著者
三浦 光哉
出版者
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター
雑誌
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要
巻号頁・発行日
no.9, pp.1-8, 2014-06-01

長期にわたって学校を欠席している小学校5年生A男(61日欠席)、中学校2年生B子(151日欠席)の児童生徒に対して、「本人参加型不登校改善会議」を実施した。その内容は、①不登校改善会議の目的とルール、②不登校に至る経緯の確認、③能力および気質や障害等の自己理解と課題把握、④不登校の定義と不利益、⑤生活環境の改善と将来の展望、⑥不登校改善の自己決定とスケジュール、⑦居場所での学習内容と指導方法、③改善するためのテクニック、⑨不登校改善計画の作成と合意、の9項目である。その結果、A男は、翌日から遅刻もせず毎日登校し、下校まで教室で学習活動ができ不登校が完全に改善された。また、B子は、改善会議後の翌週に1日別室登校、翌々週に2日間別室登校と翌週毎に別室登校回数を増やしていき、毎日、別室登校ができ、さらに教室復帰できるようになった。このことにより、「本人参加型不登校改善会議」の実施は、本人への登校刺激が促進され、不登校の改善につながったのではないかと考察した。
著者
佐々木 健太郎 海野 善和 島津 真樹 鈴木 徹 野口 和人
出版者
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター
雑誌
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要
巻号頁・発行日
no.8, pp.89-99, 2013-06

本稿では,特別支援学校高等部木工班が行った,生徒の内発的動機付けを促す状況作りに着目した授業作りの実践を整理し,個々の生徒に見られた変化及び生徒同士の関係性の変化との関連を探ることを目的とした。個々の実践に対する生徒の様子,生徒同士のかかわりの様相,個々の生徒の意識の3つの観点から分析を行った結果,個々の生徒の意欲的な取組が観察された。また,生徒同士のかかわり合いは,形式的なものから非形式的なものへと発展し,その頻度も高くなった。一年間の取組を通して,支援し得た点として,個々の生徒の目的意識を高めたこと,個々の生徒の技能が習熟し周囲に目を向ける心理的余裕を与えたこと,生徒同士の関係そのものを構築したことの3点が考えられた。今後の課題としては,生徒を主体とした授業を展開するための教師の支援のあり方について検討を重ねること,生徒同士の関係性を構築するための支援をすることが挙げられた。
著者
佐々木 健太郎 野口 和人
出版者
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター
雑誌
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要
巻号頁・発行日
no.10, pp.83-92, 2015-06-01

本稿では,国立大学教育学部附属特別支援学校39校の研究資料を基に,知的障害特別支援学校高等部におけるコミュニケーションに関する指導の現状と課題について調査することを目的とした。その結果32校での実践報告が見られ,(1)コミュニケーションスキルの形成を目指した取組,(2)人とかかわることに関する態度や力の育成を目指した取組,(3)生徒同士の関係性に着目した取組に分類された。(1)のスキル形成に関する取組においては,スキルの活用場面が限定され,般化が課題として挙げられていた。(3)の取組については,十分な成果が得られているものは多くなかったが,生徒同士の関係性を考慮することで,対象生徒の対人関係に改善が見られたことや人間関係の拡大が見られた取組があった。以上の結果から,今後求められる指導の方向性として,スキルを活用できる多様な場面を設定すること,生徒同士の関係を構築することを基盤にコミュニケーションスキル等の指導を行うこと,卒業後の生徒の様子から長期的な視点で指導内容を評価することが考えられた。
著者
佐々木 健太郎 野口 和人 村上 由則
出版者
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター
雑誌
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要
巻号頁・発行日
no.11, pp.47-57, 2016-06-01

本研究では,学校卒業後を見据え,知的障害児の仲間関係の構築を目的とし,知的障害特別支援学校高等部在籍生徒及び卒業生を対象とした校外余暇支援活動の実践(ささけんクラブ)を行った。在学中から継続的に参加する一事例を取り上げ,ささけんクラブへの参加の様子,学校での仲間関係の変遷について継続的に調査を行った。その結果,ささけんクラブへ参加開始当初,対象者の関心の対象は活動内容であったが,高等部2年生になり一緒に参加する友達へと拡大された。同期的に学校でも休み時間等の自由時間に友達とかかわる場面が散見されるようになった。高等部3年生になると,本人の希望により放課後や休日にも友達とのかかわりが拡大していった。ささけんクラブの場等を通して,卒業後も友達とのかかわりを継続することにより,職場でのストレスを発散するニとができ,就労の継続に対しでも肯定的な影響をもたらした。以上の結果より,在学中から卒業後に渡って仲間関係の構築,維持を組織的に支援することにより,間接的に就労の安定が図られることが示され,移行支援の一つの視点として重視していく必要があることが示された。
著者
三浦 光哉
出版者
宮城教育大学教員キャリア研究機構(特別支援教育研究領域)
雑誌
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要 = Bulletin of Special Needs Education Research Center, Miyagi University of Education
巻号頁・発行日
no.12, pp.30-37, 2017-06-01

