著者
町口 裕二 高島 国男 林 浩之 北村 等
出版者
水産増殖談話会
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.323-331, 2012 (Released:2013-10-08)

道東海域に多産する海藻6種と海草1種を餌料としたときの,エゾバフンウニ生殖巣の発達に及ぼす影響を室内飼育実験によって調べた。ウニは殻径45mm以上のものを用い,2カ月の絶食ののち,自然水温下で75日間の給餌飼育を行った。ウニの生殖巣指数は,ナガコンブ,スジメ,アイヌワカメおよびアナアオサで高く,クシベニヒバ,カレキグサ,スガモで低く,とくにカレキグサでは生殖巣の発達は見られなかった。保存餌料(乾燥ナガコンブ,冷凍アナアオサ)を与えたウニの生殖巣指数は,それらの生鮮藻体を与えたときより低かった。ナガコンブ,乾燥ナガコンブ,冷凍アナアオサ,スガモを餌料として,給餌期間の影響を比較した結果,生殖巣指数は短期間飼育(189日間)より長期間飼育(249日間)で高くなった。食味試験では,短期間飼育より長期間飼育で高い評価(ナガコンブが最も高評価)であったが,乾燥ナガコンブでは長期間飼育でも苦みが改善されなかった。
著者
山元 憲一 半田 岳志 西岡 晃
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.319-323, 2006-09-20
被引用文献数
7

リシケタイラギを用いて、換水および鰓繊毛運動に及ぼす低酸素の影響について水温20℃で調べた。換水運動は、酸素飽和の状態では入水口と出水口を時々開いて換水を行う断続型を示し、酸素分圧が60mmHgより低下するとそれらを常時開いている連続型に変化した。換水量は、酸素分圧の低下に伴って435ml/min/kg から酸素分圧54.9~38.7mmHgで1,862~1,888ml/min/kgへ4.3倍増加し、1.9mmHg以下に低下すると著しく減少した。小片の移動速度は、酸素分圧を14.0mmHgに低下するまでは酸素飽和の状態と同じ値を示し、2.0mmHg以下に低下すると著しく減少した。結果から、リシケタイラギは、低酸素になると換水運動を変化させ、著しい低酸素になると鰓の繊毛運動の活動度が低下して酸素摂取に必要な水量の換水が出来ずに窒息死すると推測した。
著者
高木 修作 村田 寿 後藤 孝信 市來 敏章 ムナシンハ マデュラ 延東 真 松本 拓也 櫻井 亜紀子 幡手 英雄 吉田 照豊 境 正 山下 浩史 宇川 正治 倉本 戴寿
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.279-290, 2005-09-20
被引用文献数
8

ブリの無魚粉飼料給与による緑肝の発症原因を、タウリン補足量の異なる無魚粉飼料で41週間飼育したブリ稚魚における、飼料タウリン含量と体内のタウリン含量、胆汁色素含量および肝臓のタウリン合成酵素活性の関連から調べた。タウリン無補足区では、飼育成績は劣り、貧血と緑肝が高率にみられ、肝臓のタウリン含量が低く、胆汁色素含量が高かった。タウリン補足区では、これら劣悪な状況は著しく改善した。肝臓のタウリン合成酵素活性は、全区で著しく低かった。ブリのタウリン合成能は著しく低く、無魚粉飼料にはタウリン補足が必要であり、無魚粉飼料給与による緑肝はタウリン欠乏に伴う胆汁色素の排泄低下と、溶血による胆汁色素の過剰産生により発生することが分かった。
著者
桐山 隆哉 野田 幹雄 藤井 明彦
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.431-438, 2001-12-20
参考文献数
9
被引用文献数
22

