著者
金沢 尚美 星川 圭介 縄田 栄治
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.133-141, 2006

近年, 東南アジア大陸部山地部においては, 地域住民をめぐる自然・社会・経済環境が急激に変容しつつある.地域住民がこのような急速な状況の変化にどのように対応しているかを明らかにする目的で, タイ北部チェンマイ県のカレン人村落において, 土地利用図と住民に対する聞き取り調査により, 近年の土地利用と農業の変化を分析した.調査村では, 20世紀半ばまで, 長期休閑の焼畑による自給作物 (陸稲) 生産が行われてきた.1960年代, 低地住民により焼畑休閑地がケシ畑へ転換され, このことが焼畑休閑期間の短縮化をもたらした.1970年代の終わりに, 調査村全域が国立公園に指定され, ケシ畑の没収とその跡地での植林により森林面積は増加したが, 休閑期間の短縮と耕地の不足は深刻化した.その後焼畑は姿を消し, 以前の焼畑耕地ならびに休閑地は常畑地または植林地となった.一方, 焼畑よりも生産が安定している水田稲作の技術が導入され, 村内の水田面積は徐々に増加した.現在では, 自給作物であるイネと商品作物の両方が生産されている.焼畑の常畑化にともなう連作による陸稲の生産性の低下を補うため, 化学肥料が使用され始め, さらに化学肥料の使用により増大した雑草に対し除草剤の使用が始まり, 農業が急速に集約化している.近年導入された商品作物は, 主として集約化にともなう化学肥料・除草剤購入のためである.このように, 調査村の住民は, 農業の多様化により, 自給作物生産の集約化を可能にし, 新たな状況に対応していることが明らかとなった.
著者
野中 健一
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業研究 (ISSN:18828434)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.67-70, 2015 (Released:2016-03-29)
参考文献数
7
著者
花田 毅一 香川 邦雄 横山 靖子 野村 真一
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.276-283, 1990

浮稲の生育中, 深水によって主茎の葉鞘が水没すると, その葉鞘の葉腋にある分げつ芽の生長が抑制される.深水下の葉鞘水没による分げつ芽の生長抑制の機構を探る目的で三つの実験を行った.第1実験及び第2実験では, 葉齢5又は6以降, それぞれ第4葉又は第5葉の葉鞘を先端まで水没させる深水処理を行った深水対照区と, 同じ深水条件下で第4葉葉鞘と第5葉葉鞘間の間隙 (第4節分げつ芽が生長する空間) 又は第5葉葉鞘と第6葉葉鞘間の間隙 (第5節分げつ芽が生長する空間) の分げつ芽の先端付近の位置に注射針を用いて通気を行った (図1参照) .その結果深水対照区では伸長中の葉身及び葉鞘の伸長が促進され, 葉鞘が水没した葉の葉腋の分げつ芽は生長が強く抑制されたが, 葉鞘間の間隙に通気した区では, 葉身, 葉鞘の生長が抑制されるとともに, 通気を受けた分げつ芽及びその1節下位にある分げつ芽の生長が著しく促進された.特に1節下位の分げつ芽の生長促進が著しく, 浅水対照区に優る生長を示した.<BR>第3実験では, 浅水下で葉齢6の時期に第5葉葉鞘中肋部の基部を切開し, 小窓をあけて第5節分げつ芽 (平均長1.4mm) を水中に露出させた区, 及び同様に水中に露出させた分げつ芽に, 下方に設置したパイプの小孔を通じて通気した区を設けて, 分げつ芽の生長を観察した (図2参照) .対照として無処理の浅水対照区と深水対照区 (第5葉葉鞘水没) を設けた.その結果浅水状態でも水中に露出させられた生長初期の分げつ芽は, 生長を著しく抑制されほとんど生長を停止した.水中に露出した分げつ芽に通気をすると, その分げつ芽の生長が僅かながら有意に促進され, また1節上位の分げつ芽の生長が著しく促進されて, 浅水区に優る生長をした.<BR>これらの実験結果から, 主茎葉鞘内で生長中の若い分げつ芽の生長には空気恐らく酸素の供給が必要であること, 葉鞘先端まで水没するとその葉鞘の内側の間隙と外気間の通気が妨げられ, 酸素の不足もしくはエチレンの蓄積が起こり, それによって分げつ芽の生長が抑制されるものと推測した.しかし, エチレンの関与については, この実験内容からは言及することができない.今後の研究課題である.
著者
江原 宏 HARLEY Madeline M. BAKER William J. DRANSFIELD John 内藤 整 溝田 智俊
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.121-126, 2006

