著者
宮本 俊和 濱田 淳 和田 恒彦 寺田 和史 市川 あゆみ 鍋倉 賢治
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.939-944, 2003-09-20
被引用文献数
7 3

円皮鍼と装丁を同様にした鍼のない偽円皮鍼(プラシーボ鍼)を使用し,マラソンレースに参加した選手の筋痛と血清クレアチンキナーゼ値(以下CK値),筋硬度に対する円皮鍼の効果を二重盲検ランダム化比較試験により検討した。対象はマラソンに初めて参加する15名の大学生とし施術,検査,データの解析に関わらない者が無作為に割付けした。円皮鍼またはプラシーボ鍼は下肢の経穴8箇所に,マラソンスタート前に貼付し,5日後に抜去した。測定項目は,筋痛のVisual Analogue Scale(以下VAS),CK値,LDHアイソザイム,立位体前屈,筋硬度とし,マラソンスタート前,ゴール後,5日後に測定した。その結果,1 円皮鍼はマラソン後の筋痛を軽減させた。2 CK値とLDHアイソザイムのLDH4,LDH5は,マラソンゴール後に上昇したが,円皮鍼の効果はなかった。3 立位体前屈は差がみられなかった。4 筋硬度は,外側広筋と内側広筋で増強したが,円皮鍼の効果はみられなかった。
著者
今西 二郎 渡邊 聡子 栗山 洋子 細野 八郎 田中 邦雄 矢野 忠 細川 豊史
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.669-674, 2002-11-20
参考文献数
4
被引用文献数
9 8

医学生の講義前後における東洋医学に関する意識を検討するため,京都府立医科大学の学生に自己記入式アンケートを配布した.医師に漢方を処方してもらったことのある学生は,18%,薬局で買った漢方薬をのんだことがあるのは53%,鍼灸治療を受けたことがあるのは,わずか13%であった。84%の学生が漢方医学に関心をもっており,漢方医学は勉強する価値があると思っている学生は82%,現代医療において漢方は必要であると考えている学生は76%,また将来漢方を自分の診療に取り入れようと思っている学生は54%であった.これらの数値は,講義後,それぞれ92%,85%,87%,62%に増加していた.
著者
三浦 於菟 興津 寛 武島 英人 赤池 正博 斎藤 輝夫 岡田 研吉 白石 佳正 渡辺 裕
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.637-642, 1998-03-20
被引用文献数
3

〓血証盗汗の記載の〓矢は, 王清任『医林改錯』と唐宗海『血証論』であるが, その病態説明は少ない。そこで血府逐〓湯加減・抵当丸・桃核承気湯加減で盗汗が消失した〓血3症例(女性)に基づき, 東洋医学的病態を考察した。その共通病態は熱証(夏季の発病, のぼせ, 盗汗時のほてりなど)と下焦の〓血証(下腹部脹満, 少腹急結, 頻尿など)であった。その病態理論は以下のように考えられられた。睡眠中は衛気が血分に入る。このため, 体表の衛気は虚となり発汗しやすい状況となっている。血分の衛気は〓血の存在のために鬱し, 夜間に〓血の熱はさらに強まる。この熱が津液を温め蒸し, その結果津液が外に押し出されて盗汗が生じる。これより, 熱証が〓血盗汗の前提条件と思われた。また下焦=肝とすれば, 血は夜間肝に帰ることにより, 下焦の蓄血で出現し易いとの仮説も考えられた。以上より, 盗汗の原因のひとつとして〓血を考慮することも必要と思われた。
著者
川俣 博嗣 土佐 寛順 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.253-260, 1996-09-20
被引用文献数
5 1

寝たきり老人に黄耆建中湯を投与したところ, 著明に日常生活動作 (ADL) の拡大を得た2症例を経験した。 症例1は76歳の女性。 くも膜下出血で約5ヵ月間の入院により, 寝たきりとなった。 入院時は両下肢に麻痺と廃用性萎縮を認め, 意欲の低下は著明であった。 証に随い小建中湯を投与したが, 効果がなかったため, 黄耆建中湯に転方。 徐々に意欲の上昇が得られ, 著明な ADL の拡大を得た。 症例2は86歳の女性。 腰椎圧迫骨折で1年間寝たきりの状態が続いた。 黄耆建中湯の投与で意欲の上昇が得られ, 積極的にリハビリテーションを取り組むようになった。 この結果, 座位が可能となり, 杖歩行で退院となった。 寝たきり老人の病態は, 虚労状態と考えられる。 気力・体力の低下した寝たきりの老人に対して, 本方で著効が得られたことは高齢者医療における漢方医学の寄与を具体的に示す一つの事例であると考え報告した。
著者
長坂 和彦 引網 宏彰 名取 通夫 川崎 武志 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.9-15, 2001-07-20
被引用文献数
1

