著者
堂本 真吾 江口 正司 高岡 昌輝 松本 忠生 大下 和徹 武田 信生
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.309-319, 2006-11-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
23
被引用文献数
1

地球規模での水銀汚染に関して人為的発生源は重要である。未知発生源の1つとして火葬炉から排出される水銀の挙動を調査した。火葬炉のバグフィルタ出口においてOntario Hydro Methodを基にした水銀形態別連続分析計を用い, 34検体の排ガス中水銀濃度を連続測定した。排ガス中の総水銀濃度は4.3μg/m3NでHg0が2.2μg/m3N, Hg2+が2.1μg/m3Nであった。1御遺体あたりの水銀排出量は51.8mg/人と見積もられ, 年間死亡人口との関係から年間水銀排出量は57.0kg/年と推定された。イギリスでの規制値案としては水銀排出量150mg/4人 (37.5mg/人) である。この規制値と今回の結果を比較すると34検体中12検体がこの規制を満たしていないことがわかった。また年齢階級別に平均水銀排出量を算出すると65-69歳の階級で最大の142mg/人の排出量となった。これは過去に歯科治療にアマルガムが多く利用されてきたことと喪失歯が少ないことが原因と考えられた。また過去の歯科治療におけるアマルガム使用推移から水銀排出量の将来予測を行った。その結果歯科治療履歴からの推測では, 2005年現在で1670~2380kg/年と見積もられた。実測値からの推測と治療歴からの推測には大きな隔たりがあった。将来動向としてはこれから約20年後に水銀排出のピークを迎えることが示唆された。
著者
寺園 淳 酒井 伸一 高月 紘
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.192-210, 1999-05-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
24
被引用文献数
1

阪神・淡路大震災では, 地震発生後に被災地の広範囲で一般環境大気中のアスベスト濃度が上昇した。この原因を探るために, 被災した建築物の解体に伴うアスベスト飛散について, 実測を含めて実態を調査し, 拡散モデルを用いて飛散の影響を検討した。まず, 自治体の協力を得て吹付けアスベスト使用状況を詳細に調査し, S造建築物での多くの使用事例や吹付けアスベスト原則禁止後も使用されていた事例などを明らかにした。また, 一般環境濃度上昇の原因として, 吹付けアスベストの除去, 除去後の解体, 並びに非除去解体の現場におけるアスベスト飛散をそれぞれ調べたが, 周囲に最も飛散し影響が懸念されたのは非除去解体であった。更に, 被災地の推定アスベスト蓄積量および飛散量から, プルーム・パフモデルを用いて, 環境庁モニタリングの各測定点におけるアスベスト濃度上昇の寄与を試算した。その結果, アスベスト濃度の試算値と実測値の間には弱い正の相関関係がみられ, 試算から実測値のオーダーをほぼ説明できることが示唆されたとともに, アスベスト飛散現場から周辺環境の濃度推定に役立つ情報が提供された。最後に, 非除去解体によるアスベストの飛散を避けるために, 法規制とともに除去費用の負担軽減措置などの必要性を示した。
著者
才木 義夫 中沢 誠
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.287-293, 1990-07-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
11
被引用文献数
1

地球温暖化の要因物質であるCO2について, ガソリン自動車の走行時における排: 出係数を求め, TRIASの理論値と比較した。また, 排出係数とガソリン販売量の統計データから我が国におけるガソリン自動車からのCO2排出総量を計算し, その経年推移を調べた。ガソリン自動車からのガソリン1l当たりのCO2排出量 (排出係数) はTRIASの理論値では2.38kg/lであるが, 市街地の実走行モードおよび定速モードにおける排ガス分析結果から求めた排出係数は2.32kg/lおよび2.35kg/lとなり, 理論値より実走行モードで約25%低い値となった。この原因はガソリン中の炭素がCO2に変化する以外にその一部がCO, HCおよび粒子状物質に消費されているためと考えられる。ガソリン自動車の走行時のCO2排出量 (9/km) は車速が約50km/hで最低となり, それより低速側および高速側で増大する傾向を示した。ガソリン販売章と実走行時の排出係数から求めた我が国のCO2排出総量は1987年度で89, 293×103トンであり, 毎年ほぼ増加している。前年度比で見た場合, 1971年度から1978年度が約3~9%, 1979年度から1987年度が約2%の増加であった。
著者
岡本 眞一 塩沢 清茂
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.12-22, 1992-01-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
54
被引用文献数
1

