著者
堀田 文郎 松尾 哲矢
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.83-99, 2023-03-30 (Released:2023-04-26)
参考文献数
19

本稿はある個人がボディビルダーとなり、ボディビルへと専心していく過程とその論理について検討したものである。先行研究ではこれまで、生活の全てをボディビルに捧げるというような極端なまでの専心性をもってボディビルダーがボディビルに身を投じる様相が報告されてきた一方で、そのような専心性が招来される機制については十分に論じられてこなかった。そこで本稿は、ある個人がボディビルへと専心していく過程とその論理を明らかにすることを目的とし、ボディビルダーという存在の身体的次元における変容、特に身体的経験に着目しつつ検討を行った。 その結果、第一に、調査協力者らは結果が確約されない不確実な現実において、自身の努力に必ず成果をもたらしてくれる筋肉に対し「筋肉は裏切らない」という心的態度を形作り、それを動因にボディビルへと参入していることが明らかになった。 また第二に、ボディビルへと参入した彼らは、筋肉を発達させるために自身の身体の反応をつぶさにうかがい、それに準じて生活を規律するようになること、ここにおいて身体はその反応を介して生活に絶対的な規範を授ける超越的な他者としての機能を果たすようになることが明らかになり、以上の過程において調査協力者らは生活をボディビルへと収斂させ、ボディビルへと専心していったと推察された。 そして第三に、身体の反応に敬虔に従うようにして自身の行為を規律するボディビルダーの営為は、「こうでなければならない」という絶対的な指針が存在しない不確定な現実の中に、価値や行為に関する規範を生み出し、調査協力者らの生活、さらには人生に確固たる意味と目的を産出するという秩序化の機能を果たしていることが示唆され、ボディビルへと専心すればするほど自身の生活、そして人生の意味が明快で確実なものとへと秩序化されていくというこの論理こそ、ある個人がボディビルへと専心していく論理であろうと推察された。
著者
長谷川 真二 松隈 英樹 松尾 哲 高橋 稔 川村 実 土田 弘基
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.731-733, 1991-06-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
9

今回我々は維持透析患者に悪性症候群が合併した稀な1例を経験したので報告する.糖尿病性腎症により維持血液透析中の42歳男性が, 高熱と, 眼振, 手足の振戦, 幻覚幻聴により入院した. 血液検資の結果, GOT459IU/l, LDH 1,669IU/l, CPK 529IU/l, aldolase13.3mU/ml, myoglobin 3,200ng/mlと異常を認め, 著明な低酸素血症 (PO227.1mmHg, PCO242.8mmHg) を合併していた. 患者は, 制吐剤として頻用される塩酸メトクロプラミド (metoclopramide hydrochloride: 30mg/日) を5か月間内服していた. また発熱, 自律神経症状・錐体外路症状・意識障害の症状より悪性症候群 (syndrome malin) と診断した.このため薬物の中止と臨時に血液透析を行い症状は改善し, 良好な経過を示した.
著者
中山 健二郎 松尾 哲矢
出版者
一般社団法人 日本体育学会体育社会学専門領域
雑誌
年報 体育社会学 (ISSN:24344990)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.59-75, 2021

The purpose of this study was to examine the reproduction of high school baseball "narratives" and its media effects focusing on media representations of the change in approach for competition and practice. Previous studies about high school baseball "narratives" focused on analyzing the "narratives" as a fixed structure based on ritual theory. However, only few studies have focused on the fluctuation, including the fluctuation and change, of the "narratives" itself. Therefore, it is necessary to analyze the reproduction of the "narratives", while considering the change in approach for competition and practice in recent years. In the national high school baseball tournament in Japan called "Koshien", tactical change from only one pitcher completing whole games to successive pitching has occurred in recent years. Following this tactical change, we analyzed messages and significations from media representations of complete games and games with successive pitching by a media text analysis of the sport documentary entitled "Fierce Battle Koshien"(entitled "Netto Koshien" in Japanese).<br>The analysis showed that the media representation of complete games focused on the signification of "the spirit conveyed by the pitcher overcoming difficulties", whereas that of games with successive pitching concentrated on the signification of "friendship conveyed by two pitchers working together". It seems that both semantics "spirit" and "friendship" are elements of traditional high school baseball "youth narratives". The present result therefore suggests that media representations in practice change within the possible interpretative framework of "youth narratives". Further, the study suggests that through that media representation the framework of high school baseball "narratives" itself has been reproduced with the internal fluctuation of "how 'youthfulness' or 'youth' should be".
著者
中山 健二郎 松尾 哲矢
出版者
一般社団法人 日本体育学会体育社会学専門領域
雑誌
年報 体育社会学 (ISSN:24344990)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.59-75, 2021 (Released:2021-05-14)
参考文献数
35

