著者
奥田 稔 中島 健 山本 一生
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.48, 2013 (Released:2013-06-20)

かつては大きく重く、長時間持ち運ぶことも苦労だったノート型のパーソナルコンピュータも、ウルトラブック、タブレットPC、スマートフォンになり、常時携帯する道具となってきた。これらの携帯電子機器は、最先端のデバイス開発によって性能を競い合っているが、結局は性能だけでなく、機能そして造形まで画一化してきている。そのため、携製品を薄く軽量に仕上げるための高剛性の素材、良い触感の表面仕上げに加え、差別化された高級感、先進性を表現する加飾技術が必要とされている。実際に製品例を示しながら、携帯電子製品のCMF加飾技術の動向を検証する。
著者
LEE Eunjin 山本 早里 西川 潔
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.175, 2012 (Released:2012-06-11)

本研究の目的は、都市景観要素としての屋外広告物デザインに求められる条件を探り、その現状の特徴を明らかにすることである。そのために、アジア都市の東京・ソウル・シンガポール・香港の中心商業地域を対象に、現在施行されている屋外広告物関連の法律や条例、ガイドラインなど及び広告物実態の現地調査を行った。その結果、屋外広告物に求められる条件として「秩序」「自由・個性的な表現」「調和」「アイデンティティ」のキーワードが取りあげられた。東京の銀座では「調和」「自由・個性的な表現」の方が高く求められ、ソウル鐘路通りでは「秩序」「調和」「アイデンティティ」が他の都市に比べ高く求められるが、「自由・個性的な表現」は相対的に低い現状の特徴が分かった。シンガポールは4つのキーワードがバランスを取っている特徴の事例としてあげられる。香港の九龍では「自由・個性的な表現」の方が他の都市に比べてももっとも高く求められ、相対的に「調和」の方はもっとも低い現状の特徴が分かった。
著者
Li Yu-Yun Li Yi-Xuan Lo Tsai-Yun
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.229, 2015 (Released:2015-06-11)

台湾では、今でも民間信仰が盛んで、各地に、そのような寺院が多く見られる。そして、毎年、 多様な場所で、多様な時間に、多様な祭りが行われている。祭りの行列は「陣頭」と呼ばれ、踊り 子、祭り囃子の奏者、神輿などが列をなし、町をねり歩く。「官将首」は「陣頭」の一つで、新荘の 地蔵庵が発祥である。「官将首」の「陣頭」は二人が基本の形であり、地蔵菩薩の護法将軍の仮 装をしている。二人、三人、五人、七人、またはそれ以上の将軍で構成され、各将軍の仮装やア クセサリーもまちまちである。例祭の時には、行列の前に立ち、厄除祈念や招福祈願の儀式をし、 町をねり歩き、人びとに加護を与える。現代では、生活様式が変わったことで、この祭りにおける住 民の連携は薄くなり、その文化的意義も薄まりつつある。 本研究の目的は、「官将首」の文化を再認識する事ができる生活用品の開発である。研究成 果として、「官将首」の民俗文化から、意匠特質を抽出し、「官将首」がもつ「加護」と「先導」とい う信仰的意味をのせた緊急用の照明器具を開発した。
著者
小林 茂雄 中嶋 聡 小林 美紀
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.2_103-2_110, 2014

本研究は、視覚を完全に遮断した空間で協同造形作業を行う際、どのような対人協力行動やコミュニケーション効果が得られるかを実験的に検討した。幼稚園児から大学生までの被験者実験で得られた主な結果を以下にまとめる。 1)暗闇では明所の作業に比べ、声が大きく、発話量が増える傾向にあった。暗闇では初対面同士でも発話が増えることと、小学生以下の低年代の方が声が大きく発話が増える傾向にあった。 2)暗闇では明所に比べ、他者との協同作業が顕著に観察された。協同作業が、低年代では身体接触によって、高校生以上の高年代では言語によるコミュニケーションによって、より活性化されていた。 3)暗闇での協同作業は困難であったと被験者に評価されたものの、視覚が働かないことの非日常性による楽しさや、他者と躊躇なく関われるなどの対人行動に対する障壁の低さが言及された。
著者
島田 達
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.28, 2014 (Released:2014-07-04)

