著者
岩田 秀平 水野 篤
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.2148-2150, 2019-12-10

Point◎心不全を悪化させる可能性のある薬物を確認し,減量・中止する必要がある.◎慢性心不全患者にACP(advance care planning)の導入を検討し,そのなかでの薬剤中止という考え方は必要な選択肢である.◎標準治療を理解したうえで,十分な情報提供と医療従事者-患者間における信頼構築のなかで一つひとつ議論していってほしい.
著者
加藤 啓祐 大高 洋平 森田 光生 村山 俊樹 倉上 光市 三村 聡男
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.675-678, 2014-07-10

要旨:〔目的〕Balance Evaluation Systems Test(BESTest)を用いて地域在住中高年者のバランス機能を評価し,加齢による変化,転倒歴との関連について,検討を行った.〔対象〕市民祭りの健康ブースに参加した地域健常中高年者183名(平均67.1±6.1歳)を解析対象とした.〔方法〕中年群,前期高齢者群,後期高齢者群の3群間および転倒歴を有する群と有さない群の2群間において,総得点率およびセクションごとの得点率を比較した.〔結果〕全得点率では,中年群と前期または後期高齢者群それぞれの間において有意差が認められた.また,セクションごとの解析では,セクションⅢ(姿勢変化-予測的姿勢制御)とセクションⅥ(歩行安定性)においてどの年代間においても有意差が認められた.転倒歴の有無では総得点において群間に有意差が認められ,セクションごとの比較ではセクションⅢにおいて有意差が認められた.〔結語〕地域在住中高年者に対しBESTestを行い,加齢および転倒歴と関連するバランス要素を明らかにした.その結果,加齢および転倒,双方に関連するバランス要素として,予測的姿勢制御が抽出された.
著者
奥田 泰久
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.302-306, 2016-04-01

●Summary・星状神経節ブロックの合併症である頸部・縦隔血腫の発生はきわめてまれであるが,対応を間違えば最悪の場合は窒息死という結果に至る可能性がある。その確固たる予防法がない現状では,十分なインフォームドコンセントを行った後に,常に本合併症の対応を準備した状況で星状神経節ブロックを施行すべきである。・現在,一部であるが医療鑑定にカンファレンス方式(複数の専門家による討論)を採用し,より医療の現状に沿った判決を下そうとの試みを司法が始めている。・本件では,日本外傷学会外傷初期診療ガイドラインと日本ペインクリニック学会治療指針が証拠として採用されている。今後も医療訴訟においてはガイドライン・指針の存在が重要視されるかもしれない。

1 0 0 0 AMP-PNP

著者
室伏 擴
出版者
金原一郎記念医学医療振興財団
巻号頁・発行日
pp.392, 1989-08-15

■構造および特性 AMP-PNP(5'-adenylylimidodiphosphate)は,ATPのβ位のPとγ位のPとを結び付けるOをイミド基(-NH-)で置き換えた化合物である(総論の図1参照)。この化合物は,ATPのβ-リン酸とγ-リン酸との結合の切断を伴う反応を触媒する酵素の阻害剤として開発された。類似の構造を持つ化合物として,イミド基の代わりにメチレン基(-CH2-)を持ったAMP-PCP(5'-adenylylmethylenediphosphonate)があるが,-NH-の結合角度が-CH2-の場合よりも-O-の結合角度に近いため,ATPの類似体としてはAMP-PNPの方がAMP-PCPよりも優れている。
著者
由雄 敏之 堀江 義政 青山 和玄 吉水 祥一 堀内 裕介 石山 晃世志 平澤 俊明 土田 知宏 藤崎 順子 多田 智裕
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.385-391, 2019-03-25

要旨●食道癌は進行癌として診断されると予後が悪く,早期診断が重要である.近年,人工知能(AI)はディープラーニングを用いることにより医療の分野で非常に進歩した.筆者らは食道癌拾い上げ診断におけるAIの診断能を検証した.8,428枚の食道癌の内視鏡画像を用いてAIを教育し,別に準備した1,118枚の画像で検証した.AIは食道癌症例の98%を驚くほどの速さで検出することができ,10mm未満の7病変もすべて検出した.また98%の画像で表在癌と進行癌を判断することができた.偽陽性が多い,拡大観察については十分に検討されていないなどまだ課題はあるが,AI画像診断支援システムの臨床応用の可能性が示唆された.
著者
北村 唯一 杉本 智恵 余郷 嘉明
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.905-914, 2000-11-20

