- 著者
-
熊澤 貴之
- 出版者
- Japanese Society for the Science of Design
- 雑誌
- 日本デザイン学会研究発表大会概要集
- 巻号頁・発行日
- pp.89, 2013 (Released:2013-06-20)
保全地区で定められる保全再生計画の策定と運用方法についてヒアリング調査を行った結果,監視官などの専門家によるアドバスを基に各委員会での協議や市民からの公開意見調査に基づいて,決定していく協議システムが実施されていた.また保全再生計画に示された内容に再生・修復する過程で,劣化の激しい部分については,どのように具現化するか,特に監視官などの専門家との協議の中で決定するプロセスが取り入れられていた.次に,建築ファサードの構成部位について色彩の実測調査を実施した結果,基調色としてはYR系の色相が8割程度使われていることが確認され,木材や土壁,石材,煉瓦などの天然の材料が使われていた.これは,保全再生計画で述べられている内容が着実にデザインとして具現化されており,保全再生計画が高いレベルで実現されていることが確認された.さらに運用においても事業者や市民に十分に浸透していることが考えられた.以上から,保全再生計画を基本としながら,再生や修復を担当する建築家,監視官,自治体が専門知識に基づくアドバイスを市民に行い,周辺環境と調和した街並みに向け,利害関係者が協議するシステムが効果的に運用されていた.