著者
内田 博 高柳 茂 鈴木 伸 渡辺 孝雄 石松 康幸 田中 功 青山 信 中村 博文 納見 正明 中嶋 英明 桜井 正純
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.131-140, 2007
被引用文献数
3

1994年から2003年にかけて埼玉県中央部の丘陵地帯で,20×20 km,400 km<sup>2</sup>の調査区を設定して,オオタカの生息密度,営巣環境,繁殖成績,繁殖特性などを調査した.調査地での生息密度は1996年から2003年にかけて100 km<sup>2</sup>あたり平均12.8から14.0ペアであった.調査地内の隣接最短巣間距離は平均で1.74±0.59 km(±SD,範囲0.79−3.05 km, <i>N</i>=37)であった.営巣樹木は214例のうち,スギが54%,アカマツ30%,モミ13%と常緑針葉樹が97%を占めた.巣の高さは平均14 m,営巣木の69%の高さにあり,胸高直径は平均41 cmであった.巣は林縁から平均68 m,人家から155 m,道路から100 mの距離にあり,人の生活圏に接近していた.繁殖成功率は平均72%で,年により53~87%まで変動があった.巣立った雛は,産卵以降の全巣を対象にした場合平均1.49羽で,繁殖に成功した巣だけの場合,平均2.06羽であった.巣は前年繁殖に使用して,翌年も再使用したものが61%であった.また,9年間も同じ巣を使っているペアもいた.巣場所の再使用率は繁殖に成功した場合65%で,失敗すると50%だった.繁殖に失敗した67例の理由のほとんどは不明(61%)であったが,判明した原因は,密猟3例,人為的妨害4例,巣の落下4例,カラスなどの捕食5例,卵が孵化しなかったもの4例,枝が折れて巣を覆った1例,片親が死亡4例,近くで工事が行われたもの1例などであった.また,繁殖失敗理由が人為的か,自然由来のものであるかで,翌年の巣が移動した距離には有意差があり,人為的であればより遠くへ巣場所は移動した.
著者
小川 巌
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.63-75, 1977
被引用文献数
2

採取したペリットからモズの食性を明らかにする目的で,静岡県磐田市を中心に1972年3月,4月および同年10月から翌年4月までの8カ月間(1972年11月は未採集)調査を行なった。合計151個のペリット中には1,470個体分の食餌が含まれていた。明らかになった結果は次の通りである。<br>1.ペリットの大きさは,長さの平均が18.3mm(10~30mm),太さの平均が9.1mm(7~11mm)であった。<br>2.全体では8目38科57属の昆虫をはじめ,クモ,ワラジムシ,ムカデなどの無脊椎動物および鳥,ネズミ,カエルなどのほか,マサキとネズミモチの種子も含まれていた。<br>3.昆虫では鞘翅目がもっとも多く575%を占めた。とりわけゴミムン類の割合が高く(40.8%),非繁殖期よりも繁殖期の方が高率を示す傾向がうかがえた。次いでホシカメムン科(フタモンホンカメムン),スズメバチ科(フタモンアンナガバチ,クロスズメバチなど)が比較的多く含まれていたが,その他はわずかずつであった。植物の種子は10月に最高に達した(48.2%)ものの,その他の月では皆無かごく少数に過ぎなかった。<br>4.秋から春にかけての季節変化は,種または科ごとに特徴がみられた。スズメバチ科の各種,ケラ,ハムシ,トノサマバッタなどは春に向って次第に減少したのに対し,ゴミムシ科,ワラジムシなどは逆に増加した。<br>5.ペリット分析によるモズの食性が,胃内容分析,ハヤニエの記録およびオオモズなどの食性と異なっている点,ならびにゴミムシ類の比率がきわめて高いことを,モズに特徴的な採餌生態との関連から考察した。
著者
小川 巌
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.p63-75, 1977-11
著者
Toshitaka N. Suzuki
出版者
日本鳥学会
雑誌
ORNITHOLOGICAL SCIENCE (ISSN:13470558)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.103-107, 2012 (Released:2012-12-28)
参考文献数
23
被引用文献数
13

Willow Tits Poecile montanus produce calls when they discover food sources. These calls function to attract conspecific and heterospecific individuals to the food site, thereby facilitating the formation of mixed-species foraging flocks. Since individuals may gain feeding/anti-predator benefits while foraging in mixed-species flocks, the ability of food discoverers to signal food presence would be of adaptive value. Here, I tested this idea by comparing the calls of Willow Tits between food and non-food contexts. Field observations at artificial feeders showed that Willow Tits typically produce calls composed of a single note type (tää note) when discovering food supplies, whereas they usually combine two distinct note types (introductory and tää notes) when moving through forests without a food source. These results indicate that Willow Tits use subtle variation in the note composition of calls to discriminate between food and non-food contexts, and this may serve to regulate the movements and cohesion of mixed-species flocks.
著者
嶋田 哲郎 呉地 正行 鈴木 康 宮林 泰彦 樋口 広芳
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.9-15, 2013 (Released:2013-05-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

