著者
岡 達也
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.2_27-2_34, 2014

本稿は、京都高等工芸学校図案科における図案教育とデザインの現場への波及の実態を明らかにする研究の一環として、1908(明治41)年に同科を卒業した水木兵太郎著作の図案集『アブストラクトパターン』(芸艸堂刊)について、モチーフ、色彩、レイアウト方法といったグラフィックデザインの側面から分析し、その特質を明らかにすることを試みた。<br> 分析の結果、水木の図案制作における特徴を次の3点に結論付けた。①数理的・幾何学的な画面構成。②補色の関係を多用した配色。③円と正方形を基本単位とし、その相似形による面の分割。以上から、当図案集で水木が、数学的に秩序立てた制作方法をとっていたことを明らかにした。<br> また、同時代の著作物であるM.P.ヴェルヌイユ著作の『Kaleidoscope』との比較を通して、当図案集への影響とともに、日本で早い時期にアール・デコや構成主義を受容し、図案における抽象表現として提示したものであることを指摘した。
著者
蓮見 孝 植松 知恵 田中 真一 星 幹男
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.196, 2006 (Released:2006-08-10)

つくば市は、2006年4月1日からコミュミティバス「つくバス」を運行を開始した。284.07平方kmの広大な地域における移動の利便性を保証しようとするもので、市内全域の集落をめぐる13路線の「地域循環」と、センター地区・筑波山を結ぶ「北部シャトル」、センター地区を回る「センター循環」の3路線からなり、1000を超えるバス停留所を持つ地域交通システムである。つくバスは、つくば市と関東鉄道株式会社により運営されるもので、つくば市と連携協定を結んでいる筑波大学が、公募された「つくバス」の名称選定、外装グラフィックデザイン、室内デザイン、バス路線ガイド・マップ、バス停留所の標識デザイン等を担当した。デザインを進めるにあたり、より多くの住民や来訪者の利用促進を図るため、誰にでも乗りやすいバスのデザインをめざし、「ユニバーサルデザイン」の考え方を積極的に取り入れた。
著者
飛田 真理子 藤戸 幹雄 木谷 庸二
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.119, 2015 (Released:2015-06-11)

本研究では、近年急増する訪日外客を対象とし、鉄道駅券売機の問題点と券売機の造形に対する印象を明らかにし、券売機および周辺表示のデザイン提案を行う事を目的とする。訪日外客の鉄道駅券売機利用時の問題点を明らかにするために、京都駅中央口において、券売機およびみどりの窓口を利用する訪日外客に対し、券売機の利用状況や問題点についてのヒアリングを行った。得られた問題点を分析し、抽出された問題点をもとに、訪日外客の券売機利用時に経験する問題のエクスペリエンスマップを作成した。また、券売機の機器と画面に対する印象を明らかにするために日本人と外国人を対象に海外の券売機の印象評価を行った。これにより、日本人・外国人それぞれにおける、印象の良い機器および画面に共通するデザイン要素の傾向が明らかになった。最後に、得られた問題点と造形に対する印象の傾向をもとにきっぷ売り場の新たな周辺表示と券売機の機器・画面のデザイン提案を行った。
著者
両角 清隆 湊 貴恵 敦賀 雄大
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.44, 2006 (Released:2006-08-10)

コミュニティにおけるコミュニケーションのような複雑で目に見えにくい活動を支援する道具作りは難しい。これまで適切な仕様を抽出しそれをベースに適切なデザインをする方法は探索的に試みられているが,明確になっているとは言い難い。これまで,特に活動の適切な記述方法が無かったと言える。そこで,現実の活動の記述から抽象化・モデル化を行い,パターンを抽出し,それをベースとして仕様を決定し,それに基づいて設計を行うプロセスを考え,記述方法としては,Contextual Designを参考とした5つの視点「関係モデル」「手順モデル」「文化モデル」「物理環境モデル」「人工物モデル」で記述し,モデル化・パターン化する“活動のパターンをベースとしたデザイン方法Activity Pattern-Based Design”を考案した。このデザイン方法により,複雑で目に見えにくい活動であっても抜け漏れを少なくして記述・分析できると考える。
著者
山岡 俊樹
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.89, 2012 (Released:2012-06-11)

GUIデザインを評価する評価する3種類の方法を提案した.1つは仕様書(コンセプトターゲット表)と一体となったGUIチェックリストである.2つ目は3つの評価項目で評価を簡便に行う方法(SUM)である.3つ目は様々なデータ解析が可能な本格的な評価方法(ユーザビリティタスク分析)である.3方法とも実験協力者がいなくとも,実験者自ら評価が可能である.また,データ解析が定量的にも行うことができる様に配慮されている.
著者
吉田 美穗子
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.101-106, 2012-03-31