今回,当帰四逆加呉茱萸生姜場加附子を酒煎することを指示し,良好な結果を得た症例と中毒症状を来した各一症例を経験したので報告する。症例1は46歳,女性。夜間寒さで目覚め,一度目が覚めるとストーブにあたりながらドライヤーで肩から腕を温めないと眠れなかった。そこで,酒煎(水:酒=1:1で煎じる)を指示したところ,冷え症が改善して夜間の覚醒がなくなった。症例2は65歳,男性。2年前より多関節痛,腰痛があり,冷え症も強くなってきたため受診した。当帰四逆加呉茱萸生姜場加烏頭で足が温まるようになった。さらなる効果を期待して,酒煎を指示したところ,内服25分後に舌のしびれを自覚した。附子中毒と考え服用を中止した。清酒は性大熱にして,陽気を助ける作用がある。これは附子の作用と同じである。当初は,附子と清酒中のアルコールの相乗効果で作用が高まると予想した。しかし,清酒と同じアルコール濃度のエタノール液で煎じた場合は効果は高まらず,清酒による煎液のpHの低下が主因であった。
著者
中城 基雄 英保 武志 久保 茂正 長瀬 千秋
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.45-53, 2001-07-20
被引用文献数
2 2

中医学の四診の中で,脈診と並び重要な診察法として舌診が上げられる。一般に臨床的に舌色を記録する際,従来の様な銀鉛カメラによる写真は,客観性を有する手法の確立が難しく,また,長期的な記録の保存性にも問題があった。そこで筆者らは,デジタルカメラを用いて,画像補正用カラーチャートとコンピュータを併用した,新しい画像補正の手法を考案し,舌診の客観化を試みた。その結果,補正後の出力画像は,本来の舌の大きさを再現したばかりでなく,実際の舌から側色した表色系の値とも近似させることが可能となり,舌診の客観的評価に有用な手法であることが示唆された。
著者
田原 英一 新谷 卓弘 三潴 忠道
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.813-820, 2008-11-20
被引用文献数
1 3

漢方医学において半表半裏とされる部位について,傷寒論条文を発生学的に検討したところ,鰓弓領域と一致性がみられた。鰓弓部分は主に三叉神経から迷走神経の支配領域に一致し,一部内耳神経と副神経にも関連が見られた。つまり,半表半裏証は鰓弓由来の部分が熱を持っている病態と考えられる。傷寒論と発生学は本来別のものであり,傷寒論の病態を発生学的に理解することには限界もあるが,理解の一助にもなるのではないかと思われる。
著者
鈴木 雅雄 江川 雅人 矢野 忠 苗村 健治 山村 義治
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.233-240, 2000-09-20
被引用文献数
5 2

慢性閉塞性肺疾患は日常生活動作が強く制限される疾患である。本疾患に対し鍼治療を行い, 呼吸器症状が改善した一症例を経験したので報告する。症例は70歳の男性, 主訴は労作時呼吸困難。現病歴は93年8月に呼吸困難を訴えて当院内科を受診し, 肺気腫及び気管支喘息と診断された。薬物療法開始後も症状はしばしば増悪した。97年2月より在宅酸素療法(HOT)が開始された。鍼治療は, 97年8月5日より併用を開始した。所見ではHugh-Jones分類V度。%肺活量63.5%, 1秒率29.4%, PEFR:84.8l/分(朝), 93.5l/分(夜)。鍼治療は, 中府, 中〓, 関元, 尺沢, 肺兪を基本穴とし, 置鍼術は10分間とした。治療効果判定のため反復法を採用し, 呼吸器疾患日誌から症状点数を算出した。日常生活上の呼吸状態をVisual Analog Scale(VAS)により評価した。14カ月間に60回の鍼治療を行い, 治療期間中には症状の改善が認められた。無治療期間中には症状再燃が観察された。本症例では鍼治療の併用により呼吸器症状及び呼吸機能の改善がみられ, 慢性閉塞性肺疾患の進行例において鍼治療の有効性が示唆された。
著者
田原 英一 伊藤 隆 林 克美 三瀦 忠道 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.459-466, 1998-01-20
参考文献数
26
被引用文献数
3 1

大黄甘遂湯により変形性関節症に伴う膝関節痛の軽減とともに, バセドウ病の改善を認めた1症例を経験した。症例は61歳女性。主訴は両膝関節痛と下腿浮腫。1995年5月当科に入院。この時, バセドウ病と診断し, 抗甲状腺剤を6ヶ月使用した。退院後, 膝関節痛と下腿浮腫増悪のため, 1996年5月20日当科再入院。下腹部の膨満と抵抗圧痛に着目し, 大黄甘遂湯を投与した。両膝関節痛と下腿浮腫は著明に改善し, 6月15日退院となった。再入院時に再燃していた甲状腺機能亢進状態についても, 抗甲状腺剤を使用することなく, 約5ヶ月後に正常化した。同方剤は峻下剤といわれている甘遂が配剤されているが, 本例では長期投与にもかかわらず下痢などの副作用は認めなかった。本方剤の治験例は明治以降では2例のみ報告されているに過ぎない。そこで本証に特有とされる「小腹満して敦状の如き」腹候に関して文献的検討を行い, 使用目標について考察した。
著者
岡 良成 宮崎 雅史
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.173-177, 2001-09-20
被引用文献数
1 1

