著者
山口 恭弘 吉田 保志子 斎藤 昌幸 佐伯 緑
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.124-129, 2012 (Released:2012-04-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

ヒマワリは近年,バイオマスエネルギーを得るための油糧作物として注目されており,今後栽培面積の増加が予想される.しかし,栽培において大きな問題となるのが鳥害であると考えられる.つくば市の中央農業総合研究センターのヒマワリ圃場4ヶ所,計100aにおいて,キジバトStreptopelia orientalis,カワラヒワCarduelis sinica,スズメPasser montanusがヒマワリを採食しているのを確認した.27回の調査で延べ飛来個体数はそれぞれ,70羽,5,277羽,318羽,調査日あたりの出現頻度はそれぞれ,44.4%,100%,37.0%で,延べ飛来個体数,出現頻度ともカワラヒワが最も多く,最大300羽の群れで採食していた.ヒマワリの食害は花弁がまだ残っている時期から収穫時まで続き,食害を調査した2つの圃場(50aと30a)において,食害されたヒマワリの割合はそれぞれ30.8%と72.1%となり,播種日が早かった圃場で食害が大きかった.ヒマワリを栽培する際には鳥害対策を行わないと収量の大幅な低下につながる可能性が示唆された.

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著者
佐藤 重穂
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.271, 2018-10-25 (Released:2018-11-14)
著者
風間 健太郎
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.3-23, 2015 (Released:2015-04-28)
参考文献数
169
被引用文献数
1 5

鳥類が担う多様な生態系機能の大部分は,生態系サービスとして人間に利益をもたらす.そのうち供給サービスや文化サービスは古くから人間に認知されてきたが,基盤サービスや調整サービスの認知度は低く,その価値評価も不十分である.鳥類は捕食,移動,および排泄を通じて,種子散布・花粉媒介,餌生物の個体数抑制,死体の分解・除去,および栄養塩類の循環などの多様な生態系機能を担う.これらは,有用植物の生産性向上,有害生物の防除,生息環境の創成・維持などの利益を人間にもたらす.近年ではこれら生態系サービスの価値を経済的に評価する試みがなされているが,その実例は少ない.主に農耕地生態系において古くから鳥類の生態系サービスを享受してきた日本においては,その理解と価値評価がとくに必要とされる.
著者
マックヴァーター ダグラスW.
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.83-84, 1988

著者は,1980年から1986年の間にフィリピンに計6回40日以上滞在し,各地で鳥類の観察をした.以下の4種の記録は分布上の新知見であろうと考えられる:アオアシシギ <i>Tringa nebularia</i> (パラワン島新記録),イワミセキレイ <i>Dendronanthus indicus</i> (ルソン島新記録),ハシブトオオヨシキリ <i>Acrocephalus aedon</i> (フィリピン新記録),サンコウチョウ <i>Terpsiphone atrocaudata</i> (ルソン島新記録).
著者
田宮 康臣 青柳 昌宏
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.163-164, 1982

筆者らは南極ロス島バード岬のアデリーペンギン北ルッカリーにおいて,ナンキョクオオトウゾクカモメが,ペンギンの巣からいったん奪い,放棄した生卵を1個採集する機会に恵まれた.そこでこの生卵をルッカリーの中に営巣する一番いのナンキョクオオトウゾクカモメの巣中に入れ,抱卵させる実験を試みた.ナンキョクオオトウゾクカモメはアデリーペンギンの卵を継続して抱卵し,20日後に孵化させた.孵化したアデリーペンギンのひなは,ナンキョクオオトウゾクカモメによってガードされたが,餌を与えられることには成功せず,数日でおそらく飢えのため死亡した.これは,親とひなとの間で給餌行動のパターンが一致せず,また餌の種類や給餌様式もまったく違っているためと考えられる.
著者
濱尾 章二 松原 始
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.85-89, 2001

