著者
鍵和田 賢
出版者
福島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、異なる信仰の者同士が、紛争を経つつもいかにして「共存」のシステムを構築していったのかを、近世神聖ローマ帝国都市ケルンを対象に明らかにしていくことである。とりわけ、各地域の紛争を調停する立場にある帝国諸機関が当該紛争に対してどのように介入していたのかを明らかにする。本年度の研究の目的は、18世紀初頭に発生した宗派紛争である「居留民条令改訂問題」に関わる史料を分析し、成果を発表することであった。この紛争はケルン都市参事会による当条令の改訂に対し、それを不服とするプロテスタント住民が参事会を相手取り帝国機関に告訴したものである。分析の結果として、帝国最高法院での訴訟には長い時間と多額の費用を要するにも関わらず原告であるプロテスタント商人は訴訟を継続し、最終的に判決が下されなかったため更に帝国議会への請願まで行ったことが明らかになった。このような原告側の行動の意図として、訴訟が継続している期間中について自らに不利な新条令の施行を停止させる一種の「時間稼ぎ」である可能性が想定され、帝国機関による最終的な判決を必ずしも必要としていなかったことが明らかになりつつある。一方被告となった都市参事会は、「居留民条令改訂問題」についてプロテスタント商人が帝国最高法院への上訴を行うことに関して、上訴の必要性を否定する立場をとった。最終的に上訴は実行され、参事会も訴訟に応じたが、上訴に先立って原告・被告間で頻繁な接触が行われていたことが分かる。さらに、訴訟の継続中に参事会は条令の一部を修正して再発布するなど、法廷外で原告との妥協を図ろうとしたことが明らかになった。これらの分析の結果から、宗派紛争における帝国諸機関の役割として、最終的な判断を下すことよりも妥協のための環境を整備することが重要であった、少なくとも紛争当事者はそのように捉えていた可能性が明らかになりつつある。
著者
五十嵐 敦 福田 一彦
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,勤労者のメンタルヘルス問題のメカニズムについて,交代制勤務による睡眠問題と職場適応の問題について実証的なアプローチを試みたものである。特に,3交代制から2交代制に移行を予定している病院の看護職の調査をメインに,地方自治体職員や一般企業との比較調査を行った。結果,初回調査では2交代制が3交代制の看護職者よりよい状況であった。しかし,3交代者が2交代に変更した後の状況については良好な状況になっていることは確認できたが,縦断調査への協力者の数が少なかったことで統計分析に十分耐えるものではなかった。3交代からの変更者が少なかったこと,交代制自体が状況によってサイクルが不安定に変更されている状況があったと見られる。自治体においては労働時間よりも作業遂行の問題や日中の眠気・入眠の問題などが精神的健康には有意に関連していることが明らかとなった。また,人材育成としての研修への積極的態度も重要な要因であった。一般企業では抑うつ傾向に対して休日の眠気や希望的態度が抑制要因となっており,Karasek(1979)のコントロール感の重要性が確認された。
著者
中村 泰久
出版者
福島大学
雑誌
福島大学教育実践研究紀要 (ISSN:02871769)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.31-38, 2000-06
著者
岡田 努
出版者
福島大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

科学史上の著名な実験の再現や明治期の子ども向け科学啓蒙書に見られる実験等の再現研究を実施し、文献に記載されていない素材や加工技術等を当該時代の技術・生活・文化・歴史まで考察し、自然科学研究の発展を学際的・横断的にとらえることを主に研究を実施した。この成果は別添の論文や学会等で報告するとともに、さらに小中学校および高校向けの理科教材へも取り入れ、その実験が行われた当時の歴史・文化・技術等との関わりを盛り込んだ「科学実験工作プログラム」へと発展した。県内外から30件以上もの子ども向け・科学指導者向けの講演・講座等の依頼を受けこの研究成果を活用した。特筆すべきは文部科学省が指定する「スーパーサイエンスハイスクール」指定高校からの依頼で、意外と見過ごされがちな文系や理科が苦手な生徒向けにこれらの成果を活用した授業を実施し好評を得て、同校から次年度以降も協力要請を得ることができたこと。また特許庁主催「平成19年度知的創造サイクル啓発事業」では、指導員としエ同研究の成果を「ものづくりにみる、科学・技術・社会-科学史の視点から知的創造サイクルを考える」という演題で全国各地で講演した。従来、発明や知的財産等の普及活動といえば企業等で長年研究開発に携わった者の経験を伝えるのが主であったが、本研究の科学教育における学際的・総合的な視点が発明や知的財産の普及に活用できるという点を評価され、本研究計画時点では想定していなかった新しい分野を開拓することができた。本研究の成果は以下に示すように今年度は論文・学会等の数では必ずしも多いとはいえないが、教育現場や他の各種講演等で実践を通し研究を非常に多く実施することができたことは大きな成果であり、今後それらの成果を順次発表する予定である。
著者
川上 昌直
出版者
福島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

