- 著者
-
松田 直之
- 出版者
- 日本臨床麻酔学会
- 雑誌
- 日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, no.5, pp.613-619, 2019-09-15 (Released:2019-10-29)
- 参考文献数
- 11
小児に静脈麻酔薬プロポフォールを使用することが適切かどうかについて,日本臨床麻酔学会第38回大会Pros & Consにおいて討議した.2014年2月,頸部リンパ管腫の摘出手術を受けた2歳男児が,集中治療室における術後管理の3日後にpropofol infusion syndrome(PRIS)として死亡した事例がある.小児に対するプロポフォール使用の注意喚起は,極めて強い.人工呼吸中の小児の集中治療において,プロポフォールの使用は禁忌である.その一方で,成人においてもPRISの報告は認められ,PRISの予防策を,麻酔科学,薬理学および病態学の視点より十分に理解する必要がある.成人の集中治療における人工呼吸管理では,プロポフォール1%注射剤の持続投与中の急速静脈内投与に注意が必要である.プロポフォールや溶剤である脂質は,塞栓症やミトコンドリア障害の危険性があり,これらの血中濃度と投与期間に注意が必要である.しかし,プロポフォール事例は私たちの静脈薬を用いた診療における氷山の一角にすぎない.プロポフォールに限らず,麻酔・集中治療領域で使用する多くの静脈薬について,私たちの科学的理解に加えて,使用説明書等の十分な再検討と,適切な改定が必要とされる.