The purpose of this study was to examine the reproduction of high school baseball “narratives” and its media effects focusing on media representations of the change in approach for competition and practice. Previous studies about high school baseball “narratives” focused on analyzing the “narratives” as a fixed structure based on ritual theory. However, only few studies have focused on the fluctuation, including the fluctuation and change, of the “narratives” itself. Therefore, it is necessary to analyze the reproduction of the “narratives”, while considering the change in approach for competition and practice in recent years. In the national high school baseball tournament in Japan called “Koshien”, tactical change from only one pitcher completing whole games to successive pitching has occurred in recent years. Following this tactical change, we analyzed messages and significations from media representations of complete games and games with successive pitching by a media text analysis of the sport documentary entitled “Fierce Battle Koshien”(entitled “Netto Koshien” in Japanese).The analysis showed that the media representation of complete games focused on the signification of “the spirit conveyed by the pitcher overcoming difficulties”, whereas that of games with successive pitching concentrated on the signification of “friendship conveyed by two pitchers working together”. It seems that both semantics “spirit” and “friendship” are elements of traditional high school baseball “youth narratives”. The present result therefore suggests that media representations in practice change within the possible interpretative framework of “youth narratives”. Further, the study suggests that through that media representation the framework of high school baseball “narratives” itself has been reproduced with the internal fluctuation of “how ‘youthfulness’ or ‘youth’ should be”.
著者
河崎 靖 松尾 哲 鈴木 克己 金山 喜則 金濱 耕基
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.322-327, 2013 (Released:2013-11-16)
参考文献数
25
被引用文献数
11 13

トマト施設生産において高温障害を緩和する低コストな冷却技術が求められている.本研究では根域冷却の生理学的・形態学的知見を得ることを目的に,養液栽培されたトマトの培養液を最適温度と考えられるおよそ 25°Cに冷却して 2 週間栽培し,生育,養分吸収,根の活性としての出液速度および根呼吸速度,根の IAA 濃度および根の内部形態について調査した.高気温条件下で根域を最適な温度に冷却することで,根の RGR が増加し,その後地上部の RGR も増加した.根の IAA 含量は根の RGR と高い正の相関が認められた.根域冷却により出液速度,根呼吸速度が増加し,同様に Ca および Mg 吸収が促進された.また,根先端付近の木部発達も認められた.以上のことから,高温期の根域冷却は,根の活性および IAA 濃度を増加させることで,根の生育および木部発達を介した養分吸収を促進し,遅れて地上部の生育を促進することが示唆された.
著者
堀田 文郎 松尾 哲矢
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第71回(2021) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.246, 2021 (Released:2021-12-28)

彫刻のような肉体を作り上げ、ポーズを取って競い合う「ボディビル競技」、この競技は以前より、薬物問題等の問題を抱えてきた。例えばWADA(2020)によると、2019年のボディビル競技における陽性サンプルの割合は20%と非常に高かった。また、プロボディビルダーの間では薬物が公然の秘密とされているとの指摘もある(増田 2000)。以上を踏まえると、ボディビル競技には薬物使用までは至らずとも、競技に強くのめり込む競技者が数多く存在すると考えられる。ボディビル競技者はなぜ、多大な犠牲や健康的なリスクを負ってまで競技にのめり込むのだろうか。 国内のボディビル競技に関する先行研究は、競技方法に関する研究や生理学的な研究が主であり、社会学的な研究は竹崎(2015, 2019)の一連の研究、すなわち、男性高齢者ボディビルダーがいかにしてボディビルの価値を構築しているのかについて分析した研究と日本のボディビル文化を対象とした歴史研究に限定されている。 そこで本研究は、ボディビル競技者が競技へとのめり込む要因とその過程を明らかにすることを目的とした。また、本研究では、コンテストへの出場経験・予定のある競技者7名を対象とし、調査時期は4月~6月、調査方法は半構造化面接、主な調査項目は「競技に関する個人史」、「肉体の捉え方」、「競技実践の内容」とした。 その結果、競技者は、鍛えればその効果が必ず現れるという特性を持つ肉体に極めて高い予見可能性と成長可能性を感じ取り、その感覚を基に競技実践を漸次的に拡大させつつ徹底的なルーティン化を行っていること、また、競技者の行った競技実践は常にその意味が未来の競技実践へと外化される、いわば「意味の事後決定性」という特性を持っているために、競技者は過去の実践の意味証明と未来における成果を獲得すべく、現在の競技実践に没入せざるを得ない状況に置かれていることが明らかになった。
著者
中山 健二郎 松尾 哲矢
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.79_2, 2018