液化ガス燃料や有害化学物質の漏洩事故により生じる高密度ガスの拡散挙動はよく知られている一般の大気汚染物質の拡散とはまったく異なっている。このため, アメリカおよびヨーロッパ諸国では, このような高密度ガスの挙動を理解するために, 多くの拡散実験が実施された。そして, これらの関連施設のリスク評価のための予測モデルも多数提案されている。ここでは, これらの高密度ガスの拡散について論評を加えた。
著者
William. E. WILSON
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.A67-A76, 1998-05-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
25

On July 18, 1997, EPA promulgated new standards for fine particles, with PM2.5 as the indicator (15μg/m3, annual average; 65μg/m3, 24-hour average). EPA also retained the existing levels of the PM10 standards (50μg/m3, annual average; 150μg/m3, 24-hour average) to pro-. tect against exposure to coarse particles. This decision was based on an extensive review of the scientific information regarding effects of PM. The upper 50% cut point of 10μm was chosen because it provides a measure of thoracic particles (i.e., those particles entering the lung). The 50% cut point 2.5μm was chosen to divide thoracic particles into fine and course particles because of their differences in sources, composition, and properties (chemical, physical, and biological). The time required for determining compliance or noncompliance with the revised PM standards is such that the next periodic review of the PM standards (required every 5 years) will take place before new particle control measures will be required. Monitoring requirements for determining compliance and research needed for the next review have been identified by EPA. Research needs include improved measurement techniques for finemode particles.
著者
鹿角 孝男 薩摩林 光 佐々木 一敏 鹿野 正明 太田 宗康 畠山 史郎 村野 健太郎
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.282-291, 1996 (Released:2011-11-08)
参考文献数
34
被引用文献数
6

山岳地域における環境大気中の浮遊粒子状物質 (SPM) と大気降下物の特徴を把握するため, 唐松岳入方尾根および長野市においてSPMを1ヵ月毎に採取し, 化学成分濃度を測定し, 各種発生源寄与率の推定を行った。また, 大気降下物を1ヵ月毎に測定し, 酸性物質降下量を調査して, 渓流水への影響について検討した。八方尾根におけるSPM中のSO42-濃度は春季~ 夏季に高くなる変化を示した。春季 (3~4月) には黄砂の影響が見られ, 黄砂粒子の濃度は約4μg/m3と推定された。調査地点近傍の土壌粒子の寄与は少なかった。大気降下物のpHは平均5.1であり, 長野市 (平均5.3) よりもわずかに低く, 春季に高くなる傾向があった。nss-SO42-の降下量は長野市の約2倍あり, またNO3-の降下量も多く, 清浄地域と考えられる山岳地域にも多量の酸性物質の降下が認められた。八方尾根付近の渓流である平川の水質は, pH7.6, アルカリ度0.48meq/lと十分な中和能があったが, 梅雨期には希釈効果により一時的にアルカリ度の低下が認められた。NO3-濃度は融雪期 (3~4月) に上昇したが, pHの低下は見られなかった。
著者
新井 一司 久野 春子 鈴木 創 遠竹 行俊 大喜多 敏一
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.184-191, 2002-06-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
21