こむら返りは血液透析中に頻繁に見られる合併症であり, 芍薬甘草湯の有用性が高いことが知られているが, 無効例もみられる。我々はこの無効例に対して, 骨格筋に対する鎮痙作用が知られているヨクイニンを用い, その効果を検討した。対象:血液透析中にこむら返りを頻発する当院の慢性維持透析患者で, 芍薬甘草湯が無効の症例。症例数9例で男性3例女性6例, 平均年齢58.3歳, 平均透析歴9.2年。方法:ヨクイニンエキス錠「コタロー」を3〜6錠/日で投与し, こむら返りに対する抑制効果を3週間後に判定した。結果:9例中5例でこむら返りは消失し, 他の4例は無効であった(有効率55.6%)。問題となる副作用は認めなかった。結論:血液透析患者においてヨクイニンは芍薬甘草湯無効のこむら返りに随証治療の一環として有用な薬剤と考えられた。
著者
田原 英一 斉藤 大直 川上 義孝 荒川 龍夫 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.351-356, 2002-07-20
被引用文献数
2 1

療養型病床群で老人の夜間不隠行動に,酸棗仁湯が奏効した症例を経験した。症例1は97歳,女性。誤嚥性肺炎を繰り返し,夜間奇声を上げるようになり,当院へ転院。特に夜間病棟中に響きわたる奇声を上げ続けた。酸棗仁湯(TJ-103)7.5gを投与開始後,体位変換,オムツ交換などの際に短時間奇声を上げるだけとなった。その後嚥下訓練を行い,経口摂取が再開できた。症例2は80歳女性。脳出血後後遺症で当院へ転院。夜になると大声を上げるようになった。酸棗仁湯投与後,夜間睡眠が良好となり,日中はリハビリなどで過ごせるようになった。高齢者が増加し痴呆による問題行動に対して対応が苦慮される中で,高齢者の夜間せん妄の中に酸棗仁湯が適応となる病態が存在する可能性が示唆される。
著者
木村 豪雄 小尾 龍右 古田 一史 三瀦 忠道
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.253-259, 2004-03-20
被引用文献数
2 2

難治性の腹痛を繰り返す周期性好中球減少症に対して漢方治療を行なった。症例は44歳の男性。18歳より約1カ月周期で繰り返す全身倦怠態と腹痛にて発症した。急性腹症の手術を契機に周期性好中球減少症と診断された。ステロイド,顆粒球刺激因子および免疫抑制剤などによる様々な治療が行われたが,寛解には至らなかった。さらに好中球減少の周期性は徐々に乱れ,激しい腹痛が持続するようになったため腹腔内神経叢ブロックを施行されたが,効果は持続しなかった。漢方医学的所見では著しい虚証かつ寒証に陥っていたため,通脈四逆湯と大建中湯合附子粳米湯で対応した。その後は,刻々と変化する腹痛に対して建中湯類を中心とした方剤を適宜変更することにより症状の軽減のみならず,好中球減少の周期性を改善することが出来た。
著者
山田 光胤
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.505-518, 1996-01-20