サゴヤシ (<I>Metyoxylon sagu</I> Rottb.) の種内形質変異を検討するため, インドネシアの西パプア (イリアンジャヤ) に生育する有刺folk varietyおよび西スマトラに生育する無刺folk varietyの乾燥標本から得た花粉の形態を調査比較した.両folk varietyとも1個体に両性花と雄花の両方を着生し, いずれのfolk varietyでも両性花と雄花のサイズに大きな違いはなく, 雄花では雌蕊は退化していた.両性花と雄花の両方とも花粉を生じ, SEM観察したところ, 花粉粒は短赤道軸上に2つの発芽孔を有する長楕円形であった.花粉形状に変異がみられたが, それは花粉壁 (エキシン) の収縮や膨張の程度の違いによるものと考えられた.また, 両folk varietyの両性花, 雄花とも花粉粒のテクタムは滑らかで疎らに穴が散在していた.このように, 花粉の外壁形質, 花粉の形状などいずれも両folk variety間に差はみられないことが明らかとなった.
著者
YAMAMOTO Sota KAWANISHI Motohiro NISHIMURA Satoru
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
Tropical Agriculture and Development (ISSN:18828450)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.170-178, 2015

It is considered that a "traditional" diet based on staple starchy crops and marine resources has been replaced by a "modern" diet in the Federated States of Micronesia (FSM). However, research on FSM dietary patterns has previously been short-term in nature; diet has not been surveyed over a full year. Therefore, a detailed study of household food consumption at every meal for 12 months was conducted to discover present dietary patterns on Piis-Paneu Island, Chuuk Atoll, in the FSM. We compared our data to those of previous studies in an effort to understand real food behavior in the FSM. People on Piis-Paneu Island often consumed imported food, especially rice, canned fish, and instant noodles. However, they also often consumed local resources, including breadfruit, banana, Cyrtosperma merkusii, fish, and other marine resources. Moreover, they still cooked Alocasia macrorrhizos in a traditional manner, to remove calcium oxalate. A. macrorrhizos is a form of famine food that is plentiful on the island. Dietary patterns on Piis-Paneu Island seem to be basically "traditional", but incorporate "modern" food, rather than being intermediate between "traditional" and "modern". Breadfruit is often emphasized as a very important crop in Chuuk State or Micronesia in general, but it is noteworthy that the fast growth and stable production of banana throughout the entire year supports subsistence on small islands of the FSM.
著者
岡 彦一
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.10-14, 1965-08-16 (Released:2010-03-19)
参考文献数
6
被引用文献数
1
著者
YAMAMOTO Sota KAWANISHI Motohiro NISHIMURA Satoru
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
Tropical Agriculture and Development (ISSN:18828450)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.161-169, 2015

Before the 1950s, the population of the Federated States of Micronesia (FSM) consumed a traditional diet based on starch staple crops and marine resources. This began to be replaced by a modern food in the 1960s and this phenomenon accelerated after a Compact of Free Association was signed between the FSM and the United States in 1986. Previous researches on dietary patterns in the FSM were undertaken only for a very short-period and they did not indicate the dietaries for the whole year. Therefore, a detailed study of household food consumption for every meal over a period of 18 months was conducted to understand the dietary patterns of the inhabitants of Pingelap Island, Pohnpei State, the FSM. Inhabitants of Pingelap Island were partially dependent on imported rice, but they all consumed banana, breadfruit, mweiang (Cyrtosperma merkusii; giant swamp taro), and fish obtained locally at a high frequency. Breadfruit was available seasonally, so the frequency of its consumption fluctuated, and consumption of banana and mweiang increased depending on the availability of breadfruit. The consumption frequencies of imported fresh meat, canned fish, and canned meat were very low. These observations suggest that the dietary patterns on Pingelap Island resemble traditional diets, with a reliance on food available locally and favorable for food security.
著者
Santosa Edi 杉山 信男 彦坂 晶子 高野 哲夫
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.25-34, 2004-03-01
参考文献数
11