モミの衰退木の調査方法を確立し, 東京におけるモミの衰退分布を明らかにするために, 1992年から1993年にかけて山間部を対象に衰退度の評価を107地点, 618個体について行った。調査方法は, 小枝の枯損, 枝葉の密度, 樹形と樹勢の4項目の値を合計した衰退度合計指数が評価基準として有効であった。小枝の枯損と枝葉の密度における衰退度階級2以上の明らかな衰退がみられた個体の割合は, 各々45.2%, 45.6%であった。モミの衰退は, 地形的要因である傾斜や起伏の状態とは関係がみられなかった。一方, 広域的な広がりである緯度, 経度との間には相関関係がみられ, 山間部の南東の地域ほど, 衰退が激しく, 北西部で衰退の程度が弱まる傾向がみられたが, 北西部の一部の谷地形では, 被害がみられた。海抜高は, 250m以下の低い地域ほど衰退が激しく, 高い高度で健全な傾向を示すものの, 750m以上という高い地域でも57.9%の地点に弱いながらも衰退現象がみられた。
著者
Sayako Ueda Kazuhiko Miura
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
Journal of Japan Society for Atmospheric Environment / Taiki Kankyo Gakkaishi (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.339-349, 2007-11-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
23

東京の神楽坂において大気エアロゾル粒子の湿度特性の観測を4季節にわたって行なった。易動度粒径100nmの単分散エアロゾル粒子の湿度に対応した粒径変化を, TDMAを使用して測定した。夏は, 相対湿度65%RH, 70%RHの時に成長した粒子の割合が, それぞれ23%, 28%であったが, 78%RH, 83%RHではそれぞれ50%, 61%であった。夏の典型的な場合では成長粒子割合や成長率の急激な増加が7580%RHで見られ, この湿度は (NH4)2SO4やNaCl, NaNO3の潮解湿度に近い。秋は, 成長粒子割合, 成長率が, ほとんどの場合どの湿度でも他の季節より低かった. 春, 冬の65%RHでの成長粒子割合は, それぞれ41%, 59%であり, 70%RHでも同様に, 夏, 秋に比べて成長粒子割合が高かった。特に, 冬の成長粒子割合と成長率は, どの湿度でも高かった。70%RHの成長粒子割合は, 外気の気温が低い時, または屋外湿度が高いときにより大きく, この結果は, 気体からの二次粒子の生成過程が低い湿度で吸湿成長する粒子の存在に関係していることを示唆している。
著者
笠原 三紀夫
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.96-107, 2002-03-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
12
被引用文献数
4

The importance of global environmental problem such as global warming and acid rain as well as local air pollution problem has been recognized worldwide, especially over the last decade. Atmospheric aerosols, especially smaller particles less than 2.5μm (PM2.5) have a key role in those environmental problems. Information on the characteristics of aerosols is essential to understanding their behavior in the atmosphere and the resulting effect on the environment. In this paper, the present state and future assignments of air pollution by aerosols are reviewed and the meaning of innovation of PM2.5 is discussed.
著者
安岡 高志 光沢 舜明
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染研究 (ISSN:21863687)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.402-406, 1977-11-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

Absorption of nitrogen oxides into the soils were measured in a gas chamber by an automatic continuous nitrogen oxides analyzer (with Saltzman reagent). The capacity of absorption of nitrogen oxides differs greatly due to the sorts of the soils. The soils gradually released nitric oxide at room temperature, and the concentration of the released nitric oxide is nearly proportional to that of original gas concentration. Nitric oxide and nitrogen dioxide were released by heating from the wet soil which absorbed nitric oxide or nitrogen dioxide, while only nitric oxide was released from the dry soil. The temperature at which nitrogen dioxide appears lowered with increasing the water content of the soil. Some soils even reduced nitrogen dioxide to nitric oxide. The rate of absorption and release between the soils and the atmosphere varied by the sorts, temperature and water content of the soils.
著者
松丸 恒夫 松岡 義浩 白鳥 孝治
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.279-285, 1985-08-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
12
被引用文献数
3

