著者
藤田 慎一
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.335-341, 1988-12-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
21
被引用文献数
1

ガス状・粒子状物質の長期湿性沈着量の推定モデルを導出し, 発生源の周辺における煤塵の沈着量を調べた。気象条件や粒径分布の設定値が, 沈着量の推定値に及ぼす影響についても検討を加えた。点源から大気中へ放出された粒子状物質の積算沈着量は, 無限遠で発生量に漸近するが, そのパタンは粒子の粒径によって異なる。ミクロン領域でも粒径が小さな粒子の沈着量の分布パタンは, 風向の出現頻度と比較的類似した分布パタンを示す。これに対して粒径が大きな粒子の沈着量の分布パタンは, 風速や発生源からの距離にも依存する。サブミクロン~ミクロン領域に分布を持つ煤塵の沈着量は, 発生源の周辺では粒径が大きな粒子に, 遠方では粒径が小さな粒子の挙動に支配される。このため重量を基準にした降水中の煤塵の粒径モードは, 発生源からの距離とともに粒径が小さな方へ遷移する。風系や降雨の統計データを用いると, 直接, 沈着量が推定できるため, このモデルは年~経年の長時間スケールにわたる湿性沈着量を推定するのに適している。沈着量を推定するうえでは, 気象条件とともに洗浄係数-つまり煤塵の粒径分布-を吟味することが, より重要な問題となる。
著者
早福 正孝 辰市 祐久 古明地 哲人 岩崎 好陽
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.122-130, 2002-03-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
11
被引用文献数
1

家庭用焼却炉を用いて3種の落ち葉 (ケヤキ, スダジイ, シラカシ) を焼却し, その結果を用いてダイオキシンの生成要因を考察した。葉, 焼却排ガス, 焼却灰中のダイオキシン類の濃度は, 葉の種類による大きな違いはなかった。しかしケヤキの排ガス中のダイオキシン類濃度のみは, スダジイ, シラカシに比べると高濃度であった。このケヤキの排ガス中ダイオキシン類の高濃度は, 葉中の塩素含有量に影響を受けているものと思われた。そこで, 都内の公園や街路における14種類の樹葉の塩素含有量を調査した。その結果, ケヤキの葉中の塩素含有量が最も多かった。焼却排ガス中のダイオキシン類濃度 (Y: ng-TEQ/m3N) と焼却物の塩素含有率 (X:%) の間にY=308X1.3(R2=0.9485n=12)の関係式が得られた。この式から, 塩素含有率が10倍ずつ増加すると, 焼却排ガス中のダイオキシン類濃度は約20倍ずつ増加することになる。塩素含有量の多いケヤキの葉の焼却排ガスは, 低塩素化ダイオキシン類を多く生成させた。
著者
松本 光弘 植田 直隆 西川 喜孝
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.501-511, 1986-12-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
29
被引用文献数
8

1984年4月より一年間にわたり, 内陸部の田園都市である奈良市において, 各季節にアンダーセンサンプラーで大気中のエアロゾルを採取して, エアロゾルおよび無機イオン成分 (SO42-, NO3-, Cl-, F-, NH4+, Na+, K+, Ca2+, Mg2+) の粒度分布を測定し, その季節変動を調べると共に降雨によるこれらのイオン成分の除去効果を検討した。奈良市におけるエアロゾルの粒度分布は年間を通じて「二山型」を示し, また, 各イオン成分の粒度分布は,(1) SO42-, F-, NH4+, K+成分のように年間を通じて微小粒子側に分布が集中しているもの (FF (Fine fracdon, 微小粒子分率): 65~95%) と,(2) Na+, Ca2+, Mg2+ 成分のように年間を通じて粗大粒子側に分布が集中しているもの (FF: 5~45%) と,(3) NO3-, Cl-成分のように季節によって粒度分布が異なるもの (FF: 16~67%) の3種に大別することができた。このような粒度分布の違いは主にイオン成分の発生源由来に起因しているが, NO3-, Cl-成分はその二次生成物であるNH4+塩の安定性に大きく関与し, また, NO3-成分については粗大粒子の組成がNa NO3の他にCa (NO3) 2の存在が推定された。イオン成分のFFと降雨による除去率の関係は有意の相関が見られ, エアロゾルの粗大粒子が降雨により除去されやすいことが確かめられた。
著者
原口 公子 山下 俊郎 重森 伸康
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.407-415, 1985-12-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
17
被引用文献数
1

