著者
後藤 昌彦 安田 忠司 渋谷 俊昭
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 = The Journal of Gifu Dental Society (ISSN:03850072)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.128-136, 2014-11-20

歯周病はプラークなどの細菌因子だけではなく、宿主因子、環境因子などが関与し歯周病の発症や進行を促進していると言われている。喫煙は環境因子の代表的なリスクファクターである。タバコに含まれる三大有害物質のニコチンは歯周治療後やインプラント治療後の創傷治癒に影響を及ぼすだけでなく、破骨細胞を活性化させ、歯周組織の破壊を促進させる報告がある。ラットにニコチン含有蒸留水を長期間経口投与することによりニコチンが歯槽骨に及ぼす影響を組織学的およびマイクロCTを用いた画像解析により観察した。その結果、マイクロCT撮影の画像解析では頬側、口蓋側どちらも実験群(ニコチン摂取群)で有意に歯槽骨の吸収の増加を認めた。根分岐部の骨密度においてはコントロール群(蒸留水摂取群)と実験群を比較した結果、有意差は認められなかった。TRAP染色像の頬側においてはコントロール群と比較し、実験群においてTRAP陽性多核細胞が有意に認められた。このことから、ニコチン摂取は破骨細胞数を増加させ歯槽骨吸収を促進させることが示された。
著者
高橋 正氣
出版者
日本工業出版株式会社
雑誌
検査技術
巻号頁・発行日
vol.11, no.12, pp.65-78, 2006-12-01

塑性変形が磁気的物理量に大きな影響を与えることは古くから知られている。例えば、Ni3Fe 、Fe3Alや Ni3Mnなどの規則合金に見られる圧延磁気異方性が有名である。圧延磁気異方性の発生メカニズムは1958年に 近角 等が slip-induced directional order モデルで説明した。この考えに辿り着くまでには、多くの議論と実験がなされた。塑性変形により転位が発生し、変形量の増加と共に転位密度が増加する。当時、転位の研究が行われていたが、転位に関する知識は広まっていなかった。その中で、2つのモデルが提案された。どちらのモデルでも結晶中の転位が圧延磁気異方性の発生の原因と考えられた。第1のモデルは転位の周りの応力場が磁気弾性相互作用(磁歪の逆効果)により磁気異方性を発生させるという考えである。この考え方は一旦否定されたが、その後Max-Planck 研究所Stuttgart グループにより誘導磁気異方性の存在がNi, Coや Fe などの金属で理論及び実験的に証明された。一方、Ni3Fe 、Fe3Alや Ni3Mnなどの規則合金中での転位は超転位と呼ばれ、部分転位間に逆位相境界が存在する。この逆位相境界では規則状態とは異なる原子配列が作られ、塑性変形前には存在しなかった原子対が新しくできる。第2のモデルではこの逆位相境界での原子配列が双極子-双極子相互作用によって圧延磁気異方性を誘導させる。もう1つ良く知られている現象がオーステナイトステンレス鋼に見られるマルテンサイト変態である。塑性変形に伴うマルテンサイト変態により、常磁性から強磁性に遷移する現象がある。この遷移メカニズムは簡単であり、磁性を用いた非破壊検査は容易に見えるが、転位とマルテンサイト変態との相関は複雑である。転位はマルテンサイト変態を阻止する役割を果たすからである。マルテンサイト変態に関する話は別の機会にする。
著者
大隅 彰
雑誌
東京医科大学雑誌 (ISSN:00408905)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.411-419, 1993-09-01
著者
田浦 健次朗 米澤 明憲
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.1490-1499, 2000-05-15

専有された,分散記憶並列計算機において,局所ごみ集めのスケジュール戦略が性能に与える影響について考察し,実験結果を報告する.分散記憶並列計算機におけるごみ集め(GC)方式は一般に,局所GCと大域GCを組み合わせて用いる.各プロセッサはメモリのある一部の領域を,他のプロセッサの協調なしに回収するために局所GCを行い,複数のプロセッサにまたがるごみを回収するのに大域GC(参照カウントや大域マークスイープ)を行う.局所GCのそもそもの動機は,特に大規模な並列計算機では高価である,プロセッサ間の協調や通信をできるだけ避けることであるため,それらは一般に各プロセッサによって独立にスケジュールされることが多い(独立スケジュール方式).しかし,我々の実験結果はそのようなスケジュール方式は,通信遅延に敏感なアプリケーションの性能を大きく低下させることを示している.この原因は,そのようなスケジュールによって,GC中のプロセッサが,入ってくるメッセージに対して反応が遅くなることにある.一方で,全プロセッサが同時にごみ集めを行う,同期スケジュール方式は,それによって余分な同期やごみ集めのための仕事が生じるにもかかわらず,はるかに頑強な性能特性を示す.さらに,アプリケーションの通信挙動を観測することで,実行時に望ましいスケジューリング戦略を選ぶことが可能であることを示す.
著者
小川 潤 大向 一輝 Jun Ogawa Ikki Ohmukai
雑誌
人工知能学会研究会資料
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.06-01-06-10, 2021-03-15

ナレッジグラフの歴史学研究への応用は近年、プロソポグラフィ研究やバイオグラフィ研究を中心に進展している。しかしこれらの研究の多くは、すでに伝統的な手法によって為された二次的な研究成果を対象としたものであり、一次史料の内容そのものを記述するものでは必ずしもない。今後、歴史学研究におけるナレッジグラフ活用をさらに深いレベルで促進するためには、一次史料そのものの知識構造化を進める必要がある。こうした構造化に適用可能なオントロジーとしてはすでにFactoidモデルが提案されているが、このモデルは時間的コンテキストや曖昧性の表現に十分に対応しているとは言えず、曖昧性の大きい史料記述については課題が残る。そこで本研究はFactoidモデルを拡張し、出来事の前後関係に基づいて時間的コンテキストや曖昧性を表現可能なモデルを提案したうえで、曖昧性の大きい古代史史料を事例として実際に提案モデルを適用し、データ構築および検索性の検証を行った。