本研究は、小学校入学後において、5 歳年長の時期に「小1プロブレムを防ぐ保育活動プログラム」を適用したA幼稚園出身児が学習面や行動面で不適応が少なくなっていることについて、小学校1 年生担任によるアンケート調査から一般幼稚園出身児と比較しながら検討した。手続きでは、A 幼稚園5 歳児3 クラス計72 人(本研究の対象児46 人)に対して、3 ケ月間にわたって、「小1プロブレムを防ぐ保育活動プログラム」40 題材を適用した。そして、この効果を検証するために、小学校入学後の7 月に、1 年生担任8 人に対して、8 項目( 国語の読み、国語の書き、算数の読み書き、算数の計算、視写、対人関係、聞く、話す)について、4 段階評価(大いにある、多少ある、あまりない、全くない)のアンケー調査を実施した。また、比較するために、保育活動プログラムを受けていない一般幼稚園出身児178 人にも同様のアンケート調査を実施した。その結果、A幼稚園出身児は、8 項目全てにおいて一般幼稚園出身児よりも不適応出現率が少なく、また、平均不適応出現率で約10%少なかった。このことは、「小1プロブレムを防ぐ保育活動プログラム」の適用が、小学校入学後における国語や算数の読み書き計算、聞くことの授業集中、話すことのコミュケーション、友達とのコミュニケーションなどの能力や態度において効果を示したのではないかと推測された。特に、行動面や情緒面、対人関係面で効果が期待できるものとなった。
著者
宮地 弘太郎
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.14, pp.209-216, 2013-03-31

本学テニス部選手に対して短期的なフィジカルトレーニングプログラムを実施した。Pre-test においてRegular 群Non-regular 群の間で上体起こしと立ち幅跳びの測定において有意な差が伺えた(P<.05)。3ヶ月後のPost-test においては両群間では有意な差が伺えなかったものの,全部員に対して上体起こし,5方向走,往復走で有意な差が伺えた(P<.05)。よって,3ヶ月の短期的なフィジカルトレーニングメニューは効果的であったことが示唆された。今後は,測定項目を増やし,技術とトレーニングの関連性を定量化し縦断的研究を推奨したいと考える。
著者
忠津 佐和代 梶原 京子 篠原 ひとみ 長尾 憲樹 進藤 貴子 新山 悦子 高谷 知美
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.313-331, 2008

青年期のヘルスプロモーションの視点から,大学生のピアカウンセリング手法による性教育の必要性と教育内容を検討するため,某大学生858人を対象に自記式質問紙調査を行い,以下の結果を得た.性交経験者は,男性では1年生(62.1%)・2年生(77.1%)・3年生(91.1%),女性では1年生(41.5%)・2年生(62.4%)・3年生(70.1%)と学年を上がるごとに増加していた.性に関わる問題の第1の相談相手の割合が最も高いのは「友人(73.1%)」であり,性に関わる意識や行動に最も影響を与える第1のものも「友人(45.5%)」であった.性の問題の相談場所がない者が24.0%いた.大学生のピアに対する期待は,具体的な知識に加え,交際相手とのトラブルへの対応や避妊法の具体的な技術指導,ピアカウンセリングが包含する相談しやすい人や秘密の守られる場の提供であった.最も知りたい内容は,21項目中,「性感染症の知識(47.0%)」で,以下2割以上は「男性と女性の心理や行動の違い(46.3%)」,「エイズ(44.8%)」,「愛とは何か(40.5%)」,「緊急避妊法(39.6%)」,「避妊の方法(35.8%)」,「異性との交際のしかた(34.8%)」,「セックス(性交)(29.3%)」,「自分の体について(27.2%)」,「性の人生の意味(26.1%)」,「性欲の処理のしかた(24.9%)」,「思春期の心理(23.6%)」,「性に関する相談機関(22.0%)」の12項目であった.以上から,青年期にある大学生にもピアによる性教育の潜在的・顕在的ニーズがあること,その教育内容として心理的・性行為付随側面のニーズが高くなっていることが窺える.この時期のQOLを実現するため,新入生の時期からピアカウンセリング講座やピアカウンセリングが展開できる場やサポート環境を整えていくことが求められる.
著者
駒木 泰
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.13(2009-MUS-79), pp.37-42, 2009-02-11

ジャズ・アドリブの単音の音高と音長の並びを時系列データとみなして時系列分析を適用し、演奏の特徴を見出した。Charlie Parker の Confirmation のテーマ、Charlie Parker と Clifford Brown のアドリブを対象に、自己相関、ガウス型と整数型の AR モデルの推定、VAR モデルの推定による Granger 因果性の検定を行った。ラグの長さ、パラメータの推定値について、いくつかの演奏の特徴が見出された。
著者
鎌田 徹朗 橋本 剛
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.167-171, 2016-10-28

StarCraftはRTS(Real-Time Strategy)ゲームの中でも特に人気のシリーズであり,多くのプロが存在している.現在までに,プロより強いAI開発を目標として様々な研究が行われているが,AIはプロに対して0勝15敗と惨敗しており,プロのレベルには遠い.本研究ではより効率的なAIの強化を考え,StarCraftの作戦に注目し,深層学習を用いた対戦相手の作戦予測手法を提案する.
著者
本橋 美樹 Miki Motohashi
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 = Papers in Teaching Japanese as a Foreign Language (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.95-108, 2013

「大阪」を「おさか」とするような拍レベルでの表記の誤用を考察した先行研究は非常に限られているが、学習者の知覚と生成の関係を知る上で、表記も発話と同じように考慮すべき重要なデータではないだろうか。本研究は表記データと聴取データを同一被験者から取り、誤用パターンの関連を調べた。その結果、学習者は表記の誤用パターンと同じように、単語を聞き取っていることが明らかになった。つまりこの二つ技能は強く関連していると言える。