著者
川崎 弘 岩田 文男 メスキータ フィーリョ マノエル V.
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.51-57, 1984

セラードのダイズ栽培において, 開墾後の経過年数の短い圃場では, 主根がよく伸長肥大し, 根群は表層だけでなく下層まで深く分布したのに対し, 開墾年次の古い圃場では主根の伸長肥大が劣り, 代って地表近くの分枝根がよく発達し, 根群が表層化する傾向が観察された.この現象を土壌要因との関連において調査した結果, セラードの土壌におけるダイズ根群分布の表層化は, 従来から言われているように土壌の酸性や交換性Alの阻害作用に起因しているのではなく, 施肥りん酸とCaが耕土層に集積して, 下層との間にこれら成分の著しい落差が生じることによって惹起されていると推論された.
著者
浅見 祐弥 烏谷 亜紗子 賴 宏亮 井上 章二
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業研究 (ISSN:18828434)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.14-18, 2021

<p>窒素施肥濃度の違いが<i>Bupleurum kaoi</i> Liu. (<i>B. kaoi</i>) の生育および成分含量に与える影響を明らかにすることを目的とした.供試した<i>B. kaoi</i>は,生薬として根が用いられる台湾固有種である.本研究は硝酸安の濃度を変えたホーグランド溶液を0,2,4,10,16,22 mMの6段階に設定し,週に1度施肥を行った.また乾物生産特性および根の成分含量を明らかにした.成分分析は,サイコサポニン(SS) a,b1,b2,cおよびdの 5種類の定量分析を行った.<i>B. kaoi</i>の生育及び乾物生産特性の結果は,草丈,葉数およびSPADで10 mM以上のとき,増加傾向にあった.さらに地上部および地下部の乾物重も同様に10 mM以上で有意に高い値を示した.10 mM 以上の処理区において,生育および乾物生産の有意差はなかった.主成分であるSSa および SSd においては 16 mM 以上で有意に増加した.また SSb1,SSb2,SSc においては10 mM 以上で有意に成分含量が高いことを示し,10 mM以上で総サイコサポニンが有意に増加した.以上の結果から,窒素施肥濃度10 mM以上で根の乾物重および成分含量は飽和点に達し,最適窒素施肥濃度の指標となる可能性が示唆された.</p>
著者
吉井 健一郎 志和地 弘信 入江 憲治 豊原 秀和
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業研究 (ISSN:18828434)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.81-87, 2012

インディカイネのプカールンドゥール品種はカンボジアのバッタンバン州の主力品種であるが,直播き栽培において播種後に水田が湛水すると苗立ちが悪くなることが知られている.これまでの研究において,プカールンドゥール品種の苗立ち不良は第一義的に溶存酸素量の不足によって起きていると考えられたことから,溶存酸素量と苗立ちとの関係について調べた.水だけを入れたポットに種子を播くと播種数が多くなるほど溶存酸素量が低下し,苗立ちが見られなくなった.しかし,ポットに空気を供給すると,苗立ち不良になる播種数のポットの苗立ちは改善した.そこで,溶存酸素量とプカールンドゥール品種の生長との関係を調べたところ,鞘葉は溶存酸素量にかかわらず伸長するが,溶存酸素量が2 mgl<sup>-1</sup>以下では本葉と根の伸長が阻害された.これらのことから,プカールンドゥール品種の苗立ちに必要な溶存酸素量は3 mgl<sup>-1</sup>以上と考えられた.水田土壌の溶存酸素の低下には土壌中の微生物が関与していると考えられている.そこで,種子をコサイドおよびカスミンボルドー剤で処理をして湛水した水田土壌中に播種したところ,いずれのボルドー剤処理においても苗立ちが改善した.ボルドー剤処理は水田土壌表面水中の溶存酸素量と水田土壌中の酸化還元電位の低下を抑制したことから,土壌中の微生物の活動を抑えたものと考えられた.ボルドー剤による種子処理は直播栽培による苗立ち不良の改善に期待される.
著者
サハ ウタムクマール ハイ モハマドアブドゥル ハイダー ジャミル サハ ルパラニ
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.168-176, 1997

