著者
横川 浩治 中井 克樹 藤田 建太郎
出版者
水産増殖談話会
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.145-155, 2005 (Released:2011-03-05)

北米原産のオオクチバスMicropterus salmoidesが沿岸域で優占していた琵琶湖に、近年、近縁種のフロリダバスM. floridanusの侵入が確認された。琵琶湖沿岸の4地域から2000~2003年に得られた合計194個体のアイソザイムを調べた。オオクチバスとフロリダバスはAAT-1*、IDHP-1*、MDH-1*、SOD*の4遺伝子座において識別されるが、調べたすべての標本群のこれら遺伝子座においてフロリダバスを特徴づける遺伝子が頻繁に出現し、概略、全体の半分がフロリダバスの遺伝子で占められていた。すべての標本群においてHardy-Weinbergの遺伝平衡からのずれは認められず、大部分はヘテロ過剰傾向を示した。マーカー座における個体ごとの遺伝子型から判断して、雑種F2以降あるいは戻し交雑個体が大半であると推定され、琵琶湖内ではオオクチバスとフロリダバスの交雑が既にかなり進行していることが示唆された。以上の結果は、従来生息していたオオクチバスに匹敵する数量のフロリダバスが琵琶湖に侵入したことを示し、人為的な大規模放流があったものと推定される。
著者
横川 浩治 中井 克樹 藤田 建太郎
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.145-155, 2005-06-20
参考文献数
46

北米原産のオオクチバス<I>Micropterus salmoides</I>が沿岸域で優占していた琵琶湖に, 近年, 近縁種のフロリダバス<I>M. floridanus</I>の侵入が確認された。琵琶湖沿岸の4地域から2000~2003年に得られた合計194個体のアイソザイムを調べた。オオクチバスとフロリダバスは<I>AAT-1</I>, <I>IDHP-1</I>, <I>MDH-1</I>, <I>SOD</I>の4遺伝子座において識別されるが, 調べたすべての標本群のこれら遺伝子座においてフロリダバスを特徴づける遺伝子が頻繁に出現し, 概略, 全体の半分がフロリダバスの遺伝子で占められていた。すべての標本群においてHardy-Weinbergの遺伝平衡からのずれは認められず, 大部分はヘテロ過剰傾向を示した。マーカー座における個体ごとの遺伝子型から判断して, 雑種F<SUB>2</SUB>以降あるいは戻し交雑個体が大半であると推定され, 琵琶湖内ではオオクチバスとフロリダバスの交雑が既にかなり進行していることが示唆された。以上の結果は, 従来生息していたオオクチバスに匹敵する数量のフロリダバスが琵琶湖に侵入したことを示し, 人為的な大規模放流があったものと推定される。
著者
片平 浩孝 山本 敦也 増渕 隆仁 今津 雄一郎 山口 泰代 渡邊 典浩 金岩 稔
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.191-195, 2019

<p>アユ冷水病の蔓延を防ぐためには遊漁者の協力が不可欠であるが,現場でどの程度理解を得られているのか未だ把握されていない。そこで本稿では,三重県内のアユ釣り大会開催に際し集積されてきた意識調査を報告する。2015年から2018年にかけて集められた総回答数598件(回答者343名)のうち,冷水病への対策を講じているとの回答は393件(65.7%),対策なしとの回答が135件(22.6%)であった。調査期間内で追跡できた回答者のうち,22名で対策を講じる意識改善が見られたが,反対に20名が対策をやめるか不明となる変化も見られた。これらの結果は,冷水病への当事者意識は未だ十分ではなく,さらなる普及啓発が必要であることを示唆している。</p>
著者
久下 敏宏 信澤 邦宏 舞田 正志
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.73-80, 2004-03-20
被引用文献数
1

榛名湖において、ワカサギ不漁年である1997年の5~6月での、全長25cm以上のオオクチバス生息尾数は約2500尾と推定されるとともに、全長25cm未満の卓越した年級群の存在が推察された。ワカサギ不漁年と豊漁年に、1歳魚以上のオオクチバスの胃内容物を調査したところ、両年ともに魚類と甲殻類を主な餌料としており、魚類については、不漁年はヨシノボリ属魚類、豊漁年はワカサギの出現率が高かった。捕食されていたワカサギの成長段階は、産卵期が親魚で、夏以降が未成魚以上であった。また、不漁年は豊漁年に比べ、オオクチバスの肥満度と胃内容物重量指数が低かった。さらに、釣り大会秤量魚の平均体重が不漁期に減少することから、榛名湖のオオクチバスにとってワカサギは重要な餌料であり、オオクチバス生息尾数の増減がワカサギ資源へ影響を及ぼしていると考えられる。
著者
池田 譲 櫻澤 郁子 桜井 泰憲 松本 元
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.391-400, 2003-12-20
参考文献数
27
被引用文献数
3

