著者
北村 征生 田中 孝一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-5, 1984-04-30

暖地型マメ科4草種;Macroptilium atropurpureum cv. Siratro(サイラトロ),Glycine wightii cv. Cooper(クーパー),Stylosanthes guianensis cv. Endeavour(スタイロ)およびStizolobium hassjo(フーキマメ)を月毎に単播条件で播種し,発芽定着数と冠部被度を経時的に測定した。測定結果と南西諸島南部における気象条件を合わせ検討し,暖地型マメ科草の播種適期を以下のように推定した。草種 播種適期サイラトロ:3〜6および10月クーパー:4〜6および10月スタイロ:6月フーキマメ:2〜6月
著者
早川 康夫
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.271-278, 1993
被引用文献数
1

日本は成帯的には森林極相域に属する。その中で局所的(間帯的)に成立する安定した草原は地形形質が有効水量を乏しくさせる立地に限られる。日本近海の島々は地質の構造的変動に伴い成立したものが多く,節理の発達した玄武岩メーサ台地や火山,あるいは珊瑚石灰岩など透水良好な立地に限り自然草原が発達した。その草原に惹かれて牛を本土から導入した。従って地質的原因で隣接する島であっても牛の飼われぬ島もある。日本海から東支那海沿いの島々,伊豆七島から小笠原諸島,大隅-吐喝喇-奄美-沖縄などの南西諸島における草地分布と牛の飼養状況を調査しとりまとめた。
著者
吉田 重方 松本 博紀 トルン ブイチ 佳山 良正
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.358-361, 1985-10-30 (Released:2017-07-07)

非マメ科植物根における生物窒素固定能についての調査は主にC_4植物を多く含むイネ科植物を対象として行われており,数種のイネ科植物根やその根圏において半共生的な窒素固定(associative nitrogen fixation)が明らかに存在することが報告されている。さらに,イネ科植物のほかにもトクサ科のスギナやトクサおよびシソ科のStachys sylvaticaなどの根圏にも窒素固定能の存在が報告されている。それらはいずれも窒素固定能の間接的検出法であるアセチレン還元法によったものである。同手法は検出感度が高く,かつ低廉,迅速に窒素固定能を測定し得るために未知の窒素固定系を見い出そうとする場合には有力な手段となる。一方,草地における生物窒素固定の主体は言うまでもなく混生するマメ科牧草による共生窒素固定であるが,著者の1人は草地表面に被覆するランソウ(Nostoc sp.)によってもかなりの窒素固定が行われていることを前報で報告した。本報では,草地における上記以外の生物窒素固定系の存在を検索することを目的とし,各種草地雑草根のアセチレン還元能を調査した。
著者
熊井 清雄 福見 良平 丹比 邦保
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.303-306, 1984-10-31

アローリーフクローバーはイタリアを原産とする越年生マメ科牧草である。その歴史は新しく,1930年代にイタリア中部で最初に牧草として栽培された。その後,1950年代にアメリカに導入されて品種改良が進み,現在ではミシシッピー河の下流域を中心とする南部諸州で広く栽培されている。本草はわが国においては,これまでほとんど栽培されたことのない牧草であるが,原産地のイタリアやすでに広く栽培されているアメリカの気象データから推定して,わが国の温暖地に適するクローバーの一つと考えられた。そこで筆者らはアカクローバー(Trifolium pratense L.)を対照作物としてアローリーフクローバーを試作し,両者の収量ならびに飼料価値を比較検討したので,試験結果をここに報告する。
著者
大久保 忠旦 川鍋 祐夫 星野 正生
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.136-145, 1975-07-25