インドネシア政府はジャワに自生しているイロガワリコンニャクを食品工業用の原料として利用することを計画しているが,その遺伝的変異については未だ十分調べられていない.本研究の目的は西ジャワの6つの地域から採集したイロガワリコンニャク63系統について形態的な特徴を明らかにすることである.花柄の長さは13.5〜75cmで,肉穂花序の付属体(肉穂花序のうち雄花部と雌花部以外の部分)の長さと直径はそれぞれ5.5〜42.5cmと0.7〜3.2cmであった.雄花部は長さ2.5〜8cmであり,系統によっては花粉嚢に囲まれた部分が雄花部の他の部分とは異なる色を呈するものがあった.仏炎苞の長さは8〜24cmで,通常は緑色であった.花序の10の形態的特徴を基にした主成分分析の結果,変異の69%は上位4成分によって説明できることが明らかとなった.第2,第3成分を基に散布図を描くと,63の系統はAからGまでの7グループに分類することができた.一方,クラスター分析により,63系統は4つのクラスターに分類できた.クラスターIはグループB,C,及びグループAの2系統から構成され,クラスターIIIはグループDとEで構成された.クラスターIIはグループFに対応し,グループAとGに属する系統がクラスターIVを構成した.花序の形態的特徴に基づくイロガワリコンニャクの分類結果は系統の地理的分布とは関係がないようであった.異なるクラスターに属する幾つかの系統が同一地域に共存することはイロガワリコンニャクの遺伝的変異が大きいことを示唆している.
著者
高田 直也 杉浦 健介 Irham Irham 岩本 純明 大賀 圭治
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.162-168, 2003-09-01
参考文献数
36
被引用文献数
2

インドネシアは1980年代後半にFAO,世界銀行などの援助を受けて総合的病害虫防除(IPM)を本格的に開始した.一方,IPM本格化以前の1980年から日本はインドネシアに対し技術協力援助として病害虫発生予察制度を主体とした作物保護強化計画を行っていた.この日本の援助に対しては,農薬の使用が前提であったという批判がある.本研究は,インドネシアの作物保護における発生予察制度とIPM導入に至るまでの過程を歴史的事実に基づき検証することを目的とした.1980年から実施された病害虫発生予察制度を主体とした技術協力援助は,1974年〜1977年にかけてのインドネシアにおけるトビイロウンカ大発生に対応するために,インドネシア政府の強い要請によって開始された純然たる技術協力援助であり,農薬の供与とは直接的な関係を有しない.1984年にインドネシアはコメの自給を達成したものの,この直後にトビイロウンカが大発生した.農薬の過剰な投入がトビイロウンカの大量発生の一因であるとされ.1986年11月,大統領令により有機リン系を中心とした57品目の殺虫剤が水田で使用禁止となるとともに,インドネシア政府は農薬への補助金を削減しはじめた.その後1989年から国家開発企画庁の主導で普及活動を中心としたIPMプロジェクトを世界銀行の融資を得て開始し,1994年以降は業務を農業省に引き継ぎ現在に至っている.現在インドネシアの作物保護行政は,国の専門組織とこれを補助する地方自治体の担当部門,さらに農民の連携により進められている.この中で発生予察制度は否定されているわけではなく,作物保護政策の重要な一環として位置づけられている.しかし,発生予察制度整備のための技術協力と同時期に有機リン系殺虫剤の水田使用禁止を補うための食糧増産援助(2KR)が日本から行われており,インドネシア政府はこの2KRを利用して天敵等に影響のない農薬等を準備した.発生予察は病害虫発生の初期段階に適期防除を目指す技術協力であり,2KRで援助された農薬等は資材援助であったという違いを見なければならないが,これらは日本からの作物保護に関する援助であったゆえに同一視されてしまった.このことは,日本の援助における要請主義の再検討など今後の援助のあり方に対して教訓を与えている.
著者
三浦 憲蔵 スバサラム タドサク タウインタング ナクン ヌチャン ナリス 白石 勝恵
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.40-47, 1990-03-01
被引用文献数
2

