著者
山本 彩
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.118, pp.59-82, 2013-06-30

我が国において社会的ひきこもり問題は2000 年ごろから注目されるようになった。厚生労働省研究班はひきこもり支援について,その背景にある要因によってストラテジーが異なるとして,精神障害群,発達障害群,人格の問題群の三つの群への分類を提案した。また,本人が相談機関に行こうとしない場合に,米国でおこなわれている薬物依存患者を受療につなげるプログラムCommunity Reinforcement and Family Training(CRAFT)が参考になるとした。しかし,CRAFT に関する日本語の資料は2012 年時点ではまだ乏しい。本研究では,我が国ではあまり知られていないCRAFT について紹介し,社会的ひきこもりの背景に発達障害がある群を対象にCRAFT を行う場合に留意すべきポイントを,文献からまとめ考察した。
著者
山本 彩
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.119, pp.197-218, 2013-12-25

近年,自閉症スペクトラム障害(以下ASD)をもつ人への支援方法は急速に発展してきたが,その多くは本人への直接支援を前提としているものであり,本人への支援が必要と考えられるが本人は支援を拒否するという場合については,介入方法は未整理であった。支援を拒否する本人の支援への動機づけを高めるためには,物質依存者とその家族を包括的に介入するCommunity Reinforcement and Family Training(以下CRAFT)が参考になると考えられるが,CRAFT は本人が深刻な家庭内暴力や犯罪行為をもつ場合にはプログラム適用から除外するという課題が残る。筆者は,本人がASD 特性を背景にもち支援を拒否している,家庭内暴力や違法行為などの行動の問題に対して,CRAFT,危機介入,ASD 支援の先行研究を組み合わせたプログラムを作成し用いている。本稿ではそのプログラムの理論的背景と具体的内容を紹介し,最後に考察を加える。 Support programs for individuals with autism spectrum disorder (ASD) have grown rapidlyin recent years, and many such initiatives are designed to provide direct support. No interventionprograms have been established for ASD patients who are reluctant to receive support despite theapparent need. Against such a background, the Community Reinforcement and Family Training(CRAFT) program is regarded as a useful resource for motivating reluctant ASD patients toaccept support. CRAFT is intended to provide comprehensive help to individuals requiring assistance for substance abuse and to individuals’ families. However, CRAFT is not available topeople who commit acts of serious domestic violence or perpetrate crimes. The study developsa program that integrates CRAFT, crisis intervention, and other approaches covered in previousstudies on support for individuals with ASD. Highlighting the program’s theoretical background and details, this study discusses a number of additional consid erations.
著者
山本 彩
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.193-203, 2015-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

自閉スペクトラム症(ASD)の支援方法は急速に発展してきた。しかし開発された支援方法は本人へ直接支援することを前提としており、本人が支援を拒否する場合について介入方法は整理されていない。支援を拒否する本人の、支援への動機づけを高めるためには、物質依存者とその家族を包括的に支援するCommunity Reinforcement and Family Training(CRAFT)が参考になると考えられる。ただしASD特性を考えると、CRAFTをそのまま応用適用するのではうまくいかないと考えられる。また、CRAFTは基本的に激しい家庭内暴力や犯罪行為があるIPを臨床試験の対象から除外するが、地域支援では危機介入場面に多く出会う。そこで筆者はCRAFTにASD支援、危機介入を組み合わせたプログラムを作成した。本稿ではそのプログラムを紹介し、考察を加える。
著者
山本 彩
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.115-125, 2014-05-31 (Released:2019-04-06)

