- 著者
-
白石 佳和
- 出版者
- 言語文化教育研究学会:ALCE
- 雑誌
- 言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
- 巻号頁・発行日
- vol.19, pp.220-238, 2021-12-24 (Released:2022-02-14)
- 参考文献数
- 50
現在,俳句や連句を用いた言語教育実践が国内外でおこなわれているが,その実践を支える文学理論の検討が十分になされていない。本論文では,和歌に始まる座の文学の歴史を整理しつつ,座の文学とは西洋の「文学」概念と異なり文学「する」こと,文学活動そのものであるという理論・日本独自の文学のあり様を検討する。まず,座の文学の性格を,対話性,当座性,帰属性,民衆性の4点にまとめた。それを踏まえて座の文学の教育的側面に注目し,俳句・連句教育における最も重要な活動が対話の場である句会であることを示す。その上で,文学活動と教育活動を合わせ,越境して拡がる座の文学を「活動型文学」と呼ぶことを提案する。活動型文学は人と対話しことばでつながる文学活動である。特に,座の文学の典型である「連句」は,ダイナミック・アセスメントや協働学習,多文化共生を志向した活動として期待できる。本論文により,文学作品を対象とした言語文化教育ではなく,文学活動それ自体を言語文化教育とする「活動型文学」という新たな視点を提案する。