理化学研究所脳科学総合研究センターでは, 脳を知るためのモデル動物としてイカ類に注目し, 行動学的および分子生物学的研究を行うために内陸部初のイカ長期飼育施設を開設した。これに伴い, 各種イカ類の輸送, 水槽の種類, 餌料などについて飼育実験より検討した。飼育には閉鎖循環系の大型円形水槽 (10, 000<I>1</I>) , 小型円形水槽 (1, 700<I>1</I>) , マルチハイデンス水槽 (20<I>l</I>-8基, 50<I>l</I>-8基) , 角形水槽 (600<I>l</I>) を用いた.ヤリイカ, アオリイカ, シリヤケイカ, ミミイカを卵から飼育するとともに, ヤリイカ, アオリイカ, スルメイカ, ヒメイカ各成体をそれぞれ畜養した。その結果, シリヤケイカおよびアオリイカの累代飼育に, また, ヤリイカの2か月間の孵化飼育にそれぞれ成功した。閉鎖系における3種成体の畜養も可能でありスルメイカでは産卵も観察された。これらに基づき各種ごとの飼育の問題点について考察した。
著者
田中 彌太郎 リオ ナタリアデル
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.58-59, 1978

1977年1月, 島根県産イタヤガイ母貝の温度刺激による産卵誘発結果から, 本種は自家受精が正常におこり, それによってふ化したD型幼生は特定の餌料生物を摂取して十分に生長することおよび変態期における幼生の交装をふくむ形態観察から, 天然における本種幼生の同定が可能であることを示した。
著者
畑中 宏之 稲田 善和 谷口 順彦
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.241-247, 1991

低水温ショック法または高水圧ショック法により, アユの人為三倍体を作出し, 正常二倍体と比較しながら三倍体の成長および成熟における特性の解明を試みた。未成魚期の成長および飼料効率については三倍体がやや劣る傾向が認められた。適性な飼育条件の検討の必要性が示唆された。成熟が始まると, 二倍体が成長の停滞を示し, 産卵期が終わると死亡するのに対し, 三倍体の雌魚は越年後も死亡することなく順調に成長した。
著者
加藤文男
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.61-69, 1991-04
被引用文献数
1
著者
秋山 真一 滝井 健二 眞岡 孝至 中川 雅雄 北野 尚男 熊井 英水
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.47-52, 2001-03-20
参考文献数
26
被引用文献数
1

18種の酵母乾燥粉末に対するマダイ稚魚(平均体重:6.4-10g)の嗜好性を魚粉のそれと比較した。E.lindneri,R.rubraおよびG.ressiiにそれぞれ魚粉の1.31,1.20および1.14倍の高い摂餌活性が認められたが,他の酵母には同等か低い活性しか得られなかった。嗜好性ではE.lindneriが優れていたが,嗜好性と粗タンパク質含量がともに高いR.rubraが酵母タンパク(YP)には最適であると判断した。そこで,飼料魚粉の0,25および50%をYPに代替した飼料をマダイ稚魚(5g)に給与したところ,YPの配合率が増加するに伴って,日間摂餌率は上昇した,逆に増重率,飼料効率およびタンパク効率は低下したが,劣悪ではなかった。以上の結果から,YPはマダイの嗜好性に優れ,マダイ用実用飼料のタンパク源の一部として利用できることが示唆された。
著者
内村 祐之 倉本 誠 曽根 謙一
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.573-577, 2011-12-20
参考文献数
14
被引用文献数
1

アコヤガイ赤変病が発生以来、収穫された真珠にレンガ色の真珠(濁り玉)の割合が増加した。この真珠は収穫された真珠の有機物を除去する脱色作業でも除去されないことが多いため、真珠生産者では商品価値のある真珠の収量は激減した。そこで、レンガ色の正体を明らかにするため、濁り珠を破砕し抽出した真珠の色素のNMR分析と、電子顕微鏡による正常な真珠との結晶構造を比較した。色素のNMR分析では、これまで報告されたメラニンのほかに、アコヤガイ体内のラジカル損傷産物である過酸化脂質が検出された。一方、電子顕微鏡観察では、濁り珠は正常な真珠に比べ稜柱層が有意に厚いことがわかった。抽出された色素は、真珠加工会社の脱色過程で除去されることから、レンガ色の正体は厚く形成された稜柱層にあると考えられた。
著者
吉本 洋
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.205-212, 2007-06
被引用文献数
1

1980~2004年の紀伊水道東部日高海域での漁獲資料をもとに、海産稚アユの漁獲特性について検討した。豊漁年は不漁年に比較して、長期間にわたり漁獲されるとともに、採捕海域が広範囲に及び空間的な広がりもみられた。また1990~1997年の耳石を用いた日令査定により、豊漁年は不漁年に比べて、稚アユは若齢で早生まれから順に規則的に漁場に出現し、滞在期間も短く、日間成長も良好であることが明らかになった。以上のことから、アユ稚魚の成長と資源豊度との関連性が示唆された。
著者
中田 和義 和田 信大 荒木 晶 浜野 龍夫
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.263-274, 2005-09-20
参考文献数
35
被引用文献数
3