今日日本は超高齢社会の問題に直面している。高齢者が増えるということは同時に寝たきり老人の増加を意味する。そこで私は寝たきり老人のためのリハビリテーションに着目した。なぜなら彼らは自分の身体をほとんど動かすことができないため、リハビリテーションを取り入れることが難しいからだ。寝たきりをとりまく様々な症状や問題の原因は拘縮である。本研究では治療部位を手指の拘縮に限定し、手指の他動運動によるリハビリテーションが手指拘縮を改善すると同時に認知症の治療にもつながるという仮説を立てた。実地調査や実験を行なうことでリハビリテーション治療を行なうシステムについて研究し、デバイスの制作要件の抽出を行なった。結論として、シリコーンボディを用いた柔らかい素材によるデザインを採用した。
著者
千鳥 泰岐 松崎 元
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.258, 2012 (Released:2012-06-11)

本研究では人とコミュニケーションをとることを想定したロボットにおいて、人格を感じるかという要素が重要であると捉え、形状や動きによる被験者の印象の変化を、簡易的なモデルを制作して調査する。これにより人とのコミュニケーションを円滑に行う為に必要な要素がどのようなものであるか、またそれが人格を感じるか否かという点とどのように関係しているかを分析する。
著者
伊藤 孝紀 平 翔 成田 康輔
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.4_51-4_56, 2014

本研究では, プレイス・ブランディングの対象となる都市や地域固有のモニュメントやオブジェなどの野外彫刻物を「都市シンボル」と位置づけた。そして, 都市シンボルに対する市民の意識を把握することを目的とした意識調査に加え, 設置された空間で実施されている催事における来訪者の行為から, 空間特性を明らかにすることを目的とした行為観測調査をおこなった。<br> 意識調査から, 都市シンボルに対する市民の印象と活用提案を把握した。行為観測調査から, 催事開催時における催事内容によって参加者の属性が異なることを明らかにした。また, 設置された空間の特性として, 開催時における使用機材の種類および設置場所は,参加者の分布に影響を与えることと, 開催時の使用機材や参加者の分布によって歩行者が往来できる地点が限定されていることを明らかにした。
著者
澁谷 智志 木村 健一
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.95, 2015 (Released:2015-06-11)

本研究では、美術初心者が持つ写実性制約が、絵を創作する行為にどのような影響があるかを実証的に検討する。芸術創作は、表現対象に対して知覚と創作行為を繰り返しながら表現を探索していく活動である。こうした知覚と行為の中での創造性を捉えるならば、知覚対象に対する認知的志向と創作行為には不可分な関係があると考えられる。美術初心者は、絵画に描かれた具体的事物に固執して絵画を見るという「写実性制約」があり、その制約が絵画鑑賞において、多角的に見ることの妨げになることが、指摘されてきた。 本実験では、図柄を配置することで絵を構成する課題について、具象画の図柄を用いた試行と、抽象画の図柄を用いた試行とで実施し、実験参加者のデッサン技能の有無によって、各々の試行の試行錯誤の度合いに違いがあるかを調べた。実験の結果から、デッサン技能の有無は、具象画の操作の試行錯誤の度合いに影響は与えないが、デッサン技能を有することは、抽象画の操作の試行錯誤を促進することがわかった。このことは、美術初心者は写実性制約に沿って解釈できない対象に出会ったとき、創作の試行錯誤が抑制される傾向があることが明らかになった。
著者
井上 勝雄 広川 美津雄 岩城 達也 加島 智子
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.40, 2015 (Released:2015-06-11)

今日、スマートフォンなどに代表される多機能な情報通信機器の普及により、誰でも直感的に使用することのできるインタフェースデザインが求められている。 そこで、報告者らは数年前から直感的なインタフェースデザインの設計論について研究を行ってきている。アンケート調査や心理実験、心理学に関する文献調査の結果から、直感的なインタフェースデザインは「知覚と行為の円滑な結合」であることが明らかになった[1]。そのためには心理学の「体制化」と「親近性」を拡張した考え方を設計論に応用することができると考え、その考え方をもとに、直感的なインタフェースデザインの10原則を提案した。
著者
長谷川 聡
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.185, 2012 (Released:2012-06-11)

インターネットを通じリアルタイムであらゆる情報を入手できる現代の生活環境は場所性を薄れさせ、デザインにおけるグローバリゼーションをもたらした。それは、独自の技術や材料といった国際的競争力を持つことが不可欠だ。そして、大きなパイではなくとも、特異なデザイン資源を引き立てる製品のデザインは土着的なデザインの考え方や在り方が必要且つ、重要になってくるのではなかろうか。ここでは、絹織物を取り扱う企業が、ものづくり企業としてとりまとめ、自らの商材を引き立てるために木工製品としての試作を行い、展示会や専門家の評価を受けるとともに、ビジネスとしての可能性を検証した。
著者
楊 寧 伊原 久裕
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.73, 2014 (Released:2014-07-04)