環境大気中に存在するリン酸トリエステル類について試料の採取方法並びに分析方法を検討した。試料の採取は, ハイボリウムエアサンプラーを用い, ガラス繊維ロ紙の下にXAD-7樹脂を入れたステソレス製円筒を取り付けて, 吸引流速700l/分で24時間行った。採取した試料は, ソックスレー抽出器で抽出後, 酸・アルカリで処理し, シリカゲルカラムを用いて分画する。各溶離液は濃縮後N-P検出器付ガスクロマトグラフで溶融シリカキャピラリーカラムを用いて定量した。添加回収実験は, 8種類の標準物質のアセトン溶液をロ紙上に添加して, 上記の操作を行い回収率を求めた。その結果, リソ酸トリジクロロプロピルとリン酸トリフェニルは, ロ紙上に捕集され, 沸点がそれ以下のリン酸トリブチルやリン酸トリクロロエチルは主に樹脂上に捕集されることがわかった。この方法を環境試料に適用しGC/MS-MFで同定した結果, 大気中には, リソ酸トリエチル, リソ酸トリプチル, リソ酸トリクロロェチル, リン酸トリクロロプロピル, リン酸トリジクロロプロピル, リン酸トリフェニルの存在が確認されその濃度は2~5ng/m3程度であった。
著者
杉前 昭好
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.416-424, 1983-10-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
15
被引用文献数
1

重液分離法とICP発光分析法の組み合せにより, 各種大気試料中の金属成分の密度分布の測定を実施した。測定対象試料はピル空調フィルター付着粉じん, Hi-volによる浮遊粉じん試料, Low-volによる大気浮遊粒子状物質試料, アンダーセン・サソプラーによる粒径別分級捕集試料, 降下ばいじんなどであり, 空調フィルター付着粉じんについては, Zn, Pb, Cd, Cr, Mn, Fe, V, Cuの8成分, その他の試料については, Zn, Fe, Mn, Cuの4成分の密度分布を測定した。各試料について, 特徴的な密度分布パターンが得られ, 降下ばいじん中の金属成分の密度分布曲線には密度2.7g/cm3と3.3g/cm3以上の位置にピークがあるのに対し, 浮遊粉じん中の金属成分は金属化合物であるとは考えにくいような低比重であることが判明した。また試料捕集面への空気取り込み流量の差が密度分布パターンに影響を及ぼしており, 空気吸引流量の大きい場合には, 高密度成分の比率が増加の傾向を示した。密度分布曲線には, 金属成分間でも差異があり, Znで代表される人為発生源からの寄与の大きな元素は低密度であり, 自然発生源からの寄与率の高いFeなどは比較的高密度成分の比率が高くなる傾向があった。またアンダーセン・サンプラーにより, 空気力学的粒径に応じて分級捕集した粉じん中の金属成分の密度分布には相互にかなりの差異があり, 微小 (粗大) 粒子捕集ステージには低 (高) 密度粒子が分級捕集されていることも確認された。
著者
栗田 秀實 植田 洋匡
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.251-260, 1985-08-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
15
被引用文献数
8

傾度風が弱い場合に大気汚染物質の長距離輸送を引き起こす総観規模の気象条件について, 気圧, 地上風, 高層気象データに基づいた解析を行った。特に, 長距離輸送に最も重要な役割を果す, 内陸の山岳地帯に日中に形成される熱的低気圧と, 高層気象の特徴に注目した。長距離輸送は高気圧に覆われ, 上層風が弱い場合に発生する。このとき, 大気下層では局地風が発達し, 熱的低気圧および総観規模の高気圧に伴う沈降性逆転によりこれらの局地風が結合され, 熱的低気圧に吹き込む太平洋側からと璃本海側からの2つの大規模な風系が形成される。そして, 総観規模の気圧分布は熱的低気圧の中心位置, したがって, 2つの大規模風系の収束線の位置を決定し, その結果, 長距離輸送による大気汚染物質の到達範囲を決定する。
著者
尾崎 則篤 竹内 真也 福島 武彦 小松 登志子
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.238-249, 2005-11-10 (Released:2011-12-05)
参考文献数
30
被引用文献数
1