写真から喚起される時間印象が,境界拡張の生起に及ぼす影響を検討した。実験1では,写真から喚起される時間印象を調査するために,30枚の写真について 20個の形容語による評定が行われた。この結果,無時間・持続・変化の3種類の時間印象が写真によって喚起されることが示唆された。実験2では,実験1の結果に基づいて統制された刺激を 15枚用いて,3つの時間印象を喚起させる写真における境界拡張の程度を評定課題により測定した。その結果,時間印象が境界拡張関連することが示され,無時間の時間印象を喚起させる写真では,持続・変化の時間印象を喚起させる写真よりも境界拡張の程度が少ないという関係性が示唆された。これは,時間的な拡がりの豊富さと大きな空間的拡がりが相関すると解釈された。これらの結果から,写真の喚起する空間的拡がりと時間的拡がりの関係性の一端が実験的に明らかにされた。
著者
佐々木 俊弥 山崎 和彦
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.257, 2012 (Released:2012-06-11)

情報時代においては、コンピュータや通信に代表される情報技術の発展とグローバルな情報社会化が急速に進んでいる。その中で情報デザインは、20 世紀半ばに人々のために情報技術をヒューマナイズし、新しい知的生活環境を生み出す使命を持って生まれた。こうした歴史認識に立ち、未来を展望することで考えられるユーザインターフェースデザインの一つがアンビエントインターフェースである。モノが人の行動や状況をセンシングし、能動的に人にはたらきかけるというように、コミュニケーション作用やリアルタイム性が強調されるアンビエントインターフェースを新たなユーザ体験のデザインに生かせないかと考え、研究では1 人暮らしの学生の食生活に焦点を当てることにした。1 人暮らしの学生にとって食とは、直接健康に影響する日々の課題の1 つと言える。アンビエントインターフェースによって毎日の食のシーンが楽しくなる体験をデザインすることを目的とする。調査によってアンビエントインターフェースの定義を明確にすると共に、人間中心設計(HCD)の手法を用いてユーザエクスペリエンスデザインの観点から、プロトタイプを制作する。
著者
林原 泰子 石村 眞一
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.D11, 2004 (Released:2005-06-15)

日本における国産第1号家庭用電気洗濯機は,1930(昭和5)年に株式会社芝浦製作所の製造した攪拌式洗濯機「Solar」であるとされている。しかしながらこれは誤った認識であり,実際にはそれ以前に円筒式洗濯機が国産されている。この誤った認識は1977(昭和52)年の『東芝百年史』に起因するものであると考えられる。 「Solar」以前の輸入機を含む洗濯機は非常に高価であり,取り扱い企業もこれらの価格の引き下げ、つまり販売に対し積極的ではなかった。当時,家庭用電気洗濯機は産業としてさほど重要視されていなかったと考えられる。そのような状況下で、大企業の資本を背景に「Solar」は高価でありながらも生産が継続され,その結果,「Solar」の認知度は高まり,国産第1号機との誤った認識が生まれたと推測される。
著者
横山 一真 山岡 俊樹
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.90, 2012 (Released:2012-06-11)

本研究では情報機器のGUI画面を構成する要素の操作順序によって,ユーザの操作のナビゲーションを示すレイアウトパターンを構築した.まず,現在利用されている情報機器のGUI画面サンプルを収集した.次に,ユーザビリティチェックリストを利用しユーザにとって使いにくいGUI画面サンプルを分析対象から外したのち,GUI画面サンプルにおける構成要素の機能を定義した.次に,あるタスクを行う1画面において,GUI構成要素の機能の包含関係を形式概念解析で分析した.分析によって得られたコンセプトラティス図から,機能の流れを特定し,これを基本レイアウトパターンとした.
著者
山本 麻子
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.172, 2006 (Released:2006-08-10)

ヴィクトリア朝初期の一般家庭では、画一的な仕上がりのベルリン刺繍が人気だったが、これに批判的だった芸術家たちは、新しい技法である芸術刺繍を提案した。特にウィリアム・モリスは芸術刺繍の推進者となり、彼の思想に賛同する団体が数多く設立された。中でも1872年に開校された王立刺繍学校では、モリスは講師として関わり、図案も提供した。モリスらの働きかけにより、19世紀後半には芸術刺繍は一般のレベルにも広まり、室内装飾にも影響を与えた。
著者
佐藤 美穂 若林 尚樹
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.216, 2006 (Released:2006-08-10)