東大医科研の余郷嘉明グループと共同して,永年にわたり尿検体を採取し,尿中JCV亜型を調査してきた。その結果,おおよそのJCV世界地図はでき上がった。尿中JCVはHTLV1などの血液中に検出されるウイルスとは違い,検体が尿なので採取が容易であり,しかも非常に陽性率が高く病原性がないことから,HTLV1などよりも人種の移動の推定に適していると考えられる。残念ながら,JCVの病原性についてはPML以外には見出せなかったが,人種移動の推定の方向でJCVの活用範囲は広いと考えられ,今後,世界地図の完成を目指して努力したい。
著者
末木博彦
出版者
医薬ジャーナル社
巻号頁・発行日
pp.1636-1641, 2013-10-15

小児のアトピー性皮膚炎では国内外の疫学研究から肥満と有意の関連性があり,特に幼児期に一定期間持続した肥満がアトピー性皮膚炎の病態悪化に関与する可能性がある。これに対し,成人アトピー性皮膚炎では肥満との関連性を示唆する米国の疫学研究があるが,わが国を含め現在までのところこれを支持する報告はない。肥満とアトピー性皮膚炎を結びつける機序としてアディポネクチンの低下に伴うIL-10の発現低下により抑制系が働かないこと,レプチンを介するTh1/Th2バランスの変化,TNF-αの発現亢進によるアレルギー炎症の増悪などが想定されている。
著者
二通 諭
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.271, 2017-03-10

言葉を字義通り受け取る.言外の意味を捉えることが苦手.これは,自閉症スペクトラムなどの発達障害当事者がしばしば口にすることだ.となれば,セリフの奥に隠された別の意味を察するというところに面白さがある小津安二郎(1903〜1963)の作品は,苦手克服に向けた学習テキストになる可能性がある.この観点から3つのシーンを取り出してみた.「お早よう」(1959)では,加代子(沢村貞子)が弟の平一郎(佐田啓二)に「お天気の話ばっかりして,肝腎なこと一つも言わないで……」とボヤいていたが,天気談義に意味をもたせる自作への当てつけのようにも聞こえた. 本稿は,それに倣って「天気」に焦点を定める.
著者
高木 淳 玉井 一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.638-639, 2003-07-01

死産児を分娩した妻(O型)が出血多量のために夫(O型)の血液を輸血したところ,妻は輸血後に副作用を起こした.Levineら(1939)は,この妻の血清から104検体のO型赤血球中80検体を凝集する抗体を見出し,ABO血液型以外の血液型の存在を指摘した(図1左).その翌年,Landsteinerらはアカゲザル(Rhesus macaque)の赤血球をモルモットに免疫して得られた抗体が,アカゲザルのみならず白人の赤血球の約85%を凝集することを見出した(図1右).アカゲザルとヒトが同じ血液型抗原を持っていることを意味するので,この抗原を“Rhesus”にちなんでRh血液型と名付け,この免疫抗体で凝集する赤血球をRh(+)型,凝集しない赤血球をRh(-)型と名付けた.そして,Levineらの症例など,ABO血液型適合の輸血において副作用を呈した者に見出された現象はRh抗原によるものであろうと推定した.しかし,その後輸血副作用を起こした患者の血清中に他の種々の抗体が見いだされ,次に述べるように1種類の抗原によるものでないことが明らかになった. Rh 血液型因子 Rh血液型遺伝子はD,d,C,c,E,eが第1染色体の上に存在する.Dとd,Cとc,Eとeの各遺伝子がそれぞれ対立遺伝子として存在し,DCe,dCEなど3個ずつセットで両親からまとめて遺伝され(図2),各遺伝子が作る抗原が赤血球膜上に表現される.Rh式血液型抗原性の強さはD>>c>E>C>eの順であり,D抗原の抗原性はE抗原よりも10倍高く,D抗原が最も強い.したがって,両親からもらった1対の遺伝子セット(例えばDCe)の中に遺伝子Dを持つヒトをRh陽性者,持っていないヒトをRh陰性者と呼ぶ(dは,いまだに抗d抗体が検出されていないので理論上の抗原である).Rh式血液型はABO型と異なり,Rh陰性者でも血清中に抗Rh抗体を持っておらず,Rh陽性の血液をRh陰性者に輸血すると受血者がRh抗原に免疫されて抗体が産生される.また,Rh陰性の母親がRh陽性の夫の胎児を宿し,その児がRh陽性であると妊娠中または分娩時に児血球が母の血流中に入り,約10%の母が免疫されてRh抗体を作る.この抗体による児への影響は初回の妊娠においては一般的に軽いが,妊娠回数が増えるにつれて新生児溶血性疾患など重い症状を来したり,また抗Rh抗体が胎盤を通過して胎児血球と反応して流産を引き起こす場合もある.Rh陰性は日本では人口の0.2%であるが白人では15%と高い.Rh血液型抗原の命名法には上記のFisher-RaceによるCDE表記と,図2に示すWienerによるRh-Hr表記法の2種類がある.
著者
坂本 信子
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.29-31, 1986-02-15

