著者
中西 守
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1974

博士論文
著者
田中 英彦
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1970

博士論文
著者
竹村 彰通 駒木 文保 清 智也
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

Vladimir VovkとGlenn Shafer によるゲーム論的確率論は以下の著書でその基礎が与えられた.Glenn Shafer and Vladimir Vovk. Probability and Finance:It's Only a Game! Wiley, New York, 2001そこでは,Skepticとよばれる賭をする人と,Realityとよばれる賭の結果を定める人の,二人のプレーヤーの間のゲームを設定することにより,ゲームの結果として確率が定まることが示されている.注目すべきは,測度論無しに,大数の強法則,中心極限定理,重複対数の法則,さらに数理ファイナンスにおける価格付けの諸公式,などが証明される点にある.竹村は,竹内啓,公文雅之との共同研究を通じて,ゲーム論的確率論に関する新たな結果を得ている.これらはtechnical reportとして発表されていたが,研究発表に示すように国際雑誌に刊行の段階となっている.また竹村はShafer氏およびVovk氏とも共同研究を進めており,以下の研究成果を得た."The game-theoretic martingales behind the zero-one laws", by Akimichi Takemura, Vladimir Vovk and Glenn Shafer. Techinical Report METR 08-18, March 2008.この研究では,測度論の諸仮定をおくことなく,コルモゴロフの0-1法則などの0-1法則の一般的な形をゲーム論的枠組で示している.
著者
小山 隆太
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2016-06-30

神経発達障害を含む脳疾患の非侵襲的な治療法として、運動の有効性が注目されている。しかしながら、運動を行動に反映する分子細胞生物学的メカニズムの解明は後手を踏んでいる。そこで、我々は、母体免疫活性化(MIA)によって子に生じるMIA関連性行動異常に運動が有効な可能性と、その分子細胞生物学的メカニズムを明らかにすることを目的とした研究を行った。ウィルス感染を模倣したMIAを誘導するため、妊娠マウスにpoly(I:C)を投与した。その結果、このマウスより産まれた仔では、社会性の低下や常同行動の顕在化、そして不安行動の増加などのMIA関連性行動異常が成体期に顕れた。そして、これらのMIA関連性行動異常は、飼育箱に車輪を入れ、自発的に30日間運動をさせることによって抑制された。本研究では、歯状回顆粒細胞層の軸索である苔状線維の興奮性シナプスに着目した。その結果、MIA群では、発達期におけるシナプス除去が阻害される結果、成体期においてコントロール群よりもシナプス数が上昇していた。さらに、このシナプス数の上昇は運動によってコントロールレベルにまで低下することも明らかになり、運動による積極的なシナプス除去機構が働く可能性が示唆された。そこで、貪食によってシナプス除去を行うマイクログリアの動態に着目した。まず、発達期において、MIA群の海馬CA3野では、マイクログリアによるシナプス貪食がコントロール群より低下していた。さらに、成体期においてもMIA群のシナプス貪食は低下していたが、運動を行うことにより、シナプス貪食はコントロールレベルにまで回復した。なお、運動による効果はマイクログリア活性化を抑制するミノサイクリンの投与で阻害された。以上の結果は、成体期の運動による神経回路再編成に、マイクログリアが関与する新規メカニズムを提唱するものである。
著者
田岡 和城 荒井 俊也 吉見 昭秀
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

iPS細胞からCD34陽性CD38陰性CD43陽性の造血幹細胞様血球を作成、および多系統の血液細胞への分化誘導させることが可能とした。具体的なプロトコールは、iPS細胞を10T1/2細胞と共培養し、day1からday4にBMP4、day4からday9までIL3、day9からSCF、FLT3、TPO、IL3で順次サイトカインで刺激すると、造血幹細胞に認められるCD34陽性CD38陰性CD90陽性分画を認めた。誘導したCD34陽性造血前駆細胞をそれぞれ顆粒球、単球、赤芽球、巨核球への分化誘導が可能であり、多系統への分化能が保持されていることを示した。
著者
畑中 研一
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