厚生労働省研究班は社会的ひきこもりを、その背景要因によって精神障害群、発達障害群、パーソナリティの偏り群の3群に分類し各々のストラテジーを提案した。また本人に相談動機がない場合の方法としてCommunity Reinforcement and Family Training(以下、CRAFT)を推奨した。しかし2013年現在CRAFTを社会的ひきこもりへ応用した報告は数件見られるのみである。また社会的ひきこもりの背景に自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)特性がある場合、CRAFTとASD特性への支援を組み合わせる必要が指摘されている。筆者はASD特性を背景にもつ社会的ひきこもりへ、CRAFTとASD特性への支援を組み合わせた介入を行うことで支援導入に成功した2事例を経験した。本稿ではその介入方法と経過を報告し、最後にASD特性を背景にもつ社会的ひきこもりへCRAFTを応用適用することの意義や課題について考察を加えた。
著者
山本 彩
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
no.119, pp.197-218, 2013

近年,自閉症スペクトラム障害(以下ASD)をもつ人への支援方法は急速に発展してきたが,その多くは本人への直接支援を前提としているものであり,本人への支援が必要と考えられるが本人は支援を拒否するという場合については,介入方法は未整理であった。支援を拒否する本人の支援への動機づけを高めるためには,物質依存者とその家族を包括的に介入するCommunity Reinforcement and Family Training(以下CRAFT)が参考になると考えられるが,CRAFT は本人が深刻な家庭内暴力や犯罪行為をもつ場合にはプログラム適用から除外するという課題が残る。筆者は,本人がASD 特性を背景にもち支援を拒否している,家庭内暴力や違法行為などの行動の問題に対して,CRAFT,危機介入,ASD 支援の先行研究を組み合わせたプログラムを作成し用いている。本稿ではそのプログラムの理論的背景と具体的内容を紹介し,最後に考察を加える。 Support programs for individuals with autism spectrum disorder (ASD) have grown rapidlyin recent years, and many such initiatives are designed to provide direct support. No interventionprograms have been established for ASD patients who are reluctant to receive support despite theapparent need. Against such a background, the Community Reinforcement and Family Training(CRAFT) program is regarded as a useful resource for motivating reluctant ASD patients toaccept support. CRAFT is intended to provide comprehensive help to individuals requiring assistance for substance abuse and to individuals' families. However, CRAFT is not available topeople who commit acts of serious domestic violence or perpetrate crimes. The study developsa program that integrates CRAFT, crisis intervention, and other approaches covered in previousstudies on support for individuals with ASD. Highlighting the program's theoretical background and details, this study discusses a number of additional consid erations.
著者
坂野 翔子 岡本 隆二 鈴木 康夫 山本 彩人 中谷 仁 村田 智博 洪 英在 藤井 英太郎 山田 典一 伊藤 正明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.564-570, 2018-03-10 (Released:2019-03-10)
参考文献数
10

68歳,男性.1カ月以上続く不明熱の原因検索目的で当院に紹介された.各種検査で異常を認めず,詳細な問診で発汗の自覚がないことが判明したため,発汗テストを行った.広範囲で発汗を認めず,特発性後天性全身性無汗症(acquired idiopathic generalized anhidrosis:AIGA)と診断した.炎症反応上昇を伴わず,発汗障害を認める患者には,本疾患を鑑別疾患に挙げる必要がある.
著者
山口 麻里 山本 彩乃 安富 陽平 長尾 洋 大野 貴司 森 英樹
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.245-249, 2018 (Released:2019-03-30)
参考文献数
17

症例は70歳代,男性。眼の違和感に対し市販の点眼薬を使用開始したところ,眼囲に瘙痒を伴う紅斑,腫脹が出現した。点眼薬の使用を中止の上,ステロイド軟膏の外用を行い,数日間で症状は軽快した。パッチテストでは,点眼薬で陽性。成分パッチテストではアミノカプロン酸で陽性だった。アミノカプロン酸はかつては止血剤として使用されていた抗プラスミン剤だが,現在医療用剤は販売終了している。しかし,止血,抗アレルギー,抗炎症作用と様々な作用を有するため,現在でも医薬品や医薬部外品の成分・添加物として汎用されている。日常生活品にも多岐にわたって使用されており,アミノカプロン酸に対しアレルギーを有する患者は注意が必要である。 (皮膚の科学,17 : 245-249, 2018)
著者
佐久間 陽子 保科 敬子 本間 文子 山口 香織 山本 彩恵子 加賀 三司
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第56回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.223, 2007 (Released:2007-12-01)

