著者
浅井 隆
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.440-449, 2011 (Released:2011-06-28)
参考文献数
24

過去には気管チューブによる気道粘膜壊死や気管狭窄などの重篤な合併症が起こることが比較的多くあった.現在においても,麻酔導入後の換気困難の最大の原因は繰り返した気管挿管処置であるとされている.また,気道確保が容易な症例においても喉頭損傷などは無視できない頻度で起こっている.これらのことから,気管挿管が困難か困難でないかにかかわらず,侵襲の小さなカフと先端を持つチューブで,挿管成功率の高いものを使用すべき,だと言える.スパイラルチューブ,パーカーチューブ,挿管用ラリンジアルマスク用チューブなどがこれらの条件を満たすと思われるため,これらのチューブを積極的に使用すべきだと思われる.
著者
角倉 弘行
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.152-158, 2008 (Released:2008-02-16)
参考文献数
6

硬膜外麻酔による無痛分娩を安全確実に行うためには, 十分な初期鎮痛が達成されるまで初期投与を行った後に, 児を娩出するまで必要に応じて追加投与を行う必要がある. 持続投与 (continuous epidural infusion: CEI) と患者自己疼痛管理 (patient controlled epidural analgesia: PCEA) による硬膜外追加投与は, 局所麻酔薬の総使用量を減少させると同時に, より良い鎮痛を提供することを可能にし, 無痛分娩の安全性と快適性を大きく向上させた. 本稿ではCEIとPCEAの比較を行うが, いずれの方法を選択するにしても, 麻酔科医が産婦のもとを頻回に訪れ, 鎮痛の状況を確認し適切に対応すべきである.
著者
安達 真梨子 近藤 弘晃 藤田 那恵 日向 俊輔 奥富 俊之
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.437-442, 2021-09-15 (Released:2021-11-05)
参考文献数
10

われわれの施設では帝王切開術における脊髄くも膜下麻酔後低血圧を予防する目的でフェニレフリン持続投与を行っている.今回,持続投与を行っていなかった期間と比較して,その影響を後方視的に検討した.フェニレフリンの持続投与は麻酔施行直後より1mg/hで開始し,必要時に昇圧薬のボーラス投与を行った.フェニレフリン1mg/hの予防的持続投与は,麻酔後低血圧の発生率や追加治療介入の必要性を有意に減少させた.また,持続投与を行わなかった場合と比較して反応性の高血圧や徐脈などの発生頻度を増加させることなく使用できた.
著者
飯島 毅彦
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.139-144, 2014 (Released:2014-02-26)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

日本国内8大学で測定された手術患者の循環血液量は82.3±14.8ml/kgであった.ばらつきは大きく,約50ml/kg~100ml/kgであり,個体差が大きい.この測定値はいわば静的循環血液量である.一方,SVV(stroke volume variation)のような動脈圧の揺らぎから推定される循環血液量は,静的循環血液量とは異なるものである.例えば血管収縮薬を使用すれば静的循環血液量は変化しなくとも静脈還流量は増え,SVVから推定される循環血液量の不足は是正される.動脈圧波形から推定される「循環血液量」はいわば動的循環血液量であり,静脈還流量にほかならない.この指標を静的な循環血液量と混同し,容量負荷のみで対応すると大量輸液につながる.この指標を正しく解釈しなければならない.
著者
杉浦 孝広 森 庸介
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.628-631, 2012 (Released:2012-10-11)
参考文献数
6

ペースメーカー(PM)装着患者の増加に伴い,PMを装着した患者が手術を受ける機会が増加している.PM装着患者における麻酔では,患者の安全を守ること,PMの故障に伴う合併症の発生を防ぐことが重要である.術前評価は,PM因子としてPMの①適応,②種類と設定,③依存度を評価し,患者因子として一般術前検査に加えて,心疾患合併の有無を確認する.術前に,電磁干渉の発生や設定変更の必要性を考慮し,一時ペーシングや対外的除細動器を準備してペースメーカー不全に備えることが,適切な術中管理を行う上で大切である.すなわち,系統だった術前評価と準備を行い,重篤な合併症の発生を未然に防ぐ必要がある.
著者
仙頭 佳起
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.337-345, 2017-05-15 (Released:2017-06-17)
参考文献数
26
被引用文献数
1

