著者
貝沼 茂三郎 伊藤 隆 津田 昌樹 古田 一史 三潴 忠道 嶋田 豊 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.463-467, 2004-07-20
参考文献数
8
被引用文献数
4 10

我々は面状発熱体を使用した新式の電気温鍼器を作成し, 健常人男性2人で, 温鍼器を人体腰部に当て, 放熱温度に関する測定を, 旧式の豆電球方式の電気温鍼器と比較検討を行った。その結果, 旧式と新式を比較すると, 旧式の2段階が新式の5チャンネルに相当することがわかり, また温鍼器中央温度は, 旧式と新式で立ち上がりは同じでほぼ同様の曲線を描き, 10分後には140℃程度に達した。しかし, その後旧式では, 温鍼器の中央温度が上昇し続けたのに対し, 新式ではプラトーに達し, 新式の方が安全性に優れていると考えられた。また19例を対象に, 新式の5チャンネルで有効方剤と電気温鍼耐久時間の関係を検討すると, 10分未満では陽証, 30分以上では陰証 (特に烏頭, 附子含有方剤) の方剤が有効であった。耐久時間と証に一定の相関が認められたことより, 新式の電気温鍼器は証の決定に有効な補助手段に成りうると考えられた。
著者
堀野 雅子
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.105-107, 1995-07-20
参考文献数
7
被引用文献数
2 1

桂姜棗草黄辛附湯の加味方としての, 桂枝湯エキス, 麻黄附子細辛湯エキス合方の効果を検討した。 寒がり或いほ手足の冷えを有し, かつ桂姜棗草黄辛附湯証を示唆するとされる心下部の盤状抵抗のある症例に同方剤を投与したところ15症例 (頭痛, 感冒, 鼻炎, 冷え, 下痢等) で主症状の著明な改善をみた。 このうち2症例 (頭痛, 下痢) の経過を報告した。 同方剤の証は桂姜棗草黄辛附湯証に類似しており, 相違点について注意する限り, 桂姜棗草黄辛附湯の便方として使用しうるものと考えられた。
著者
豊田 一
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.263-267, 1995-09-20
参考文献数
8

ステロイド軟膏は, 一時的には劇的に効果を表すかの如く見えるが, 長期の連用により種々の副作用が発現し, 逆に治療の妨げとなる。 また皮膚乾燥防止に使用されているワセリンにも, 近時皮膚障害の報告がみられる。 和剤局方の神仙太乙膏にはステロイド軟膏にみられる副作用はなくアトピー性皮膚炎に対して89.1%の治癒効果が得られたので報告する。
著者
元山 幹雄
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.761-764, 1996-03-20
参考文献数
5

中神琴渓の睡眠時遊行症の治験に倣い甘草瀉心湯を投与し奏功した症例を経験した。 症例は60歳, 男性, 会社員。 主訴は, 夜, 寝ている時に大声で怒鳴る, 無意識に起きて部屋の中を歩き (走り) 回る。 家族歴は特記すべきことなく, 既往歴は昭和46年, 腰椎椎間板ヘルニア手術施行。 現病歴は昭和59年頃から主訴が見られたが放置していた。平成元年, 近医, 及び総合病院の精神科を受診, 諸検査を行ったが診断ははっきりしなかった。 安定剤の投薬を受け, 主訴は一時的には軽くなったが長くは続かなかった。 平成6年2月2日, 成人病健診の再検査のため会社診療所を受診, 症状は続いてみられていた。現症は腹診で軽度の心下痞硬, 胸脇苦満を認めた。 治療経過は2月16日, 甘草瀉心湯を投与。 服薬後, 1週間位で徐々に効果が現れ, 夜, 大声で怒鳴ること, 歩き回り物を投げつけることはなくなった。
著者
片桐 一男
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.627-638, 2004-09-20
参考文献数
2
被引用文献数
1

長崎の阿蘭陀通詞吉雄幸左衛門耕牛の成秀館塾は〈オランダ語教育〉のうえに〈オランダ流医学〉の実践教育をして,きわめて盛況であった。それは,ボイセンの『人体の排泄物についての論』という医学理論に立脚,〈スウィーテン水〉による画期的治療効果によってもたらされる〈財〉の〈有効活用〉に支えられていた。これが,古医方出身の前野良沢・杉田玄白ら江戸の医学界にも強く影響,全国に普及をみた。〈理論・情報の公開〉〈技術の共有〉〈財の使用倫理〉問題という現代医学界の抱える問題にも,そっくり共通している。
著者
大野 健次 延原 弘明
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.55-61, 1995-07-20
参考文献数
21
被引用文献数
4 1

