著者
伊関 克彦
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1984

博士論文
著者
井上 彰 後藤 玲子 DUMOUCHEL PAUL
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

平成29年度は、平成28年度の研究、すなわち、「平常時」から(部分的にせよ)かけ離れたカタストロフィ後の世界において、分配的正義を支える価値や理念がいかなる身分を有するのかについて精査し、そのうえでカタストロフィ後の世界に適用可能な価値の構成や適用順序について明らかにする研究をふまえて、わが国を含む様々な国や地域の不平等や不正義の問題への応答を試みた。具体的には、政治哲学パート(井上彰が担当)では、これまでの復興にかかわる分配的正義をめぐる原理的議論を分析哲学の手法を用いて批判的に吟味し、経済哲学パート(後藤玲子が担当)では、復興にかかわるような格差を生む分配メカニズムについての考察を、経済学や社会的選択理論の知見をふまえるかたちで進め、社会哲学パート(Paul Dumouchelが担当)では、カタストロフィ後の経済社会のあり方、ありうべき姿について社会思想史やロボット哲学・倫理学の観点から検討した。その研究成果の一部として、研究代表者の井上が主催するかたちで、2018年1月19日に、Questioning Methods, Theory, and Practice in History and Politicsと題するシンポジウム(Strategic Partnership Program: The Australian National University and the University of Tokyo, Australian National University-University of Tokyo Joint Research Seminar)を東京大学駒場キャンパス(東京大学大学院総合文化研究科グローバル地域研究機構アメリカ太平洋地域研究センター)にて開催し、政治や歴史をめぐる方法論的反省とその刷新可能性について分野横断的に議論した。
著者
田口 速男
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

おもにアミノ酸残基置換による解析から、Lactobacillus plantarum D-乳酸脱水素酵素(D-LDH)においては、His-296が酸塩基触媒として作用し、Arg-235が基質の結合に重要であることが示された。すなわちこれらの残基は、L-LDHのHis-195とArg-171にそれぞれ対応し、両LDHは、進化的には大きく隔たる酵素でありながら、きわめて類似した基質結合と触媒の機構を備えていることを示している。さらにL-LDHにおいてはHis-195と対をなすAsp-168の負電荷が、基質ピルビン酸との結合及び触媒上の遷位状態の構造を安定化していると考えられているが、そこでこれに対応する残基をD-LDHにおいて検索した。D-型酵素ファミリーにおいて保存されている、193、200、240位のAsp、264位のGlu残基のカルボキシル基を、それぞれ部位指定変異によりアミド基に置換したところ、Glu-264をGlnに置換した場合にのみ大きな活性低下が見られた。既にL.bulgaricus D-LDHにおいて、Glu-264をGlyに置換した変異型酵素が報告されている。この場合には酵素活性は大きく低下せずに、そのpH依存性が大きく酸性側にシフトしたことから、Glu-264は触媒活性に必須ではなく、触媒His残基の近傍に位置することにより、酵素のpH依存性を中性付近に調節している残基と考えられている。しかしながら、L.plantarum D-LDHにおいてGlu-264を同様に負電荷を消失させるGlnに置換した場合には、顕著なpH依存性のシフトは認められず、並異型酵素は、大幅に増大したKm値と減少したkcat値を示した。この結果はL-LDHにおいてAsp-168をAsnに置換した結果によく対応し、本残基がL-LDHにおけるAsp-168のそれと相同な機能を持つことを強く示唆している。本結果はL.bulgaricus酵素の結果と異なるが、もし両D-LDHにおいてGlu-264の機能に相違が無ければ、L.bulgaricus酵素の場合は、残基を側鎖の無いGlyに置換したために、酵素の構造にさらに大きな変化が引き起こされた結果とも考えられる。

1 0 0 0 OA 大日本史料

著者
東京大学史料編纂所 編
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
vol.第12編之22, 1920
著者
野島 高彦
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