周術期管理において,術後患者の全身状態を安定化させるPostanesthesia Care Unit (PACU)が果たしうる役割を再考した.PACUに期待される機能は,術後安全性の向上,患者満足度の向上,手術室の効率的運用への寄与であり,その効果を検証することが求められている.本邦ではPACUを運営する施設が16.1%と少ないが,運営しない施設の60.0%でその必要性を感じており,場所や人員の確保に関する対策が求められると同時に日本に合った形のPACUについても検討すべきである.PACU運営の実際や効果検証の進捗に触れながら,今後の展望について解説した.
著者
松田 直之
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.613-619, 2019-09-15 (Released:2019-10-29)
参考文献数
11

小児に静脈麻酔薬プロポフォールを使用することが適切かどうかについて,日本臨床麻酔学会第38回大会Pros & Consにおいて討議した.2014年2月,頸部リンパ管腫の摘出手術を受けた2歳男児が,集中治療室における術後管理の3日後にpropofol infusion syndrome(PRIS)として死亡した事例がある.小児に対するプロポフォール使用の注意喚起は,極めて強い.人工呼吸中の小児の集中治療において,プロポフォールの使用は禁忌である.その一方で,成人においてもPRISの報告は認められ,PRISの予防策を,麻酔科学,薬理学および病態学の視点より十分に理解する必要がある.成人の集中治療における人工呼吸管理では,プロポフォール1%注射剤の持続投与中の急速静脈内投与に注意が必要である.プロポフォールや溶剤である脂質は,塞栓症やミトコンドリア障害の危険性があり,これらの血中濃度と投与期間に注意が必要である.しかし,プロポフォール事例は私たちの静脈薬を用いた診療における氷山の一角にすぎない.プロポフォールに限らず,麻酔・集中治療領域で使用する多くの静脈薬について,私たちの科学的理解に加えて,使用説明書等の十分な再検討と,適切な改定が必要とされる.
著者
伊加 真士 清水 一好 川出 健嗣 金澤 伴幸 西谷 恭子 森松 博史
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-6, 2016-01-15 (Released:2016-02-12)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

スガマデクスは安全・迅速にロクロニウムを拮抗できる薬剤として広く使用されている.今回われわれは筋弛緩モニターを使用し,投与基準どおりにスガマデクスを使用したにもかかわらず,術後に再クラーレ化が疑われた症例を経験した.症例は78歳の男性で,胃癌に対し腹腔鏡下幽門側胃切除術が施行された.術中およびスガマデクス投与前にTOFウォッチを使用し,TOFカウント2を確認後,スガマデクスを3.6mg/kg投与し抜管した.その約70分後に著明な酸素化の悪化と四肢の体動低下を認め,ネオスチグミン投与により酸素化・体動の改善を得た.投与基準どおりのスガマデクス使用でも再クラーレ化の可能性は否定できないため,抜管後の厳重な呼吸の観察が重要である.
著者
中村 里依子 行木 香寿代 小西 純平 寺門 瞳 前田 剛 鈴木 孝浩
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.430-433, 2015-07-15 (Released:2015-09-18)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

症例は局所麻酔下に白内障手術予定の74歳の女性.眼科医によって施行された2%リドカイン3.5mLを用いた球後麻酔の数分後に意識消失と呼吸停止が生じ,その原因として局所麻酔薬の視神経鞘を介したくも膜下注入による脳幹麻酔が疑われた.マスクを用いた人工呼吸を継続した結果,球後麻酔から約30分後には呼吸努力が認められ,約65分後には意識清明となり,呼吸およびその他の運動機能も完全に回復した.球後麻酔といえども危機的合併症が発現し得ることを認識し,呼吸や意識の経時的観察,そして合併症が生じた際に迅速対応できる体制が重要と考えられた.
著者
樋口 秀行
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.347-351, 2016-05-14 (Released:2016-07-07)
参考文献数
7