東北タイ, コンケン県ポン地区においてシロアリ塚跡の地点で認められた高い生産力の要因を究明するため, 当地区においてキャッサバおよびゴマ畑でシロアリ塚跡の地点とその近傍の未攪乱の地点を対象に土壌の形態的および理化学的な検討を行なった.形態的には, シロアリ塚跡の地点では未攪乱の地点より, 層厚で, 暗色味の強い, 粘土に富むA層が形成されており, シロアリ活動による強度の土壌攪乱が認められた.特に塚跡の中心部では基岩の直上部に及ぶまで土壌攪乱による均質化が起こっていた.この土壌攪乱の程度は塚跡の中心部から外部に向かって次第に弱まった.理化学的には塚跡の地点では, それに隣接する未攪乱の地点と比較して, 粘土, 全炭素, 全窒素, 有効態リン, 交換性塩基(カルシウム, マグネシウム, カリウム)などの含量が高かった.シロアリ活動による土壌の形態的および理化学的な変化はシロアリが塚の主材料として用いたスメクタイト質の粘土を基岩直上部から運び上げ, さらに土壌粒子や団粒の膠着剤として用いた有機物(唾液や糞)を土壌中に取り込んだことに基づくものと考えられた.塚跡の地点における高い生産力はシロアリ活動による上記のような粘土と有機物の取り込みに起因する土壌肥沃度の向上によるものと考えられた.但し, 塚跡の中心部分では高pHによるリン, 鉄などの要素欠之が作物生育を制限したものと考えられた.以上より, シロアリ活動がもたらす土壌攪乱は元の土壌性質を一変させるほどに激しいものであり, 土壌の生成並びに肥沃度の面できわめて大きな意味を持つものと言えた
著者
寒川 一成 ケビン D.ギャラガー ピータ E.ケンモア
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.361-368, 1994-12-01
被引用文献数
1

The brown planthopper (BPH), Nilaparvata lugens has long been an outbreak-prone insect pest of rice since the introduction of paddy farming into Japan. BPH is also known as a monsoonic migrants originated in tropical Asia. The BPH was a rice-monophagous minor herbivore in the tropical paddy ecosystems of subsistent phase. However, it raised suddenly as a key-pest of high-yielding rice varieties (HYV) spread into tropical Asia during the "Green Revolution" in 1970s. The BPH outbreaks happened under the pest management with pesticides at International Rice Research Institute (IRRI) is an epitome of the BPH menace which is even now prevailing in tropical Asia. Pesticide use at IRRI farms started with γ-BHC against the rice stem borers in 1962. Since its first occurrence in 1964,BPH infestations magnified rapidly in spite of intensive control with diazinon and later with carbofuran. Eventually, IRRI farms were suffered by devastating outbreak of BPH in 1971-1976,until declining after sequential releases of BPH-resistant HYVs. Resurgence induced by pesticides, development of pesticide resistance, and biotype shifts in the BPH populations were attributed to the outbreak. Restraint of preventive use of pesticides was most effective to stop the BPH problems at IRRI. At present, the BPH density at IRRI farms is at far below the economic threshold level. The pesticide input is often mistakenly associated with increased productivity of the tropical rice, which is largely attributed to HYVs, fertilizers, and irrigation. In general, potential yield losses due to the insect pests are estimated about 10-20% by the on-farm assessments. Except for massive infestations, less than 10% can be caused by insect damages in a normal year. However, the on-farm economic assessment revealed unprofitability of pest control with high input of pesticides. Expected returns are generally low on high levels of pesticide use, and no control is often the economically acceptable option, and biological control in association with varietal resistance has consistently proven more profitable than pesticide use in long-term experiments. This is the reason why pesticides that were employed as a modern high-yielding technology needed official subsidy. In addition, the resurgence of BPH is the most expensive hidden cost of pesticide use. Population ecology of BPH and its natural enemies in the tropical paddy ecosystems demonstrated that pesticides readily led to explosive upsurge of BPH populations by destroying its natural enemy complex. High fecundity, short generation cycle, active dispersal, and tolerance to crowding are the biological properties of the BPH for its easy resurgence under the disruptive impact of pesticides to natural enemies. The BPH was initially uncurbed from natural enemies by pesticides used for controlling the other targeted insect pests such as stem borers. Escalated pesticide use against the upsurge of BPH infestations further promoted its resurgence. Eventually, such vicious cycle give rise to uncontrollable outbreaks of BPH, and disaster the rice production systems. Indonesia is a prime example of the country where the BPH crisis led to the establishment of ecologically sound pest management program in rice. Pesticides were initially adopted as an essential component of "Green Revolution" package for high-yielding technology, and 85% of their cost was subsidised. As increase of pesticide use, resurgence and outbreaks of the BPH prevailed throughout the rice granaries in the country in 1975-1979. Stagnation of rice production made the country the world-biggest rice importer in this period. Forcible planting of the BPH-resistant variety IR 36 suppressed the BPH outbreak, and led to the rice self-sufficiency in 1985. However, the BPH menace revived when IR 36 was replaced with new varieties having improved eating-qualities and high profitability. The BPH biotype adapted to the new varieties became epidemic over major rice areas in 1985-1986,in spite of as much as 10 times more pesticide supply. Collapse of the reliance to pesticides led to the switching of crop protection policy from pesticide-dependent to ecosystem-orientated IPM by the Presidential Instruction in 1986. Consequently, the 57 pesticides were immediately banned from use in paddy, and government subsidy for pesticides was completely abolished in 1989. At the same time, FAO Rice-IPM Program has launched. The principles of FAO Rice-IMP in the developing countries in tropical Asia is "Integration of biological control into crop production systems", where "Maximum conservation of natural enemies, minimum reliance on pesticides" is emphasized in implementation of the IPM. The concept arose largely in response to the crisis-driven outbreaks of BPH induced by prophylactic use of pesticides that had motivated by government policy and commercial promotion, as well as unprofitability of overdependence to pesticide technology for controlling the endemic insect pests in the tropical rice farming. Recognizing the central role of natural enemies of rice pests through on-farm paddy-ecosystem analysis by farmers themselves is the most strongest motive for farmers to change their pest control practices. The ecosystem analysis ensure that IPM is not distorted into a purely negative message "Don't spray pesticide this week". Instead, IPM is reinforced by positive reassurance "This field is in good condition this week". Pesticide use has effectively been reduced without spoiling productivity of rice by farmers trained IPM. Official support of FAO Rice-IPM have been promulgated in the Philippines, Indonesia, Malaysia, India, and Sri Lanka.
著者
渡辺 巌
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.146-149, 1993-06-01
被引用文献数
3
著者
Ezenwa Ike Jacob Ayuba Francis
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.300-305, 1999-12-01