ジャガイモ (<I>Solanum tuberosum</I>L.) の栽培において, 灌漑条件と稲わらマルチの有無の影響について試験を行った.供試品種はCardinalを用い, バングラディシュのPlinthic Paleustult土壌で試験した.灌漑区は, 土壌有効水分損失 (DASM) を20, 40, 60%に設定した灌漑条件とし, さらに対照区として無灌漑区を設けた.この結果, 試験地域の土壌, 気候条件下において目標の高収量に達するためには, 灌漑したジャガイモ畑の土壌有効水分 (ASM) の損失許容限界量が20~40%であることを確認した.このASM限界量の維持には, 生育期間中, 稲わらマルチ処理区で4~5回, 無処理区で6~7回の灌漑が必要であった.これは, 稲わらマルチ処理により土壌水分が保持されるため, 生育期問中2回の灌漑を節約できたことを示している.さらに, 稲わらマルチ処理区と無処理区のジャガイモ収量に及ぼす種々の灌漑条件の平均的な影響を比較すると, 稲わらマルチ処理は収量を4t/ha以上増加させることが判明した.試験地において最も生産量の多かったジャガイモの水分総使用量は200~216mmの範囲内と見積もられ, また厚さ15cmの稲わらマルチを用いることにより土壌水分の蒸発量を最少に抑え, 総水分使用量を137~146mmまで減らすことができた.より頻繁な灌漑はASMの損失を抑えてジャガイモの水分利用効率を高めたが, これは稲わらマルチ被覆によってさらに改善された.稲わらマルチ被覆下でのより頻繁な灌漑で, 小型の塊茎の割合は減少し大型の塊茎の割合は増加するという塊茎サイズの分布傾向と収量の増加が確認された.
著者
SANTOSA Edi 杉山 信男 彦坂 晶子 高野 哲夫
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.25-34, 2004

インドネシア政府はジャワに自生しているイロガワリコンニャクを食品工業用の原料として利用することを計画しているが, その遺伝的変異については未だ十分調べられていない.本研究の目的は西ジャワの6つの地域から採集したイロガワリコンニャク63系統について形態的な特徴を明らかにすることである.<BR>花柄の長さは13.5~75cmで, 肉穂花序の付属体 (肉穂花序のうち雄花部と雌花部以外の部分) の長さと直径はそれぞれ5.5~42.5cmと0.7~3.2cmであった.雄花部は長さ2.5~8cmであり, 系統によっては花粉嚢に囲まれた部分が雄花部の他の部分とは異なる色を呈するものがあった.仏炎苞の長さは8~24cmで, 通常は緑色であった.花序の10の形態的特徴を基にした主成分分析の結果, 変異の69%は上位4成分によって説明できることが明らかとなった。第2, 第3成分を基に散布図を描くと, 63の系統はAからGまでの7グループに分類することができた。一方, クラスター分析により, 63系統は4つのクラスターに分類できた。クラスターIはグループB, C, 及びグループAの2系統から構成され, クラスターIIIはグループDとEで構成された。クラスターIIはグループFに対応し, グループAとGに属する系統がクラスターIVを構成した。花序の形態的特徴に基づくイロガワリコンニャクの分類結果は系統の地理的分布とは関係がないようであった。異なるクラスターに属する幾つかの系統が同一地域に共存することはイロガワリコンニャクの遺伝的変異が大きいことを示唆している。
著者
広瀬 昌平 ブシドウ B. H.
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.135-144, 1976

インドネシア東部ジャワ州ではべと病とSeedling flyによる被害がとうもろこしの栽植本数の減少或は株立本数の不均一性をもたらす大きな要因となっているが, この報告ではべと病およびSeedling flyの罹病および被害消長の調査結果と, 更に人為的に得られた株立本数の不均一性が収量にどのような影響をおよぼすかを調査した結果を報告した.<BR>1. べと病によるとうもろこしの罹病は雨期開始後大凡2~3週間目に播種した区で最高を示し, この期のHarapan種で約90%, Kretek種でも年により約50%の罹病率を示した.しかし罹病率はその後減少し, 2或は3月播種区でまた若干増加傾向を示す.一方Seedling flyの被害はべと病と異なりべと病の罹病が最低を示す時期に最高を示し, 明らかにその被害時期のピークにずれが見られる.<BR>2. 1株本数の異なる均一株および不均一株区をもうけ, 子実重, 不稔個体率および株当100粒重について比較した.<BR>3. 単位面積当り収量の比較では, 1株2本均一区で最高を示し, 1株3本均一区は若干2本区に比して低いが, その差異は明らかでなかった.一方不均一区では1株1, 3本交互区と1, 2, 3本交互区は単位面積当り栽植本数は同一になるが, 共に均一2本区より低い収量を示した.<BR>4. 不均一区の収量が均一区の収量に比して (平均株当り2本区) 低いのは株相互間で補償作用が働かず, その要因として開花時前後における, 一時的ではあるが, 極度の乾ばつが関与したものと考えられる.<BR>5. 株別に見た場合, 不稔個体率は2本株で, それに隣接する株本数が増加する程不稔個体が増加したが, 1, 3本株では隣接株の影響は認められなかった.<BR>6. 1, 2本株当り子実重は隣接株の本数が増加する程減少し, 一方3, 2本株当る子実重は隣接株の本数が減少する程増加した.この傾向は100粒重についても認められた.<BR>7. 株別個体子実重の変異は3本株が他株より大きく, このことは株内個体間での相互補償が働き, それによって株当りの子実重を確保しているものと考えられる.
著者
矢口 行雄 中村 重正
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.141-144, 1992

