著者
岡元 英樹 藤根 統 新村 昭憲
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.7-15, 2023-04-28 (Released:2023-06-06)
参考文献数
34

北海道ではTilletia controversaによるコムギなまぐさ黒穂病が大きな問題となっている。コムギは畑酪混合地帯における栽培が多く,近接圃場の寒地型牧草や飼料用麦類を介したT. controversaの蔓延が懸念される。そこで本報では,本菌のこれらに対する病原性を調査した。北海道の発病圃場から採取した厚膜胞子を接種したところ,寒地型イネ科牧草4草種に対しては病原性は認められなかった。ライムギへの感染率は極めて低く,ライコムギにはある程度の感染が認められたが,コムギよりも発病穂率は大幅に低かった。寒地型イネ科牧草4草種が本病の伝染源になるとは考えられず,本病の汚染地域でこれらの栽培を控える必要はないと考えられる。一方,ライムギおよびライコムギの栽培については今後さらに検討する必要がある。
著者
木村 健智 上山 泰史 久保田 明人 藤森 雅博 高原 美規 秋山 征夫
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.55-58, 2014-04-15 (Released:2014-10-06)
参考文献数
20

Reed canarygrass (Phalaris arundinacea L.) has been recognized as a major invasive plant in the US in recent years. In Japan, the differences between the native and invasive genotypes are unclear. To identify these differences, chromosomal analysis using fluorescence in situ hybridization (FISH) with 5S/45S rDNA probes was carried out on 7 populations of putative native Japanese P. arundinacea and 3 exotic P. arundinacea. The results showed that all populations were tetraploids (2n=4x=28). The 45S rDNA were mapped on 4 sites corresponding with the ploidy level in all populations. On the other hand, the numbers of 5S rDNA sites differed among the populations. Moreover, the 5S rDNA sites differed among individuals even within the same populations. Thus, the chromosomal characteristics could not ensure that the putative native Japanese P. arundinacea are the native.
著者
塩見 正衛
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.209-215, 2021-01-15 (Released:2021-03-28)
参考文献数
24

アメリカ統計協会(ASA)の声明(2016年)を契機に,p値と統計的検定の問題点を摘出,草地・農学における実験・調査研究へ問題提起を行った。ASA声明は,例えば平均の差の検定において,大きいp値や帰無仮説の受容は,平均が等しいことを意味していないこと,社会的な実情を顧慮せず, p値だけで科学的結論や政策決定を下すべきでないと述べている。本稿では,p値と統計的検定をめぐるFisher派とNeyman-Pearson(N-P)派の違いを示す。N-P派の検定は新技術創出や品種育成など技術的改良の検討に,Fisher 派の検定とp値重視は新知識の確定に適している。また,多重性はp値に影響するので誤用に注意しなければならない。統計学論理と実用面の教育の充実が,技術的改良や知識発見における錯誤を防ぐ。
著者
山田 敏彦
出版者
日本草地学会
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.263-269, 2009 (Released:2011-07-26)
著者
田川 伸一 堀口 健一 吉田 宣夫 高橋 敏能
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.7-12, 2011
参考文献数
35
被引用文献数
1

リードカナリーグラス(RCG)発酵TMRの発酵品質に及ぼすミカンジュース粕(CiP),トウフ粕(TC),トウモロコシジスチラーズグレインソリュブル(DDGS)および酵素の利用の影響を調べた。RCGを新鮮物重量比で45%と65%の2段階混合する発酵TMRを調製した。また,市販酵素製剤(プロセラーゼ^[○!R],明治製菓(株),東京)を0.2%添加する区を設けた。1ヵ月の貯蔵後,RCGが65%の割合でDDGSを23%配合して酵素を添加した場合,pHは最も低く4.0だった。乳酸含量はTCとDDGS区の酵素添加が高かった。RCG発酵TMRを調製する場合,TCまたはDDGSを20%程度配合すると良質の発酵品質を得ることができ,酵素を添加するとさらに発酵品質が改善された。
著者
早川 康夫
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.177-182, 2003-06-15
被引用文献数
1

"日高地方の沢"では我が国軽種馬の3/4を産しその飼育法は一応この国の規範になっているが、この度競走馬輸入自由化対策として暫く本格検討の機械が与えられた。幸い海成段丘上の北海道大学付属牧場サラブレッド放牧地は、沢の沖積土放牧地に比べ低地力で海霧の襲来が少なく、欧米馬産地なみに不食過繁地の発生が軽微であることから、とりあえずここを欧州馬産放牧地に準ずると見做し、何故乳用牛なみの草丈(30cm前後)の多収放牧草を忌避するのかを調査した。
著者
笠井 恵里 佐々木 亨 岡崎 博
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.95-100, 2006
参考文献数
28
被引用文献数
1