Enterolobium-ギニアグラス草地の造成時における同伴作物栽培の実用性を調査するため, ナイジェリア南西部のイバダン(北緯7度20分, 東経3度50分, 標高200m)において試験を行った.作付け期間の初期(1997年5月)にEnterolobiumを植栽した後, 4m間隔の並木の間に, 次のような作付け方法で第1/第2シーズンに同伴作物を栽培した.処理1 : 作付無/ギニアグラス及びササゲ(カウピー, Vigna unguiculata(L.)Walp.), 処理2 : トウモロコシ/ギニアグラス及びササゲ, 処理3 : トウモロコシ及びギニアグラス/ギニアグラス, 処理4 : 作付無/作付無.総飼料用収量(トウモロコシ稈及びササゲ残渣, 子実は含まない)は, 処理1及び2でそれぞれ5.35及び5.68tDM/haで最も高く, 処理2では, さらに総穀物収量(トウモロコシ及びササゲ)が1.60t/haで最大であった.処理2及び3では, 同伴作物は, 第2シーズンにはEnterolobiumの成長を有意に抑制した.植栽後36週のEnterolobiumの樹高は, 処理1が最も高く, 次いで4,2,3の順で, それぞれ98.6,94.6,62.6,36.0cmであった.Enterolobium-ギニアグラス草地造成時には, 第1シーズンにはEnterolobiumの単作で, 第2シーズンにギニアグラスとササゲを導入する(処理1)か, 第1シーズンにEnterolobiumとトウモロコシの混作で, 第2シーズンにギニアグラスとササゲを導入する(処理2)作付方法が有利なことが明らかとなった.第1の作付方法ではEnterolobiumの成長が最大に, 一方, 第2の作付方法では総穀物収量が最大となった.
著者
高橋 久光 セナン キャロル ハフフェイカ レイ C
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.22-27, 1993-03-01