<p> メディアによる伝達を通じて歴史的に生成されてきた高校野球の「物語」は、人々の高校野球に対する解釈を規定しているとされ、主に神話論的アプローチによって、その構造を捉える試みがなされてきた。しかしながら、高校野球の「物語」は固定的な構造というよりも、種々の力学関係の中で流動的に再生産されているものとみられ、その変動を読み解く研究が求められているといえる。そこで本研究は、朝日放送テレビのドキュメンタリー番組『熱闘甲子園』を対象として、特に投手を主題化した映像および言説を分析することで、高校野球の「物語」が変動する過程について考察することを目的とした。</p><p> 競技特性上、「物語」の中心として主題化されやすい投手に関して、甲子園大会の戦術は近年、「先発完投型」から「継投型」へとシフトしてきている。分析の結果、『熱闘甲子園』ではこうした戦術の変化によって、投手を描く主題を「精神力」から「友情」へと置き換えていく様相がみられるなど、メディアに具現化される「物語」の変化が看取された。この結果から、高校野球の「物語」が、実践における変化によって変容しつつ構造化される過程の一側面が示唆された。</p>
著者
松尾 哲也
出版者
九州大学
巻号頁・発行日
1975

博士論文
著者
古賀 史子 福田 平八郎 松尾 哲子
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.282-291, 2002-10-15
被引用文献数
3

今日サービス供給の仕方が自給から外部依存へと推移してきており, その一つの要因として質の高いサービスが求められるようになってきたことがあげられる.しかしながら, サービス企業の品質評価に関する一般的な指標は未だ得られていない.そこで, われわれはサービス企業の品質を評価する手法の開発を目的として, 次のことを行った.(1)製造業に最も近いサービス業としてクリーニング企業をとりあげ, 顧客属性の最低要求水準を稼働率のある上限という最小コストで評価するという論点から, 福田の"相対的期間利益と稼働率の理論的関係"のノウハウを活用することにより, 品質面の相対的収益性(品質力)とその理論的標準値を求める.(2)品質力と標準的稼働率の関係を理論的に導き, 標準的稼働率をパラメータとして品質力と相対的期間利益の関係を求め, これらの妥当性を白洋舎の実績資料により検証する.(3)品質力の理論的標準値と標準的稼働率を用いて, クリーニング取次手数料率の理論的標準値の算出式を与え, それによる試算が現実を反映しているかをみる.その結果, サービス企業の一般的に比較可能な品質評価指標(品質力)とその標準値が得られた.
著者
松尾 哲子 古賀 史子 福田 平八郎
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.323-328, 2002-10-15
被引用文献数
1

In Japan, transition to a few-children, old-aged society and a nuclear family society is escalating. According to a white paper on the old-aged society, in a comparison of predicated family composition in 2020 with that in 1995, the number of households where the age of a householder is over 65 will increase from 8.67 million to 17.18 million, and senior people living alone will also sharply increase to 5.36 million, 2.5 times that of 1995. In the meantime, senior citizens as well as regional retail stores themselves are calling for the survival and revival of regional retail stores, whose decline is being affected by the advance of large stores. Under such circumstances, survival measures for regional retail stores aimed at "construction of regional environment to enable senior people to live spiritually rich lives" and "assistance to home-bound care assistance centers" are now attracting public attention. In this paper, the authors have conducted the following action for obtaining a new method to meet this target. A "customer visit and home delivery" trading method is extracted from the role of regional retail stores in the old-aged society, and a cooperation network based on a rotational duty system is constructed by applying the above role to the needs of senior people, by making best use of fundamental features of Japanese-style management. As a result, a framework that enables the utilization of capacity available for conducting customer visits and home delivery without generating new costs has been constructed.
著者
松尾 哲子 村田 厚生
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.190-203, 2011-10-15