藻食性魚類7種(メジナ,ブダイ,アイゴ,ニザダイ,ウマヅラハギ,カワハギ,イスズミ)にクロメを投与し,摂食状況を観察したところ,ブダイ,アイゴ,イスズミの3種がクロメをよく摂食した。<BR>これら3種の摂食痕は,口器の形状を示す弧状の痕跡の形や大きさ,中央葉部や茎部等の厚みのある部位の縁辺や摂食面に残る痕跡に相違があり,魚種による特徴が認められた。<BR>これらのことから,海中林において葉状部が消失する現象が発生した場合,残された痕跡が新しければその特徴を比較検討することで,魚類の摂食の有無や摂食した魚種の推定が可能であると考えられた。
著者
山田 徹生 明石 英幹 山本 義久
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.153-159, 2012-03-20

マダイ量産種苗の放流用外部標識として利用できる鼻孔隔皮欠損を高頻度で作出する温度条件を明らかにする目的で,種苗量産施設を用いて飼育実験を行った。3実験の飼育温度は,孵化日(0日齢)から全長約5 mm まで20°Cを維持した後,5 mm から8 mm まで昇温し,それぞれ21°C,23°Cおよび25°Cで40日齢を過ぎるまで飼育した。また,これとは別に野外の比較的粗放な種苗量産池を用いた飼育実験を自然水温下(23°C)で行った。その結果,0日齢から36日齢までの間,20°Cから21°Cで飼育することにより約80~90%の割合で鼻孔隔皮欠損個体を作ることができることを明らかにした。これに対して,他のより高い温度における鼻孔隔皮欠損割合は1~34%と低かった。今回の実験は相対的に高水温と考えられるので,鼻孔隔皮欠損以外の形態異常にも注意する必要がある。
著者
杉田 毅 山本 剛史 古板 博文
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.191-198, 2007-06

高糖質低タンパク質飼料がマダイ稚魚の成長、見かけの消化率および肝膵臓の酵素活性に及ぼす影響を検討するため、粗糖質(CS)12%、粗タンパク質(CP)52%の飼料を対照に、CSを20および28%に増大し、CPを44および38%に削減した3試験飼料を作製し、平均体重11.4gのマダイに12週間給与した( 2水槽/飼料)。20%糖質飼料区におけるタンパク質効率およびタンパク質蓄積率は対照区より高かったが、増重率は低く、28%糖質飼料区における増重率、飼料効率、日間成長率およびタンパク質蓄積率は他区に比べて最も低かった。また、肝膵臓の糖新生酵素およびアミノ基転位酵素の活性に区間差はなく、高糖質低タンパク質飼料給与時においてもアミノ酸が糖新生の基質として積極的に活用されていることが示唆された。以上の結果から、マダイ稚魚は高糖質低タンパク質飼料を効率的に利用できないことが示された。
著者
杉田 毅 山本 剛史 古板 博文
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.191-198, 2007

高糖質低タンパク質飼料がマダイ稚魚の成長, 見かけの消化率および肝膵臓の酵素活性に及ぼす影響を検討するため, 粗糖質 (CS) 12%, 粗タンパク質 (CP) 52%の飼料を対照に, CSを20および28%に増大し, CPを44および38%に削減した3試験飼料を作製し, 平均体重11.49のマダイに12週間給与した (2水槽/飼料) 。20%糖質飼料区におけるタンパク質効率およびタンパク質蓄積率は対照区より高かったが, 増重率は低く, 28%糖質飼料区における増重率, 飼料効率, 日間成長率およびタンパク質蓄積率は他区に比べて最も低かった。また, 肝膵臓の糖新生酵素およびアミノ基転位酵素の活性に区間差はなく, 高糖質低タンパク質飼料給与時においてもアミノ酸が糖新生の基質として積極的に活用されていることが示唆された。以上の結果から, マダイ稚魚は高糖質低タンパク質飼料を効率的に利用できないことが示された。
著者
與世田 兼三 浅見 公雄 福本 麻衣子 高井良 幸 黒川 優子 川合 真一郎
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.101-108, 2003-03-20
参考文献数
22
被引用文献数
7