近年、日本語と中国語を併用した外国人向けのパンフレットや、説明書、対訳本などの印刷物が目につくようになった。このような多言語併記のためのタイポグラフィでは、いかに版面の「調和」をとるのかが重要な課題となっている。「調和」のとれた組版を実現するため、各言語の読みやすさを確保しつつ、それぞれの組み方の調整を図る必要がある。本稿では、字間と行間の関係に着目し、中国語の本文組みにおける読みやすい組み方について考察することとした。結果は以下のとおりである。本文組に対して、ベタ組から8分のアキまでの字間、4分の3のアキから全角までの行間の組み合わせがより読みやすいという結果が得られた。まだ、字間を少々広げることが好ましいと見なされている傾向が明らかとなった。
著者
林 孝一 馬場 亮太 御園 秀一 小野 健太 小原 康裕 渡邉 誠
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.6_39-6_48, 2014

60年近い歴史をもつ東京モーターショーに出展されたショーカーはそれぞれの時代の社会変化を鋭く反映してきた。本研究は各ショーカーの訴求ポイントをグループ化し、そのコンセプトを、「性能」、「社会対応」、「サイズ」、「付加価値」の4カテゴリーに分類し考察を加えた。その結果、日本の自動車産業とデザインの変遷は7つの時代に分類して精査していくことが適切であるとわかった。さらにその時代ごとのデザインへの期待や役割の変化が以下の4つに区分される事も判明した。1954~70年:欧米のライフスタイルに追従するドリームデザイン、1971~84年:機能とデザインの融合により意味と独自性があるデザインの創生、1985~2008年:製品多様化と市場の飽和を背景とした新規性コンセプトの探求とデザイン領域の拡大、2009年~現在: 環境問題や高齢化を反映した車の次世代モビリティーとしての再構築である。この様に社会情勢の変化に応じたデザインへの期待、役割の変化を明らかにした。
著者
生田目 美紀 北島 宗雄
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.81-81, 2005 (Released:2005-07-20)

聴覚障害者にとってアクセシブルなWebコンテンツは,聴覚情報にアクセスする代替手段だけでは実現できない.眼球運動および操作過程を詳細に比較観察し,聴覚障害者がどのようにウェブを介して提供される情報と対話するのかという研究を基に,聴覚障害者のウェブページの視覚情報の利用特性を解明した.ウェブ利用における聴覚障害者と健聴者の特性の違いは,1)聴覚障害者がテキスト情報を理解するレベルは健聴者より浅い.2)聴覚障害者のスキャンパスは,健聴者のものと比較して戦略性が見られない.というものであった.したがって,聴覚障害者にとってアクセシブルなコンテンツは,1)リンクラベルの表現が直観的に理解できること.2)コンテンツの構造が視覚的に理解しやすいことが重要であると考えられる.このように,ウェブページ上の視覚情報の利用特性を理解することによって,はじめて,音声情報の補償という観点を越えた聴覚障害者のためのデザインによるコンピュータ支援の道が拓けてくる.
著者
滝澤 功 長尾 徹 佐藤 弘喜 大嶋 辰夫 赤澤智 津子
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.4_57-4_64, 2014

本稿は,ニュースサイト上の見出し記事を探索する過程において,知覚した注視順序と認知した想起順序の相関関係に着目した。その相関関係と探索性との関係を示し,探索性の評価方法を提案した。まず,探索性に影響するニュースサイトの要素をラフ集合によって抽出し,その要素が含まれた既往ニュースサイトをもとに注視領域と想起領域を示した。そして,注視領域外と想起領域外を削除したサンプルで検証し,注視順序と想起順序の順位相関関係は探索性の主観評価に関係することを明らかにした。本稿によって示唆された注視順序と想起順序の順位相関による探索性の評価は,Web サイトにおける探索性を知覚領域と認知領域とで複合的に調査でき,探索性の高いWeb サイト作成の指針につながると期待される。
著者
佐藤 徹
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.8, 2014 (Released:2014-07-04)

環境を重視した地域政策として近年最も成功した住宅開発地域であるドイツのフライブルク、ヴォーバン地区を取材し調査、分析することによりこの地方都市がいかにして世界的な環境都市として認識されるに至ったかを明らかにする。
著者
和田 菜穂子
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.50, 2005 (Released:2005-07-20)