テナガエビ類を効果的に採集できるエビ篭の構造と使用人工餌料について検討するため、1)エビ篭に入れた人工藻体、2)エビ篭の入り口の直径、3)エビ篭に用いる人工餌料がテナガエビ類の採集効率に及ぼす効果を調べる野外実験を実施した。エビ篭に人工藻体を入れ、篭の内部をテナガエビ類の隠れ場所に似せても、採集個体数は変わらなかった。一方、エビ篭の入り口の直径は採集個体数に大きく影響し、採集効率は直径40~50mmで最適であったが、40mmは50mmよりもモクズガニの混獲を防ぐ効果が高かった。人工餌料の実験では、餌料1(ウナギ育成用配合飼料)、餌料2(餌料1にイカ内臓ソリュブル吸着飼料とオキアミエキスを混ぜた餌料)ともに冷凍サンマと同等の採集効果を期待できた。以上の結果から、テナガエビ類の採集では、入り口の直径を40mmとしたエビ篭に、常温での長期保存が可能で、餌料2よりも安価な餌料1を用いる方法が良いと結論づけた。これらの条件を伴うエビ篭と、市販のカニ篭(餌料は冷凍サンマ)を用いて、8河川4湖沼で採集比較実験を行ったところ、テナガエビ類はエビ篭のみで採集され、エビ篭はテナガエビ類の採集に有効であることが示された。また、このエビ篭は他のエビ類やザリガニ類に対しても採集効果が高かった。
著者
樋口 真理可 古屋野 太一 伊藤 篤 和田 哲
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.251-258, 2004-09-20
参考文献数
28
被引用文献数
2

高知県浦ノ内湾及び沖ノ島周辺で採集されたマガキガイの捕食者防御行動について室内実験をおこなった。本種は成長に伴い貝殻外唇部が肥厚するので、外唇部が厚さと防御行動の関係に着目した。ほぼ同一サイズの個体を用いた室内実験の結果、捕食者であるソメンヤドカリは外唇部の薄い個体を選択的に捕食したが、外唇部の肥厚によって捕食者防御行動に対する明瞭な影響は認められなかった。また、本種の行動に対する同一水槽内のソメンヤドカリの影響は認められなかった。ソメンヤドカリに捕らえられたマガキガイは多量の粘液を分泌したが、粘液の有無による本種の行動においても有意な違いは認められなかった。一方、つぶしたマガキガイが入った水槽では、コントロール条件に比べて本種が有意に早く完全埋没(自分の貝殻が底質表面から見えなくなるまで潜砂した状態)に至った。
著者
片野 修 中村 智幸 山本 祥一郎 阿部 信一郎
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.115-119, 2005-06-20
被引用文献数
4

外来魚ブルーギルは日本全国の湖沼や河川に拡まっており、水産有用魚種や生態系への影響が危惧されている。しかし日本の河川上中流域におけるブルーギルの生態についてはほとんど報告がない。著者らは長野県の千曲川の1支流である浦野川のAa-Bb移行型の河川形態区間で、2003年の6月及び7月に75個体のブルーギルを電気ショッカーによって採捕した。すべてのブルーギルは岸から1m以内で採捕され、その空胃個体は75個体中8個体にすぎなかった。胃内容物充満度は平均0.63%で、最大で2.86%に達した。ブルーギルは主にユスリカ科の幼虫を摂食し、そのほかカゲロウ科やトビケラ科の幼虫及び陸生昆虫を捕食していた。ブルーギルの食性は浦野川の在来魚の何種かといちじるしく重複していた。ブルーギルは河川の魚類群集に負の影響を与えると考えられ、根絶される必要がある。
著者
田子 泰彦
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.225-226, 2003-06-20
被引用文献数
3