デスフルランの物理的特徴として,標準沸点が22.8℃と他の揮発性麻酔薬と比べて,極めて低いという点がある.そのため,保存・供給する容器,気化器も特徴的になっている.デスフルランは化学的に極めて安定している.すなわち,生体内代謝はほとんど受けず,二酸化炭素吸収剤と反応して分解されることはない.しかしながら,乾燥したソーダライム,バラライムと反応して一酸化炭素を生成する.また塩素分子を有さないので,オゾン層破壊作用はないが,地球温暖化効果を有し,対流圏における寿命は他の揮発性麻酔薬より長い.
著者
横塚 基 寺嶋 克幸
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.610-614, 2016-09-15 (Released:2016-11-05)
参考文献数
15
被引用文献数
1

デスフルランは1.5MAC以上へ急激に濃度を上昇させることにより,一過性の交感神経刺激作用を有することが知られている.しかし,1MAC程度の使用であればそれは問題とならず,他の吸入麻酔薬と同様,安全に麻酔管理が可能である.心臓手術中には胸骨正中切開,心膜切開,大動脈操作時など血圧が上昇しやすい時期がある.疼痛刺激などに対する血行動態の変動に,デスフルランの濃度を高くすることで対処することは,避けるべきである.デスフルランの持つ心筋保護作用は,心筋虚血を起こす可能性が高い心臓手術に有用であり,覚醒が速やかでその質も優れている性質はultra fast-track anesthesiaに活用できる可能性がある.
著者
小田 裕
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.447-454, 2005 (Released:2005-09-28)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

薬物動態に最も大きな影響を及ぼすのは代謝である. したがって, 薬物動態を考慮する際には, 代謝が肝血流量依存性か, 肝代謝酵素活性依存性かの判断が重要である. 前者の場合は, 肝血流量の減少によって薬物の血中からの排泄が遅延する. 後者の場合は, 肝代謝酵素活性 (とくにチトクロームP450, 以下P450) を阻害する薬物の併用に注意すべきである. またP450活性には人種差や個体差が存在し, 特定の人種や個体では一部のP450分子種の含量がとくに少なく, そのP450で代謝される薬物の効果が著しく遷延したり, 副作用が生ずる可能性がある. さらに, 薬物動態から肝臓の酵素活性を推定することが可能で, 薬物療法におけるテーラーメイド治療に向けた臨床応用が期待される.
著者
森本 康裕 鶴田 俊介 坂部 武史
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.378-386, 2005 (Released:2005-07-29)
参考文献数
17

脳動脈瘤に対しては開頭下に動脈瘤にクリップをかけるクリッピング手術が一般的であったが, 最近は血管内手術も増えてきた. 麻酔法としては, プロポフォールの登場で吸入麻酔薬あるいは静脈麻酔薬による麻酔維持の使い分けが可能になった. 脳動脈瘤手術は緊急手術となることが多く, まず患者の重症度や全身合併症を把握する必要がある. 麻酔のポイントは脳灌流圧と動脈瘤の経壁圧を保ち, 動脈瘤の破裂 (再破裂) を防ぎ, 脳の腫脹を抑え, 脳血管攣縮を予防することにある. 麻酔薬および麻酔関連薬の脳循環, 代謝への影響を理解し, 脳神経外科医と十分なコミュニケーションをとり個々の患者の病態に応じて適切な管理を行うことが重要である.
著者
西澤 秀哉 中山 英人
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.626-628, 2016-09-15 (Released:2016-11-05)
参考文献数
16

頭部外傷患者の麻酔管理は,二次性脳損傷の発症・進展を防ぐために,頭蓋内圧を制御して脳灌流圧を維持することが重要となる.臨床使用濃度におけるデスフルランが頭蓋内圧を大きく変動させることはないが,頭部外傷患者は脳血流自己調節能が破綻している可能性が高いため注意を要する.術後早期に神経学的機能評価を行うことで治療可能な合併症を捕捉できる利点を有することから,デスフルランの速やかな覚醒は有用である.
著者
廣田 和美
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.42-49, 2007 (Released:2007-01-29)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