蛋白質やペプチドなどの生体分子を固体表面に保持するための手法を開発することを本申請課題の目標とした.そのための第一段階として,ペプチドをプローブとして保持したチップ上において,ペプチド-蛋白質相互作用を行うための分析手法を開発した.ここではペプチドをオリゴヌクレオチドとのコンジュゲートとして調製することによって,疎水性ペプチドであっても水溶液中において取り扱い可能となることを期待するとともに,先行するDNAチップ技術を取り込むことを目論んだ.また,オリゴヌクレオチドコンジュゲートの二重鎖置換能を利用することによって,新しい概念の生体分子間相互作用検出法を実現することも目標とした.リガンドをオリゴヌクレオチドと共有結合することによって,分子間相互作用の特異性が損なわれる恐れがある.そこでオリゴヌクレオチドと共有結合したリガンド分子と,水溶液中のリガンド分子とによる競争標的蛋白質結合実験を行い,生体分子間相互作用能を維持した状態でのリガンド固定法を実現するための基礎的知見を得た.続いて,オリゴヌクレオチド分子が可逆的に二重鎖を形成および解離する性質を利用して,リガンド分子を固体表面上において可逆的に着脱する分子操作法確立を試みた.分子鎖置換における熱力学的最適条件の検討を含め,基礎なデータを収集し,オリゴヌクレオチド分子がコードする情報を用いて生体分子間相互作用の有無を検出する,新しい概念の分析手法を実現した.さらに,リガンド-情報分子コンジュゲートをマイクロリアクター内に導入し,微小空間内における分子鎖置換反応を達成するための予備的検討にとりくんだ.約1cm四方のDNAチップ上にマイクロ流路を組み合わせたマイクロ流体デバイスを作製し,これを用いた生体分子ハンドリングに関する基礎的知見を得た.
著者
高橋 宏知
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では,多様性を生み出す能力を明らかにするために,シャーレ上に培養した神経回路において,どのようにして静的な神経回路構造から動的な活動パターンが生じるかを調べた.特に,培養神経回路によるリザバー計算を考えたとき,培養神経回路のリザバーとしての特徴を明らかにした.神経回路が自発活動で時空間パターンの再現性と多様性を両立するメカニズムとして,神経回路に部分的な神経集団が存在し,部分集団単位で逐次的に活動伝達することで安定性を確保し,かつ自律的な内部状態依存で部分集団間の関係が変化することで多様性を両立することを示した.
著者
岩田 修一 陳 迎 金田 保則
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

データ駆動型の方法論の基礎を提示するため、データサイエンスの視点から検討した.材料データを記述するための変数群 : メタデータは複雑で、精度や粒度も多様であるため、それらの非均質性に適応可能な測度論を検討し、データシステムの基本的な枠組みとした.データは、測定対象の属する空間あるいはメタデータが張る空間の部分集合についての「何か」をはかった結果についての記述であり、部分集合の測度とよばれる.データ駆動型材料設計は、データを集積することによって、社会のニーズに対応した解空間を作成し、ニーズに最も適合した材料の組成、諸構造、特性、価格を特定する設計作業と定義した.測度については、観測・測定方法あるいは経済性の限界に依り不完全であるため、多様なデータ群を目的に沿って誤差を補正し不完全な部分をモデルや近似により補完し、ニーズに合うデータ群を探索(写像)するプロセスを、材料データベースをプラットフォームにして実装し、データ駆動型材料設計の実例の蓄積をWeb 上で展開した.
著者
白川 理香
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

今年度は眼瞼下垂手術前後のヒトの瞼板およびマイボーム腺形態について観察を行った。眼瞼下垂症に対する挙筋腱膜縫着術では縫合糸が瞼板内に恒久的に留置されるが瞼板やマイボーム腺に対する影響はわかっていない。眼瞼下垂症に対する挙筋腱膜縫着術の眼瞼およびマイボーム腺に対する影響について調査した。眼瞼下垂症手術を受けた31例47眼(男性 5例、女性26例、平均年齢74.3歳±9.0歳)に対して、術前の挙筋機能(mm)、術前、術後6か月の瞳孔上眼瞼距離MRD (mm)、瞼裂高(mm)、上下マイボスコアおよび術後6か月での上眼瞼翻転の可・不可および翻転時の瞼板形態を記録した。結果は、術前の挙筋機能は平均10.9㎜と保たれており、術前と術後6か月を比較するとMRD、瞼裂高は有意に増加した。術後19%が上眼瞼翻転不可になり、術後55%が上眼瞼翻転時に瞼板のひきつれを生じた。マイボグラフィー撮影できた上眼瞼36眼では術前後でマイボスコアに変化を認めなかった。以上より眼瞼下垂症手術で瞼板に通糸を行ってもマイボーム腺の形態変化は起きない可能性が示唆された。また術後上眼瞼の翻転が不可能になる症例があり、注意を要することが分かった(日本眼科学会総会2018年、ARVO2018)。また、緑内障手術後濾過胞を有する眼に対する眼瞼下垂症手術についての安全性、有効性についても検討した。18名19眼を観察し、眼瞼下垂症手術後に有意にMRD、瞼裂高が改善し、術後眼圧上昇を認めず、濾過胞関連の合併症も認めなかったことより、安全性、有効性が確認された(日本眼科学会総会2018年、ARVO2018)。
著者
和泉 潔
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