第2報で,季節別の最大乾物生産速度(_<max>CGR)と群落葉身の平均クロロフィル含量(ChA)との間に,高い相関関係が見出された。その理由を,群落葉身の平均的な葉令と受光歴に求めたが,さらに実験的に検証する目的で,ここでは,アルファルファを4月〜7月にわたり栽植密度4段階で栽培,生長解析と弱光下光合成の測定によって_<max>CGRとChAの関係をみた。1.各密度レベルに応じて得られた_<max>CGRの変動は,最適LAI(_<opt>L)より最適グロロフィル指数(_<opt>CI)に強く依存していた(図2)。2._<max>CGRの変動は,同時に日射量やC/F比の影響も受けていたが,比例的関係の明瞭なのはChAに対してであった。それゆえ_<max>CGRと_<opt>CIの比例関係は,_<max>CGRとChAの比例関係によるところが大きい(図3)。3.群落のChAは生育につれて高まり,_<opt>Lの時期に最高となり,さらに生育が進むと中・下層葉の低下のため全体のChAが低下する,という傾向がみられた。_<opt>Lの時期であっても,葉層別にみたChAは4.0〜5.0mg/dm^2で,多くは4.0mg以下である。4.弱光下の光合成速度は,展開後の葉令15〜20日前後で最高となったが,ChAとほぼ比例的な推移を示した。光-光合成曲線の立ち上り(最大光利用効率,(φ_0)は,個葉のChA 0〜5mg/dm^2の範囲では比例的に増加したが,5mgを越えたところでは変動が大きかった(図5,6)。5.第2報と本報で明らかになった_<max>CGRの変動のChAへの依存性は,群落の平均葉令,受光歴などに基づく葉身の光合成能力の変動が,ChAの変動と比例しているためとみられるが,クロロフィルの弱光要因としての役割も,部分的に含まれていると考えられる。以上の結果から,群落が_<opt>Lや群落吸光係数の近似的な範囲にあってもなお観察される_<max>CGRの変動は,外的要因としての日射量のほか,内的要因としてはChAに依存した形で把握できることが明らかとなった。これは,乾物生産力指標として,LAIよりもCIを用いるほうが有利な場合があることを示唆している。
著者
名田 陽一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.434-440, 1985-02-25
被引用文献数
1

熊本県西合志町において越冬可能な暖地型牧草10草種に放牧し,そのし好性,採食量,草地密度を調査した。さらに別の圃場で同じ草種について刈取試験を行ない季節生産性を調査した。入牧時の牧草量にたいする採食量の割合(採食率)および評点法によるし好性はソルガム「シルク」,カーペットグラスが極めて高く,セントオーガスチングラス,ベイジイグラス,スイッチグラス,リトルブルーステム,キシュウスズメノヒエと続き,バーミューダグラス「コモン」,同「ティフトン44」,ウイーピングラブグラスは極めて低かった。比較のために同一放牧草地内のダリスグラスとバヒアグラスを評点で測定した結果,ダリスグラスのし好性は極めて高く,バヒアグラスは中間よりやや低かった。また牧草乾物率とし好性との間に負の相関があり,出穂茎および生長を停止した牧草の乾物率が高く,これらのし好性が低かったと推測した。放牧条件下における草地の密度はウイーピングラブグラスがやや株数の減少をきたした以外はほふく型,たち型牧草ともに良好であった。刈取試験による季節生産性は,季節を通して平準な草種(バーミューダグラス「コモン」,同「ティフトン44」),季節の進むにつれて増加する草種(キシュウスズメノヒエ,カーペットグラス,ベイジイグラス),季節の進むにつれて減少する草種(セントオーガスチングラス,ウイーピングラブグラス,スイッチグラス,リトルブルーステム)等多様であった。一方採食量の季節変動はし好性の要因が加わるために刈取収量よりみた季節変動とは異なった。上記の要因を総合して,カーペットグラス,ソルガム「シルク」,ベイジイグラスが九州での放牧利用に有望であると考えられた。
著者
林 兼六 小田島 守 伊沢 健
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.353-357, 1979-01-31
被引用文献数
2