京都府の木津川河川敷にある砂州で,2000年5月3-5日にウグイス <i>Cettia diphone</i> の調査を行った.ノイバラのやぶが発達した部分で4羽の巣立ち雛が発見された.これらの雛は上面がオリーブ褐色,下面がバフ黄色で,頭部に長い綿羽をもち,体には斑点がなく,口ひげもなかった.また,捕獲により性を判定し、標識して個体識別した雌雄のウグイス成鳥が餌を運んでいた.これらのことから,4羽はウグイスの雛であると判定した.雛の測定値や30-50cmしか飛ぶことができないことから,これらの雛は近隣で巣立ったものと考えられた.調査地では,他にも抱卵斑の発達した雌が3羽捕獲された.しかし,巣は発見できなかった.ウグイスは一般に山地のやぶで繁殖する.調査地は低地の砂州であるが,河川管理による洪水の減少によって1970年代後半から植生が発達し始め,現在はノイバラやヤナギ類,サワグルミが侵入している.河川管理による河川敷の林地化が,ウグイスの繁殖場所をつくり出したものと考えられる.この研究は河川生態学術研究会木津川グループ(代表:山岸哲博士)の調査研究の一環として行われた.
著者
兼常 弥富
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.3, no.12-13, pp.135-140, 1922-03-30 (Released:2010-03-01)
被引用文献数
1
著者
平井 克亥 柳川 久
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.142-147, 2012 (Released:2012-04-27)
参考文献数
23
被引用文献数
1

北海道十勝平野の農耕地景観に営巣するハイタカAccipiter nisusの営巣木および営巣林分の特徴を調べた.調査は2007年~2010年の間に確認した31の営巣木および営巣林分(営巣木を中心とした0.1 haプロット)と営巣に利用されなかった37の林分(非営巣林分)を比較した.その結果,ハイタカが営巣木および営巣林分の樹種にもっとも多く利用したのはカラマツLarix kaempferiであった.しかし,営巣林分と非営巣林分との比較では,常緑針葉樹への選好性が示された.営巣した林分と非営巣林分の植生構造の比較の結果,ハイタカの林分は胸高直径および樹高ともにより小さく,低い下枝高,胸高断面積および立木密度は高い値を示し,ハイタカは構造的に林内空間の閉じた若齢林を選択していた.この常緑樹の若齢林へ選好性は,同所的に生息する捕食者のオオタカA. gentilisによる捕食リスクを低減するための選択の可能性,または採餌環境として適しているためかもしれない.
著者
邊見 十郎
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.4, no.16-17, pp.126-127, 1924-06-15 (Released:2010-03-01)
著者
正富 宏之
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.69-71, 1999-01-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
11

マナヅル Grus vipio は,アムール川流域の中国とロシアで繁殖し,長江流域や朝鮮半島のほか,九州の出水でナベヅル G.monacha などと共に越冬する.江戸時代までマナヅルは日本各地で見られたが,昨今は出水を除き散発的に現れるに過ぎない.日本でこれまで本種の営巣確認例はなかったが,1985年に北海道中央部の長沼町舞鶴地区の水田あぜ道で産卵したとの情報を,1997年11月になって入手した.その後1998年6月までに現地調査を数回行い,繁殖は成功しなかったものの1番いが2卵を産み,1羽(性別不明)が6月28日に死亡(おそらく農薬の影響)したのを確認した.巣は極めて粗雑で,イネ科草本(Poa spp.)の叢上にわずかな枯れ草を置いた程度とのことであった.今回の営巣地域はかつて広大な湿地で,タンチョウ G.japonesis も繁殖していたが,今は干拓され営巣適地はない.現在道東で繁殖しているタンチョウも,人の活動領域近くで貧弱な巣作りと産卵を行うことがある.本例も,マナヅル本来の繁殖環境と異なるところでのやや異常な営巣ながら,日本における本種の営巣初確認例である.
著者
和田 岳
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.41-51,77, 1994-03-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
17

