著者
打田 素之
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 文学部篇 = Journal of the Faculty of Letters, Kobe Shoin Women's University : JOL (ISSN:21863830)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.13-22, 2018-03-05

『君の名は。』ヒットの要因はいろいろと分析されているが、この作品が日本的悲恋物の系譜に属する作品であったことが大きいと考えられる。日本人は近松浄瑠璃の昔から、共同体の制度や倫理に阻まれて、死に行く恋人たちの物語を好んで消費してきたが、こうした障害は社会の発展・民主化とともに、1960 年代は〈難病〉へと姿を変え、80 年以降、新しい要素として〈時間〉が現れた(『時をかける少女』)。『君の名は。』も、「時の隔たり」が恋人達を引き裂いているという点において、この伝統に連なる作品だと言える。 また、彼らの恋愛成就とヒロインの住む町の運命が一体となっていることは(=セカイ系)、それまで恋人達の敵であった共同体が、彼らの恋愛成就を助ける側となったことを意味し、日本的悲恋が新しい物語形態(=共同体との和解)を採用するに至ったことを示している。『君の名は。』のラストは、「歴史の流れ不変の原則」に基づいた「忘却のルール」が破られる展開となっており、これは旧来の共同体が力をもてなくなった現代の日本社会において、00 年代以降の大衆の嗜好に合致するものとなっている。 このように、『君の名は。』は日本的悲恋の伝統を受け継ぐ形で、「時間」という障害を採用しながらも、そのルールを変える新しい結末を用意したことが、全世代的なヒットに繋がったと考えられる。
著者
水関 清
出版者
市立函館病院
雑誌
函館医学誌 = Hakodate medical journal (ISSN:09100725)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.3-16, 2006-09
著者
石飛 太一 飯田 弘之
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2012論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.6, pp.163-166, 2012-11-09

本論文では証明数を利用した詰将棋問題の感性評価について調査を行った.そこで,証明数と反証数についての統計情報を得るため,Allis(1994) によって提案されたProof-Number Search を利用し,コンテストにおける上位問題の分析を行った.また,上位入賞問題とその他一般問題について違いを調べ比較した.結論として,証明数と詰将棋問題の感性評価の間には一定の関わりがあることが分かった。
著者
神戸 航介
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.212, pp.1-39, 2018-12-20

本稿は日本古代国家の租税免除制度について、法制・実例の両面から検討することにより、律令国家の民衆支配の特質とその展開過程を明らかにすることを目指した。律令制において租税制度を定めた篇目である賦役令の租税免除規定は、(1)身分的特権、(2)特定役務に任じられた一般人民、(3)儒教思想に基づく免除、(4)民衆の再生産維持のための免除、の四種類に分類することが可能である。こうした構造は唐賦役令のそれを継受したものであるが、(1)は律令制以前の畿内豪族層の系譜を引く五位以上集団の特権という性格を持っていたこと、(2)は主として中央政府の把握のもとに置かれた雑任を対象とし、在地首長層の力役編成に依拠した地方の末端職員は対象とならなかったことなど、唐の制度を日本固有の事情により改変している。一方(3)(4)の免除は中国古来の家父長制的支配理念や祥瑞災異思想を背景とするもので、日本の古代国家はこうした思想を民衆支配に利用するため、租税免除規定もほぼそのまま継受した。六国史等における実際の租税免除記事を見ると、八世紀には(3)(4)の免除は即位や改元など王権側の事情、災異など民衆側の事情を契機とし、現行支配の正当性を主張するために国家主導で実施された。しかし九世紀になると、王権側の事情による租税免除は次第に頻度を減少させていくように、儒教的支配理念が民衆支配の思想としては機能しなくなる。災異の場合も王権主導の免除は減少し国司の申請による一国ごとの免除が主流になっていき、未進調庸の免除も制度的に確立するが、これは国司の部内支配強化に対応し国司を通じた地方支配体制の進展に対応するものであり、十世紀には受領に対する免除として再解釈されていた。ただし天皇による恩典としての租税免除の思想は院政期まで存在しつづけたのであり、ここに古代国家の最終的帰結を見いだすことも可能であろう。
著者
前田 恵利 河野 美穂 小川 千尋 大場 亜紀 高林 康江 藤井 美香 原本 久美子 日野 徳子 今野 理恵 堀尾 強
出版者
関西国際大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13455311)
巻号頁・発行日
no.19, pp.101-110, 2018-03-10

In this study, assistance for improving urinary incontinence based on bladder function evaluation was practically applied to four patients with voiding dysfunction. Analysis was then performed on actual verbal communication incorporating prompted voiding (PV) that was found to effectively motivate patients during assistance.Effective verbal communication fell into three categories: verbal communication of joy in expressing a desire to void and appreciation; verbal confirmation of recovery in urinary function and verbal praise; and verbal communication that respects behavior and pace during voiding. Voiding assistance based on bladder function evaluation and communication incorporating PV led to patients voluntarily asserting their desire to void and thereby to improvements in urinary incontinence. The findings suggest that in the course of improving voiding function, emphasizing respect for patients’ self-esteem in verbal communication is as important as adopting an individualized approach to voiding assistance during bladder training.