2007年9月の敬老の日に総務省が発表した65歳以上の高齢者数は,2,744万人であり,総人口に占める割合は21.5%となり,人口数,比率とも過去最高になっている.一方,居住域の郊外への転移やモータリゼーションの影響によって,郊外を中心に巨大な駐車場を備えた大型ショッピングモールが乱立し,さらにインターネット販売,カタログ通販やインターネット注文で,最寄りの店から品物を配達するネットスーパーも活発になり,地域の商店街は人通りも減少し,空洞化に歯止めがかからない.しかし,商店街は車を運転できない地域の高齢者や生活弱者の生活必需品購入の唯一の生活ライフラインである.本研究では,九州の玄関口である,福岡県北九州市若松区と戸畑区の2ヵ所の商店街の来街者のアンケート調査研究に基づき,今後の高齢者など生活弱者のライフラインとしての商店街の維持や地域活性化を促すための施策について検討する.
著者
吉岡 秀克 松尾 哲孝 住吉 秀明 調 恒明 浜中 良志 二宮 善文
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究において以下の結果を得た。1.マウスV型コラーゲンα3鎖遺伝子の転写調節及び機能解析オリゴキャップ法により遺伝子の転写開始点を決定した。主な転写開始点は翻訳開始点約100bp上流に存在した。次に、この転写開始点上流約L8 kbの遺伝子断片をクローニングし、この遺伝子の基本プロモーター活性を検討した。基本プロモーターは転写開始点上流約300bpの領域に存在した。さらにゲルシフトアッセイ法により、BS1(-130〜-110)、及びBS2(-190〜-170)の領域にDNA/タンパク複合体の存在が認められ、その中でBS2に結合する転写因子はCBF!NF-Yと考えられた。プロα3鎖のN末の23個のアミノ酸よりなる塩基性セグメントが存在する。この塩基性のセグメントに骨由来細胞に対する細胞接着活性がある。このペプチドへ細胞が接着するとアクチンファイバーが形成され、これはRhoキナーゼ阻害剤であるY27632で阻止された。2.III型コラーゲンα1鎖遺伝子の転写調節解析ルシフェラーゼアッセイの結果、ヒト遺伝子のプロモーターの-96〜-34に最小の転写活性が見られた。ゲルシフトアッセイにより、-79〜-63の領域には複数の因子が結合することがわかった。以前より報告されている因子(BBF)は細胞によって、その複合体を形成する因子の槽成が異なると思われた。3.マウスXXIV型コラーゲンα1鎖遺伝子の転写調節解析XXIV型コラーゲンは最近、見出されたコラーゲンであり、主に骨に発現するが、その発現量は非常に少ない。今回、このプロモーター領域のDNAをクローニングし、転写調節機構の解析を行った。その結果、骨肉腫細胞を用いた実験により、このプロモーターにはc-Jun、CREB1、ArF1、ATF2が結合していることを見出した。
著者
松尾 哲孝
出版者
大分医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