似研究の目的は、非常に稀で予測困難だが甚大な影響をもたらす社会的状況にも対応し、頑強で信頼性の高い社会制度や経営戦略を設計するための工学的手法を開発し、実際の社会現象に適用することである。そのために、実データを基に稀な社会事象の内部メカニズムを探るための社会シミュレーション技術である「可能世界ブラウザ」を開発する。最終的に、(1)実データに基づく社会行動ルールの推定と(2)稀な社会状況の対話型シナリオ構成、(3)社会状況の発生メカニズム・操作戦略の推定といった基盤技術を開発する。当該年度では、下記の実問題の分析結果を反映させ、想定外のリスクとチャンスを分析対象にした可能世界ブラウザの実問題応用への手法開発を行った。金融市場制度設計:数時間から数日間までの比較的短期間の市場と数年間の長期の金融システムの不安定性という、まれに起こるリスクを予防するための市場制度設計を目的とする応用を行った。高頻度市場データを分析して、ユーザに制度や取引戦略と市場安定性の関係を提示し、制度設計で設定すべき要素を示唆するための応用技術を開発した。マーケティング応用:数週聞から数カ月間のネットワークリスク急増という、まれに事象を引き起こすための金融マーケティング戦略を探るために可能世界ブラウザを応用する実証研究を行う。研究協力者の有するデータの分析をもとにしたエージェントベースの金融マーケティングシミュレーションを構築した。
著者
鈴木 通夫
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1953

博士論文
著者
清水 有子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は、16-17世紀、日本の統一政権によるキリスト教禁教が徹底した排撃性をともなった原因を、清朝中国および李氏朝鮮の同事例との比較を通して考察し、そこから東アジアにおける近世日本の統治の特質を解明することを目的としている。本年度の研究成果は以下の2点である。第1に、日本のキリシタンの内面的世界と在地社会への影響解明に取り組んだ。イエズス会宣教師の報告書を読解したところ、当該期の日本人のキリスト教受容の特徴として、受容が個人の問題ではなく、個人に優越する地位を占め、個人を規制していた共同体の問題であることが考えられた。このため、戦国期の社会構造やそこで既存宗教(寺社等)が果たしていた役割をテーマとする先行研究を収集・読解し、当該時期のキリスト教受容の構造を歴史的に理解し把握することに努めた。その結果、日本では領主領民が一体となったキリシタン領国を形成したが、彼らはキリスト教信仰を通して外国の統治者、政治勢力との精神的紐帯を有し、固有のヴィジョンあるいはアイデンティティを持つ勢力として成長しつつあった点が明らかとなった。またこの点こそが日本の統一権力に過酷な禁教政策をとらせた要因であるという結論に達した。以上について本年度中に活字の成果を出すことはできなかったが、平成24年8月に開催される東北アジアキリスト教史学会で口頭報告する予定である。第2の成果として、従来の研究成果をとりまとめ、単著『近世日本とルソン-「鎖国」形成史再考』を東京堂出版より刊行した。本書では、日本のキリシタン禁教政策を、フィリピン諸島ルソン島のスペイン勢力との交流関係を切り口に再考し、日本のキリシタンの自律的動向を禁教の原因とみなした。本年の研究成果から、日本のキリシタン禁教は、ルソンとの交流関係を背景に、外国の君主との精神的紐帯を有する固有の領主勢力として成長しつつあった、キリシタンに対する統一政権の対抗的措置とみなすことができる。そしてその過酷さの要因は、キリシタンが統一政権に代わり国家統治を担う勢力として抬頭することを可能とした、日本の社会構造に求められる.
著者
丸尾 文治
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1954

博士論文
著者
池谷 裕二
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

もし今まで感知できなかった情報を、人工センサを通じて脳に直接送る方法が開発された時、被験体の脳はその情報を人工センサとともに、すみやかに同化し、活用することができるだろうか。本研究では、磁界の向きを感知し、脳へシグナルを送る「磁気知覚センサ」を開発した。この磁気知覚センサをラットの脳に刺激電極を介して接続することにより、ラットは一次視覚野に直接送られるシグナルを手掛かりとして空間記憶課題を解くことができることを示した。すなわち、補助センサを脳に装着することによって動物が生来感知できないものを新たに感知し、活用できるようになる可能性が示唆された。
著者
都司 嘉宣
出版者
東京大学
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.291-298, 2010-03-29

At 2 PM, on 7th December 1828, a major earthquake occurred at Kanagawa post town, in Yokohama city. In the present study, using historical documents describing this event, we obtain a detailed map of the distribution of seismic intensity. It is clarified that the area of seismic intensity 6 to 7 (JMA scale) covers the main areas of Yokohama city. The area of intensity 5 covers whole part of Tokyo city zone, the eastern part of Kanagawa prefecture. The magnitude of this event was estimated at 6.4 using the area of intensity 5.