牛の2品種(黒毛和種=B種およびホルスタイン種=H種)の発育性を比較するために,野草地および牧草地において放牧試験を行った。連続2ヵ年(1972,1973)の各放牧シーズンとも,野・牧草地のそれぞれに約20カ月令の去勢牛12頭(各品種6頭ずつ)を全放牧して増体について調査した。また2年目の春と秋に野草地放牧牛の放牧行動を観察し,酸化クローム・クロモーゲン法による食草量の推定を行った。得られた結果は次のようであった。1)野草地および牧草地における日増体は,それぞれB種では0.30kg(1年目),0.48kg(2年目)および0.47kg,0.51kg,H種では0.52kg,0.56kgおよび0.92kg,0.70kgであった。これをみると,両草地ともB種よりH種の増体が,また両品種とも野草地より牧草地における増体が優れていたが,両草地における増体の差はB種に比べてH種のほうが遙かに多かった。したがって,相対的にはH種よりもB種が野草地をより良く利用したといってよかろう。2)2品種の野草地放牧牛は,一団を形成して行動することが多かったが,朝夕2回の食草のピーク時には,品種ごとの2集団に分れる傾向があった。また急斜面での食草のばあいB種がH種より先行した。3)春の推定食草量(乾物/頭・日)は7.4〜7.5kgで納得のゆくものであったが,秋のそれは4.4〜4.8kgと非常に少なかった。秋におけるこの異常に低い数値は,草中のクロモーゲンが牛の消化器官通過の間に著しく変成もしくは吸収されたことによるものと推察された。この結果から,消化率推定のための指標物質としてクロモニゲンを利用することには,極めて問題があると思われた。
著者
河原 栄治 江本 泰二
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.p188-194, 1977-10

シルフィウムの形態的ならびに生理的特性に対する日長効果について昭和49年から3ヵ年に亘り,秋田県立農業短期大学で調査した。その結果は概ね次のごとく要約できる。1.8月中旬の草丈・葉面積・地上部重・地下部重および根重については,自然日長区と長日区との間に差がなかった。ただ,同時期の播種当年の自然日長下の葉面積ならびに地上部重は長日下の場合よりも高い値を示し,播種後3年目の地下茎重は反対に長日区の方が高かった。一方,秋期の短日下での上記諸形質は長日区の方が自然日長区よりも高い値を示した。2.8月中旬に測定した茎葉数と茎の太さは日長との間に関係がなく,しかし11月中旬の調査では茎葉数は自然日長下の場合よりも長日処理区で多かった。3.播種当年には茎の基部の節間は伸長しなかったが,2年以降の11時間日長の短日処理における個体の節間についても同様であった。上記の場合を除き,節間は2年目以降に伸長することがわかった。そして,基部の節間が伸長するためには少なくとも15・6葉が基本的に必要であると考えられた。4.蕾の形成に対しては自然日長と長日との間における効果の差はなく,11時間の短日長は蕾の形成を強く抑制した。したがって,短日下の開花は極くわずかであり,自然日長下と長日下ではかなり開花し,開花時期も概ね同時期であった。これらの結果から,シルフィウムは量的長日植物であろうと推定した。5.8月中旬調査したT/R比には自然日長ならびに長日処理間に差がなく,短日下で前二者に比し明らかに低い値を示した。そして,苗令が進むにつれてT/R比は低下することを認めた。一方,11月中旬調査のT/R比は長日下の方が自然日長下よりも高い値を示した。なお,8月中旬における播種当年の株の自然日長下のT/R比は長日下よりも高い値を示し,上記の結果とは必ずしも一致しなかった。6.長日処理は種子の生産に有利な効果はなく,他方,短日処理はその生産を極端に抑制することがわかった。
著者
酒井 博 川鍋 祐夫 藤原 勝見
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.198-205, 1969-11-29
被引用文献数
1