東日本大震災が南三陸沿岸で越冬するコクガンに与えた影響を調べるため,岩手県陸前高田市の広田湾から宮城県石巻市の北上川河口にかけて,2011-2012年の冬期に調査を行った.2011年11月下旬~12月上旬,2012年1月上旬,2月下旬の3回,コクガンの分布を調べ,3回の調査でそれぞれ291羽,380羽,403羽のコクガンが記録され,観察されたコクガンの個体数は震災前のデータと大きな違いはなかった.群れが確認された環境をみると,11月下旬~12月上旬と1月上旬では漁港で59%,海上で35-41%と同様な傾向を示した.震災前には漁港でコクガンが観察されることは稀であったが,地盤沈下した岸壁や船揚場に付着した海藻類がコクガンの食物資源となったこと,震災後の漁港への人の出入りの減少に伴いコクガンが妨害を受けずに安定的に利用できるようになったことに加え,震災前の採食場所であったワカメやカキなどの養殖筏が津波によって消失したためと考えられた.一方で,2月下旬になるとそれまでより漁港を利用したコクガンの割合は減少し,海上や砂浜を利用したコクガンの割合が増加した.ワカメやカキの養殖筏の復興,それらに付着した海藻類の生長につれてコクガンの食物資源量が増加したと考えられる.震災によってコクガンの生息環境は大きく変化したが,採食場所をシフトすることでその変化に対応していると考えられる.
著者
森 茂晃 星野 由美子 豊田 暁 田尻 浩伸
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.223-233, 2023-10-24 (Released:2023-10-31)
参考文献数
38

2020年2月に宍道湖に2万羽を超えるトモエガモAnas formosaが飛来していることが確認された.このトモエガモの集団は,朝と夕方に宍道湖を飛び立って湖外に飛行していた.飛行先を調べたところ,斐伊川中流域の丘陵林に降りていることが確認された.その丘陵林にはドングリが結実するカシ類があり,センサーカメラによってカシ類のドングリが落ちている場所で嘴を地面に向けている個体が撮影されたことからドングリを採食していたと考えられた.
著者
酒井 理佐 山田 和佳 西澤 文吾 越智 大介 新妻 靖章 綿貫 豊
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.57-66, 2023-04-25 (Released:2023-05-11)
参考文献数
45

北太平洋西部の日本列島本州沖にて2014年から2018年に混獲されたコアホウドリPhoebastria immutabilis 96個体とクロアシアホウドリP. nigripes 25個体の胃内容物を調べた.胃内にプラスチックを持っていた個体の割合はコアホウドリ(91%)の方がクロアシアホウドリ(48%)より高く,この傾向は北太平洋中央部での先行研究と同じであり,また,飲み込んでいた硬質プラスチックあるいはレジンペレット各々の重量と長さそれぞれの平均はコアホウドリ(0.073 g, 8.25 mm)の方がクロアシアホウドリ(0.031 g, 5.86 mm)より大きかった.このプラスチック負荷の種間の差が,利用海域と食性の種間差によって説明できるとする強い証拠は,本研究では得られなかった.北太平洋でのこれら2種のプラスチック負荷は,南太平洋西部で混獲された,あるいは海岸に漂着したアホウドリ科より高く,その影響が懸念される.

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出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.249-253, 2020-10-26 (Released:2020-11-20)
著者
松井 うみ 三上 修
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.327-333, 2019-10-25 (Released:2019-11-13)
参考文献数
14

スズメPasser montanusがサクラPrunus sp.の花を盗蜜する際,花托筒を噛み切る.その結果,花が地面に落ち花見に影響する可能性がある.そこで本研究では,花見の名所である北海道函館市五稜郭公園において,花見期間中スズメの盗蜜によってどれだけのサクラの花が落とされているのかを定量化する調査を行った.調査の結果,公園内全体の花の少なくとも0.19%,多くとも0.49%が落とされていると推定され,被害はそれほど大きいとは言えないことが明らかになった.
著者
千葉 夕佳
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.75-90, 2020-04-23 (Released:2020-05-16)
参考文献数
51
被引用文献数
2 2