“影”は、我々の身の回に起こる物理現象である。また映画やアニメーションの表現手法の1つとして、影の非物理的な動きを利用した視覚的表現が、時刻や環境などの状況説明や、感情などの心理表現に多用されている。そこで本研究では、物理現象である影がアニメーションなどで利用される映像的表現を、再度実世界のインタラクティブコンテンツ上で表現するという試みを行い、従来の視覚的表現手法では困難であった、背景や状況を説明する上での、新たな表現手法としての影の表現の効果と役割について明らかにすることを目的とした。そこで映画・アニメーションなどを参考に、影の非物理的表現の調査と分類を試みた。さらにその分類結果を元に、インタラクティブインスタレーション作品を制作し、実際にユーザに体験してもらうことによって影の表現を利用したインタラクティブコンテンツの効果や特性の検討を行った。その結果、影のように日常にある何気ないものが変化することを利用した表現によって、今までにない情報を読み取り、考えることが可能となり、新たな情報伝達手法としての可能性が広がったのではないかと考えられる。
著者
新井 竜治
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.47, 2013 (Released:2013-06-20)

木檜恕一による家具図の変遷には、家具図における第三角投影法の定着過程が見られる。また寸法表記が尺寸からセンチメートルへと変化する過程が見られる。木檜恕一の初期の著作の家具図は『Modern Cabinet Work: Furniture and Fitments』(1909年)等の家具図を原図として、自ら新しく描き起こしたものであった。このように木檜恕一らが指導して定着させた近代日本における木製家具産業は、20世紀初頭の英国・米国の木製家具産業の標準的な製作方法を日本国内に適用したものであった。そして遅くとも1924(大正13)年までに、家具の標準設計及び標準加工品が存在するようになった。また同時期までに、標準設計を変更する能力と精密な原寸図を描く能力が家具製作業者に備わった。また昭和戦前期には、断面詳細図・原寸図・仕様書・見積書を作成する能力までもが備わった。そしてこれは、木檜恕一を始めとする木材工芸研究者たちによる全国の家具木工業者への集中的かつ熱心な教育普及活動の成果であった。
著者
村上 泰介
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.175, 2015 (Released:2015-06-11)

本研究は発達障害の研究を通して, 私たちの身体イメージを再考することを目的としている. 発達障害―主に自閉症スペクトラム―は対人相互的反応に問題を抱えている. 一方で定型発達―健常―は, 新生児のときより周囲の成人との関係を通して, 成人の属する社会で共有される意味によって世界を分節化し知覚している. それとは異なり発達障害の知覚は, 対人相互的に決定づけられる事無く, 原初的知覚を基盤に発達しているのではないだろうか. 筆者は福祉施設で実施されている舞踊家と発達障害の人とのダンスセッションを通して, 原初的知覚による身体的コミュニケーションを調査し対人相互的反応によって形作られない身体イメージを模索している.
著者
安井 重哉
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.16, 2013 (Released:2013-06-20)

本研究は,デッサンを通じて得られる「学び」についての研究であり、身体知や暗黙知など、デッサンの様々な効果を解明し、デザインのような創造的活動におけるデッサンの学びの意義を明確化することにつなげることを目的としている.そのために、本稿では,筆者自身を当事者としたデッサン実験を行ない,その実験データに基づきプロトコル分析を行ない、デッサンにおける外化を伴った思考プロセスを、フローチャートのような一般的な記述手法によってモデル化し,そこに考察を加えることによって,デッサンに潜む「学び」を明らかにすることを試みた.
著者
則竹 真和
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.22, 2015 (Released:2015-06-11)

本研究では1960年代日本でのイラストレーションという領域について述べる。宇野亜喜良と横尾忠則という二人のデザイナーが描いた、演劇集団・天井桟敷公演「毛皮のマリー」のポスターを比較することによって、 当時起こったイラストレーションという領域の形成がどのようなものであったか明らかにすることが目的である。研究を通してイラストレーションという領域を捉えるにあたって、絵画的であるか、デザイン・構成的であるかというふたつのコンセプトが考えられることがわかった。本研究で取り上げた 宇野は絵画とイラストレーションを区別しないで表現しているのに対し、横尾は絵画とイラストレーションを完全に異なるものだと認識していることがわかった。
著者
出原 立子 赤野 裕喜 脇坂 一希 川﨑 寧史
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.10, 2013 (Released:2013-06-20)