京都大学構内の6.1haの調査地において,キジバト(Streptopelia ortentalis)の繁殖に関する観察を行なった.キジバトは京都では一年中観察することができ,京都大学構内でも樹木に巣をかけて繁殖している.鳥類において,繁殖に古巣を利用する例は多く知られている.そのうち樹洞で繁殖を行なう種や猛禽類のなかには,新しく巣を造るという選択ができずに古巣を利用していると考えられるものもある.一方で新しく巣を造ることができ,また事実新しく巣を造ることがあるにも関わらず,古巣を利用する種もある.このような種の古巣利用に影響を与える要因としては,繁殖期の初期には古巣利用の頻度が高いこと,また存在している古巣が多いほど古巣利用の頻度が高いことが指摘されている.キジバトは,新しく巣を造って繁殖するだけでなく,頻繁に古巣を利用して繁殖する.また古巣利用には,過去に自分が利用した巣を再び利用する場合と,他個体によって造られ自分は一度も利用したことのない古巣を利用する場合を区別することができる.そこで本稿では,以前に利用したことがある古巣と一度も利用したことのない古巣とを区別して,どのような要因が古巣利用に影響を与えているかについて分析を行なった.すべての繁殖のうち,47.4%で新しい巣を利用し,14.1%で利用経験のある古巣を,10.9%で利用経験のない古巣をそれぞれ利用した(n=192).新しい巣と古巣,利用経験のある古巣と利用経験のない古巣,いずれの間でも繁殖結果に有意な違いは認められなかった.京都ではキジバトは一年中繁殖を行ない,繁殖のピークは8月から10月であり,12月から3月の間は繁殖はほとんど記録されなかった.新しい巣を利用した繁殖と古巣を利用した繁殖の割合を比較すると,4月から6月には新しい巣が利用される割合が高く,古巣の利用される割合は10月から3月に高かった.一つの巣が繁殖に利用される回数は平均1.56回であり,最大では7回利用された巣もあった(n=123).巣が利用される回数に影響を与える要因について検討すると,巣が長い間存在しているほど,また巣が樹の中で低い位置にあるほど,利用される回数が多いという結果が得られた.キジバトの古巣利用に関わる要因を,周囲に存在する古巣の数や直前の繁殖経験などを考慮して分析した結果,周囲に存在する古巣の数の有意な影響は認められなかった.その一方で,直前の繁殖経験は古巣の利用に有意の影響を与えるという結果が得られた.すなわち,キジバトは新しい巣で繁殖したあと古巣で,古巣で繁殖したあと新しい巣で繁殖する傾向があった,また前回の巣場所から離れた場所で繁殖する場合,利用経験のない古巣を選ぶ傾向があった.前回の巣場所から次の巣場所までの距離は,繁殖に失敗したあとの方が,成功したあとよりも大きくなる傾向があった.しかし前回の巣場所から次の巣場所までの距離と,次の繁殖の結果との間に特に関係は認められなかった.2回以上利用された巣において,その利用者がかわったのは37.7%であり,34.8%の場合において利用者はかわらず,残りの例では判断を下すことができなかった(n=69).あるつがいが以前に利用したことのある巣を再び利用する場合,27例のうち26例において,その巣の直前の利用者もまた同じつがいであった(すなわち巣の側から考えると,利用者はかわらなかった).巣の利用者がかわった場合の直前の繁殖成効率は,かわらなかった場合に比べて有意に低かった.しかし利用者がかわった直後の繁殖結果は,かわらなかった場合と比べても有意な差は認められなかった.古巣が利用される割合に季節的な傾向が認められたが,キジバトは一年を通じて繁殖し繁殖期がはっきりしないため,繁殖期の初期に古巣利用の頻度が高いかどうかを充分に検討することはできなかった,周囲に存在している古巣の数はキジバトにおいては古巣利用に影響を与えておらず,単なる古巣の存在が古巣利用を促しているわけではないと考えられる.キジバトの新しく巣を造るか古巣を利用するかという選択に,その前の繁殖経験が影響を与えることがいくつかの分析の結果から示された.また古巣を利用する時,利用経験のある古巣を再び利用するか,それとも利用経験のない古巣を利用するかという選択にも繁殖経験が影響を与えていた.このことは,キジバトが古巣を選ぶ際にこの二種類の古巣を区別していることを示唆していると考えられる.
著者
岡 奈理子 土屋 光太郎 河野 博 菊池 知彦 丸山 隆
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 = Japanese journal of ornithology (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.52-56, 2013-04-23

伊豆諸島鳥島(北緯30°29′02″東経140°18′11″)で,2000年5月中旬,巣立ち期に近いクロアシアホウドリ<i>Phoebastria nigripes</i>(Audubon 1849)のヒナが吐出した胃内容物を採取し同定した.4羽すべてが中深層性の遊泳動物を吐出した.このうちイカ類はアカイカ科トビイカ属トビイカ<i>Sthenoteuthis oualaniensis</i>,ダイオウイカ科ダイオウイカ属,サメハダホオズキイカ科オオホオズキイカ属,ユウレイイカ科ユウレイイカ属,魚類はクロボウズギス科,エビ類はヒオドシエビ科アタマエビ属アタマエビ<i>Notostomus japonicus</i>の成体であった.クロボウズギス科はクロアシアホウドリの胃内容物から初めて出現した.クロアシアホウドリの親鳥自らがこれらの中深層性の遊泳動物を自力で捕獲したとみるより,人間活動により投棄されたり,餌動物自らが潜水遊泳に長けた高次捕食者の採食活動や他の理由で死んで浮上したものを,採食した可能性が高いと考えられた.クロアシアホウドリが本来は採食機会がない中深層性の遊泳動物を採食していたことは,彼らが海洋のスカベンジャー,もしくは人間活動や他の高次捕食者の採食活動などに依存した採食ニッチを持つことを示す.
著者
Hajime Matsubara
出版者
日本鳥学会
雑誌
ORNITHOLOGICAL SCIENCE (ISSN:13470558)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.103-111, 2003 (Released:2005-09-09)
参考文献数
16
被引用文献数
10 20