小笠原諸島に生息するノスリの1亜種であるオガサワラノスリButeo buteo toyoshimaiは,極めて個体数が少なく,絶滅危惧種に指定されている.近年,オガサワラノスリは外来クマネズミRattus rattusに餌を依存している.このため,在来生物相の保全を目的とした外来ネズミ駆除は,オガサワラノスリに餌不足をもたらすかもしれない.本研究は,外来ネズミ駆除後の代替餌資源となりうる在来海鳥類を取り上げ,被食海鳥の種類,繁殖ステージ,捕食方法を明らかにすることを目的とした.父島列島の南島において,海鳥の被食痕を探索し,オガサワラノスリによる海鳥捕食行動を観察した.発見した86の食痕のうち,66がオナガミズナギドリPuffinus pacificus,16がアナドリBulweria bulweriiで,両種が全体の95.3%を占めた.オナガミズナギドリ成鳥の被食痕は4–6月,アナドリ成鳥は6,7月,アナドリ幼鳥は9,10月,オナガミズナギドリ幼鳥は9–1月に発見され,産卵から抱雛期の両種の成鳥と,ある程度成長した巣内雛が捕食されることが明らかになった.カツオドリSula leucogasterは,通常の捕食対象とは考えにくかった.オガサワラノスリは,海鳥の営巣地上を飛翔もしくは歩いて探餌し,発見したアナドリを岩陰から脚で引き出した.オガサワラノスリは,オナガミズナギドリを自身の巣から遠い場所で捕えても巣までの運搬が困難であるかもしれず,アナドリは営巣開始時期が遅いために巣内雛の餌資源になりにくいかもしれない.海鳥類がネズミ駆除後の代替餌として十分機能するには,オナガミズナギドリとアナドリの営巣地の拡大と,両種の不在を補う繁殖期の異なる小型海鳥の増殖が必要である.
著者
江口 和洋
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.249-265, 2014 (Released:2015-04-28)
参考文献数
79
被引用文献数
1 1

鳥類の社会形態は多様な進化を遂げており,種間の変異が非常に大きい.社会行動の個体間,個体群間,近縁種間の変異に注目した多くの研究が,変異に連関した生態的要因を明らかにして来た.現在では,多くの野外研究の蓄積と分子系統学の進展により,多岐の分類群にまたがった系統比較が可能となった.しかし,生態的要因だけでは社会形態の多様性を説明できず,その変異の基盤には生活史要因が関与していることが指摘されるようになった.そのための重要なアプローチとして,異なる分類群レベルを対象とした階層的な系統比較法が適用され,どのような生態的要因,生活史要因,環境要因が社会行動の変異と連関しているかを明らかにしつつある.本論文では,鳥類の配偶様式,つがい外父性,種内托卵,協同繁殖,家族形成などの社会的諸現象の出現の変異に関する比較研究の成果を紹介し,鳥類の社会形態への生活史要因の関与についてまとめた.生活史要因は高次分類群間の変異に関与し,一方,生態的要因や環境要因は低次分類群間の変異に関与している.これは,生活史要因は特定の社会現象や行動の出現の素因を与え,その素因を持つ分類群で実際にそれらの形質が出現するかどうかは生態的要因や環境要因が決定するという,階層的な進化過程の理解である.
著者
鈴木 美穂 斎藤 亜緒衣 三上 修
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.179-184, 2022-10-24 (Released:2022-10-31)
参考文献数
18

ハシボソガラスCorvus coroneは,オニグルミの内部の可食部を食べるために,落とすか,車に轢かせて割る行動をとる.どちらの行動をとるかの意思決定において,クルミの割れやすさは重要な要素だろう.これまでクルミの割れやすさを調べた実験はあったが,10月に実施されたものであった.本研究では,10月と12月にクルミの投下実験を行い割れやすさを比較した.その結果,12月のほうが割れやすいことが明らかになった.
著者
橋本 太郎
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.17, no.79, 1962-12
著者
井口 学
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.19-36, 2021-04-23 (Released:2021-05-14)
参考文献数
62

カイツブリTachybaptus ruficollisの質量,標準代謝速度,一回換気量,分時換気量,強制対流熱伝達損失ならびに浮力と流動抵抗に関する損失を基にして,カイツブリの水面滞在時間Tp,潜水時間Tdおよび最大潜水時間Tdmaxに対する簡便な予測法を提案した.カイツブリの質量の関数として求めた予測式は本研究で観察したTp,Td,およびTdmaxの値をそれぞれ15.6%,-7.2%,3.7%の偏差で近似することができた.また,ノドグロカイツブリT. novaehollandiae,シラガカイツブリPoliocephalus poliocephalus,ハジロカイツブリPodiceps nigricollisのTp,Tdについてもカイツブリと同程度の予測精度が得られた.Tdmaxの予測式は回帰分析によって得られた既存の式にほぼ一致することが分かった.
著者
黒田 長礼
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.4, no.18, pp.241-245, 1924-10-28 (Released:2010-03-01)
著者
藤巻 裕蔵
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.233-237, 2011 (Released:2011-10-26)
参考文献数
31
被引用文献数
2 3

The Lanceolated Grasshopper Warbler Locustella lanceolata was censused along one to three 2-km transects (a total of 989) situated in 876 quadrats (4.5×5 km), in Hokkaido from late April to late July, 1976-2010. Warblers were recorded mainly in grasslands along lower and middle reaches of rivers, and those surrounding shallow lakes in Iburi, Ishikari, Tokachi, Kushiro, Nemuro, Abashiri and Soya districts. They occurred in grasslands and agricultural lands, and did not occur in woodlands and residential areas. Occurrence rates (No. of transects of occurrence/No. of transects censused) were 24.0% for grasslands and 3.4% for agricultural lands, and changed significantly in grassland during the study period.