著者
谷本 奈穂
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.418-433, 2005-03-31

本稿では複数ある「ものの見方=視覚モード」を整理する.<BR>「言葉」をモデルにして対象に潜む意味や物語やイデオロギーなるものを「読解」するというモードや, 「芸術作品」をモデルにして対象と (論理を媒介にしない) 「直接的交流」をするモードが考えられる.<BR>しかし現代においては, メディア (広告ポスター, テレビ, マンガ, インターネットの動画) をモデルにした視覚モードもある.本稿ではそのモードを〈イメージ〉の生成と名づけた.<BR>このモードは「じっくり鑑賞する」というより「ちらっと・ぼんやり散見する」点, 対象に表層と深層があるとするなら「深層」ではなくて「表層」に焦点を当てる点に特徴がある.<BR>また〈イメージ〉の生成の登場は, 人が魅惑に対してむしろ醒めて麻痺したような態度を取るようになったことを意味している.
著者
好井 裕明
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.711-726, 2013 (Released:2015-03-31)
参考文献数
86
著者
青井 和夫
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.33-57,166, 1955-10-30 (Released:2009-11-11)

(1) In the classical theory of sociological experiment it was customarily believed thet the experimenter must hold all (independent) variables constant except one-either directly (by means of the Method of Removal, the Constant Method the Screening Method, the Counter-balanced Method, or Systematic Randomization) or indirectly (by means of the Matched Group Method). The 'rule of the single variable' was formulated before moreef ficient statistical methods and experimental designs had been developed. Theclassical experimental logic is only applicable when the complete identification of all factors is possible, when there is complete arithmetical correspondence between cause and effect, and when no interaction between the factors exists ; but in the complex social reality these conditions are never in fact satisfied. Therefore, modern experiments, with the statistical tools now available, handle several independent variables within the same design and also include as many dependent variables as seem necessary. One experimental design of this sort is the 'factorial design'. In this connection, the 'pure case' method advocated by K. Lewin and F. S. Chapin is logically defective.(2) Sociological experiments can be classified according to various criteria. For example E. Greenwood used three criteria ; namely, artificiality of the situation, simultaneity of the comparison and direction of relationship, and produced the following classification : (a) The Projective successional experiment.(b) The Projective simultaneous experiment.(c) The ex-post-facto cause to effect experiment.(d) The ex-post-facto effect to cause experiment.However, the most significant dichotomy of experiments would seem to be the classification into 'field experiment' and 'laboratory experiment'. This because of the importance of the 'strategy of social research' and the emphasis which must be placed on the supplemental relationship between field survey, field experiment, laboratory experiment and the clinical analysis of cases. Experimental methods must be viewed in the context of various other social research techniques. Otherwise they are doomed to futility.(3) However, traditional sociological experiments have at the same time many other weak points. In the first place, they have mostly handled uninstitutionalized small groups and have lost couch with macroscopic studies of societies. In experiments with small groups it is necessary to examine the cultural setting of the experimental situation which places a limitation on the general validity of the experimental conclusion, and at the same time to elaborate methods of transposing the essential structure of social reality into the experimental situation. Secondly, since experimentation with social phenomena is itself a historical event, we must examine the nature of experiments from the viewpoint of the sociology of knowledge. Thirdly, the spontaneity of the subjects is a necessary conditions for succesful sociological experimentation. Only experiments which call for the spontaneous response of the subject, experiments which are conducted with a view to the subject's welfare, experiments which gain the cooperation of the subject, can hope to succeed. Fourthly, in order to carry out large-scale social experiments, the experimenter must have wide control over social phenomena in order to make possible the setting up of experimental conditions. Except in the classless planned society these conditions are unlikely to be satisfied.
著者
富永 健一
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.325-328, 1998-09-30 (Released:2009-10-19)
著者
高原 基彰
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.206-215, 2010-09-30 (Released:2012-03-01)
参考文献数
38
被引用文献数
1
著者
阪口 祐介
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.462-477, 2008-12-31 (Released:2010-04-01)
参考文献数
20
被引用文献数
4 2