申請者は、茶カテキン類が肥満細胞株RBL-2H3細胞およびラット腹腔内細胞(PEC)のケミカルメディエーター(ヒスタミン及びロイコトリエン、LT)放出をin vitroで抑制することを既に明らかにしている。そこで本研究は、茶カテキン類の生体内での肥満細胞のケミカルメディエーター放出抑制効果について検討した。まず、茶カテキン類の中で最も強い抑制活性を示したEGCGをラット腹腔内に投与すると、A23187の刺激によるヒスタミン放出を抑制することがわかった。次に、茶カテキン類の経口投与における肥満細胞のケミカルメディエーター放出抑制効果について検討した。サフラワー油・月見草油・パーム油の3種の食餌脂肪に茶カテキン類を1%(w/w)添加してラットに3週間自由摂食させ、A23187で刺激したときに放出されるケミカルメディエーター量を測定した。その結果、茶カテキン類のヒスタミン抑制効果は認められなかったが、LT放出においては、すべての食餌脂肪群で抑制効果が認められ、特にサフラワー群ではその活性が強かった。また、月見草群では、LTB_4およびLTB_5の両方の放出を抑制した。さらに、PEC細胞膜リン脂質の脂肪酸組成を調べたところ、サフラワー群ではLTB_4の前駆物質であるアラキドン酸の有為な低下が認められたが、その他の群ではこのような効果は認められず、茶カテキンの抑制効果は、LTの前駆物質減少以外にも関与している可能性が示唆された。
著者
松尾 哲矢
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の主な結果は以下の通りである.1.スポーツ競技者養成の《場》に着目し,学校運動部と民間スポーツクラブを自ら相対的自律性の獲得(正統性の獲得)のために独自に再生産戦略システムを有する《場》として捉え,それぞれ異なる《場》で養成された競技者の身体化された文化資本(ハビトゥス)の様相の差異を両下位《場》の教育戦略,象徴戦略の視点から分析することが目的であった.本研究の分析対象者は,全国上位の高校サッカー競技者で,中学校,高等学校を通して学校運動部に所属する194名と民間スポーツクラブに所属する78名であった.主な結果は,以下に示す通りである.1)学校運動部,民間スポーツクラブの両競技者ともに幼少期の相続的文化資本に差異はみられなかった.学校運動部および民間スポーツクラブの競技者間で現在の身体化された文化資本(ハビトゥス)の様相において差異がみられた.2)現在の身体化された文化資本(ハビトゥス)の様相の差異に関して,教育,象徴の各戦略の視点から検討され,特に民間スポーツクラブにおいて勝利志向の隠蔽のみならずその勝利志向を暗黙の内に前提化するようなハビトゥス形成に教育戦略や象徴戦略が巧妙に機能していることが示唆された.2.スポーツ競技者養成の下位《場》である民間スポーツクラブに着目し,指導者の有するスポーツ観,《場》に対する表象,親との関係性等から,スポーツ競技者養成の《場》の正統性をめぐる再生産戦略の諸相を教育戦略,象徴戦略,対人戦略という視点で明らかにするとともに,《場》の構造とハビトゥス形成のダイナミズムについて検討することが目的であった.本研究の分析対象者は,フルタイムの契約職員,専任職員,自営業主として勤務する民間スポーツクラブ指導者273名(サッカー83名,水泳111名,体操競技79名)であった.なお,比較分析のために,筆者が行った民間スポーツクラブ競技者の調査結果(2001)が必要に応じて用いられた.主な結果として,スポーツ観,《場》の表象において,指導者と競技者間で相同性が認められたが、競技者において,より限定的で強い意識や表象を有している場合がみられた.この両者間の相同性と異質性から,伝承の二重性のダイナミズムが示唆された.
著者
松尾 哲夫 園田 真治
出版者
公益社団法人精密工学会
雑誌
精密機械 (ISSN:03743543)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.938-943, 1981-08-05

前報ではS55C鋼を用いて最高35kgfのスナッギング研削モデル実験を遂行し, 各砥石の研削性能を比較した.本研究では新たに32A, ZN砥石を加えた計7種類のレジノイド砥石についてSUS304,SUS430,およびSUJ2鋼に対する同様の研削実験を実施し, 各砥石の性能を比較した.その結果, 先のS55C鋼の場合に比べて削除率の砥石依存性は比較的大きく, 砥石損耗速度は同様に砥石種類によって著しく影響される.また, 同一被削材では一般的傾向として削除率の高い砥石ほど砥石損耗速度は高い.32A砥石は全般的に最高の削除率を示すが, 砥石損耗速度がそれ以上に高くなるので, 結果として研削比は最低となる.この原因は研削中の激しい砥粒の破砕による.ジルコニア系砥石の削除率は必ずしも高くはないが, 研削比の点から優れている.特に, SUS304鋼に対してはZS砥石よりZN砥石が望ましい.同一削除率に対する研削面最大粗さは砥石種類によって変わらないが, 粗さ曲線の波形は砥石種類によって大きく異なる.