)であった.この2種の生活環は類似していた.また,本研究における2種の調査地の環境は,基本的に底質が中礫を含む砂質および細礫の河川で,pH値が7-10の溶存酸素が多く,流れが比較的速い場所であり,この2種の生息環境に顕著な違いはみいだせなかった.それらの地点には水生植物が生育し,ナベブタムシ類の餌となる他の底生無脊椎動物も豊富であった.
著者
桃井 節也
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.458-459, 1995-06-25
著者
新部 公亮
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.96-104, 2012-04-05

『どくとるマンボウ昆虫記』は,多くの若い昆虫学者にとって,昆虫学を志すきっかけとなった名作である.その作者である北杜夫氏は,2011年10月24日に84歳で亡くなられた.北杜夫氏の追悼の意味も込めて,一風変わった博物館施設である「マロニエ昆虫館」の人文学的展示法と「どくとるマンボウ昆虫展」について紹介した.2006年に開設された「マロニエ昆虫館」は,栃木県県民の森内の遊休施設を利用した展示施設である.その人文学的展示テーマの中から今回は,「ギリシャ神話の中の昆虫たち」と「ことわざ・格言・言い回しの中の虫たち」の二つを紹介した.「どくとるマンボウ昆虫展」は,この人文学的展示の延長であり,全国19会場で開催され,軽井沢会場では平成天皇もご覧になった.
著者
佐藤 隆士 鈴木 祥悟 槙原 寛
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.46-49, 2006-06-25
参考文献数
15
被引用文献数
1

Anthracophora rusticola Burmeister is a scarabaed beetle threatened about its decline in Japan. Recently, the founding of larvae or pupae of the beetle from the nest of raptors, especially Honey Buzzard Pernis apivorus Taczanowski, have been repeatedly reported. These founding imply that the beetle would specifically breed in the raptor's nest and that the decline of the beetle, might be caused by the reduction of the breeding of raptors in Japan. In this study, we surveyed two nests of Honey Buzzard to clarify the nest utilization pattern of the beetle. One of them had been confirmed to be annually used by raptors for their breeding, and the other seemed not to be used by raptors recently. One dead body of adult and 23 cocoon shells of the beetle were discovered from the former nest. All cocoon shells were found from lower part of the nest where was relatively dry compare to upper part. None was found from the latter nest. We discussed breeding pattern of beetles on raptors nests.
著者
Okada Toyohi
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.105-115, 1964-04-10
被引用文献数
3

従来奄美諸島から知られるショウジョウバエは, ヒョウモンショウジョウバエ(以下ショウジョウバエ省略)Drosophila (Dorsilopha) busckii Coquillett, キイロD.(Sophophora) melanogaster Meigen, アナナスD.(S.) ananassae Doleschall, トラフD.(S.) kikkawai Burla, マダラD.(D.)repleta WollastonおよびアカD.(D.) komaii Kikkawa and Pengの6種にすぎなかつたが, 1963年8月2-14日日米科学協力研究による奄美大島および徳之島における著者の採集の結果, それに1960年10月23-30日北沢右三氏による奄美大島での採集結果を加えて, 今回新たに次の3新種(ゴジックで示す)を含む19種を追加, 記録することができた.1.カザリコガネLeucophenga ornata Wheeler, 2.ナカジロコガネL. interrupta Duda, 3.ハラモンコガネL. guttiventris (de Meijere), 4.ヤマガタコガネL. concilia Okada, 5.クロコガネL. angusta Okada, 6.タカチホキノコMycodrosophila takachihonis Okada, 7.クロセダカLiodrosophila bicolor Okada, 8.カグヤ(新称)Lissocephala asiatica Okada, 9.クロツヤDrosophila (Paradrosophila) coracina Kikkawa and Peng, 10.チャイロマメ(新称) D. (P.) dorsata Duda, 11.キタザワマメ(新称) D. (P.) kitazawai Okada, 12.オウトウD. (Sophophora) suzukii (Matsumura), 13.タカハシD. (S.) takahashii Sturtevant, 14.イチジクD. (S.) ficusphila Kikkawa and Peng, 15.フタクシD. (S.) bipectinata Duda, 16.アサヒナシマ(新称) D. (S.) asahinai Okada, 17.ダルマD. (D). daruma Okada, 18.フタオビD. (D.) bizonata Kikkawa and Peng, 19.ハナダカ(新称) D. (D.) nasuta Lamb.以上のうち11, 13, 15, 16, 18, 19の諸種は北沢氏および著者がともに採集せるもの, 9は北沢氏のみの採集, 他は著者のみの採集にかかるものである.また8は本邦未記録属, 10, 15 19は本邦未記録種(15の石垣島をのぞく)である.なお1は九州本土より, 2, 6, 17は本州よりも本報で新たに記録された.
著者
吉川 貴浩 井出 幸介 窪田 康男 中村 好宏 武部 寛 草桶 秀夫
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.117-127, 2001
参考文献数
18
被引用文献数
1

ゲンジボタルのミトコンドリアND5遺伝子をコードする塩基配列を用い, 地域個体間の遺伝的類縁関係を調べた.108地域から得られた307個体について909bpの塩基配列を調べたところ, 131のハプロタイプが検出された.次に, 塩基配列に基づき, 分子系統樹を作成したところ, これらのハプロタイプは大きく4つのグループに分けられることが明らかとなった.これらのグループのうち, グループIとIIの分布はフォッサマグナ地帯を境界として東日本地域と四国を含む西日本地域に分かれた.本州における両者の分布は, ほぼフォッサマグナを境に, 発光間隔が約2秒間隔の西日本タイプと約4秒間隔の東日本タイプに分かれることと一致した.九州では, 中央構造線を境に, 南側のグループIIIと北側のグループIVに分かれた.
著者
NAOMI ShunIchiro
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.516-521, 1984-12-25

The species-group of O. yasumatsui KISTNER of the genus Oligota MANNERHEIM is dealt with. It is composed of the two species, Oligota yasumatsui KISTNER and O. kashmirica CAMERON, whose adult and larval stages are predaceous on the red spider mites. A new subspecies, O. kashmirica benefica, is described. Illustrations of important characters of the species and the biological notes are also given.
著者
KASUYA Eiiti
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.607-614, 1981-12-25

Males of a Japanese paper wasp, Polistes jadwigae DALLA TORRE, defend mating territories. Males waited for females at cracks opened on walls or corners of eaves and some of these places were used by females as hibernacula. These males bent their abdomens upwards on warm and sunny days from middle October to middle November. Abdomen-bending males were dispersed evenly. Waiting males chased off other males which approached the cracks or corners of eaves and copulated with females which came to these places. In cases where change in ownership of territories resulted, physical contacts between males were always observed. The duration of territorial possession by a male was, as a rule, within a single day. The radii of territories ranged from 20 to 50cm.