医療は専ら西洋医学を修めた医師によって行うこととし, 漢方を学んでも医師の資格は与えないという明治政府の処置によって, 明治16年 (1883) 以降漢方医学を学ぶ者は次第に絶え, 我が国の伝統医学・医療は絶滅に瀕した。 これは, 日本人の特に当時の政府人の西洋崇拝, 伝統蔑視の思想が強く関与しているものと思われた。 このような風潮は, 現在でも引き継がれていると考えられる。 しかし, 幕末から明治にかけて, 日本漢方を西洋医学と対比するに, 外科手術の面は別として, 内科的治療のレベルは, むしろ日本漢方が優れていた。 この具体的な症例を, 浅田宗伯は著書『橘窓書影』の中に記録している。 そのような時流の中で, 東洋医学を学んで医師となった和田啓十郎は, 漢方医学の有用性・重要性を唱えて, 明治43年 (1910), 『医界之鉄椎』を著した。 この書は実に, 漢方医学復興の一粒の種子となった。 金沢医専出身の医師・湯本求眞は, この書によって啓発され, 和田門下となって生涯を漢方医学の究明と, それによっての患者の治療に尽し, 昭和2年, 『皇漢医学』3巻を著した。 この書は, 西洋医学の知見を混えて, 傷寒諭, 金匱要略の解釈を中心にした, 漢方最初の現代語による解説書である。 湯本の『皇漢医学』は, その後の我が国に於ける漢方医学の復興に, 大きな影響を及ぼしたのみでなく, 中国に於ても, その伝統医学の温存にカを与えたといわれる。 ともあれ昭和年代初頭では, ごく僅かな生き残りの漢方医と数名の医師によって, 漢方医学が伝承されていたが, やがて, 漢方復興の機運が, 次第に醸成され, 種々な運動が起こった。 昭和11年 (1936), 当時新進の漢方医学研究者が志を同じくし, 漢方医学復興を目指してその講習会を開催した。 偕行学苑と名付けられたが, 翌年より拓大漢方講座と名を改めた。 この漢方講座は, 昭和19年 (1944) 迄8回, 毎回約3ヵ月乃至4ヵ月間ずつ開催され, 第2次大戦後の昭和24年 (1949) に, 第9回紅陵大学漢方講座として15日間開催された。 通算9回, 700名以上の有志が聴講し, 中からはその後, 漢方医学界の柱石となる人物も輩出した (筆者も, 戦後の第9回講座を, 医学生の身分で聴講した)。 第2次大戦前の昭和16年, 南山堂より『漢方診療の実際』という書が発行された。 この書は, 従来の「証」に随って治療する漢方の本質から一歩踏み出して, 現代医学的病名に対して, 使用した経験のある漢方処方を列挙して解説している。 当時とすれば画期的な漢方医学の解説書であった。 そして, 第2次大戦後, 昭和29年 (1954) に改訂版が発行された。 さらに昭和44年 (1969) に発行された『漢方診療医典』(南山堂)は, 漢方診療の実際を大改訂した書である。 これらの書を通じて解説された, 現代医学病名に対応して用いられる漢方処方の延長が, 現在の日本で, 大量に使用されている漢方製剤の応用なのである。 これらの書が, 現代日本漢方に及ぼした影響は多大なものがある。 その『漢方診療の実際』初版は, 大塚敬節, 矢数道明, 木村長久, 清水藤太郎の共著となっている。 これらの著者達こそ, 拓大漢方講座講師団の中核であって, その後の漢方復興運動を成し遂げた人達である。 それらの人達の系譜こそはまた, 現代日本漢方の正統でもある。 即ち大塚敬節は, 湯本求眞門下の古方派の学統を継ぎ, 木村長久は, 明治の大家・浅田宗伯の直門・木村伯昭の嗣子で折衷派の学統を継ぎ, 矢数道明は, 大正時代に活躍した漢方医・森道伯の流れを汲む後世派・一貫堂の後裔であった。(敬称略)
著者
寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.163-176, 1997-09-20
参考文献数
13
被引用文献数
3 1

わが国は歴史的に経験したことのない高齢化社会を迎え, 医療保険制度は財政的に破綻の危機に瀕している。国民の基本的人権とも呼べる「健康で人生を全うする」ための医学や医療, あるいは介護・福祉も, 政治や経済の埒外で論じることはもはや不可能な事態である。現在の混乱は「古い時代が終わり, 新しい時代が始まる, その夜明け前である」という認識に立って, 新しい時代を作り上げて行くのが私たちに課せられた使命である。<br>そこで, 本稿では漢方医学の過去を特に明治維新の医制改革周辺の問題を主に解析し, またその後の漢方医学復興の足跡を辿り, 漢方製剤の保険薬価収載の歴史を検証してみた。そして現在我々が抱える問題を分析し, 将来にわたって打破すべき古い価値観は奈辺にあるのか, 新しい価値観は何に求めるべきなのかを考え, 漢方医学の明日を論じた。
著者
堀野 雅子
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.801-804, 2005-09-20
参考文献数
8
被引用文献数
3 3

半夏厚朴湯は金櫃要略記載の気剤で「咽中炙臠」を目標に使用される事が多いが, 先人達は腹候, 特に中〓痞満の重要性を指摘している人も多い。そこで咽中炎臠と中〓痞満の関係を中心に検討してみた。半夏厚朴湯証と思われる患者18名 (男性2名女性16名) 全員中〓圧痛及び不快感のあった人について半夏厚朴湯エキス又は煎じ薬を投与して主訴, 自覚症状, 腹候特に中〓の状態, 服薬後の中〓の変化について検討した。咽中炎臠は66.7%, 冷えは55.6%, 腹力は中程度が77.8%, 心下に変化のあった人は38.9%, 振水音は11.1%であった。服薬後の中〓の状態は, 記載漏れを除く69.2%が圧痛又は不快感が消失または軽減していることが判明した。