ヨウ素精製工場に隣接するナシ園において, ナシの葉の葉肉部がネクロシス化し, 激しい場合は落葉するという異常症状が発生した。そこで原因究明をねらいとして現地実態調査を行った。その結果は以下のとおりである。1) 異常症状は葉脈間の葉肉部にネクロシスを生ずるタイプと葉縁部にネクロシスを生ずるタイプに分けられた。前者には品種「幸水」,「新水」が, 後者には「八幸」,「八君」が相当した。2) 異常症状の発生には品種間差が認められ,「幸水」,「八幸」が感受性,「長十郎」が抵抗性,「新水」,「八君」はその中間であった。3) ヨウ素, 塩素, 硫黄, 臭素, フッ素成分の葉分析の結果, 被害葉のヨウ素含有率のみが異常に高いことが認められた。4) ヨウ素精製工場周辺のナシ以外の植物調査の結果, 6種類の植物葉にネクロシス又はクロロシスを伴う異常症状が確認された。また, それらの植物葉を分析した結果, すべての葉に高濃度のヨウ素が検出された。5) ナシの葉の異常症状の原因はヨウ素の過剰集積によるもので, ヨウ素の飛来源は隣接するヨウ素精製工場であろうと推察された。また, 異常症状の発現する葉中ヨウ素含有率の限界値は, 感受性の「幸水」,「八幸」で20~50ppm (乾物当たり) と考えられた。
著者
溝口 勲 三上 理一郎 工藤 翔二 小久保 雅子 今関 鎮徳
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染研究 (ISSN:21863687)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.485-492, 1976

During the summer of 1975, effects of photochemical oxidants and other factors on health of schoolchildren and students were investigated in Saitama Prefecture, northern suburbs of Tokyo metropolitan area. The levels of each air pollutant and meteorological foctor were divided to 4, 5, 6 or 8 ranks and ratios of ones who had acute complaints to person days were compared with each other.<BR>Oxidant concentration most closely related to the ratio. The incidences stepwise increased from 0.02% to 0.3%, 3% in accordance with the elevation of oxidants levels (-0.07 ppm, 0.12-0.19 ppm, 0.20 ppm-). The levels of SO<SUB>2</SUB>, NO<SUB>2</SUB>, SPM and visibility related to the incidences to some extent. When SO<SUB>2</SUB>, NO<SUB>2</SUB> and SPM levels exceeded 0.07 ppm, 0.10 ppm and 0.2 mg/m<SUP>3</SUP> respectively and visibility lowered 3 km in this region, the incidences clearly increased. High temperature and discomfort index, however, were not always connected with high incidences. In addition, the weather of days when high incidences were found was slightly cloudy, and in rainy or clear days such results were not at all seen.
著者
小林 隆弘
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.271-282, 2007-09-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
61
被引用文献数
3

大気環境中のナノ粒子に曝露される可能性がある。ラッシュアワーのとき道路沿いの大気中では自動車由来と思われるナノ粒子が増加することが観察される。ディーゼルエンジンは多数のナノ粒子を排出する。一方, 極めて粒子径が小さいことから, ナノ粒子は化学的, 電気的あるいは光学的な新たな物性を持ち, 外界からの光や熱や電圧等の刺激に対して大きい粒子に比較し異なる挙動を示す。このようなことから工業的に生産されるナノ粒子は化学, 電子工業, 化粧品, 医薬, 食品, 環境技術といったあらゆる分野で使われるようになりつつある。作業環境中においてもこれらのナノ粒子に曝露される可能性が増加しつつある。しかしながら, 大気および作業環境中のナノ粒子の曝露評価や健康影響評価はあまり行われていないのが現状である。ここではナノ粒子の曝露評価や健康影響評価の現状と課題について概観した。曝露評価については, 屋内・屋外ならびに作業環境中での曝露に関する知見の充実や毒性やナノ材料のライフサイクルを考えた曝露指標の選択とそれに基づく曝露量の計測手法の開発が課題である。また, 健康影響評価においては粒子の物理・化学的性状に基づいた体内動態や毒性評価や評価に必要な曝露手法の開発が課題となる。
著者
Youichi OHKUBO Chieko KADOSIMA Takashi KANEKO Junichi CHUCHIYA Yosiaki AKUTSU Masamitu TAMURA Tadao YOSHIDA
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
Journal of Japan Society of Air Pollution (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.212-220, 1990-05-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
17
被引用文献数
2