はじめに 当院は,昭和大学の付属病院として,昭和50年に設立され,同時にリハビリテーション(以下リハと略す)部門が,理学療法(以下PTと略す)室のみで発足した。作業療法(以下OTと略す)室は,昭和54年に,身障OTの認可施設として開設され,以来6年が経過している。現在OTRは2名,RPTは11名,事務職員2名である。リハ部門全体は,中央診療システムをとっており,整形外科の教授が,理学診療科長を兼任している。 OTが対象とする患者層は,年齢,疾患共に多様であるが,近年,中枢神経疾患々者の占める比率及び絶対数が増加している。その原因としては,脳外科・神経内科病棟の増床,救命救急センターの開設,整形外科での脊椎手術数の増加等があり,また,発症後,ごく早期にリハ処方が出されるようになってきている。中枢神経疾患は,もとより,全身的アプローチを要求される疾患であるが,OTとしては,早期から個々の患者に即した生活・動作パターン(筋トーヌスの調整や失行・失認の改善等を目的とする)を,考慮していかなければならない。これは,OT部門発足当初に比べ,よりImpairmentレベルの仕事がふえた事を意味している。 このように,OTの内容が,量的・質的に変化してきている訳であるが,OTの存在と役割は,必ずしも院内の認知・理解を得ているとはいい難く,OTR自身も,病院内で,いくばくかの異和感を捨てきれずにいる。 本来的に,OT部門の管理・運営方法論が,病院という機構内での,OTの位置関係を離れては存在しえない以上,医療の大きな枠組の中でOTをとらえる事は,不可欠である。 近年,リハ医学では,QOLということが,盛んに言われ始めている。しかし,現実には,リハ部門に対する主治医の関心は,専ら人間の動物的機能の面にとどまっている場合が多い。それは,リハの概念自体が,既存の医療構造の中で矮小化されている事を示しているのではなかろうか。加えて,OTが,患者の応用動作,即ち,より社会的な側面に働きかける職種である為,OTに対する理解を得ることは,一層困難である。当院のリハ部門には,リハドクターや,直接指導してくれる内科医師が居ないという特殊性もあるが,院内で,OTが,確固とした位置を築き得ていない事が,スムーズな業務遂行を妨げている。 そのような,悪循環を打開する為には,OTR自身が,状況に流されることなく,地道な実践を種み重ねていくことが根本であるが,医学部カリキュラムの問題等,OT協会のSocial Actionにも期待したい。 以上,管理・運営をめぐる諸条件について述べた。次に,当院の現状を,項目毎に報告する。
著者
時武 治雄
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.3-12, 1986-02-15