本稿は,いかなる社会的属性を持つ人びとが犯罪被害のリスクを感じており,それはなぜなのか,について明らかにする.1960年代から欧米ではじまる犯罪不安の実証研究は,女性,高齢者,低階層の人びとが犯罪被害のリスクを感じやすいことを明らかにしてきた.そしてそれらの研究は,そのような属性を持つ人びとが身体的・社会的に脆弱であるために犯罪被害のリスクを感じやすいという解釈を提示する.本稿では2000年のGSSとJGSSのデータを用いて,犯罪リスク知覚の形成要因の日米比較分析を行い,欧米で示されてきた規定構造は日本においても確認できるのか,そして日本の規定構造は欧米のように身体的・社会的脆弱性によって解釈できるのかを問う.分析の結果,次のことが明らかになった.アメリカでは女性,高齢者,低収入の人びとが犯罪被害のリスクを感じやすく,その規定構造は身体的・社会的脆弱性によって解釈できる.一方,日本では若い女性,男性で幼い子どもを持つ人びと,女性のホワイトカラーおよび高学歴層で犯罪被害のリスクを感じやすく,その規定構造は身体的・社会的脆弱性によって解釈ができない.最後にこのような日本の規定構造について,性的犯罪への不安,重要な他者の脆弱性,GSSとJGSSのワーディングの違い,夜の1人歩きの機会,メディアの役割といった観点から複数の解釈を提示する.
著者
妻木 進吾
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.489-503, 2012-03-31 (Released:2013-11-22)
参考文献数
26
被引用文献数
4 4

本稿の目的は, 大阪市の被差別部落A地区で実施した調査に基づき, この地域の再不安定化プロセスとその要因について検討することを通して, 貧困や社会的排除現象の解明と対応策の構想に, 地域という変数が欠かせないことを示すことである.貧困と社会的排除が極端に集中していたA地区の状況は, 長期にわたる公的な社会的包摂事業によって大きく改善した. しかし, 事業終結後, アファーマティブ・アクションとしての公務員就労ルートが廃止され, その時期が日本社会の雇用不安定化の時期と重なっていたこともあり, 若者の就業状態はふたたび不安定化した. 安定層の地区外流出と不安定層の流入という貧困のポンプ現象がこうした傾向に拍車をかけた.貧困層の集積は, それ自体がさらなる機会の制約となる. 被差別部落では, かねてから貧困が地域的に集積していたことによる履歴効果, そして当事者運動が引き出した公的事業の意図せざる帰結として, 個的な生活向上・維持戦略の定着を阻む生活文化が存在し, 達成モデルも限定されてきた. 地区内の「なんとかやり過ごす」ネットワークは事業終結と担い手の流出によりその機能を弱体化させている. 貧困・社会的排除は地域的に集積し, 地域的に集積したそれらはマクロな社会変動や政策, さらには階層・階級文化などには回収されない固有の機制として, 貧困のさらなる集積や深化をもたらしていく.
著者
佐藤 哲彦
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.87-101, 2017 (Released:2018-06-30)
参考文献数
36
被引用文献数
2

本論文は逸脱研究における社会構築主義的分析の意義について2つの問いを経由して論じ, とくにディスコース分析を用いることで, 逸脱とそれを一部とするより大きな社会過程の記述が可能であるということを示したものである.問いの1つは, 逸脱の社会学の退潮という現状から, こんにちどのような形で社会学的な逸脱研究が可能かということである. この点についてはとくに1980年代以降の犯罪コントロールや刑罰と社会との関係の変化を踏まえ, 新刑罰学などで中心的に議論されている論点を参考にしつつ, 新たな社会状況とそれに巻き込まれる人びとの姿を記述する方法の必要性を論じた. もう1つの問いは, そのための記述方法として社会構築主義的方法がどのような意義をもつかということである. この点について本論文は, ‹語られたこと/語られなかったこと›の分割をどのように処理するかという最近の構築主義批判に応える形で, とくに語りの遂行性に着目した社会構築主義的な分析方法としてのディスコース分析の意義を, 覚醒剤使用者の告白を題材に論じた. そしてその告白が覚醒剤をめぐる社会状況と結びつけて理解可能であることを示した. 併せてディスコース分析の代表的な技法であるレパトワール分析の意義として, 個別性を超えた記述に接続可能であることを論じ, それを具体的に示すために企業逸脱とされる薬害問題を対象にディスコース分析を行うことで, その意義を明らかにした.
著者
園田 薫
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.91-108, 2019 (Released:2020-11-13)
参考文献数
32