シガレヅトスモーク中には高反応性で見かけ上長寿命の気相ラジラルが存在することが見いだされている。このラジカルの生体への有害性に関する基礎的な知見を得るため, シガレットスモークおよびスモーク中の気相ラジカル生成をモデル化したオレフィン/NO/空気系反応ガスが生体膜の主要構成脂質である高度不飽和脂酸 (PUFA) の自動酸化を開始することを共役ジエン生成法および酸素吸収法を用いて検討した。その結果, シガレットスモークは主としてその気相ラジカルによりPUFAの自動酸化を開始し, 生体に有害な過酸化物を生成することを見いだした。
著者
藤田 慎一 中山 稔夫 矢田部 照夫 千秋 鋭夫
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.183-193, 1984-06-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
20
被引用文献数
2

1982年8~9月, 伊豆諸島・首都圏および関東内陸においてオゾンの観測を実施し, 首都圏のオキシダント濃度に及ぼすパックグラウソドオゾンの影響について検討した。観測データは, 移動平均法を適用して周期と振幅とが異なる三つの成分に分離し, 各成分のモードと気象条件との関係を調べた。首都圏における夏期の高濃度オキシダントの発生パタンは,(1) 24時間周期の変動が卓越する場合と (2) 24時間周期の上に数日周期の変動が重畳する場合の二つに分類できる。(1) は光化学反応によるオキシダントの生成と消滅に, また (2) は成層圏に起源を持つノミックグラウンドオゾンの沈降に関係するものと考えられる。バックグラゥンドオゾンの寄与は低気圧性擾乱の後面で顕在化し, その影響は南北200km以上の広い水平スケールに及ぶことがある。
著者
浅田 正三
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.A56-A64, 2004

ダイオキシン類の測定分析に係る精度管理制度に関するものとして, 環境省関係では 「ダイオキシン類の環境測定に係る精度管理指針」 および 「ダイオキシン類の環境測定を外部に委託する場合の信順性確保に関する指針」 に基づく 「ダイオキシン類の請負調査等の受注資格審査表」 制度があり, 経済産業省関係では特定計量証明事業者認定制度 (MLAP) がある。また, 任意の制度としてISO/IEC17025 (試験所および校正機関の能力に関する一般的要求事項) に基づく試験所認定制度がある。ダイオキシン類測定分析機関は, 現在, これらの制度の下で精度管理の維持を行い, 信頼性の高い測定分析データの確保を行っている。ここでは, これら精度管理制度について経緯, 制度の概要, 比較・相違および現状等について概説する。
著者
藤田 慎一
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1-22, 2002

電力中央研究所は, 関係諸機関の協力のもとに広域的な観測網を展開し, 1987年10月から足かけ10年にわたって東アジアの酸性雨の調査を行った。観測データをもとに, 降水成分の湿性沈着量, 硫黄化合物の収支, 降水組成の季節変化と経年変化, 東アジアの降水化学などの解析を行うとともに, 長距離輸送モデルの検証を進めてきた。<BR>本論文は既往の研究成果をふまえて, 降水成分の濃度と湿性沈着量の地理分布, 季節変化, 経年変化を解析し, 観測の立場から東アジアの酸性雨について総合的な考察を加えたものである。
著者
孫 富順 新田 裕史 前田 和甫 金 潤信 柳澤 幸雄
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.334-342, 1990-09-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
29