Jungle Crows (Corvus macrorhynchos) and Carrion Crows (C. corone) are common species in Japan. They are closely related and considered ecological “generalists”. I carried out a comparative study on territory and habitat use of these crows in an area where they occur syntopically. The two species defended their territories both intra- and interspecifically. The feeding behavior on the ground and the microhabitats in the territories differed between the species. Jungle Crow territories contained more urban areas, and they foraged mainly at garbage stations. In contrast, Carrion Crows mainly foraged in natural or at least un-paved microhabitats and stayed longer on the ground. Differences in microhabitat use and feeding behavior seemed to contribute to ecological separation between the two species of crows.
著者
石川 俊浩 中村 登流
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.159-171, 1988-08-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
9
被引用文献数
2

1985年の春と秋の渡り期に,新潟県上越地方のいわゆる頸城平野に渡来したシギ•チドリ類の採食行動を調査した.採食行動については歩く歩数とつつく回数を記録し,これを種別,環擁別に比較した.1)シギ科はほとんど停止することなく歩きながら採食していくが,チドリ科はつい球み回数と同じくらい停止をしている.2)シギ科,.チ.ドリ科ともに科内では体の小さいもの翠ど単位時間あたり高頻度についぼんでいる傾向がみられた.3)チドリ科は春,秋ともにシギ科よりついばみ回数が少ない傾向があり,ついばみ回数種間差より歩数の種間差が大きかった.4)一方,シギ科は春,秋とおして一般にチドリ科よりもついばみ回数が多く,かつその変異は非常に大きかった.5) シギ科のハマシギとキリアイは,水の中に入るとつつき採食からさぐり採食になり,その分嘱の使用時間が増えるため歩数が減る.6)以上より,シギ科の生態的分離は嘱の使い方に重点がおかれているが,チドリ科のそれは歩幅を変えることに重点がおかれていると考えられる.
著者
Tetsuo Shimada Naoya Hijikata Ken-ichi Tokita Kiyoshi Uchida Masayuki Kurechi Hitoshi Suginome Yumi Yamada Hiroyoshi Higuchi
出版者
日本鳥学会
雑誌
ORNITHOLOGICAL SCIENCE (ISSN:13470558)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.37-45, 2016 (Released:2016-02-05)
参考文献数
30
被引用文献数
5

Japan hosts more than 40% population of Brent Goose Branta bernicla wintering in East Asia. We used satellite-tracking technology to monitor the seasonal movements and habitat usage of Brent Goose wintering in northern Japan. We marked five geese on the Oya sandy beach, Miyagi Prefecture, northeast Honshu, on 21 January 2014. The geese utilized areas along the seacoast, especially concentrating at a small bay, close to the capture site. Most of the geese offshore were found at fishery rafts. No geese were found more than 2 km offshore or more than 6 km from the capture site along the seacoast. In early April, the geese left the southern Sanriku coast and moved up to eastern Hokkaido, crossing the sea directly or via the coastal areas of Iwate and Aomori Prefectures. The geese predominantly remained in the vicinity of the Veslovskiy Peninsula, Kunashiri (Kunashir) Island, while some were distributed along the northern coast of the Nemuro Peninsula. We identified eastern Hokkaido and Kunashiri Island as important stopover sites for Brent Goose wintering in Japan.
著者
松井 晋 Audrey STERNALSKI Christelle ADAM-GUILLERMIN 笠原 里恵 五十嵐 悟 横田 清美 渡辺 守 上田 恵介
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.169-174, 2015 (Released:2015-12-13)
参考文献数
21
被引用文献数
2

福島第一原子力発電所事故から1年後の2012年に東京,長野,茨城,福島を含む地上から1 mの空間線量率が0.11-21.4(μGy/h)の地点で回収したカラ類(シジュウカラParus minorもしくはヤマガラPoecile varius)の主にコケ類を用いて作られた巣材の放射性セシウム[Cs-134+Cs-137]濃度は6.6-6,128.9(Bq/g dry weight, n=14)となり,空間線量率が高い場所で採集した巣材ほど,巣材の放射性セシウム濃度が高くなる傾向があった.これらの結果は,地上1 mの空間線量率は相対的な巣材の汚染レベルの指標になりうることを示唆し,空間線量率の高い地域ほど巣材に含まれる放射性物質から繁殖期に卵,雛,親が近接的に受ける外部被曝線量率が増加すると考えられた.