〈緒言〉当透析室では患者の高齢化と糖尿病 性腎症が誘因となり、起立性低血圧をきたし、意識消失・転倒などのリスクの高い患者が増えている。 それらの患者に対し、先行研究を基に起立 性低血の改善を目的とした透析後運動療法を行った。その結果、血圧差(透析終了止血後、臥位収縮期血圧と立位収縮期血圧との差。以下血圧差と略す)の改善に効果的であったので報告する。 〈方法〉期間:平成18年3月~10月 対象:透析後の起立性低血圧があり、立位で帰宅が可能な患者の内、研究に同意が得られ、運動療法が6ヶ月間継続できた14名。 年齢: 65歳未満2名 65歳以上12名 原疾患:糖尿病性腎症7名 腎炎他7名 実施方法:運動実施前(3月):透析終了し止 血後の臥位血圧とその直後の立位血圧を測定をする。運動実施後(4~9月):透析終了し止血後臥位で血圧測定をし、8分間の運動実施後立位で血圧測定をする。運動実施前・後期間の離床時間を測定する。運動方法 臥位:_丸1_両膝伸展し足の背屈・底屈(2分) _丸2_両肘関節屈曲・伸展を行いながらジャンケ ン運動(3分)_丸3_両膝屈曲位から片脚ずつ伸 展挙上(2分)端座位_丸4_足踏み(1分) 用語の定義:起立性低血圧=透析後の起立時収縮期血圧が20mmHg以上低下する状態 離床時間=透析終了後、立位血圧測定時から歩行でベッドを離れるまでの時間。 離床時間:透析終了後、立位血圧測定時から 〈結果〉 図1より全対象者の運動実施前後の血圧差の平均は、運動実施前46mmHg運動実施後28mmHgであった。結果、運動実施後、血圧差が18mmHg小さくなった。運動実施前後で一番変化がみられた例では、38mmHgの差があった。対象者14名のうち運動実施前後の血圧差で有意差がみられたのは10名、有意差がみられなかったのは4名であった。 全対象者の血圧差と離床時間の相関関係は各 月の離床時間の平均と血圧差の平均から相関 係数r 0.94001となり、相関関係は強い。よ って、血圧差が小さい程、離床時間が短い。 全対象者の血圧差と体重増加分の相関関係 は各月の体重増加分の平均と血圧差の平均から相関係数r 0.08015となり、血圧差と体重増加分の相関関係はほとんどなかった。
著者
山本 彩 鈴木 育美
出版者
一般社団法人 日本児童青年精神医学会
雑誌
児童青年精神医学とその近接領域 (ISSN:02890968)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.109-123, 2019-02-01 (Released:2020-02-28)
参考文献数
17
被引用文献数
1

2017年12月に閣議決定された「再犯防止推進計画」で刑務所内において発達特性に応じた効果的な指導が必要であることが述べられた。一方現行制度下では,ほとんどの刑務所が発達特性を有する人の実態把握すら難しい状況にある。特に女子刑務所は過剰・高率収容状態に加え,一般社会のペース以上に収容者の高齢化が進んでいる。また収容者の多くが覚せい剤後遺症や性虐待・性被害の被害体験からくる反応,摂食障害など極めて処遇困難な症状を有しているため,発達特性に応じた効果的な指導を行うのは難しい状況にある。筆者らは,法務省がこうした状況を鑑み2014年度から行った「女子施設地域支援モデル事業(以下,モデル事業)」を用いて,女子刑務所において自閉スペクトラム症(以下,ASD)が疑われた人へ,ASD特性を加味した支援をおこなった。本報告では,その中の2事例を報告するとともに,「モデル事業」を用いてどのように継ぎ目のない(シームレスな)支援体制を整備したかを紹介した。最後に2事例を振り返り,2事例に共通して見えたことや当該支援の限界について考察した。
著者
出口 善隆 徳永 未来 山本 彩 高橋 志織 小野 康 丸山 正樹 木村 憲司 辻本 恒徳 岩瀬 孝司
出版者
動物の行動と管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.159-165, 2008-06-25 (Released:2017-02-06)
参考文献数
19