日本企業で働く外国人が数年で離職してしまうのは,今なお残る日本的な雇用慣行に原因があると指摘されてきた.そうした既存研究では,外国人のキャリア選択を十分に検討していないだけでなく,日本企業で働く〈企業〉の選択と日本という場所で働く〈国家〉の選択が混同して扱われていた.そこで本稿では〈企業選択〉と〈国家選択〉という分析概念を用い,外国人が日本企業での就労を決定した主観的なキャリア選択の過程に着目することで,外国人の離職が生じる構造的要因について検討し,外国人の雇用をめぐる日本企業の現状と展望を産業社会学的に考察する.日本の大企業で働く新卒外国人へのインタビュー調査から,特に留学生において国家選択が企業選択に先立ち,日本企業で働く直接的な原因になっていることが明らかになった.そのなかにはさまざまな制約で日本以外の国で働く選択ができず,また日本企業以外で働く選択肢も失ったと感じ,「次善の策」として日本企業へ就職したと考えるものが多い.以上の結果は,日本企業と外国人の軋轢を生むのは日本企業の雇用慣行への不満や魅力の少なさではなく,必ずしも日本企業に関心のない外国人がキャリア選択の過程で日本企業への就職を選択しているためであるということを示唆する.外国人と日本企業の相互理解を深めつつ,意図せずとも日本の労働市場に留まる傾向がある留学生の企業とのマッチングを制度的に支えることが重要だと考えられる.
著者
三隅 一人
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.134-144, 2015 (Released:2016-06-30)
参考文献数
42
著者
開内 文乃
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.149-150, 2014 (Released:2015-07-04)
参考文献数
1
著者
兼子 諭
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.453-467, 2019 (Released:2020-03-31)
参考文献数
38

社会や社会集団の成員が,自然災害や戦争などの歴史的出来事を,直接経験していないにもかかわらず自らの悲劇として感じ語ることがある.だがその一方で,出来事など起きなかったかのように沈黙を貫く場合もある.これらの現象を記述し説明するのに社会学者も用いるのが「トラウマ」概念である.しかし従来の議論は,トラウマを隠喩として用いるだけで,分析のための独自の視点や方法を展開し損なっている.そこで本稿では,J. Alexander らによる「文化的トラウマ(cultural trauma)」論を検討して,国民国家のような「大規模」社会での集合的な「沈黙」や「覚醒」のダイナミズムを探究する際にトラウマ概念を応用する社会学的意義を示す.文化的トラウマ論が明らかにするのは,悲劇的な出来事に対する集合的な沈黙や覚醒は,出来事の客観的な性格から説明できるとは限らないということである.文化的トラウマ論に従えば,むしろそれは,その出来事がどのように解釈され物語られるかに依存する.悲劇的出来事に対する集合的な反応は,それが社会に深刻な苦悩をもたらす傷として語られるのか,それとも,最終的には進歩の機会として語られるのかに左右されるのである.文化的トラウマ論を土台にして本稿は,悲劇的出来事に対する集合的な覚醒や沈黙は文化的に枠づけられる「社会」現象として説明可能であり,個人の心理や精神には還元することはできないことを主張する.
著者
上野 加代子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.70-86, 2017 (Released:2018-06-30)
参考文献数
71
被引用文献数
2