大気粉塵中 (小径粉塵; 粒径7.0μm未満, 大径粉塵; 粒径7.0μm以上) および堆積粉塵中の13種類の多環芳香族炭化水素類 (PAHs) の含有量の減少特性を調査した. 方法としては, 大気粉塵および堆積粉塵を郊外地域で捕集, 捕集後にその場に数日おき減少量を測定することによって評価した. 測定は一年間継続的に行い減少速度係数kを求め, 各測定期間における, 全PAHsのkの中央値Kmedを用いて評価した. Kmedは最大で0.3d-1であった. Kmedは全体として小径粉塵の値が大きかった (0.1~0.3d-1). 季節性に関しては小径粉塵は夏に値が大きく冬に小さいという傾向が明確に得られたが, 大径, 堆積は必ずしも明確な傾向は得られなかった. 堆積粉塵に関しては予想に反して冬に値が高い傾向が得られた. PAHs含有量については, 小径粉塵については夏に低く冬に高いという季節性が見られ, 本観測で得られたKmedと強い相関を持った. このことから大気中のPAHsの濃度の季節変動は粉塵付着態PAHsの大気中での減少特性に強く依存していることが示唆された. 本研究の結果により大気中のPAHsの含有量およびそのパターンの変化には, その大気中での減少が強く影響を与えている可能性があることが示された.
著者
井上 和也 安田 龍介 池田 有光
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.282-301, 2002-09-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
28

霧が発生すると, 可溶性の物質は霧に溶け込み, 更に液相で化学反応を受けるなどして影響を受けることはすでに良く知られている。しかし, 霧が存在することによる大気汚染物質の挙動への影響はこれだけではないと考えられる。すなわち, 霧が生じることにより大気の成層状態が変化し, 乱流拡散能が変化することを通して, 大気汚染物質の物理的な挙動も影響を受けると考えられる。本研究では, 霧が存在することによる大気汚染物質の挙動への影響, 特に地表面への沈着量への影響について, 気象モデル, 沈着モデル, 液相化学モデルを組み合わせて数値シミュレーションを行うことにより調べた。対象とした期間は霧が頻発する夜間である。本研究で得られた主な結果は以下の通りである。(1) 霧が発現すると, 大気成層状態は霧層下層で不安定化, 霧層上部で安定化することが確認された。(2) 地表面への沈着量は, 霧への溶解や液相での酸化反応などしない物質でさえも (1) の効果によって増大する。(3) 総硫黄成分の沈着量も, 霧が出現する場合には増大し, 特に, 硫酸イオンの沈着量は, 霧粒への溶け込みや液相酸化反応などの影響に (1) の効果も加わり, 数十倍程度大きくなる。得られた結果は, 大気汚染物質の沈着量を推定する際には, 霧水による沈着, また, 霧が作り出す温度環境のもとで沈着が増大する効果も適切に取り入れる必要があることを示唆した。
著者
大喜多 敏一
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染研究 (ISSN:21863687)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.139-149, 1976-12-20 (Released:2011-08-11)
参考文献数
30

A critical review is made of the current methods of measurement of the air pollutants for which air quality standards are promulgated, odorous substances, organic gases, and products of photochemical air pollution.Recent progress is also reviewed on the measurement of metals employing the methods such as neutron and X-ray activation analysis, and the measurement of aerosol employing middle volume air sampler, β-ray absorption, quartz vibrating balance and so on.The analysis of polynuclear hydrocarbon, sulfate and individual particles are also described.The application of spectroscopy on the measurements of air pollutants is also a new field of research. Particularly chemiluminescence detection of 03 and other gases, remote sensing by laser radar and Barringer correlation spectrometer are developing.The preparation of standard materials for the calibration is also an important field of study and the methods of generation of standard gases employing permeation tube, pen-ray tube and of standard aerosol such as spinning disk and condensation generators are are important for the evaluation of newly developed measuring techniques.However, the cross check of various methods has to be done for the achievement of the reliable comparison of the data obtained by different methods and in different countries. The current cross check of sulfite analysis conducted by EPA of U. S. A. and cross-country comparison of metal concentrations in Europe clearly show the importance of such cross check.
著者
Hanspeter WITSCHI 嵯峨井 勝
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-20, 1989-02-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
106
被引用文献数
1