北陸地方で有数のアユ、Plecoglossus altivelis、漁場が存在する庄川では、アユ漁の盛期である夏季のアユ漁場の流量は、合口ダムから分水路を経て多くの水(約60トン/秒)が和田川に流れるため、約10トン/秒と著しく少なくなっている。また、低水護岸の建設や砂利採取などの河川工事の影響も加わり、庄川では20㎞に及ぶ漁場に最大水深2mを越える淵はわずか3個しかなく、瀬は水深の浅い平瀬が多くを占めるようになった。このようにアユの隠れ場や休息場である淵の喪失や瀬の平均水深が浅くなることによって、アユ網漁の漁獲圧力が高まったと推察されている。一方、余暇時間の増大や交通の利便性の向上などに伴い、近年アユ漁を行う人は急激に増加した。庄川では漁獲能力の高い投網とテンカラ網(投げ刺網の一種)の承認件数は、1978年にはそれぞれ145統と678統であったが、1998年には192統(1.3倍)と1364統(2.0倍)に増加し、アユに対する漁獲圧力は以前と比べ著しく高くなった。しかし、庄川では新規申請者では網漁の許可が得にくいことや網漁の解禁日が釣りよりも5日遅いこと(富山県内でアユ網漁が可能な河川に一様に適用)以外に網漁の漁業規制は実施されていない。本研究では、人為的な理由で流量が少なくなった河川(区域)において、流量の増加がアユの資源管理に及ぼす影響の一つを明らかにするために、庄川に放流される湖産アユを用いて、飼育池において水深別にアユの漁獲試験を行い、その漁獲効率の差を明らかにした。
著者
橘川 宗彦 大場 基夫 工藤 盛徳
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.231-236, 2006-06-20

ワカサギ卵を水生菌の発生を抑え効率よく孵化させるため、陶土を用いて不粘着処理した受精卵を高密度で収容できる孵化器を用いる方法と従来の屋外飼育池に敷設した着卵基質に付着孵化させる方法とで孵化管理の比較試験を試みた。孵化器では屋外飼育池に比較し今回の試験では約5分の1省スペース化され、使用水量も約3分の1に節水された。発眼率では有意差は認められなかったが、飼育池で観察された卵の脱落による減耗も孵化器では防止できたことや、受精卵の収容から孵化までの死卵の分離除去が容易であり、薬剤等を使用せずに水生菌の抑制ができる等の利点があった。一度に多量の受精卵収容作業では不粘着処理に多少時間を要するが、不粘着処理した受精卵を孵化器に収容する新たなワカサギ受精卵の効率的な孵化管理法を紹介した。
著者
山川 紘 林 育夫
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.57-63, 2004-03-20
被引用文献数
2

新潟県粟島の浅海岩礁域に生息するサザエの消化管内容物と藻類植生の関係を解明するために、冬期の波浪条件が異なる2水域に調査区を設け、スキューバ潜水により消化管内容物調査(2、6m)、同所で藻類の現存量調査(2、6、10m)、および底質調査(2、6、10、14m)を行った。(1)冬期の波浪の影響が少ない調査区では水深2mで多種類のホンダワラ類が分布し、水深6mではノコギリモクが主に優占した。他方、冬期の波浪が激しい調査区では、アミジグサ類とモロイトグサが優占し、物理的な環境特性により対照的に異なった植生となることが示された。(2)消化管内容物と藻類現存量の摂餌の選択性の傾向を解析した結果から、種類により選択性がある(摂餌は藻類の現存量と関係していない)という検定結果が得られた。(3)調査区のうち、摂食阻害物質を含有する藻類が優占する調査区では、それらの藻類が消化管から高率に検出されたことから、それらの物質はサザエの食性に影響を与えていないと考えられた。(4)調査区間別、水深別に調査区のサザエの肥満度を比較したところ、それらの間で差異は認められなかった。
著者
高久 宏佑 細谷 和海
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.13-18, 2008-03-20
被引用文献数
2

カワバタモロコは、コイ科ラスボラ亜科に属する全長3-6cmの日本固有の淡水魚で、日本に生息する淡水魚類の中ではもっとも小さいコイ科魚類とされる。静岡県瀬戸川以西の本州太平洋側、四国瀬戸内海側および九州北西部に分布し、主に平野部の農業用ため池や用水路など里山の環境に生息している。本種には繁殖期に顕著な性的二型が見られ、雌は雄より大型化し、雄は鮮やかな黄金の婚姻色を呈する。このような特徴的な形態を持つため、キンモロコ、キンターなど地方名も多く残される馴染み深い魚であり、西日本では里山のシンボルフィッシュとなっている。しかし、近年ではブラックバス・ブルーギルなど肉食性外来魚による食害や、圃場整備などの水田開発、農地の放棄による生息地の荒廃により個体数は激減し、最新の環境省版レッドリストでは絶滅危惧IB類に指定されている。希少種では、生息地や野外個体の数が制限されることが多く、保全に必要な生態情報を得るには野外調査だけでは不十分な場合が多い。飼育実験により得られた生態情報を野外へ還元することは希少種の保全において重要であり、そのためには、まず供試魚を効率的に得るための人工繁殖方法の確立が必要となる。そこで本研究では、カワバタモロコの系統保存技術向上と、生息地保全のための基礎的研究を目的として、ホルモン投与による産卵誘発方法の確立、適した初期飼育条件の選定、基礎的な成長に関する実験を行なった。
著者
高久 宏佑 畑谷 和海
出版者
水産増殖談話会
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.13-18, 2008 (Released:2011-01-13)