はじめに 大阪府立中宮病院が設立されて60年を迎えようとしている。人間でいうなら還暦の年にあたるわけだが,その間作業療法については,シモンのもとで学んだ長山による作業療法の展開や,院外保護の実践が行なわれている。 そうした折の昭和14年に,当院に隣接する枚方火薬庫の大爆発がおきたが,当時実践されていた作業療法の効果によって患者は機敏に行動し,無事故による避難ができたという逸話も残っている。 第二次大戦が激しくなるにつれ,食糧難のために多くの患者が死亡していったという悲しい記録も残されている。終戦後もこうした状態が続いていたが,当院にも,昭和30年代に入って,向精神薬を使用するようになり,少しずつ開放化のきざしがうかがえるようになってきた。昭和35年にはレクリエーション係が設置され専任のスタッフが配置された。昭和36年には,同意入院を取扱うことになった。 一方作業療法については,男子作業は農耕園芸の種目に新しく二部作業とよぶ軽作業を加え,女子作業も和裁・洋裁・手芸の種目に新しく二部作業とよぶ軽作業を加えている。 こうして,作業療法,レクリエーション療法の広がりがあって昭和43年に,旧病棟2,032m2(2階建)が作業療法棟として改造され,レクリエーション療法には社会療法棟(体育館)が新設され,この両者を合わせて名称も活動療法科として誕生した。 今回,協会機関誌編集委員会から執筆依頼があった。当院における作業療法のささやかな経験を実務的に報告することによって,多少なりとも役立つことができるのであればと考え,あえて昭和43年から現在までを,作業療法の分野に限って報告したい。そして御批判をいただきたいと考える。
著者
古山 将康
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.136-140, 2019-02-20

▶ポイント ・NTR手術は,産婦人科医が施行してきた従来法に上部腟管の固定を確実にすることで,安全性の高い,再発率の低い骨盤底再建術が可能となる. ・骨盤底臓器の解剖学的支持欠損の部位を診断し,年齢や患者のライフスタイルに合わせた術式を選択する. ・泌尿器科領域では骨盤臓器脱に対してプロリンメッシュを用いたTVM手術が急速に普及したが,FDAのアラート以後,詳しいインフォームド・コンセントが必要である.
著者
溝口 博之 山田 清文
出版者
金原一郎記念医学医療振興財団
巻号頁・発行日
pp.372-373, 2009-10-15

[用いられた物質/研究対象となった受容体] メタンフェタミン/GABA受容体 覚せい剤であるアンフェタミンやメタンフェタミンは代表的な依存性薬物であり,日本のみならず世界中でその乱用および依存症が社会的な問題となっている。覚せい剤乱用の初期には,病的爽快,注意力の増強,疲労軽減,無食欲症といった症状が観察されるが,長期間の使用により幻覚・幻聴や妄想症状などが出現する(覚せい剤精神病)。覚せい剤を慢性的に乱用すると次第に脳障害が形成されることから,覚せい剤精神病は器質性精神病と規定されている。覚せい剤精神病は,一旦発症すると薬を止めても回復しない場合が多く,再発脆弱性や症状の慢性化においても妄想型の統合失調症と酷似している。さらに,メタンフェタミンの長期使用により認知障害が惹起され,依存症に加えて認知障害の重症度が社会転帰と深く関わっている。これらのことから,覚せい剤依存者における認知障害の発症機序の解明およびその治療法の確立が重要な課題である。実際,メタンフェタミン依存者は言語記憶や運動機能の実行性が低下していることや,記憶の想起テストが非常に悪いこと,メタンフェタミン乱用者では健常人に比べ情報処理機能試験の成績が著しく悪いことなどが報告されている1)。磁気共鳴機能的画像検査法(fMRI)を用いた研究では,注意力や作業機能を評価するtwo-choice prediction taskにおけるメタンフェタミン依存者の試験成績の低下と,眼窩前頭皮質および背外側前頭前野における脳賦活の低下とが相関すると報告されている。 覚せい剤精神病や依存症のメカニズムに関しては,脳内報酬系に関係するドパミン作動性神経系を中心に研究が重ねられ,その他の神経伝達に関する報告ではドパミンとの相互作用が論じられることが多い。代表的な抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid:GABA)はドパミン神経の発火を抑制することから,GABA作動性神経系の役割について注目されてきた。例えば,遺伝子多型の研究により,GABAA受容体γ2サブユニット遺伝子の多型がメタンフェタミン依存症の脆弱性に関係することが明らかになっている。また,GABAB受容体アゴニストはドパミン神経の発火を安定化することにより,コカイン,ニコチン,ヘロインなどの依存性薬物によるドパミン遊離の増大を抑制し,その報酬効果を減弱するという報告がある。最近の研究では,GABAB受容体アゴニストbaclofenがメタンフェタミン依存患者の依存症の治療に有用であるとの臨床試験もある2)。また,エタノールによる記憶障害をbaclofenが抑制することも示されている。以上より,GABA受容体が覚せい剤による認知障害に関与する可能性が考えられるが,直接的な因果関係について述べた臨床報告や基礎研究は十分ではない。本稿では,メタンフェタミン認知障害モデル動物におけるGABA受容体アゴニストの効果について紹介する。
著者
岩田 久 松山 幸弘 加藤 文彦 千葉 一裕
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.269-282, 2019-03-01