近年, 日本人のがんによる死亡率のうちで肺がんによる死亡率が著しく増加してきている。この増加の主な原因は喫煙や食品によるものと考えられているが, 都鄙間の比較や腺がんの割合の増加などから, 喫煙や食品だけでは説明が付かない点がある。そのようなことから, 大気汚染の影響を危惧する意見もあり, 例えば, ジーゼル排気ガス等の影響についてはある程度明らかになりつつある。ここでは, その化学的反応性の故に発がんに対する影響が危惧されているオゾン (O3) と二酸化窒素 (NO2) の2つのオキシダント様大気汚染ガスの肺がん発生に及ぼす影響に関する最近の知見とその問題点について科学的検討を加えた。
著者
伊豆田 猛 大津 源 三宅 博 戸塚 績
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-8, 1994

3品種 (ユキコマチ, コメット, ホワイトチェリッシユ) のハツカダイコン (Raphanus sativus L.) に, 播種10日後から, 0.15μl・l-1のオゾンを, 1日当たり4時間 (10: 00~14: 00), 5日間/週で, 野外に設置したオープントップチャンバー (OTC) を用いて暴露した。播種17日後に, 植物を収穫し, 葉面積と乾重量を測定した。また, 播種13日後の個体に, 0.15μl・l-1のオゾンを4時間暴露し, ガス交換速度を測定した。<BR>個体当たりの乾物生長に基づいたオゾン感受性は, ユキコマチ>コメット>ホワイトチェリシュの順に高かった。また, 純同化率および平均純光合成阻害率におけるオゾン感受性も同様な傾向が認められた。ユキコマチのオゾン吸収速度は, 他の2品種と有意な差はなかったため, オゾン吸収速度の違いによって, 純光合成速度におけるオゾン感受性の品種間差異は説明できなかった。これに対して, 単位オゾン吸収量当たりのCO<SUB>2</SUB>吸収量の阻害率は, 各品種間で異なり, ユキコマチ>コメヅト>ホワイトチェリッシュの順に高かった。<BR>以上の結果より, ハッカダイコンにおいては, 乾物生長に基づいたオゾン感受性の品種間差異に, 単位オゾン吸収量当りの純光合成阻害率が関与していると考えられた。
著者
伊豆田 猛 松村 秀幸 河野 吉久 清水 英幸
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.60-77, 2001-03-10 (Released:2011-12-05)
参考文献数
169
被引用文献数
7

世界各地で森林衰退が観察されており, 様々な原因仮説が出されているが, オゾン (03) などのガス状大気汚染物質は有力視されている。森林を構成している樹木に対するオゾンの影響に関する実験的研究の結果に基づくと, 森林地帯で実際に観測されている濃度レベルのオゾンによって, 欧米の樹種の成長や光合成などの生理機能が低下する。一方, 我が国の森林樹種に対するオゾンの影響に関する実験的研究は現在のところ限られているが, ブナやケヤキのような比較的感受性がい樹種では, 我が国の森林地帯で観測されている濃度レベルのオゾンによって乾物成長や純光合成速度が低下する。欧米においては, 実験的研究や現地調査の結果に基づいて, 森林生態系を保護するためのオゾンのクリティカルレベルを評価している。これに対して, 我が国の森林生態系に対するオゾンのクリティカルレベルを評価するために必要な情報は不足している。したがって, 我が国における森林衰退の原因を明らかにし, 森林生態系におけるオゾンのクリティカルレベルを評価するためには, 今後も様々な樹種を用いたオゾン暴露実験が必要である。
著者
岩崎 好陽 中浦 久雄 谷川 昇 泉川 碩雄 飯田 靖雄
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.446-451, 1984-12-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
14

