- 著者
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附田 鎭厦
- 出版者
- The Japanese Society of Health and Human Ecology
- 雑誌
- 民族衛生 (ISSN:03689395)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.5-6, pp.133-145,A11, 1955 (Released:2010-11-19)
- 参考文献数
- 16
1950年から1952年間における現存日本人成人男女(満20才~60才)の頭部形質を全国的資料に基つき,環境別並びに地方別分類研究の結果,次の如き成績をえた.1)頭長は農村,山村,漁村へと都市から遠ざかるにつれて大を示し,町は短い.頭幅はこれに反し,町が最も広く,農,山,漁村は,概して狹い.従つて,町は最も短頭型を呈し,農,山,漁村は,比較して順次長頭に傾いている.頭高も概して町が高く,農山村は低い.2)近畿地方人は,頭長短く,頭幅並びに頭高大にして,最も短頭且つ高頭型を示し,これを遠ざかる東北,北陸,九州地方人は比較して長頭且つ低頭である.その中間に位置する中国,四国,関東地方人は,頭径においても,その中間を占め,比較的短頭型に属する.3)これらを10年乃至20年前の先人の成績に比較すると,その間多少の異変はあるが.頭長において約1.5mm内外の短縮が認められ,頭幅,頭高においては若干の伸長はあるが大差がない.4)対馬島民の頭形は島村漁民でありながら町型に類似しており,九州地方に近接していながら,近畿地方人に近似した頭型を示している.これは特異な現象で所謂,種族差を表示せるものと認められる.5)頭部三径の分布偏差は,頭高が最も大を示し,頭幅が最も小である.而してそのいづれの項目に於ても,環境差よりも地方差の方が大である.6)頭径並びに頭形が文化環境或は知的能力とも密接な関係がある.広頭並びに高頭は,文化圏により親近性を有し,狹頭且つ低頭は,より文化に遠ざかつていることは略々推定される.7)アジア諸民族との比較においては,頭長はその平均値において,中間より稍々大を示しており,他の各径は略々中等位にあるが,その分布幅は広く,いづれの種族とも相交錯しておる.比較を試みるならば,近畿地方人は朝鮮人に最も類似しており,中国,四国,関東の諸地方人は,中国人に近似し,東北,北陸,九州の末端地方はアイヌ人のそれに近いということができる.