家畜毒性がないとされるメドウフェスク由来のエンドファイト(Neotyphodium uncinatum)をイタリアンライグラス品種ワセユタカ,ウヅキアオバ,ワセアオバ,タチムシャ,シワスアオバ(2倍体),アキアオバ,ミユキアオバ,ナガハヒカリ(4倍体)および育成系統(JNIR-1,2倍体)の幼苗に接種し,接種2か月後のエンドファイト感染率,次代への種子伝染率を検討した。供試品種・系統の全てで接種の成功例が認められたが,感染率は2倍体品種で26-63%,4倍体品種で15-17%,2倍体の育成系統で57%であり,品種・系統間差が認められた。次代への種子伝染率は0-100%であり,各品種・系統間および個体間で差異があった。いずれの場合でも,4倍体品種で感染率が低い傾向が見られた。
著者
川本 康博 金城 隆 池田 元彦 宮城 悦生 本郷 富士弥 古謝 瑞幸
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.141-151, 1992-07-30 (Released:2017-07-07)
被引用文献数
4

暖地型イネ科飼料作物ガットンパニック及びハイブリッドペニセタムを圃場で栽培し,4及び8週間隔の刈取間隔(以下,4週区及び8週区と略)が乾物生産,栄養価値の季節変動に及ぼす影響について明らかにし,さらに,両草種の再生機構についても検討した。試験期間の合計乾物収量は,両草種共に4週区と比較して8週区で増収したが,両草種間の差は認められなかった。季節毎の乾物収量と気象要因との関係では,ガットンパニックが気温上昇するに伴って,乾物生産を高めるのに対し,ハイブリッドペニセタムは気温が約25℃以上であれば,降雨量の多い時期に高い乾物生産を示す違いが認められた。窒素含有率及び乾物消化率は両草種共に4週区で高く,また,生育期間の気温が低下するに伴い直線的に増加した。このため,両草種の窒素収量及び可消化乾物収量における刈取間隔の影響及び季節変動は乾物収量の場合より小さくなった。刈取後における両草種の株部及び根部の乾物重及び貯蔵性炭水化物含有率は,いずれも一旦低下するが,約2週間目に再度増加に転ずる傾向を示した。この回復速度は両草種で異なり,ガットンパニックでは季節的変動は認められなかったが、ハイブリッドペニセタムでは気温が低下した場合には回復が遅延した。
著者
萬田 富治 高野 信雄
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.318-323, 1980

マメ科牧草サイレージの発酵程度および発酵品質とエストロジェン活性の関係を明らかにするために,開花期に刈取った1番草のラジノクローバ,アカクローバ,アルファルファの3草種を用いて,予乾,高水分,蟻酸0.6%添加サイレージを,それぞれ15℃と30℃の貯蔵温度で調製した。原料草とサイレージは凍結乾燥後,粉砕し乾物量で30%ずつ基礎飼料に混ぜて,23日令の去勢マウスに6日間与え,子宮重量反応法によってエストロジェン活性を測定した。ラジノクローバとアカクローバサイレージのエストロジェン活性はいずれの調製条件下でも変化しなかった。サイレージ発酵によってエストロジェン活性が増加したアルファルファサイレージは,15℃と30℃で貯蔵した高水分サイレージと30℃で貯蔵した予乾サイレージの3種類で,高水分サイレージの活性の増加率は15℃貯蔵よりも30℃貯蔵のほうが高かった。15℃と30℃で貯蔵した蟻酸添加サイレージと,15℃で貯蔵した予乾サイレージの発酵程度は低く,エストロジェン活性も原料草と差がなかった。アルファルファの予乾,高水分,蟻酸添加の各サイレージのエストロジェン活性をdiethylstilbestrol (DES)の力価に換算して表わすと,乾物100gあたり原料草が1.42μgであったのに対し,15℃貯蔵では1.44,1.81,1.56μg,30℃貯蔵では1.92,2.67,1.39μgを示し,アルファルファでは発酵程度の高いサイレージほどエストロジェン活性が増加することが明らかにされた。
著者
中西 良孝 服部 育男 田川 光梨 高山 聡子 高山 耕二 神谷 充 佐藤 健次
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.209-211, 2012
参考文献数
3