公衆浴場は人々にとって身体を清めるだけでなく、コミュニケーションを図る場として重要な場所であった。江戸時代、公衆浴場のための水は、川や海から供給されていた。というのは、明治時代に公共の水道が開通するまで、水の供給はシステム化されておらず、水はとても貴重な資源であった。日本における公衆浴場の歴史は古く、身体を清めることが「沐浴」、「禊(みそぎ)」として宗教上行われていた。それは日本の風土、多湿な気候によるものが大きい。本稿では入浴の中でも特に公衆浴場(銭湯)に焦点をあて、デザインの歴史的背景を探る。手法として主に江戸時代における「浮世絵」や物語における「挿絵」などに描かれた建築デザインを分析することによって日本の文化、慣習を再現し、読み解いていくという新たな手法を用いる。江戸時代銭湯(公衆浴場)は社交の場として賑わいをみせていたが、第2次世界大戦後の日本人のライフスタイルの変化に伴い、銭湯の意味合いも大きく変化した。自家用風呂を所有する家庭が増え、銭湯離れが進むようになり今や問題となっている。
著者
長谷場 大輝 中井 一希 梅澤 一成 大條 開作 池田 智大 高橋 徹 川合 康央
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.207, 2015 (Released:2015-06-11)

本研究の目的は,日本語を母語としない英語圏在住者を対象とした日本語学習初学者を支援するものである.ここでは,平仮名片仮名に焦点を絞り,楽しみながら学習する為にゲーム要素を取り入れたアプリケーションを開発し,実際に配信を行ってその効果を検証するものである.本コンテンツの目的は,ユーザが日本語の基本である平仮名片仮名を正しく書くことが出来るようになることである.コンテンツ自体はフリーで手軽に入手可能なものとし,ゲーム感覚で平仮名片仮名についての知識を得られることが,本コンテンツの大きな利点である.アプリケーション名「AN ENCOURAGEMENT OF KANA(日本語版:KANAのすすめ)」として開発を行い,アプリケーションの配信を行った.結果,いくつかの有効なレビューを受け,これに基づくアップデートを行った.
著者
田中 靖子 中村 仁美 河西 立雄 三橋 俊雄
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.2_25-2_30, 2015

京都府京丹後市袖志地区の調査により、採藻業の現状と、シミズ、カワ、イケ、イネの4つの水資源のあり方から、それぞれの特徴、また補完関係を読み取り、暮らしを支えた水と人との関係について、以下の5 つの特性を抽出した。<br>1)海の採藻業における「適期」「平等性」としての「山の口開け」、棚田・イネの掃除や管理、カワの水場での洗い物の規範など、コモンズを支えた水に関わる共同体的意識、2)イケやシミズの水供給システム、農業用水路としてのイネなど、水資源を最大限に利用し自然と共生した水利用の技、3)採藻業で採集される海藻類の処理・製造工程において必要となる大量の水とその利用を支えた智恵と工夫、4)豆腐づくりや酒づくりに欠かせない西川の水、飲料水や果物などを冷やす水として親しまれた「カンダのイケ」など、食文化を支えたカワやシミズ、5)棚田と共に袖志における水場の原風景を醸し出し人々の心をとらえてきた文化的景観としての水。
著者
片山 めぐみ 岩田 有佐
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.85, 2012 (Released:2012-06-11)

本研究は、筆者が飼育員と共に施設デザイン携わった、札幌市円山動物園「エゾヒグマ館」を事例とし、動物本来の行動を引き出し、効果的に伝える展示施設のデザインについて、観覧者の発話に注目して考察することを目的としている。当該施設に飼育されている、エゾヒグマ1頭の行動観察および観覧者の発話の聞き取りを実施し、ヒグマの行動時間配分および観覧者の発話を内容毎に分類した。本研究では、動物に対する畏怖や共感につながる表現として、【感嘆】および【親しみ】の発話に注目し、このような発話がされた際のヒグマの行動や両者の位置関係を含む周辺の物理的状況について分析し、ヒグマの自然な行動が効果的に伝わるデザイン手法についてパターン化した。結果、放養場の奥行きや高低差、観覧スペースと放養場の境界のつくり(床レベルの差、接近性を重視したガラス窓もしくは音や匂いを伝える格子窓)などが両者の関係をとりもつ効果的な効果的なデザイン手法と考えられた。
著者
工藤 芳彰 富澤 俊紀
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.193, 2015 (Released:2015-06-11)

本稿は、知的障がい者の歯磨き支援を目的としたアプリケーション「いっしょにはみがき」の開発について報告するものである。開発にあたり、筆者らは人間中心設計の手法を用い、ユーザビリティやユーザエクスペリエンスを高め、実用的なアプリケーションを制作することを目指した。具体的には、スモールステップ法と強化刺激を用い、複数の支援施設における検証実験に取り組んだ。結果として、開発したアプリケーションは軽度から中等度の知的障害者において自発的な歯磨き行為を誘発することを確認した。また、歯磨き行為に対する関心を促した例も確認した。