金沢の伝統工芸活性化を目指し、伝統工芸の魅力の伝え方として、これまでとは違った切り口から紹介する方法を検討し、若者に訴求できる伝統工芸の魅力発信の方法について提案し、実際にそれを実践してみることからその方法にについて考察を行った。金沢の伝統工芸の中でも代表的な加賀友禅の魅力を若者に伝え、興味関心を持ってもらうきっかけを作る方法を検討した。具体的には、メディア技術を活用した加賀友禅染めデジタル体験システム「Somect」を開発し、それを用いて体験型のイベントを街中において開催することを試みた。 加賀友禅染めデジタル体験システム「Somect」は、布でできたスクリーンを手で直接触れることで、加賀友禅の繊細な図柄を元に加賀五彩の彩色・ぼかし表現も自在にできるのが特徴で、手で布地を触れることで染め体験ができるインターフェースを用い、手仕事の技を伝えることをねらいとした。 本システムを使ったイベントを金沢の街中で実施し、そのイベント会場の設計・制作は建築学科の学生が担当し、システムのデザインと体験シーンのデザインの効果的なコラボレーションを行うことができた。
著者
山崎 和彦 脇阪 善則
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.6, 2012 (Released:2012-06-11)

本研究は総合的なユーザ体験を考慮したアプローチであるユーザエクスペリエンスデザインを支援するための手法を提案することを目的とする。
著者
高橋 延昌
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.20, 2012 (Released:2012-06-11)

スータブル・ギア・デザインとは、デザインの地域活性化に関わり方を便宜的に語るために、筆者が提案したい概念である。筆者は以前から地域に関わるデザイン教育研究に携わってきたが、デザインと地域との関わり方を新しい概念でとらえながら実践的に検証し続けてきた。今回はキャラクターをコアとしてとらえ、震災復興および風評被害対策に立ち向かう福島県の事例を通して、その概念を考察してみる。結果、とくに地方では単独のギアではうまくまわらず、複数のギアが関わり合いながら全体としてまわると考えられる。
著者
森野 晶人
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.27, 2012 (Released:2012-06-11)

崇城大学芸術学部デザイン学科のカリキュラムに含まれる写真の授業をベースとした展開として、地域活性化を目指した3例のプロジェクト学習について報告する。「熊本の仕事人70人街中ギャラリー」:熊本市商工課、有限会社ウルトラハウス(出版社)および崇城大学芸術学部の連携により企画・運営され、学生がインタビュー、写真撮影、デザイン、印刷を含むタペストリーの製作および設置に携わった。「市民会館工事フェンスデザイン」:熊本市民会館の改修建築工事にあたり、同会館周囲が約170mの工事用フェンスで包囲された。一般には触れてはいけない工事フェンスをメディアとして昇華し、市民同志のコミュニケーションの場づくりを提案した。「まちxひと城下町ガイド制作参画」:熊本朝日放送が熊本市の中心市街地を中心とした500店舗の情報やストリート紹介、対談、カメラルポなどの情報にわたって紹介する書籍を企画・発行するにあたり、本書のための写真撮影を行った。
著者
益岡 了 谷本 尚子 尾崎 洋 池田 岳史 川合 康央
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.11, 2014 (Released:2014-07-04)

フレンチトーストピクニックは、2000年金津創作の森美術館で開催された今村幸次郎氏の作品展の関連企画として開始された。車を中核としたイベントは国内各地で頻繁に実施されているが、当時福井県内では大規模な開催例が無く、他の地域の同類のイベント実績を参考にしながら、より文化政策と適合しつつ地方振興としての側面を強調した運営が決定された。 第一回開催は、創作森美術館開館以来、最大の入場者数の動員が見られた。参加者・スタッフの感想も概ね好評であり、圧倒的な来場者数や地域振興の意義が評価され、以降の毎年開催が終了直後に決定された。 僅かな予算と限られた有志の協力で15年以上に渡って数千人規模のイベントを継続できたことは、美術館・施設の有効活用だけでなく、地域全体へ波及と活性化との視点からも注目できる。 現在では、旧車の同乗走行会も実施され、これは年少から壮年まで参加者に好評であり、文化遺産の学習体験の機会とも考えられる。希少車の実走行を含めた展示は注目され、雑誌や新聞、テレビの取材も増えた。この様に北陸地域の車文化を全国に伝え、活気ある交流の場として、地域振興の舞台として、その存在が知られつつある。