福祉の領域における社会構築主義の研究は多様であるが, この領域に特有の姿勢を見て取ることができる. それは, 自分たちがクライエントを抑圧してきたという「自身の加害性の認識」と, 「研究結果の実践への反映」である. 本稿では, 福祉の領域に特有のこれらの姿勢に着目し, それに関連する文献を中心にレビューする. 具体的に, ひとつはソーシャルワーカーとクライエントを拘束しているドミナント・ストーリーをクライエントと共同で脱構築しようとするナラティヴ・アプローチの研究の流れである. 本稿で取り上げるもうひとつの構築主義的研究の流れは, ソーシャルワークが専門職として確立, 再確立される過程で, 「トラブルをもつ個人」がどのように創りあげられてきたのかを, 外在的に分析するものである. なお, 「自身の加害性の認識」という点は, 英語圏の文献には顕著であるが, 日本語の文献では弱い. そこで, 英語圏の文献をレビューした後, 日本における構築主義研究ではどうして「自身の加害性の認識」という観点が乏しいのかについて考察する. そして最後には, 近年の英語圏の文献では自身の加害性のみならず, 「被害者性」についても議論されていることを踏まえ, 自分自身の知識や実践に対する構築主義研究が, 「自分は加害者たることを強制された被害者だ」という自己弁護に陥る危険をはらみつつも, 社会制度変革へのコミットにつながることに触れておきたい.
著者
友岡 邦之
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.379-395, 2009-12-31 (Released:2012-03-01)
参考文献数
44
被引用文献数
5 1

文化におけるグローバリゼーションの進展の中で,日本の地方における文化的活動と鑑賞の機会はむしろ取り残された状況にある.社会学の研究動向としても,そうした地域にあって芸術的あるいは文化的とみなされる表現を,身体感覚を伴って経験できる機会を提供するための制度のあり方は十分に検討されてこなかった.このような文化政策論的な問題は,民衆文化や民族文化をめぐる文化政治学的な現象に焦点が当てられがちな文化社会学の枠組みでは重視されてこなかったのである.その一方で,地域づくりの現場では文化的資源を活用した都市計画が注目を浴びている.一部の都市はグローバルなレベルで文化的資源を調達し,創造的階級と呼ばれる人材を引き付け,それをさらなる都市発展に結びつけようとしている.こうした取り組みに成功する都市とそれ以外の地域との文化的環境の格差は,拡大する傾向にある.このような状況を踏まえるなら,いったいグローバリゼーションの時代における文化的多様性とは何なのか.本稿では,これを地域社会の多様性・固有性という問題に焦点を当てて論じる.
著者
村瀬 敬子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.297-313, 2020 (Released:2021-09-30)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

本稿は,戦後の『主婦の友』を主な資料として,郷土料理/郷土食の「伝統」が強調されていき,「主婦」をその伝承者とする語りが,どのように構築されていったかを明らかにした.本稿では「伝統」を,昔から続いているとする「継続性」に加え,良いものとして価値づける「美化性」のまなざしによって構成されるとし,1979 年までの「郷土料理/郷土食にかかわる記事」において,これらの語りの分析を行った. 本稿の考察結果は次のようになる.(1)1960 年代半ばまで,従来の郷土料理/郷土食を改良したり,新しく生み出すことが推奨されている記事が登場しており,郷土料理/郷土食の「伝統」は強調されていなかった.(2)著名人の郷土料理/郷土食に関するエッセイが,1950 年代半ばから数多く掲載され,その多くで自らの故郷の郷土料理/郷土食が賛美されていた(美化性).(3)1960 年代半ば以降,「おふくろの味」が賞揚され,「おふくろの味」と郷土料理/郷土食は,長い間,伝承されてきたものだとされ(継続性),女性による伝承が規範化していった.(4)このことは「主婦」に新たな役割を与え,揺らぎはじめたジェンダー秩序の維持に寄与した.