要旨:椎間板ヘルニアは椎間板中の髄核が線維輪を穿破し脊髄などの神経を圧迫し,下肢痛,腰痛を発症する疾患である。その治療において,保存療法として,非ステロイド性消炎鎮痛剤,ステロイドなどの薬物療法,理学療法,硬膜外仙骨ブロック,神経根ブロック,運動療法などで効果がみられないとき,コンドリアーゼ(C-ABC)化学的髄核融解術(chemonucleolysis)が,手術的治療に至る前の最後の手段として考えられる。このC-ABCは50年前,Proteus vulgarisを培養,その菌体成分から抽出・精製し,そしてFlavobacterium heparinum由来のC-AC酵素とともに駆使しコンドロイチン硫酸異性体の分析に使用した。その過程でコンドロイチン硫酸-デルマタン硫酸ハイブリッド構造の存在を半月板軟骨内に発見した。この酵素が種々の動物実験,臨床治験を通し,腰椎椎間板ヘルニア治療のための椎間板注射剤として純国産で,世界で初めて開発され,今回日本で認可が得られた。C-ABC,C-ACを用いた種々軟骨,尿などのコンドロイチン硫酸異性体の特徴,C-ABCの臨床応用に向けての基礎的研究,使用方法,適応,今後の展望について検討した。
著者
須田 生英子 福地 健郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.245-248, 2002-09-10

はじめに 真性小眼球症は,両眼の眼軸長が14mmから20.5mmと短く,他の身体的または眼科的な異常を伴わない疾患と定義されている1)。遠視の強い症例が多く,脈絡膜の異常な発達と強膜の肥厚,強膜におけるコラーゲンの異常やコンドロイチン硫酸の減少が報告されており2),蛋白透過性の低下に伴いuveal effusionや非裂孔原性網膜剥離を生じやすい3)。また,眼球内容積が正常眼の2/3程度に減少しているにもかかわらず,水晶体の容積はほぼ正常であるため,正常眼では3〜4%である水晶体の占める割合が10〜32%までになり4),この解剖学的な異常が40〜60代の比較的若い年齢で閉塞隅角緑内障を引き起こす原因と考えられている。真性小眼球症眼は,相対的に大きい水晶体のために相対的瞳孔ブロックをきたしやすく,これは40代以降の加齢に伴う水晶体の肥厚とともに助長される。また,症例によってはUBMでplateau iris configurationや水晶体と毛様突起の接触,圧排などの悪性緑内障の際に認められる所見が観察されることがあり,相対的瞳孔ブロックにこれらの要因が加わることによって隅角閉塞が生じると考えられる。 緑内障の発症にあたっては,慢性の経過をとる症例もあるが,急性閉塞隅角緑内障発作を起こす場合も多く,うち約2/3の症例では両眼性に発症する5)。真性小眼球症の緑内障を治療するためには,まず細隙灯顕微鏡検査,隅角鏡検査,Aモードエコー,Bモードエコー,MRI, UBMなどで可能な限り病状を正確に把握し,その眼圧上昇機序を十分に検討したうえで,病期に応じた治療法を考えていく必要がある。
著者
粳間 剛 仙道 ますみ
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.360-365, 2020-11-15