オーチャードグラスの播種翌年および翌々年の草地につき,窒素量25g,12.5g(m^2当り),刈取り高さ5cm,15cmの処理区を設け,葉身,葉鞘・茎,根,枯死部の重量,葉面積を測定し,生長解析を行なった。本報では肥料および刈取り処理の平均値により,春,夏,秋および早春の生産量と生産過程を比較した。1.年間の乾物収量はm^2当り720gで,多くの粗放管理の永年草地の収量水準であった。1日当り乾物収量は4〜5月がもっとも高く,9〜11月がもっとも低く,春高秋低型である。これに対し,純日生産量は夏に中だるみする型である。収量率は春は40〜50%,夏は71%,秋は21%で,この季節変動が収量の季節的偏りに影響を及ぼしている。夏の低収は乾物生産の低下に,秋の低収は収量率の低下に原因が求められる。2.夏は根重の低下が激しく,回復が遅い。秋は春,夏に比べ,葉身重に対する根重または葉鞘・茎重が多い。早春は高い生産力の期間が長いことが特徴で,根,葉身,葉鞘・茎の重量すべてが増加した。刈取り後の生育過程は,葉鞘・茎重,根重の減少が起る時期,それらの漸増が起る時期および根重の速やかな増加が起る時期の三つに大別された。早春は茎の割合が,秋は根の割合が多いため,ともにC/F比が大きい。反対に春,夏はC/F比が小さい。3.葉面積示数は春,夏,秋とも刈取り後約30日で5.5〜6.0に達した。しかし高温乾燥であった1967年の夏は約3にしかすぎなかった。葉積は純生産量と相関が高いが,夏は葉積の割に純生産量が低い。4.純同化率は春が高く,夏は低く,秋はその中間であった。夏に低い理由の一つは高温による呼吸の亢進にあると考えられた。収量生長速度は純同化率と同傾向であった。
著者
小関 純一 高橋 達児
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.67-73, 1980-04-30

本邦の放牧草地におけるt-アコニット酸の蓄積に及ぼす若干の要因について検討を加え,これらとグラステタニー症発生との関連を明らかにしようとした。試験方法は次の三法によった。1)本症または類似症状の発生がみられた東北・北海道地域の7草地について,レッドトップを中心にそのt-アコニット酸含量の実態調査。なお,非発生草地の例として,西那須野の草地試験場内圃場を供試した。2)造成後7年目の草地試験場内圃場において,少・多2段階の施肥処理を設けてレッドトップ中のt-アコニット酸含量の季節変化を調査。3)造成後2年目の草地試験場内圃場にて,レッドトップ中のt-アコニット酸含量に及ぼすNもを含めた無機組成の影響について検討した。処理はMgの施用量(4段階)を中心に6水準。得られた結果は次のごとくである。1)本邦の放牧草地において,t-アコニット酸の蓄積に最も関係のある草種はレッドトップと考えられ,それに次ぐものとして,リードキヤナリーグラスならびにレッドフエスクなどがあげられた。2)レッドトップ中のt-アコニット酸含量の季節変化は少肥区と多肥区では,全く異なる傾向がみられた。3)レッドトップ中のN含量のみがそのt-アコニット酸含量の増大を促進し,他の無機成分(K,Ca,Mg)含量の増大は逆にそのt-アコニット酸含量の低下と密接な関係を示した。以上の結果より,施肥などを含めた土壌のN供給力が大きく,かっ,Ca,Mgなどの供給力が低い条件下において,レッドトップが優占している草地ではt-アコニット酸が蓄積しやすく,グララステタニー症発生の危険性が高まるものと考えられた。そして,本症発生の地域性を説明する上で,この要因は欠かすことができないことが明らかになった。
著者
今田 貴之 RAZMJOO Khorshid 平野 純子 金子 誠二 石井 龍一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.225-235, 1993-09-20

寒地型芝草のペレニアルライグラス(PR)は,夏の暑さがストレスの原因となるような地域では芝草としての利用が制限される。現在,いくつかの品種が芝草として利用されているので,高温ストレス耐性品種を選抜することは可能だと考えられる。そして,異なる温度での明確な高温耐性の品種間差異を区別できる選抜方法を開発するこは,暑い地域でのPRの各品種の利用の可能性を検討することに役立つと考えられる。そこでこの実験は,PRの各品種の異なる温度での高温ストレス耐性品種の選抜と,その選抜技術を開発することを目的として行った。PR58品種は,人工気象室で栽培した。高温ストレスは,温度を29℃から1日1℃上昇させることにより加えた。そして高温ストレス耐性の評価は,36,38,42,44,46,48℃の各温度での生存率を目視で評価した。36℃のとき,最初の障害がいくつかの品種に発生した。ほとんどの品種は,38℃で耐性があり障害は認められなかった。42℃ではほとんどの品種の生存率は,50%以上で,いくつかの品種がその温度で耐性があると考えられた。さらに,44℃では数品種が生存率50%以上を示した。従って,PRの品種が生存できる温度は,44℃が限界と思われた。46℃のとき,JPR092,JPR123,JPR010は,生存率50%以上を示した。48℃のとき耐性のあった品種の障害は,この温度が生育にとって高すぎ,休眠したことを示していると考えられた。最も耐性の低い品種はJPR005で,耐性の高い品種はJPR178であった。全ての品種がその耐性の違いにより明確に区別できたため,この選抜技術は高温ストレス耐性品種の選抜に利用することができると考えられた。
著者
沼田 真
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.17-32, 1976-04-25

