著者
上田 錠 永井 梓 稲垣 麻優 藤村 高史 平田 陽祐 辺 奈理 三宅 健太郎 竹内 直子 水落 雄一朗 有馬 一
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【はじめに】ニセクロハツは北米、台湾、中国、日本に発生するが、発生環境や色、形が食用のクロハツと類似しているため、誤って摂取後、中毒症状を呈する。ニセクロハツのもつ毒性分である2-シクロプロペンカルボン酸により、摂取後嘔吐や下痢などの消化器症状を生じ、その後に中枢神経症状、呼吸不全、横紋筋融解症、急性循環不全、急性腎不全などの症状を呈し、重症例では多臓器不全となり死亡例も報告されている。【症例】75歳の男性、自分で採取したニセクロハツを摂取した後に嘔吐・下痢の消化器症状を認め、深夜に前医に救急搬送された。入院時は意識清明、歩行可能であったが、摂取後2日目より意識レベル低下、呼吸・循環不全となり、人工呼吸管理、カテコラミン持続投与開始された。その後乏尿、代謝性アシドーシスの進行あり、全身管理目的で同日当院転院搬送された。当院搬送後の採血にてCK38100と高値で赤褐色尿を認めており、横紋筋融解症による急性腎障害と判断して輸液療法、血液浄化療法を開始した。摂取後3日目に意思疎通がとれるまで意識レベルの改善を認めたが、CKは上昇し続け摂取後6日目に203800IU/Lまで上昇した。大量輸液、高容量の昇圧剤投与にても循環維持困難となり、再度意識レベルも低下した。摂取後7日目に家人同意のもと積極的な治療を継続しない方針となり血液浄化療法を中止、その後数時間で多臓器不全のため永眠された。【考察・結語】ニセクロハツ摂取後全身管理を要し、重篤な経過をたどった症例を経験した。ニセクロハツ中毒の報告は過去に数例と少なく、現状では確立した治療法はない。極めて希な中毒症例であり、文献的考察を加え報告する。
著者
野口 悟司 相木 一輝 藤井 雄介 藤原 道隆
雑誌
第96回日本医療機器学会大会
巻号頁・発行日
2021-12-10

2019年3月に名古屋大学附属病院が国立大学附属病院として初めてJCI(Joint Commission International)に認証された.医療機器はJCIでは「施設の管理と安全性」に分離され,主な項目は,医療機器は病院全体を通して購入から廃棄まで計画に沿って管理されているか,また,すべては台帳化され適宜・適正に更新されているか,その他,すべて機器を対象にした管理体制等を審査される.我々は当審査を受審するにあたり,数々の書類や設備を整え教育を受け準備をおこなった.しかし,本審査の目的は,評価されることにより,本来の「医療の質と患者安全の提供」を具現化することで,実際に患者にとって安全な医療機器を提供の是非を再認識するに至った.それらを実施するには臨床工学技士だけの業務範疇に止まらず,診療現場の医師や看護師,事務部門の理解と協力を無くしては対応できないと判断し,当院はそれらのことを総合的にマネジメントする医療機器総合管理部を創設した.人員構成は医療機器管理責任者(医師)を中心に専属臨床工学技士に加え,管理課職員とした.主な業務として,新規購入機器の選定と更新機器の購入計画の調整と実施,医療機器に関するインシデント報告と不具合報告の同時入力のシステムを作り,事例の対応.また,創設当初から院内の医療機器の実態把握を目的に,各部署の棚卸の実施を段階的におこない,現在,50部署の内42部署を実施した.棚卸をおこなったことで,部署の器材庫などに未使用の機器もあり,実施した部署の全体像が確認できた.また,台帳上の14,000台以上に及ぶ医療機器の点検について,コメディカルだけではなく医師や看護師の協力を得るため,当院独自の機器のリスク度や管理体制を考慮し点検クラス分類をおこない,それに準じた方法を検討して実施に向けている.今回,我々は医療機器総合管理部の創設の意義と,JCIの再審査に鑑み病院全体の医療機器を対象におこなった2年の活動の経過と課題を報告する.