1986年9月から1987年5月の9ヵ月間にわたりハワイ産パパイアの日本到着時における損傷について調査を行った.損傷の発生は, 生理的損傷0.9%, 機械的損傷1.8%, 腐敗0.9%で, これらの季節的変動をみると12月が最も高く, 4月, 5月が最も低い傾向を示した.
著者
桜井 芳次郎
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.102-110, 1960

わが国の南西諸島で始められた換金作物としてのバナナ栽培も, たびたびの台風の試練を受けて, 農家の副業として10~20アールぐらいの範囲で, 防風施設の利用と, 台風対策管理の進歩により, ささやかな地方産業としてその生産, 移出, 消費市場の関係が漸く軌道にのるようになつた.<BR>パインアップルの罐詰産業は, その将来の生産目標が, 年産琉球100万函, 奄美大島50万函, 合計150万函とされても夢ではなくなつて来た.<BR>南西諸島のパパヤは植物防疫法により日本内地へ移出禁止になつているが, 漬物やパパイン其他の加工品とすればますます増産の価値がある.<BR>南西諸島の柑橘類も移出禁止品になつているが, よくできる「ぽんかん, 晩白柚, 麻豆文旦」などを, 病虫害防除につとめて増産して行く必要がある.<BR>ローゼルは南西諸島及び温室などで生産可能であるから, 栽培をおすすめする.<BR>高知県におけるパッシヨン・フルーツのジュース事業, ビニールハウスによる生食用パインアップルの増産, 観賞と実益を兼ねた三尺バナナのビニールハウスもしくは温室栽培などは, 限られた狭いわが国内にあつて, 暖地園芸の新分野を開くものである.
著者
林 英夫
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.90-94, 1960-10-10 (Released:2010-03-19)
著者
鳥山 和伸
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業研究 (ISSN:18828434)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.170-174, 2012 (Released:2015-08-04)
参考文献数
40
被引用文献数
1
著者
松田 大志 北村 葵 樋口 浩和
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業研究 (ISSN:18828434)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-7, 2019 (Released:2020-03-07)
参考文献数
22

京都大学内の温室で栽培しているレイシ6品種(‘Bengal’・‘Chakrapat’・‘Kwai May Pink’・‘Pot Po Heung[八宝香]’・‘Souey Tung[水東]’・‘Tai So[大造]’)を供試して果実品質を調べた.2014年および2015年に人工受粉をおこない,収量性を評価した.また,収穫した果実を種子の形態で3種類(正常・しいな・痕跡)に分けて品質を品種比較した.‘Pot Po Heung’で種子がしいなの果実の発生率がもっとも高く50%だった一方,‘Kwai May Pink’でもっとも低く10–20%だった.‘Chakrapat’では,種子がほとんどなく痕跡しかない果実が35–50%みられた.‘Bengal’で果皮の赤い着色がもっともよかった.種子が正常な果実では,‘Chakrapat’がもっとも大きく重さが平均で34–36gあり,ついで‘Bengal’で31–33gだった.‘Pot Po Heung’がもっとも小さく20g程度だった.しいなの果実では,‘Bengal’がもっとも大きく25g程度だった一方,‘Souey Tung’がもっとも小さく15g程度だった.種子が痕跡しかない‘Chakrapat’の果実は平均で13–15gだった.可食部の割合が‘Kwai May Pink’の果実でもっとも多く74–82%だった一方,‘Bengal’では可食部はもっとも少なく65–76%だった.‘Chakrapat’および‘Tai So’で果汁の糖度が低かった.‘Kwai May Pink’および‘Pot Po Heung’で果汁の酸含量が低かった.‘Kwai May Pink’の食味がもっとも優れ,ついで‘Bengal’が優れた.‘Chakrapat’および‘Tai So’は食味が果実によって大きくばらつき,劣るものもあった.種子がしいなや痕跡の果実でも,種子が正常な果実と食味は変わらなかった.‘Chakrapat’および‘Kwai May Pink’で収量性が高かった.‘Kwai May Pink’は果実の品質が優れ,どちらの年度も収量性が安定して高かった一方,‘Pot Po Heung’・‘Souey Tung’・‘Tai So’は品質が劣り収量性も低かった.
著者
新関 三郎
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.55-59, 1963-11-30 (Released:2010-03-19)