著者
嶋内 博愛
出版者
Waseda University
巻号頁・発行日
2004-07

制度:新 ; 文部省報告番号:乙1898号 ; 学位の種類:博士(人間科学) ; 授与年月日:2004/7/14 ; 早大学位記番号:新3841
著者
石川 克知 高橋 吉文
出版者
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院 = Research Faculty of Media and Communication, Hokkaido University
雑誌
メディア・コミュニケーション研究 (ISSN:18825303)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.1-57, 2014-03-31

本論は、グリム兄弟が『グリム童話集(KHM)』の個々のメルヘンを彫するに際して、数字もまた重要な役割をはたしていたのではないか、と考え、それを作品内在論理解析方法と、 デジタルデータの検索方法とを結合して、考察しようとしたものである。 第一章は、数字3と数字2が要となっているKHM 中の名高いメルヘンKHM55「ルンペルシュティルツヒェン」とKHM21「灰かぶり」の2篇を、作品内在分析によって構造解析し、そ の内在論理と数字との緊密な関係を証明する。 第二章は、一転してKHM の全ての版(草稿から第七版まで)における数字使用頻度を、それ用に特別に作成したKHM 全版のファイルに基づいてコンピュータによって検索し、その一 覧を作成した。その検索結果の中で特に注目すべきは、数字3の総体的減数と、それと反比例する数字2の圧倒的多数状況および版改訂に伴いふくれあがっていく数字2の激増事実である。 続く第三章は、数字2の覇権への動きというその検索結果を、KHM 中最も分量が多くかつグリムたちの最自信作であり、メルヘン史上およびグリムたちにとって『グリム童話集』の要といえるメルヘンで、題名にも数字2を冠しつつも、各種の数字が入り乱れるため数字的意味等の解読の著しく困難なKHM60「二人兄弟」において、内在分析の側から検証する。 だが、そこに現れる全ての数字と数字的事象(明示されないが、数字が意識されている現象)を順次列挙していく時、内在分析からは、数字2が諸数の乱数表的状態という森の中を冥界として経巡り、最終的には数字1へ、正確には2にして1である[2・1融合状態]へと収斂かつ帰還し蘇る、という「V字プロセス」(高橋)軌道の潜在が析出されてきた。 この時、第二章でのKHM 全体へのデジタル数字検索結果(数字2の覇権と拡大への傾向)と、第三章での詳細な内在分析が明らかにした数字2の冥府行およびその1との融合経緯とは、みごとな対応関係を見せる。その対応事実の確認からはさらに、KHM 全体において、またその双子たちのように親密なグリム兄弟やドイツ・ロマン派自身にとって、数字2に秘かに託されていた深甚な遍歴と融合の機能の潜在もまた、浮かびあがってくるように思われるのである。
著者
荒木 由希 Araki Yuki
出版者
金沢大学大学院人間社会環境研究科
雑誌
人間社会環境研究 = Human and socio-environmental studies (ISSN:18815545)
巻号頁・発行日
no.36, pp.45-61, 2018-09-28

きもの産業はピークの2兆円産業から6分の1にまで縮小している。 本稿はその縮小原因を.先行研究から分析し. (1)生活スタイルの変化,(2)高付加価値化戦略,(3)産業の組織構造の問題の 3点に整理した。 生活スタイルの変化による需要減少に伴い, 生き残りをかけてきもの産業がとった戦略は. 高付加価値戦略, フォ ーマル路線戦略であった。 しかし. いまや消費者のニ ーズ は高級路線から変化している。 それにもかかわらず. きもの業界は, きもの=高級品という図式 に固執し. ますます消費者ニー ズと乖離する「高付加価値化の罠」とも呼ぶぺき状況にある。 本 稿では. ぎもの産業が高付加価値化の罠に陥った理由に,「伝統」という要素が深く関わってい るのではないかという仮説を立てた。 そして先行研究整理を通じ. 生産流通過程において.高級 化路線をもたらす分業システムが硬直的に垂直統合されており, 簡単には変えられず従来の高級 路線に縛られているために, きもの産業が「高付加価値化の罠」から脱却できないとのロジック を析出した。 これはドメスティックな消費慣習に依存して, それを破壊してまで新しい市湯機会 にチャレンジすることを躊躇する日本のものづくり産業全般の業界状況と重なる話である。 こ れまでに各種の対策が提言されているが, 国や自治体の一律的な政策は, 主因である構造的な問 題が未解決のままであり. 現場で機能していないことが多い。 きものを生産する現場は, 日本全 国各地に存在し,その地域と風土を活かしたきもの作りを行っている。そこで,地域特異性を考慮した. きもの産業の構造の再編成の重要性と有効性を,今後の検討課題として整理する。