国際生物学事業計画(IBP)のプロジェクトの一つとして草原の生産力に関する研究があったが,私どもがわが国で行った「草地生態系の解析法に関する研究」(1967-1968),「草地生態系の生産と保護に関する研究」(1969-1972)については,JIBP Synthesis(東京大学出版会,1975)のVol.13: Ecological Studies in Japanese Grasslands with Special Reference to the IBP Areaとしてまとめられた。現在国際的なまとめも進行中で,Cambridge Univ. Pressから逐次刊行されることになっている。このためにも私は温帯性草原の一章を書いたが,そのために世界の多くの国々のデータを送ってもらって検討した。以上のまとめは頁数の制限もあり,外国人の編集者の意向もあって,極めて短縮した形のものとなってしまった。ここでは,改めてそれら外国および国内のデータを検討し,世界の温帯地域の採草地草原について,1.半自然草原の構造と組成2.現存量の季節的および年間の変動2.1地上部2.2地下部2.3T/R比3.一次生産の推定と比較4.外的要因の効果4.1火4.2採草4.3冠水4.4施肥4.5食葉性昆虫4.6気侯と土壌
著者
能代 昌雄 平島 利昭
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.289-294, 1978-01-31
被引用文献数
6

根釧地方における牧草の凍害と雪腐病害の発生を確認するために,1974年秋〜1975年春に除雪および防除処理により越冬条件をコントロールし,翌春の冬枯れ状態を調査した。その結果,1)根雪後,積雪区の地表温度は0〜-5℃であったが,除雪区では-15〜-20℃まで冷却された。2)早春の冬枯れ程度はいずれの越冬処理においても,Pr>Or>Mf,Tf>Tiの順に高く,草種間差が明らかであった。Pr,Or,Mfについては寒冷なカナダで育成された品種は他品種よりも明らかに耐凍性が優った。3)越冬中の枯死株は,除雪条件では凍害によって増大し,積雪条件では雪腐病害によって増大した。4)以上のことから,当地方で発生するイネ科牧草の冬枯れは寡雪年では凍害,多雪年では雪腐病害の可能性が大きかった。
著者
吉田 宣夫 高橋 哲二 永尾 哲男 陳 継富
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.177-182, 1993-09-20
被引用文献数
2

ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)を利用して麦稈の栄養価を改善する場合に,子実体生産と両立するか否かの検討を麦稈,麦稈+ふすま20%,オガクズおよびオガクズ+添加物45%の4区を設けて検討した。培養期間は20〜22℃で8週間,子実体発生の誘導は培養4週間後に菌かき・注水して実施し,6週間後に収穫した。菌糸伸張は,オガクズ添加物区,麦稈ふすま区,麦稈区の順に4週目までにほぼ完了し,ビン当り子実体収量(DM・g)は同じ順で12.8,3.6および0.3であった。培地の飼料特性は,乾物が4.3〜22.1%減少し,子実体を収穫するとさらに減少率は大きかった。加温培養中のセルロース変化は,いずれの区も小さかったが,ヘミセルロースの減少傾向は2つの麦稈区で著しく,8週間で40%以上が消失した。また,2つの麦稈区では,子実体収穫後のセルロース減少量が大きくなることがわかった。酸性デタージェントリグニン(ADL)減少率は,オガクズ培地より麦稈のほうが大きく,また,栄養源を添加すると低下した。セルラーゼによる乾物分解率(Ce-DMD)は,2つの麦稈区で4週目まで直線的に減少し,その後回復して開始時より12〜26ポイント改善された。しかし,オガクズ添加物区は8週間減少を続け,子実体を収穫した場合はさらに低下した。培養した麦稈培地を可消化乾物量(DDM)でみると,無添加では11ポイント向上したが,子実体収穫後,ふすま添加のいずれも開始時を下回った。
著者
吉田 重方 松本 博紀 トルン ブイチ 佳山 良正
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.358-361, 1985-10-30
被引用文献数
1