Sワムシ (平均背甲長169μm) とタイワムシ (145μm) がスジアラ仔魚の初期摂餌と初期生残に及ぼす影響について検討した。2回の試験で合計5事例の飼育を60<I>kl</I>コンクリート水槽で行った。開口前の日齢2~5まで各試験水槽へ2タイプのワムシを15個体/<I>ml</I>の基準で与えた。2回目試験ではタイワムシ給餌区のネガティブコントロール区を設け, 24時間の暗条件とした。日齢3~4の摂餌率と胃内容物を調べるために, 5~23時まで2時間間隔で試験水槽から試料を採取した。両試験でいずれもタイワムシ給餌区がSワムシ給餌区よりも50%摂餌率に達する時間が日齢3では2時間早かった。同日の仔魚1尾当たりの平均摂餌数は前者が後者よりも有意に高く, 一方, ネガティブコントロール区では摂餌率と摂餌数が最も劣った。摂餌開始期には3試験区でトリプシン活性が明らかに認められた。スジアラ仔魚の初期摂餌率と初期生残率の向上には日齢3~4にタイワムシを給餌することが有効である。
著者
與世田 兼三 浅見 公雄 福本 麻衣子 高井良 幸 黒川 優子 川合 真一郎
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.101-108, 2003-03-20
被引用文献数
7

Sワムシ (平均背甲長169μm) とタイワムシ (145μm) がスジアラ仔魚の初期摂餌と初期生残に及ぼす影響について検討した。2回の試験で合計5事例の飼育を60<I>kl</I>コンクリート水槽で行った。開口前の日齢2~5まで各試験水槽へ2タイプのワムシを15個体/<I>ml</I>の基準で与えた。2回目試験ではタイワムシ給餌区のネガティブコントロール区を設け, 24時間の暗条件とした。日齢3~4の摂餌率と胃内容物を調べるために, 5~23時まで2時間間隔で試験水槽から試料を採取した。両試験でいずれもタイワムシ給餌区がSワムシ給餌区よりも50%摂餌率に達する時間が日齢3では2時間早かった。同日の仔魚1尾当たりの平均摂餌数は前者が後者よりも有意に高く, 一方, ネガティブコントロール区では摂餌率と摂餌数が最も劣った。摂餌開始期には3試験区でトリプシン活性が明らかに認められた。スジアラ仔魚の初期摂餌率と初期生残率の向上には日齢3~4にタイワムシを給餌することが有効である。
著者
田子 泰彦
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.81-88, 2012-03-20

神通川と庄川で日中に行われているアユ漁の遊漁実態を2002~2004年に調べた。両河川では友釣りなどの2つの自由漁法と投網などの3つの許可漁法を行う遊漁者が観察された。遊漁者数が多かった神通川では友釣りの遊漁者がその大部分を占めるとともに,その出漁努力は投網などの許可漁法の遊漁者に比べ著しく高かった。友釣り,毛鉤釣り,テンカラ網およびコロコロ釣りでは,河川流量が多くなると出漁人数が減る傾向にあり,一定以上の出水時には遊漁者は認められなくなった。これに対して,投網では河川流量が多くなると出漁人数が増える傾向にあり,大きな出水時にも遊漁者が多く認められた。神通川に多くの遊漁者が訪れるのは,神通川の河川流量が日常的に多いこと,および良い河川形状が維持されているためと考えられた。庄川で遊漁者数を増やすには,平常時の河川流量を増加させるか,遊漁者数と出漁日数の多い友釣りの専用区を設定することが効果的と考えられた。
著者
佐々木 義隆 水野 伸也 今田 和史 吉田 豊 守山 義昭 足立 伸次
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.211-219, 2008-06-20
参考文献数
16
被引用文献数
2