1989年1月に韓国で一酸化炭素 (以下CO) の室内濃度と個人曝露濃度の測定を行った。同時に室内汚染と個人曝露濃度に影響を及ぼす家庭特性を調べるための質問紙調査も行った。室内濃度は台所と居間で, 個人曝露濃度は最近開発されたパッシブCOサンプラーを用いて, 主婦に対して測定を行った。調査対象は都市地域であるソウルと地方である忠清南道Togoから, 暖房形態として伝統的オソドル又はオンドルポィラーを使用する世帯を選んだ。その結果, 日平均で室内CO濃度は台所23ppmと居間12ppm, 個人濃度はその中間の18ppmに及んでいた。室内濃度と個人曝露濃度には家庭特性, 特にオンドルのタイプの影響が認められた。さらに, 家庭での換気設備および対象家庭の社会経済的水準が室内CO濃度に影響を与える重要な要因であることが明らかになった。
著者
大平 俊男
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染研究 (ISSN:21863687)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.425-430, 1977

In an attemt to clarify air pollution conditions in the atmosphere over the southern Kanto area, the Tokyo Metropolitan Research Institute for Environmental Protection, using an aircraft, made a survey of the concentration of NO<SUB>x</SUB>, SO<SUB>2</SUB>, TSP, CH<SUB>4</SUB>, non CH<SUB>4</SUB>·HC and CO in the layer between the altitudes of 700 and 1, 800 meter in October, 1974. The results are as follows:<BR>(1) The average concentrations of NO and NO<SUB>2</SUB> were 0.24 pphm and 0.92 pphm respectively, the latter being about 1/3 to 1/5 of that on the ground.<BR>(2) No SO<SUB>2</SUB> was detected in most of the days, except on October 18 when its average concentration was 1.4 ppb, being approximately 1/10 of the ground concentration.<BR>(3) TSP average concentration measured by light scattering method was 1.6μg/m<SUP>3</SUP> over Takyo and 11μg/m<SUP>3</SUP> in the upper air of Sagami Bay. These were around 1/60 to 1/10 of the ground level concentsation in Tokyo. SO<SUB>4</SUB><SUP>--</SUP> and NO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP> concentration in the dust by high volume sampler were from not detectable value to 29 μg/m<SUP>3</SUP> and from 1 to 23 μg/m<SUP>3</SUP> respectively, both being a little lower than the surface values in Tokyo, but the differences did not seem to be great compared with other pollutants.<BR>(4) The concentration of CH<SUB>4</SUB> was about the same as that of surface level, ranging from 1.5 to 1.7 ppmC, while that of nonCH<SUB>4</SUB>·HC was mostly between 0.2 and 0.4 ppmC, being about 1/2 of the ground concentrations.<BR>(5) CO value was mostly 0.4 through 0.8 ppm, about 1/5 of the ground concentration.<BR>Recently, Dr. T. Kitagawa made a hypothesis that photochemical smog was produced by aircraft exhaust gas accumulated in an inversion layer, not by autmobile and factory exhaust gas. This hypothesis, however, not only raises doubt in several points, but also can not be supported at least in the light of the conditions of air pollutants in the layer between 700 and 1, 800 meter above the ground, especially of the measurements of precusors of photochemical smog such as NO<SUB>x</SUB> and nonCH<SUB>4</SUB>·HC.
著者
松本 光弘
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.64-71, 1988-02-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
19
被引用文献数
3

雨水中のカルボン酸の測定に, 排除イオソクロマトグラフィー (以下, ICE法と略) の適用を検討した。その結果, 5種のカルボン酸 (ギ酸, 酢酸, プロピオン酸, コハク酸, グルタール酸) を迅速にかつ同時に定量することができた。しかし, シュウ酸とマロン酸についてはICE法では分離が悪いため, 通常のイオソクロマトグラフィーで定量した。雨水中のカルボン酸は, 室温では数日で完全に分解するが, クロロホルムあるいは塩化水銀を添加することにより室温でも3ヵ月間以上安定であった。雨水中のカルボン酸濃度の年平均値は, ギ酸0.181μg/ml, 酢酸0.112μg/ml, その他のカルボン酸は0.Ol8μg/ml以下であった。雨水中の水素イオン濃度に及ぼすカルボン酸の寄与率の年平均値は, ギ酸3.89%, 酢酸0.59%であり, カルボン酸全体で4.94%と見積ることができた。