三叉神経痛の患者34名に, 小柴胡湯と桂枝加芍薬湯のエキス顆粒を同時に投与し, 2週間後における効果を検討した。 漢方薬開始前から carbamazepine (CBZ) を服用していた19名のうち11名において, CBZ を減量または中止することができ, 症状の変化から14名において漢方処方が有効であると考えられた。 漢方薬のみを投与した11名中8名に痛みの消失ないし軽減がみられた。 効果判定不能の4名を除くと, 30名中22名(73%)において小柴胡湯・桂枝加芍薬湯が有効であった。 小柴胡湯合桂枝加芍薬湯は基礎実験と臨床の両面から抗けいれん作用が確かめられており, 三叉神経痛治療の標準薬である CBZ と薬理学的な共通点が多い。 小柴胡湯・桂枝加芍薬湯を単独で, あるいは CBZ と併用して用いることにより, 三叉神経痛の薬物療法がより有効で安全なものとなる可能性があると思われた。
著者
崎山 武志 石野 尚吾 渡辺 賢治 PLOTNIKOFF Gregory A. 許 鳳浩 FROEHLICH Claus PFLUEGER Kerstin 柳澤 紘
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.99-118, 2009-01-20
被引用文献数
3

世界的に伝統医学が再認識される流れにある。東南アジアの伝統医学は古代中国に端を発し,各国独自の発展を遂げた。これら関係国間の情報交換と意思疎通の手段として,世界保健機構・西太平洋地区(WHO-WPRO)は国際標準用語集(IST)を発刊した。わが国でも,日本漢方の講義が全医学部で行われるようになった。このような流れの中で,世界の中での日本漢方の現状を把握し,どのように世界に発信していくかに関して会議を開く意義は大きいと考える。そこで日本漢方の現状と世界から見た日本漢方とその問題点,同じ古代中国医学を起源とする現代中国と韓国での現状,日本国内で漢方を専門とする医師は日本漢方をどう捉えているのか,について計3回に亘り漢方医学国際会議(仮称)を開催した。「なぜ,今,日本漢方か」の主題,世界各国の医師が日本漢方を選ぶ理由と自国の事情あるいは普及,自分にとって日本漢方はどういうものか;漢方の世界への発信ということを踏まえて,の副題のもと,在日外国医師・医学生と代表的漢方医に講師を依頼し,その後に参加者で総合討論を行った。
著者
三浦 義孝
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.865-869, 1999-03-20
参考文献数
13
被引用文献数
2 6

糖尿病性神経障害による有痛性腓腹筋痙攣(こむらがえり)は, 主に夜間に出現し, 睡眠障害など糖尿病患者のQOLを阻害する症状の一つである。今回, こむらがえりを有する糖尿病患者へ芍薬甘草湯を投与し,その臨床効果について検討した。対象は糖尿病患者男性6例, 女性6例, 年齢61.9±8.0歳(平均±SD)。芍薬甘草湯エキス剤2.5〜7.5g/日を投与し, 4週後にこむらがえりの頻度, 重症度などを判定した。芍薬甘草湯の作用は早期に認められ, 全体の67%でこむらがえりの完全消失を認め, 頻度, 症状などを総合的に考慮した全般有用度は100%であった。安全性に問題は認めなかった。勾薬甘草湯は糖尿病性神経障害によるこむらがえりに対し, 随証治療を必要とせず簡便で有用な処方と考えられた。
著者
矢久保 修嗣 小牧 宏一
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.433-438, 1995-11-20
参考文献数
17
被引用文献数
1

抗コリン作用のある抗不整脈薬のジソピラミドによる口渇に対して我々は白虎加人参湯を投与した。 ジソピラミド徐放錠300mgを投与され口渇の生じた11例に対して, 白虎加人参湯エキス細粒1包2.0gを一日3回食後に迫加投与した。 ロ渇に対する効果判定は投与後12週の自覚症状の改善度を6段階評価し, 副作用などの考慮を加え6段階の有用度についての評価も行った。 また, 同方剤の併用によるジソピラミドの抗不整脈作用についても自覚症状とともに一部の症例では24時間 Holter 心電図により評価を行い, 電解質の変化も一部の症例について検討した。 白虎加人参湯の投与により不整脈の悪化はみられなかった。 同方剤の投与前後の血清Na, K, Clには有意な変化はなかった。 ジソピラミドによる口渇に対する同方剤の臨床効果判定を行った。 著明改善:18.2%, 改善:27.3%, やや改善:18.2%, 不変:18.2%, 悪化はなく, 判定不能:18.2%, 副作用は18.2%にみられた。白虎加人参湯の有用度は, 極めて有用:18.2%, 有用:27.3%, やや有用:18.2%, どちらともいえない:18.2%, 有用でない:0%, 判定不能:18.2%となった。 やや有効以上は63.6%となり, ジソピラミドの口渇に対する同方剤の投与ほ有用と考えられた。
著者
青山 廉平
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.287-303, 2003-03-20
被引用文献数
1