自動車排ガスの臭気について検討した。6車種 (ガソリン車2台, ジーゼル車4台) について各走行モードごとに, 三点比較式臭袋法により臭気濃度を測定し, O.E.R。を算出した。また臭気強度および排ガスの成分も一部測定した。その結果以下のことが明らかになった。(1) 自動車排ガスの臭気濃度はガソリン車よりジーゼル車の方が高く, またジーゼル車においては, 大型になる程臭気濃度も高かった。(2) 大型ジーゼル車の臭気濃度は10,000~30,000 (臭気指数40~45) 程度であり, 0.E.R.は105前後であった。(3) ジーゼル車において, 希釈倍数xと臭気強度y (TIA尺度) との関係はy=7.1-1.7logxとなり, Kendallらの結果とほぼ一致した。
著者
藤田 慎一 千秋 鋭夫 寺田 信之
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.407-415, 1983

1981年10~11月, 相模湾沿岸から八丈島に至る海域の上空と八丈島において, サブミクロンエアロゾルの観測を実施した。観測には静電方式と光散乱方式の2台のエアロゾル計を併用し, 粒径0.003~10μmの粒子総数と粒径分布を, 連続的に求めた。<BR>観測データを解析した結果, エアロゾルの挙動は海域の気象条件に大きく依存することがわかった。高気圧に覆われ弱い北東風が吹く条件下では, エアロゾルは相模湾の沿岸で最大濃度 (~10<SUP>3</SUP>cm<SUP>-</SUP>3) を示し, 離岸距離に対して距離定数が10<SUP>-6</SUP>~10<SUP>-5</SUP>m<SUP>-1</SUP>の指数関数型の減衰を呈した。海上に優勢な偏西風が卓越する条件下では, 八丈島近海のエアロゾル濃度は, 平常時よりも3倍近い増加を示すことがあった。風系を解析した結果, この汚染気魂は中京地域から輸送されたものと推定された。一方, 前線性の擾乱に伴う雨雲の中では, 粒子総数が低下するとともに, 粒径分布の勾配がJungeの逆3乗則から大きく偏奇することを見出した。この粒径分布の変化をエアロゾルと降水要素との相互作用に要因するものと考え, サブミクロンェァロゾルの除去効率をみつもったところ, 観測値は理論的に予想される値よりもはるかに大きなものとなることがわかった。
著者
近藤 矩朗 佐治 光
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.273-288, 1992-11-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
122
被引用文献数
4

大気汚染物質は植物の葉の表面にある気孔を通して植物に吸収される。吸収された汚染物質は細胞内で毒物を生成して生体物質に損傷を与え, その結果, 光合成機能を阻害して成長を抑制したり, クロロフィルや脂質を破壊して細胞の壊死を引き起こす。植物の障害の程度は, まず第一に, 大気汚染物質の吸収口である気孔の開度によって支配される。吸収された大気汚染物質は, 二酸化硫黄 (SO2) の場合は亜硫酸 (SO3 2-), 二酸化窒素 (NO2) の場合は亜硝酸 (NO2-) 等の毒物を生成する。オゾン (O3) の場合はO3そのものが毒物として働く。更に, 大気汚染物質の種類によらず反応性の高い活性酸素が生成され, 強力な毒性を示す。植物にはこれらの毒物を解毒するための代謝系が存在し, 低濃度の大気汚染物質に対してはある程度まで耐えることができる。したがって, 植物における毒物の生成速度と解毒能力のパランスによって, 大気汚染物質による障害の程度は左右される。また, 植物にはこれらの毒物から自身を守るための動的な防御反応がある。植物は, 大気汚染物質に触れた時に, 気孔の開度を減少させたり増大させたりする。植物が大気汚染物質に反応して気孔開度を減少させる能力は植物ホルモンのアブシジン酸によって制御されており, 大気汚染物質に対する植物の一種の防御機能と考えられる。植物を低濃度の大気汚染物質と接触させると, 植物体内で活性酸素の解毒に関与する酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ, グルタチナンレダクターゼ, アスコルピン酸ペルオキシダーゼ, カタラーゼ等の活性が増加する。また, 植物をNO2と接触させると, 硝酸レダクターゼの光による誘導が抑えられて, 毒物であるNO2-が植物葉内に蓄積するのが抑えられる。これらの知見をもとに, 遺伝子操作などにより大気汚染物質由来の毒物の解毒に関与する酵素の活性を変えて, 大気汚染物質に対する植物の耐性を改変しようとする試みがなされている。
著者
矢野 壽人 正田 誠
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.216-222, 1997 (Released:2011-11-08)
参考文献数
10