培養液中の異なるZn濃度および遮光がトマトの生育, 窒素含有量および硝酸還元酵素の活性に及ぼす影響について検討した.Znの欠乏は, 草丈の伸長を抑制した.葉部の全窒素含有量はZn欠乏区, 微量区および標準区でほとんど差異が認められず, その傾向は茎部, 根部においても同様であった.しかし, 葉部の全窒素含有量に占める水溶性窒素含有量は, Zn欠乏区で高かった.葉部の硝酸還元酵素の活性は, 標準区で高く, Zn微量および欠乏区で低かった.その傾向は茎部および根部でも同様であった.なお, 根部の硝酸還元酵素の活性は, 葉部や茎部と比較して, 低かった.Zn欠乏作物の遮光実験下での植物体各部位の生体重および乾物重は, 各生育期間とも無遮光区で最も大きい値を示した.Zn欠乏作物の遮光実験下での葉部の硝酸還元酵素の活性は, 遮光によって低下し, 無遮光区で最も高く, 70%遮光区で最も低かった.根部の硝酸還元酵素の活性は, 4月12日と4月19日には無遮光区で高かったが, 他の部位と比較して, 全処理区ともその活性は低かった.
著者
矢口 行雄 中村 重正
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.141-144, 1992-06-01

1986年9月から1987年5月の9カ月間にわたりハワイ産パパイアの日本到着時における損傷について調査を行った.損傷の発生は, 生理的損傷0.9%, 機械的損傷1.8%, 腐敗0.9%で, これらの季節的変動をみると12月が最も高く, 4月, 5月が最も低い傾向を示した.
著者
金城 和俊 渡嘉敷 義浩
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業研究 (ISSN:18828434)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.47-52, 2015 (Released:2016-03-29)
参考文献数
25

本研究ではジャーガルと国頭マージにおける硫安の施肥による塩基の可溶化のメカニズムを考察した.硫安の施肥量の増加に伴い,両土壌では共に土壌pHが低下し,硝酸の生成量は両土壌間で異なった.ジャーガルでは施肥した硫安由来のアンモニア態窒素の多くは硝酸態窒素に変化し,国頭マージでは硝酸態窒素の生成量は少なかった.土壌間における硝酸態窒素の生成量の違いはジャーガルと国頭マージの塩基の可溶化のメカニズムが異なることに起因した.土壌塩基の可溶化のメカニズムをまとめると,ジャーガルでは硝化作用に伴い,放出される水素イオン,国頭マージでは硝化されずに残存したアンモニウムイオンと一部硝化作用で放出される水素イオンが塩基の可溶化に関与していることが示唆された.
著者
小田 正人 中村 乾 Praphasri CHONGPRADITNUM
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業研究 (ISSN:18828434)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.22-30, 2010 (Released:2013-11-13)
参考文献数
6

東北タイで行われている牛糞マルチの資材としての性能を検討した.供試牛糞はコンケン県の5戸の農家から平均的な電気伝導度(EC)のものを選定した.牛糞の成分は有機物(OM),全窒素,全リン,全カリウム各々338,12.1,3.20,44.3 mg g-1であった.風乾牛糞5.0 gに蒸留水50 mLを加え1時間振とうした時の肥料成分の溶出量は,NO3-N,NH4-N,PO4-P ,K各々0.226,0.078,0.320,17.0 mg g-1であった.1回灌水量,灌水間隔,灌水回数を組み合わせた溶出試験で,リンは灌水量に比例,硝酸態窒素とカリウムは灌水間隔と灌水量により溶出量が異なった.カリウムに比べて他の肥料成分は少なく,ECはカリウムに比例した.圃場にプラスチック製バケツ(直径0.16 m,高さ0.20m,3.8 L)を2重に埋設し,風乾土2000 gを詰め,マルチの厚み(0~40 mm)と灌水量(200および300 mL)を組み合わせた処理を行い,内バケツの重量を測定して蒸発量を求めた.蒸発ポテンシャルに対する実蒸発率yとマルチの厚みx(cm)には,y=0.20x-0.5(R2=0.99)の関係が見られた.農家の慣行では直径約20 cmの窪みに両手一杯(約400 mL)の牛糞を施用し,柄杓1杯(約500 mL)の灌水を行うが,以上の結果から,濃度障害回避には,灌水量を1600 mLに増やすことが望ましく,その場合,蒸発抑制効果により灌水した水分は約1ヶ月間保持される計算となる.定植直後の作物は蒸散量も小さいので,牛糞マルチは水分保持に十分有効であると言える.ただし,短期間の養分供給能においてカリウムの肥効は期待できるが窒素,リンの肥効は期待できない.