全3年度にわたって、新規事業プロジェクトにおける、ビジネスリスクとそのマネジメントに関する研究を行うに当たって、本年度はこれまでの研究の取り組みをまとめる作業と補足データの収集行った。本研究では、コンテンツビジネス、とりわけ映画ビジネスに焦点を絞って研究を行ってきた。本年度においては、韓国の映画関係者に対してインタビュー調査を行った結果をもとに、韓国映画産業におけるビジネスモデルと資本調達スキームを、これまでのハリウッド方式とわが国の方式との比較のもとに、一本の論文としてまとめあげた。韓国映画産業では、政府や政府系機関がそのビジネスモデルと投資スキームに関与して、映画の製作をバックアップしていることがわかった。これを、Afuah(2004)やドミナントロジックの枠組みを用いて明らかにした。本論文に関しては、平成19年度に文眞堂から出版される『ケースブック ビジネスモデル・シンキング』に掲載される。以上のように論文をまとめる過程において、本年度においては、国際ビジネス研究学会第13回全国大会において「ビジネスモデルから見た韓国映画産業」という表題で発表を行い、関係者からコメントをいただくとともに、論文の理論的枠組みをさらに強化することができた。また、本年度においては、ビジネスモデルとしての波及効果として、わが国におけるフィルムコミッションの活動を視察、資料収集を行い、それがビジネスとして成立するかどうか、その可能性の検討を行った。このテーマに関しては、本研究から派生的に発展したテーマである。その成果に関しては、理論的フレームワークのきらなる拡張を試みて、体系に組み入れる予定である。
著者
三浦 浩喜
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、学校における芸術教育の危機といわれている今日、IT技術と学校空間を利用し、児童美術文化の再生をしようとする実践研究である。まず、イタリア、レッジョ・エミリア市の調査においては、企業や自治体、海外との連携の重要性が明かとなった。次に、わが国における学校空間を利用した実践は80年代に大きく広がり、90年代に縮小したものの、各地にユニークな実践が存在したことが明らかとなった。また、学校との実際のコラボレーションにおいては、福島市桜の聖母小学校、須賀川市白方小学校、三春町立岩江小学校、伊達市立保原小学校などとプロジェクトを展開し、いずれも成功させることができた。
著者
金 炳学
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、学術的独自性として、韓国においても紛争解決手段として多用されている間接強制に焦点をあて、日本においてその理論的背景についての分析がなされていない現状から、韓国における間接強制の弾力的活用をめぐる法改正議論について検証をする。あわせて、本研究の創造性として、韓国の理論的状況の対比を通じて日本民事執行法上の間接強制が帯びている独自の可能性について、姉妹法たる韓国法との比較法的見地から理論的・実証的意義を再確認し、ドイツ・日本・韓国の比較民事手続法的考察をし、アジア法からヨーロッパ法への法の環流を促す新たな可能性をみいだす。
著者
高橋 純一 安永 大地 杉村 伸一郎 行場 次朗 坂本 修一 堀川 友慈 齋藤 五大 大村 一史
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究が対象とする「アファンタジア(aphantasia)」は,実際の知覚は機能しているにもかかわらず心的イメージが機能しない特質のことであり,新たな事例として提唱された。心的イメージとは刺激対象が実際に目の前に存在していなくとも,それを疑似体験できる機能である。私たちは想像(創造)や思考など日常生活で意識せずにイメージを多用しているが,アファンタジア当事者はイメージを思い浮かべることが少ないことから,結果的にイメージ以外の情報処理機構を用いていると推測できる。本研究は,アファンタジアという新たな事例の認知・神経科学的理解を通して,社会におけるアファンタジア理解を促進しようとするものである。
著者
高橋 純一 杉村 伸一郎 大村 一史
出版者
福島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

本研究が対象とする「アファンタジア(aphantasia)」は2015年に提唱された新たな事例で,実際の知覚は機能しているが心的イメージを形成しにくい特質である。現在,成人を対象とした研究が展開されており,その知覚および心的イメージの特徴について知見が得られ始めている。アファンタジアは先天的な特質であるため,幼児期・児童期でも既に心的イメージ形成の困難さが生じている可能性が推測される。本研究は,幼児期・児童期におけるアファンタジアの新奇事例を提唱し,その定義を可視化できるアセスメントツールを開発しようとするものである。
著者
深山 陽子
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、近年生産現場で問題となっているトマトの生理障害である水疱症の発生メカニズム解明と発生予測式の作成を目的とする。具体的には、トマト植物体の水分動態(水ポテンシャルの変化等)に着目し、水疱症への関与を調べることでその発生メカニズムを明らかにする。さらに水疱症が発生する要因の閾値を求め、発生予測式を作成する。これらの結果を基に潅水方法や環境制御法の改良を行う。本研究によって水疱症が発生しない潅水方法や環境制御方法が確立されれば、安定的な生産技術として生産現場に普及することが期待できる。
著者
楊 秋芬
出版者
福島大学
雑誌
行政社会論集 (ISSN:09161384)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.89-100, 2003