2003年6月9日から9月10日にかけて天塩川水系のヤマトシジミを採取し軟体部および生殖巣指数の変化を調べるとともに、生殖巣の組織像から成熟時期の推定を行った。また、人工産卵誘発条件として最適な水温および塩分条件、並びに成熟時期と産出卵から着底稚貝までの生産性の関係について検討した。その結果、天塩川では雌雄ともに軟体部および生殖巣指数は6月上旬に低く7月上旬にかけて上昇し、その後短期間に急激に減少した。生殖巣の組織像は6月上旬から下旬にかけて成長期を示し、7月上旬には成熟期から放出期に移行していた。このことから軟体部指数および生殖巣指数の急激な減少は成熟卵および精子の放出によるものと推測された。また、供試貝を水温条件20〜30℃に保った塩分0〜10psuの水に移行し産卵数から最適な水温および塩分条件を検討した結果、水温25℃、塩分5psuの条件で最も多くの産卵がみられた。この条件を用いて7月7日〜8月5日にかけて5回人工産卵誘発を行ったところ、7月9日に人工産卵を行った群において雌親個体あたりの産卵数が最も多く、また10日後における着底稚貝までの生残率が最も高かった。天塩川水系産ヤマトシジミにおいて人工種苗生産に適した時期は極めて限られた期間であり、成熟時期の把握が極めて重要であることが示唆された。
著者
丸 邦義 山崎 真 中井 純子
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.251-255, 2005-09-20
参考文献数
16
被引用文献数
4

石狩川で採集したヤマトシジミを2001年7月25日から8月25日まで、0、1、2、3、4、5、6、9、12、15、18、19、20、21psuの各塩分濃度で飼育した結果、産卵がみられたのは2psuから12psuの水槽で、再度産卵がみられたのは2、3、5、6psuである。したがって、産卵に好適な塩分濃度は2~12psuで、最適濃度は2~6psuである。
著者
野田 幹雄 田原 実 片山 貴之 片山 敬一 柿元 晧
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.37-46, 2002-03-25
被引用文献数
10

1996年2月から2年間にわたり瀬戸内海中部水域の4地点に設置された4種類の付着基質の餌料培養効果が比較された。使用した付着基質は、マガキ殻、アコヤガイ殻、砕石のいずれかを集積した塊をポリエチレンメッシュ(目合20×25mm)で覆い、直径15cm、長さ30cmのパイプ状にしたものと同サイズの円柱状コンクリートである。メッシュパイプの基質は、内部に多くの空隙をもつ点に特徴があった。24ヵ月浸漬後の付着動物相の比較では、どの基質もフジツボ類とホヤ類が優占したが、コンクリート区に比べ内部空隙のある基質では十脚類と軟体動物(腹足類と二枚貝類のみ)が着生量および出現種ともに増加した。付着動物量の経月変化の比較でも、内部空隙のある基質で付着動物と餌料動物の着生量は高い状態で推移し有意差が認められた。この傾向は特に十脚類で明瞭であった。このような付着動物相の相違は、基質構造の相違に由来することが示唆された。
著者
圦本 達也 吉田 幹英 前野 幸男
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.587-594, 2008-12-20
被引用文献数
1

「立枯れ死」の前兆として底質から浮上したタイラギの存在を認め、浮上タイラギの各種臓器組織の観察および栄養状態を調査した。浮上タイラギでは鰓および消化盲嚢の上皮細胞に重篤な損傷が認められ、生殖腺の発達も大きく遅滞していた。浮上タイラギは、閉殻筋中のグリコーゲン量および消化盲嚢中のクロロフィルa、フェオフィチンの各量は、底質に埋在したタイラギのそれらと比べて有意に低かった。また、浮上タイラギの閉殻筋および消化盲嚢における栄養状態および摂餌状態の各指標は、組織学的観察結果とよく一致しており、タイラギの「立枯れ死」は継続的な摂餌機能の低下および消化吸収機能の不全によって発生する可能性が強く示唆された。
著者
立原 一憲 Obara Emi
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.295-306, 2003-09-20

カワスズメOreochromiss mossambicusは、1954年に沖縄島に移入された後、野外に逃げ出して定着し、現在では多くの河川で優占種となっている。ここでは本種の卵内発生の経過と飼育条件下における稚魚への成長に伴う外部形態および骨格系の発達を記載した。カワスズメ卵は、1997年6月4日に沖縄島の小那覇川で採集した口内保育中の親から得た。卵は平均長径2.72mm、平均短径1.96mmの楕円型で、受精後88時間30分で孵化した。孵化後6日、体長4.0mmで遊泳し始め、12日後に稚魚に達した。本種の骨格の主要な要素は、孵化後25日には全て形成された。