非マメ科植物根における生物窒素固定能についての調査は主にC_4植物を多く含むイネ科植物を対象として行われており,数種のイネ科植物根やその根圏において半共生的な窒素固定(associative nitrogen fixation)が明らかに存在することが報告されている。さらに,イネ科植物のほかにもトクサ科のスギナやトクサおよびシソ科のStachys sylvaticaなどの根圏にも窒素固定能の存在が報告されている。それらはいずれも窒素固定能の間接的検出法であるアセチレン還元法によったものである。同手法は検出感度が高く,かつ低廉,迅速に窒素固定能を測定し得るために未知の窒素固定系を見い出そうとする場合には有力な手段となる。一方,草地における生物窒素固定の主体は言うまでもなく混生するマメ科牧草による共生窒素固定であるが,著者の1人は草地表面に被覆するランソウ(Nostoc sp.)によってもかなりの窒素固定が行われていることを前報で報告した。本報では,草地における上記以外の生物窒素固定系の存在を検索することを目的とし,各種草地雑草根のアセチレン還元能を調査した。
著者
宮崎 昭 志水 正典 石田 元彦 川島 良治
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.151-156, 1984-07-31 (Released:2017-07-07)
被引用文献数
1

近年,水系の富栄養化が進むにつれて,ホテイアオイが急速に生育域を広げている。しかし未だ効果的な防除方法がないので,それを飼料として利用する可能性を調べた。滋賀県西の湖,京都府巨椋および京都大学農学部の用水路または水槽に生育するホテイアオイを,6月から11月にかけて,1ヵ月ごとに採集し,上部(葉身および葉柄)と下部(根)とに分離して飼料成分を調べた。その結果,ホテイアオイは水分含量が著しく高く,新鮮物中93%にも及び,乾物含量はわずかに7%程度であった。飼料成分の生育場所ごとの差異は,有機物,粗蛋白質,炭水化物,粗灰分,NDF,総エネルギー含量および細胞壁構成物質(CW)のin vitro消化率について,5%水準で有意であり,ホテイアオイの飼料成分は生育環境の影響を強く受けることが知られた。なかでも粗灰分含量が乾物中11.8%から20.0%と変異が大きく,また含量も著しく多いこと,さらに粗蛋白質含量も12.3%から19.5%と比較的多い点が注目された。とくに,生活廃水の流入が著しい巨椋で採集されたホテイアオイは,他の2ヵ所でえられたものと比較して,乾物中の粗灰分と粗蛋白質含量が多いようであった。ホテイアオイの飼料成分の季節的変化は,6月から11月にかけての刈取時期別に多少の変化がみられるものの,一般の陸生植物に比較すればかなり小さかった。ただし,6月から8月にかけて採集されたものは,それ以降のものに比較して,乾物中に有機物と炭水化物含量がやや少なく,逆に粗灰分含量が多く,そのため総エネルギー含量がわずかに低かった。ホテイアオイの植物部位別飼料成分は,有機物,炭水化物およびNDF含量が上部に少なく,逆に粗蛋白質,粗脂肪および粗灰分含量が上部に多かった。なお,植物体上部の乾物中のCW含量は6月から10月にかけては70%前後であったが,11月に採集したものではと低く,また,そのin vitro消化率は11月にはとくに低くなっていた。これはホテイアオイの生育が低温のため停止しはじめたことと関連があるようであった。