動物細胞を糖鎖生産工場と見立てて糖脂質の類似体を合成するバイオコンビナトリアル合成法を用いた糖脂質GM3(NeuAca2-3Galβ1-4Glcβ1-Cer)類似体の生産における最適条件を詳細に検討した。アルキル鎖の根元にアジド基を導入した糖鎖プライマーは他のプライマーと比べて約2倍糖鎖伸長を受けやすいことが明らかとなったが、プライマーの界面活性能を測定することによりこの理由も明らかにした。また、播種細胞数依存性、プライマー濃度依存性、培養時間依存性についても明確な依存性を確認し、最適条件を決定した。さらに、検討した最適条件を用いてのGM3類似体の大量合成と、生成物の分離精製方法も検討した。次に、GM3とepidermal growth factor receptor(EGFR)の相互作用や細胞における外因性/内在性GM3について検証した。GM3とEGFRの相互作用の機序を、共焦点レーザー顕微鏡による画像解析など様々な手法により明らかにした。さらに、GM3の代謝中間体であるlyso-GM3のオリゴマー化、合成された化合物のキナーゼ活性への阻害効果や細胞毒性を評価した。EGFRを高発現しているA431細胞に各化合物を様々な濃度で添加したところ、lyso-GM3 dimerに高いチロシンキナーゼ活性阻害能が見出された。大量合成の可能性が示されたGM3類似体(lyso-GM3 mimetic)を応用して同様な機能性糖鎖含有分子の合成を行い、それらがEGFRの関係する生理現象に及ぼす作用を検証した。A431細胞にこれらの各々の化合物を投与し、糖鎖伸長したプライマーを応用した新規化合物であるmimetic dimerに天然型であるlyso-GM3 dimerと同様のEGFRのチロシンリン酸化阻害能があることを示した。さらに、EGFRシグナリングの下流にあたるAktや細胞増殖も抑制することを明らかにした。EGFRとGM3の直接的相互作用を、SPR法を用いて詳細に解析した。結合定数やkinetics parameterの解析により、EGFRと糖脂質の相互作用が特異的であることを発見した。
著者
大西 弘高 任 和子 西薗 貞子 北野 綾香
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

看護領域の臨床推論と混同されやすい看護過程と看護診断について概念の整理を行った。そして看護領域の臨床推論には、医学モデルに基づく推論と、看護独自の視点に基づく推論の2つがあることが明らかになった。多職種協働の発展に従い、看護師の特定行為研修で医学モデルの臨床推論がカリキュラムに組み込まれたこともあり、看護師の臨床推論と医師の臨床推論は歩み寄ってきている。臨床推論の教育方法としては、複雑さと不確実性の中で患者の経時的な変化を捉えて推論・判断を行う練習をするために、ケース・スタディが有効である。その方法の一つとして、Inquiry-based Learningがある。
著者
橋爪 大輝
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

本研究は、政治理論家ハンナ・アーレントの思想を哲学/倫理学的な観点から体系的に解明することを目ざすものである。当該年度は、下記の点において研究の進展を見た。(1)アーレントは、世界において他者とかかわる人間が、かかる他者と世界から後退し自分自身と対話することで自立を確立すると考える。彼女が思考と呼ぶのはこうした動態に他ならない。思考の機制と構造を、論文「〈一者のなかの二者〉の構造と成立機序」(『倫理学年報』第66集、日本倫理学会、2017年3月)において私たちは示した。(2)アーレントは、人びとが形づくる共同性(〈政治〉)が公と私に分かれると考える。このような公私二元化には批判も多いが、私たちはこの二元論が公共性を確保するために欠かせない論理構成であることを、その〈親密圏〉批判を手掛かりに以下の学会報告において論証した。「アーレントの親密圏批判の意義」(ワークショップ「親密さの倫理」日本倫理学会第67回大会、2016年9月)。(3)人びとの共同性が営まれる場は〈世界〉と名指される。世界は、彼女にあってその外延を伸縮させるものであり、彼女は人間が制作する〈もの〉からなる世界を「物世界」と呼ぶ。論文「有用性を越えて持続する〈もの〉」(『社会思想史研究』第40号、藤原書店、2016年10月)では、このような〈もの〉に関する理論を解明した。(4)本研究は2015年度公刊の論文にて、アーレントの政治概念を「関係と主体を同時に出来させる〈あいだ〉の生成」として、高度に抽象的なその理路をひとまず解明していた。とはいえ、彼女は政治を具体性の相においても思考していた。論文「政治の闘争性」(『倫理学紀要』東京大学大学院人文社会系研究科 倫理学研究室、2017年3月)では、彼女の「戦争」や「アゴーン(闘争)」といった概念を糸口に、かかる抽象的概念を具体性の場に受肉させることを試みた。
著者
石川 俊平
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