弘前大学医学部附属病院では, 全身麻酔管理の80%以上にプロポフォールを主体にケタミンやフェンタニルを加えた全静脈麻酔法 (TIVA) を用いて施行している. TIVAにより, 地球温暖化やオゾン層破壊の原因となる亜酸化窒素や揮発性吸入麻酔薬の使用を減らすことができる. また, 現在までの研究報告をみると揮発性吸入麻酔薬が炎症促進作用を示すのに対し, 静脈麻酔薬プロポフォール, ケタミンは抗炎症効果を示す可能性が高い. また, プロポフォールにがん転移抑制効果があるのに対し, 揮発性吸入麻酔薬では転移を促進させるとする論文も発表されている. したがって, 環境に優しく侵襲防御に有利なプロポフォールを中心としたTIVAは, 今後さらに普及していくものと予測される.
著者
横田 美幸 関 誠 大島 勉
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.580-587, 2011 (Released:2011-08-15)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

MAC(Monitored Anesthesia Care)は,侵襲的医療行為のあらゆる状況で適応となる.MACの本質は,診断や治療に伴う医療行為で生じてくる患者の生理学的変化(血圧変動や呼吸抑制などを含む生体維持機能)や医学的問題の麻酔科学的評価や管理である.このためには鎮痛薬や鎮静薬の投与を行うが,MACを実施する医師は,必要となればすぐに全身麻酔に移行する準備や能力が必要であることは言うまでもない.このような能力のない医師が実施すれば危険であることは明白である.したがってその技術度は,全身麻酔に準じていると考えられる.日本においてもMACの重要性については異論のないところである.したがってMACに関して共通の認識を形成し,侵襲的医療行為におけるMACの必要性を患者・国民に啓発していく必要がある.
著者
加藤 里絵
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.858-865, 2012 (Released:2013-02-12)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

日本や英国の妊産婦死亡症例の検討を通して,麻酔科医には手術室における麻酔以外に,妊産婦の死亡を減らすためにいくつかの役割があることがわかってきた.その一つが妊産婦の心肺蘇生への関与である.妊産婦の心肺蘇生は,一般成人における方法におおむね準ずるが,いくつかの相違点がある.(1)子宮左方転位を行うこと,(2)胸骨圧迫部位をやや頭側に置くこと,(3)早期に確実な人工呼吸を確立すること,(4)急速輸液を考慮すること,(5)死戦期帝王切開術を考慮することなどである.除細動や薬剤の投与は一般成人における方法と変わりがない.特に死戦期帝王切開術を行うためには施設ごとの入念な準備が必須であり,その体制の確立において麻酔科医は大きな役割を担うと考えられる.
著者
新谷 知久 成松 英智 並木 昭義
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.858-864, 2008-09-12 (Released:2008-10-17)
参考文献数
15
被引用文献数
1

ロクロニウムは静脈内投与した後ほとんど代謝されずに速やかに肝臓に取り込まれ, 大半は胆汁中に, 一部が腎から尿中に排泄される. 腎機能が低下した患者においては, ロクロニウムの作用持続時間は変わらないとする報告や延長するという報告があり一定の結論が得られていない. 一方, 肝機能が低下した患者では作用持続時間は延長すると報告されている. また, 肝移植術の際に移植肝が正常に機能しなかった患者において, ロクロニウムの血漿濃度上昇や, 筋弛緩効果からの回復時間遅延を認めたとの報告がある. 肝・腎機能に障害をもつ患者や移植術においてロクロニウムを使用する際には, 筋弛緩モニターを行い慎重に投与量を調節して管理する必要がある.
著者
若松 弘也 山田 健介 勝田 哲史 白源 清貴 松本 聡 松本 美志也
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.347-353, 2018-05-15 (Released:2018-06-23)

2015年10月に発表されたJRC蘇生ガイドライン2015における一次救命処置の推奨は次の通りである.胸骨圧迫のテンポは,100〜120回/分を推奨する.胸骨圧迫の深さは,6cmを超える過剰な圧迫を避けつつ,約5cmの深さで行うことを推奨する.CPR中の胸骨圧迫の中断は最小限とし,胸骨圧迫比率をできるだけ高くして,少なくとも60%とすることを提案する.心停止の疑いのある人の近くにいる,意思がありCPRを実施できる人に,ソーシャルメディアなどのテクノロジーを用いて情報提供することを提案する.JRC蘇生ガイドライン2015で強調されている胸骨圧迫の重要性は,ガイドライン2005,2010から引き継がれている.