私は訪問看護ナースのあいか! 今日は最近フルリモートになった*注1 集団リハを手伝っています(自宅で)
著者
大橋 利和
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1443-1446, 1966-11-15

I.緒言 望遠鏡や顕微鏡等の光学器械を覗く時,正視眼者でも接眼鏡のDiopter (以下D.と略す)目盛が負側に傾くことが多いが,この現象がどの程度の割合で存在し,又,如何なる因子がどの程度に関与しているかを見る目的で,実験を行ない成績を得たので報告する。
著者
平田 明
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
1967-08-15

はじめに オートラジオグラフィーとは,一口にいうと標本中の放射性同位元素(ラジオアイソトープ)の分布を,それから出る放射線の感光作用によって,標本に密着させた写真乳剤膜に直接記録させる方法である。もう少し具体的に説明すると,ある化合物の生体内での挙動を知りたいときは,この化合物を適当なラジオアイソトープでラベルして,これを生体内に入れ,その動きをラジオアイソトープから出る放射線を目印にして,適当な検出器で検知すればよい。このような方法を一般にトレーサー技術というが,電気的な検出器の代りに写真感光材料を用いる方法がオートラジオグラフィである。方法は,動物に投与した後,一定時間経過したところで,所定の臓器をとり出し,それの組織標本を作る。この上に後で説明するミクロオートラジオグラフ用乳剤をかぶせて,1〜2週間放置する。これを現像,定着など,通常の写真処理を行なった後,切片を適当な色素で染色して,顕微鏡で観察すればよい。組織や細胞内にとり込まれたラジオアイソトープの局在を,組織像の上に重なった現像銀の分布として見ることができる。この方法はオートラジオグラフィのなかでもミクロオートラジオグラフィと呼ばれ,細胞生理学,細胞化学的な研究面に大きな貢献をしてきた。最近では,より解像力のすぐれている電子顕微鏡を用いての電子顕微鏡的オートラジオグラフィの技法も研究され,両者共,今後ますます進展するものと思われる。
著者
沖 都麦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.775-779, 2019-06-15

■Simpson法 Simpson法とは左室容積を求める際に用いられ,左室容積を長軸に対して直交する円盤状のディスクの総和として計算する方法である.通常,心尖部四腔像および二腔像の二段面(biplane)から計測される20の楕円形のディスクの総和を左室容積とするbiplane modified Simpson法が用いられており,近年ではこの測定原理を反映して,ディスク法やdisc summation法(ディスク加算法)という呼称が主流となりつつある. 本法から得られた収縮期および拡張期の容積から左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)が算出され,左室収縮能を評価する指標の1つとして広く用いられている1,2)(図1).
著者
深井 恭子 山口 さやか 大嶺 卓也 山城 充士 眞鳥 繁隆 高橋 健造
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.393-396, 2017-05-01

要約 27歳,女性.オコゼ刺傷による右下腿皮膚潰瘍に対して,ゲーベン®クリームを外用していたが難治のため当科を紹介受診した.潰瘍周囲に紅斑,丘疹が広がり,ゲーベン®クリームの外用を中止したところ,潰瘍部の肉芽形成が良好となり植皮術を行った.術後,顔や植皮部にヒルドイド®ソフト軟膏を外用し,瘙痒が出現していたが不定期に外用を続けていた.約1年後に全身に紅斑が拡大し,再度当科を受診した.パッチテストでは,ゲーベン®クリーム,ヒルドイド®ソフト軟膏,これらに共通した添加物であるパラベンが陽性だった.自験例では,最初の接触皮膚炎の診断時に原因成分までは特定しなかったため,パラベン含有薬剤の外用を継続し経過が長期化した.パラベンは身近な医薬品,化粧品に数多く含まれており,難治性の皮膚炎や皮膚潰瘍では,パラベン類へのアレルギーも念頭に置きたい.