がん細胞はそれ単独での生存は難しく、生体内では常に周囲の間質細胞からの支持シグナルを受け、また逆にがん細胞自身がシグナルを出して生存に適した間質細胞を誘導している。申請者はこれまでにマウスに移植したヒトがん細胞のトランスクリプトームシーケンスから、マウス・ヒト由来の配列の分離によりがん細胞・間質各細胞由来のシグナルとその相互作用のプロファイルを行う技術を確立してきた。本申請では多様ながん種について患者がん組織から直接樹立したPDX(Patient-Derived Xenograft)を体系的に解析し、がん細胞と間質細胞との相互作用の全体像とその多様性をゲノムレベルでの解明を目的とする。平成29年度は、前年度に引き続きデータベースのアップデートをはかると共に様々ながん種のPDXのインターラクトームプロファイルを体型的に解析し、がん種間及び同じかん種でも個体間のがん-間質相互作用の取り得る生物学的レンジを把握し、個別の症例に特徴的かる重要な相互作用の同定を行なった。特定のがん腫で他のがん腫と大きくことなる、がん-間質相互作用が見つかり、治療につながる可能性のあるものも見つかった。またマウス間質側は線維芽細胞、血管内皮、血球細胞など組成がヘテロであるため、それぞれの組成のプロファイルを個別に取得して、トランスクリプトームプロファイルから間質側の細胞組成を推定するアルゴリズム開発を行なった。
著者
池上 恒雄 古川 洋一 伊地知 秀明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究において我々は肝特異的Kras活性化及びPten欠損による新規肝内胆管癌マウスモデルを樹立した。Cre-loxPシステムにより活性化型Kras変異とPtenホモ欠損を胎生期の肝前駆細胞及び成体期の肝細胞に導入したところ、肝内胆管癌のみを生じた。一方、Kras変異とPtenヘテロ欠損では胆管癌と肝細胞癌を、Kras変異単独では肝細胞癌のみを生じた。タモキシフェン誘導性のCre-loxPシステムを用いることにより、肝内胆管癌は胆管上皮由来であることが示唆された。このマウスモデルはヒトの肝内胆管癌の発生メカニズムや治療法の研究に有用であると考えられる。
著者
岩本 康志 鈴木 亘 福井 唯嗣 両角 良子 湯田 道生
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

社会保障財政の議論では2025年度までの予測が使われているが,今世紀前半ではまだ高齢化のピークに達していないことから,人口高齢化の問題を扱うにはより長期の時間的視野が必要である。この研究では,急増する医療・介護費用をどのように財源調達するかを検討し,将来世代の負担を軽減するため保険料を長期にわたり平準化する財政方式の比較をおこなった。そして,そのなかで,世代間の負担を平準化する目的に合致した,実務上,合理的な実現方式を同定した。
著者
上羽 瑠美
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究ではまず初年度に,タバコ煙溶液(cigarette smoke solution: CSS)を用いて喫煙モデル動物を作製し,嗅上皮傷害・回復過程を検証した.その結果,CSS点鼻により嗅覚前駆細胞と成熟嗅細胞数が減少し,嗅覚障害が生じていた.また炎症性サイトカインも上昇していた.喫煙性嗅覚障害は嗅覚前駆細胞の抑制による成熟嗅細胞の減少により生じ,禁煙による炎症改善に伴って障害が回復する事が示唆された.次に,メチマゾール(methimazole, MET)による嗅上皮障害モデルを用いて,喫煙が嗅上皮障害回復過程に与える影響を検証し,CSSは,嗅覚前駆細胞の分裂及び分化過程を障害し,嗅上皮障害後の再生を遅延させる事,タバコ煙による障害嗅上皮再生遅延にはIGF-1の低下が関与していることが示唆された.次年度には、加齢が嗅粘膜に及ぼす影響を解明するため、若齢マウス(8週齢)と加齢マウス(16月齢)を用いて,生理的状態の嗅神経上皮における嗅神経前駆細胞から成熟ORNsまでの嗅神経細胞系への加齢による影響を組織学的に解析し,加齢に伴う嗅覚障害の背景にあると推測される神経栄養因子や成長因子,炎症性サイトカインに関して遺伝子発現解析(マイクロアレイ・リアルタイムRT-PCR)を行った.その結果,加齢マウスの嗅神経上皮では,若齢マウスと比較して分裂細胞やORNs数が低下しており,加齢に伴う嗅覚機能低下の組織学的背景であると考えられた.また,炎症性サイトカインの上昇とIGF-1の低下による神経新生および増殖・分化の抑制が分子生物学的背景にあることが明らかになった.喫煙や加齢によるORNsの低下が加齢性嗅覚障害の原因と考えられることから,喫煙および加齢による嗅覚障害に対して,“炎症性サイトカインの抑制”や“嗅神経前駆細胞からORNsまでの増殖分化,成熟過程の促進”が治療戦略となりうると考えている.