『医断』は吉益東洞の医説を,門人の鶴田元逸が集録したが,その刊行を見ずに死亡したので,同門の中西深斎が改補し,「虚実」の編を追加して,宝歴九年(1759)刊行されたものである。東洞の独創的医説を強烈にアピールした,センセーショナルな著述で,「司命」「死生」以下「元気」「脈候」「腹候」「臓腑」「經絡」「引経報使」「鍼灸」「栄衛」「陰陽」「五行」「運気」「理」「医意」「痼疾」「素難」「本草」「修治」「相異相反」「毒薬」「薬能」「薬産」「人〓」「古方」「名方」「仲景書」「傷寒六経」「病因」「治方」「禁宜」「〓数」「産褥」「初誕」「痘疹」「攻補」「虚実」の37論よりなり,東洞の思想を端的に記載している。この書が刊行されて三年後に,畑黄山が『斥医断』を著して,「鶴氏の編する所,吉益子の医断を読むに書を廃して歎ず。大意す可きもの三,流悌を為す可き者の二,其の佗理に背き道を傷りし者,〓ねく挙ぐること難し。云々」と概歎し,全編43章にわたって,『医断』の各論をとりあげ,東洞の説にはげしい論駁を加えた。以後,『医断』の「死生」論における天命説を中心として,賛否両論にわかれ,はげしい論戦が展開された。堀江道元『弁医断』田中栄信『弁斥医断』,小幡伯英『弁医断評説』,加屋恭安『続医断』などの書物も出版されて,江戸時代最大の医説論争が長く尾を引くこととなった。いま,『医断』・『斥医断』の二書の一端をとりあげて,江戸時代に行われた医説論争の一面を窮うこととする。
著者
箕輪 政博 形井 秀一
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.491-494, 2008-05-20

受傷直後から整形外科治療に併せて鍼治療を行った外傷性頸部症候群の一症例を報告する。症例は軽自動車を運転中に後方より追突された38歳の女性。事故翌日より,手指のしびれ,肩背部の疼痛を自覚して,整形外科治療とともに鍼治療を開始した。鍼治療は上肢下肢の遠隔部の経穴のみに置鍼施術を行い,評価には数値的評価スケールを用いた。治療後に数値が50%以上改善するように治療した結果,治療直後の症状改善は著しく,数値的評価も経過とともに改善した。鍼治療は症状が強い時を主に合計49回行い,7カ月後に症状が緩解したので終了した。外傷性頸部症候群の難治例の患者は,治療の長期化に悩むケースがあり,本症候群に対する鍼灸治療のエビテンスの確立が望まれる。
著者
小田口 浩 若杉 安希乃 伊東 秀憲 正田 久和 蒲生 裕司 渡辺 浩二 星野 卓之 及川 哲郎 花輪 壽彦
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.53-61, 2008-01-20
参考文献数
29

柴胡加竜骨牡蛎湯を服用することにより,自律神経機能の変化とともに降圧効果が得られた高血圧症の1例を経験したので報告する。<br>患者は46歳,男性で,軽症高血圧の他,交感神経緊張状態を疑わせる症状も呈していた。柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒(ツムラ)を約3カ月間服用することで,外来血圧は収縮期,拡張期ともに著明に低下した。24時間自由行動下血圧測定(ABPM)では,24時間平均血圧の低下が認められたほか,脳血管障害の危険因子とされる早朝血圧上昇が改善した。起立検査では,服用前は立位負荷により交感神経優位に傾いた自律神経バランスが,服用後は逆に副交感神経優位に傾くという結果が認められた。脂質プロファイルの改善も認められた。<br>本症例の経過は,柴胡加竜骨牡蛎湯が自律神経機能に効果を及ぼすことで降圧効果を示す可能性を示唆しており,ストレス過多により交感神経緊張をきたした高血圧患者に対する有用性が期待される。