従来,VBN濃度は微量拡散法や水蒸気蒸留法などの滴定法によって測定されてきたが,最近,飼料中の硝酸態窒素濃度や土壌中のアンモニア態窒素濃度を測定する場合に電気化学的検出法であるイオン電極法(以下,本法)が適用可能であり,土壌のアンモニア態窒素濃度測定においては分析時間が比色法よりも短縮することが報告されている。したがって,飼料中のVBNについても本法による分析が可能と考えられるが,滴定法の代替法としての可能性を追究した報告はない。そこで本研究では,発酵TMRおよびサイレージ中のアンモニア態窒素濃度を簡易に測定するための方法を開発することを目的とし,微量拡散法および本法による測定値間の相関関係を明らかにし,本法が滴定法の代替法となり得るかどうかを検討した。
著者
北村 征生 庄子 一成
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.67-75, 1985
被引用文献数
1

暖地型マメ科牧草Stylosanthes guianensis cv. Endeavour (スタイロ)とMacroptilium atropurpureum cv. Siratro(サイラトロ)およびイネ科牧草Chloris gayana cv. Boma (ローズグラス)とPanicum maximum cv. Gatton (ギニアグラス)を強酸性土壌(国頭マージ)および微アルカリ性土壌(島尻マージ)に4段階の燐(P)施与量(0,100,200,400,600mgP/Pot)の下でポット栽培し,有効態Pに対する乾物生産およびP吸収特性を比較検討した。P施与に対する各草種の乾物生産およびP吸収反応は,イネ科草ではローズグラスよりギニアグラスで鋭敏に現われたが,マメ科草では明確な草種間差が認められなった。90%以上の相対乾物収量を得るためには,国頭マージの有効態Pをマメ科草で15ppm,ローズグラスで40ppm,ギニアグラスで25ppm以上の水準に保つ必要が認められた。島尻マージでは,これより低い水準の有効態Pで90%以上の相対乾物収量が得られた。各草種の乾物収量およびP吸収量は国頭マージより島尻マージで多くなったが,ギニアグラスはP施与量が多いと両土壌間における乾物収量の差が消失した。これは,吸収したPによるギニアグラスの乾物生産効率が他草種より高いため,国頭マージにおいても島尻マージに劣らない根系の生育を示し,土壌中の有効態Pの吸収量が多くなるためと考えられた。また,サイラトロとくらべて,スタイロの国頭マージにおける生育はP施与量が低い場合良好となったが,これは,スタイロの根が高いP吸収効率を示すことに起因すると考えられた。
著者
松中 照夫 高橋 ひかる
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.502-508, 2001

松中照夫・高橋ひかる(2001):イネ科牧草の1番草におけるN吸収能の草種間差異とその発現要因.日草誌47, 502-508. オーチャードグラス(OG), メドウフェスク(MF)およびチモシー(TY)の窒素(N)吸収能における草種間差異を明らかにすることを目的に水耕栽培試験を実施した。根乾物重(根重)および根長を根の大きさにかかわる要因と考え, 単位根重当たりN吸収量および単位根長当たりN吸収量を根のN吸収活性にかかわる要因と考え, 各草種のN吸収能をこれらの要因で比較検討した。 各草種のN吸収量の差異はTY>OG>MFで, これが葉面積の拡大に差異をもたらし, それが乾物生産の草種間差につながった。MFの根重は, 3草種中最も少なかった。しかし, MFの根のN吸収活性にかかわる2つの要因は, TYと大差がなかった。それゆえ, TYとMFのN吸収能の違いは, 両者の根の大きさにかかわる要因, とくに根重の差異に起因した。OGの根のN吸収活性にかかわる2要因は, 1番草を通じてTYのそれらより大きいか同程度であった。それにもかかわらず, OGのN吸収量がTYのそれより少なかったのは, OGの根重の増加がTYより少なかったためであった。したがって, 水耕栽培条件下でのこれら3草種のN吸収能における草種間差発現要因は, 根重であると結論づけられた。
著者
神田 健一 森本 信生 柴 卓也
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.635-639, 2004
参考文献数
12
被引用文献数
3

アルファルファタコゾウムシは北米ではアルファルファの重要害虫であるが,西日本では蜜源用レンゲを加害して養蜂業に重大な被害を引き起こしている。2001年以降関東でも発生が確認されたため,神奈川を除く関東地方における分布を調査した。東京,千葉,埼玉,群馬の平野部ではほぼ全域に分布していた。茨城と栃木の北部ではアルファルファタコゾウムシを見つけることができなかった。アルファルファタコゾウムシはカラスノエンドウ,レンゲ,アカクローバ,シロクローバに生息していた。関東ではカラスノエンドウがもっとも一般的な寄主植物であった。関東の発生源について各県における発生年次と輸入農産物の検疫報告から考察した。