著者
萩原 雅也 ハギハラ マサヤ Masaya HAGIHARA
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.2, pp.193-204, 2012-01-31

近年、芸術文化の持つ創造性を都市再生につなげようとする創造都市論への関心が高まり、そのコアというべき概念である「創造の場」への注目が集まっている。本稿の主題は、別府市におけるアートNPO BEPPU PROJECTを中心とする実践事例を詳述したうえで、拙稿(2009)による「創造の場」4類型にもとづいて実証的考察を加えることにある。これによって得られる結論は、この事例の創造的営為が「創造の場」に依拠しており、またその形成を意図した活動であること、4類型が「創造の場」の基本的な分析フレームとして有効であるとの証左が得られることである。さらに、創造的営為には空間の大きさや開放性など多様なあり方を示す「創造の場」とその連鎖が必要であり、「創造の場」の形成のためにはアートNPO と行政等のネットワーク構築が重要であることが示唆される。
著者
戸塚 唯氏
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The University bulletin of Chiba Institute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.11, pp.47-56, 2018-02-28

性的マイノリティの児童生徒はいじめや差別の困難に直面している。そのためいじめや差別を低減し、性的マイノリティへの援助意図を高めるような説得が重要となっている。本研究でははじめに性的マイノリティの児童生徒の現状を考察し、その後性的マイノリティへの援助意図を高める要因を検討した。実験参加者は79名の大学生(男性56名、女性23名)であり、11の認知と性的マイノリティへの援助意図を測定した。11の認知とは、迷惑認知、深刻さ認知、二次被害の確率認知、二次被害の深刻さ認知、内的規範認知、義務認知、実行者割合認知、支持認知、意義認知、コスト認知、当惑認知である。重回帰分析の結果、当惑認知と内的規範認知、意義認知が性的マイノリティへの援助意図に影響を与えていたことが明らかとなった。
著者
渡辺 美紀 小川 浩平 石黒 浩
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.1251-1261, 2016-04-15

ロボットが多様な役割を担い共存する社会が到来しつつある.人間に酷似した身体的特徴を持つアンドロイドは,これまで想定されていなかった状況において役割を担える可能性があると考えられる.本研究では,アンドロイドを販売員として用いることを提案し,百貨店において顧客との対話を通じて商品を販売できるか検証するフィールド実験を実施した.実験の結果,アンドロイドは商品を43万円程度売り上げ,販売員として社会的な役割を担える可能性が示された.フィールド実験の結果より,アンドロイドによる主観的・感情的なメッセージが顧客の購買行動に影響を与えた可能性があると考察し,アンドロイドがそれらのメッセージを効果的に伝達可能な特性を一般的な状況においても持つかどうか検証する実験室実験を実施した.その結果,統制された環境においても,アンドロイドによる主観的・感情的なメッセージは人間に違和感なく受け入れられることが示された.さらに,これらのメッセージの効果的な伝達においてはアンドロイドの存在が必要であることが検証された.本研究成果は,販売という状況だけでなく,人とインタラクションするロボットの社会実装において有用な知見になりうると考える.