某印刷工場の改築にあたり, 有機溶剤の排出防止対策を検討した。まず, 既設印刷工場の有機溶剤排出状況と作業環境濃度を調査した。有機溶剤の主成分は酢酸エチル, イソプロピルアルコール, トルエンであり, 排出濃度は合計で448ppmと東京都の排出規制値 (3成分合計濃度200ppm以下) をオーバーしていた。また, 作業環境濃度も最高で762ppmであった。そこで, 当印刷工場の実排ガスを対象に, ベンチスケールの活性炭吸着式脱臭装置による有機溶剤除去実験を行った。実験は粒状とペレット状の2種類のヤシ殻活性炭について, 脱臭装置の出ロガス合計濃度が10ppmに達するまでの時間 (破過時間) を調査した。その結果, 粒状炭の破過時間 (充填層高260mm, 接触時間1.3secの条件) は38時間, ペレット炭の破過時間 (充填層高330mm, 接触時間1.65secの条件) は29時間であった。以上の結果, 活性炭吸着法は有機溶剤の除去方法として適用可能なことが判明した。
著者
藤田 慎一
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.72-90, 1993-03-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
107
被引用文献数
5

日本列島は世界でも有数の火山地域である。このため, 火山活動により大気中へ放出される硫黄化合物は, 量的にみて人間活動に匹敵するものと推定されている。本報では, 硫黄化合物の物質収支における火山活動の役割を整理するとともに, 環境の酸性化に及ぼす火山活動の影響について, 最近の研究動向をとりまとめた。日本列島を対象にして, 火山噴出物の輸送をモデル化していくうえで, 検討すべき問題点についても考察を加えた。
著者
橋本 正史 山岸 豊
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.119-136, 2004-05-10 (Released:2011-12-05)
参考文献数
55

多環芳香族炭化水素 (PAH) の毒性は, ダイオキシンと同様にアリルハイドロカーボンリセプター (AhR) を介して起きることがよく知られているが, このメカニズムを中心に, 発がんに関連する生物学的反応と両物質のこの反応に対する関与の態様について概説した。その上で, PAH混合物の健康リスクを評価する手法について, これまでのアプローチを概括した。その中で, すでにダイオキシン類で採用されている方法である個別のPAHの毒性を積算して評価する手法 (Relative Potency Factor Approach) について概説し, 併せて著者らが開発した発がんメカニズムに基づいた健康リスク評価手法 (誘導変異原性法) について詳述した。
著者
私市 和俊
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5-6, pp.347-352, 1982-12-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
6

硫黄酸化物日平均値濃度の累積度数分布に近似される分布モデルについて考察した。候補としたモデルは, 適用が容易で2母数を含む, 正規, 対数正規, Weibullの各分布であり, 測定値との適合度を次の3種類の方法で検討した。すなわち, 確率紙による方法, AICによる方法, 各パーセント値における測定値と計算値の差の標準偏差に注目する方法を利用した。その結果, ここで取り上げた3分布の中では, 一部の解析を除いて, 対数正規分布が良いことが分かった。また,日本全国で測定されたデータの解析により, 対数正規, Weibull分布の母数の推定量が取る範囲および経年変化が明らかにされた。これらの値は, 大気汚染制御上の要素として利用できるであろう。
著者
今井 正之 吉田 克己 北畠 正義
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染研究 (ISSN:21863687)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.184-188, 1977-08-05 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9

We have investigated the health effects of air pollution during the perinatal period through the records of birth, immature foetus birth, still-birth and death certificates from 1968 to 1975 in Yokkaichi area. Following result was obtained:The relationships between the surfur dioxide level and immature foetus birth rate, infant death rate and still-birth rate were relatively small and correlation coefficients betwen sulfur dioxide level and these rates had statistically no significant difference.