飼育下であってもクマの行動および生理学的特徴は季節と深く関わっている。そのため、環境エンリッチメントが行動におよぼす影響も季節により変化すると考えられる。そこで本研究では、春季から秋季において盛岡市動物公園で飼育されているツキノワグマ(雌3頭)に、環境エンリッチメントを行い、行動を調査した。環境エンリッチメントの効果の季節変化について検討することを目的とした。調査は、盛岡市動物公園のクマ舎の屋外運動場で行った。ツキノワグマの雌3頭を調査個体とした。クマは9時頃に運動場に出され、16時30分頃に寝室へ入れられた。運動場には岩、パーゴラやプールが配置されていた。給餌は1日に1回16時30分頃、寝室の中で与えられた。環境エンリッチメントとして、パーゴラとプールの横あるいは水を抜いたプールに樹枝を設置した。また、調査期間中、運動場内の10ヵ所にクリを3粒ずつ隠した。隠す場所は毎日変化させた。直接観察により行動を1分毎に記録した。エンリッチメント開始直後、1週間後、2週間後および1ヵ月後に行動を調査した。エンリッチメント処理により、春季には個体遊戯行動が、夏季には探査行動と個体遊戯行動が、秋季には探査行動がそれぞれ増加した(P<0.05)。また、摂取行動は、春季では開始前と比べ僅かに増加し、夏季では逆に減少しているのに対し、秋季では3倍以上に増加した。よって、エンリッチメントとして行った餌隠しの影響がいちばん大きく現れだのは秋季と考えられた。以上より、春季から夏季には、個体遊戯行動といった摂食にかかわらない行動を促す環境エンリッチメントが、越冬に備え摂食要求が強まる秋季には、摂食にかかわる行動を促す環境エンリッチメントが効果的であることが示唆された。
著者
進士 智子 大西 司 石橋 正祥 山本 彩加 長野 明日香 相良 博典 巖本 三壽 石井 正和
出版者
特定非営利活動法人 日本禁煙学会
雑誌
日本禁煙学会雑誌 (ISSN:18826806)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.111-119, 2017-12-22 (Released:2018-01-30)
参考文献数
19

【目 的】 薬局における受動喫煙防止対策を妨げている要因を明らかとするために、アンケート調査を実施した。【方 法】 t-薬局いんふぉに掲載されている薬局の管理薬剤師(500名)を対象にアンケート調査を実施した。【結 果】 回収率は46.0%(230/500名)だった。全面禁煙している薬局は77名に留まった。全面禁煙化していなかった薬局(151名)のうち、分煙や受動喫煙防止対策がない(対策なし)と回答したのは37名だった。全面禁煙化していない薬局では、全面禁煙している薬局と比較して、年齢が高く、個人経営が多かった。また、禁煙支援には非積極的であり、受動喫煙に対する理解も乏しかった。【結 論】 受動喫煙防止対策が不十分な薬局の薬剤師は、年齢が高く、個人経営であった。
著者
山本 彩加 石橋 正祥 大西 司 巖本 三壽 石井 正和
出版者
特定非営利活動法人 日本禁煙学会
雑誌
日本禁煙学会雑誌 (ISSN:18826806)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.71-78, 2018-12-12 (Released:2019-01-23)
参考文献数
20

【目 的】 薬局での加熱式タバコの販売や、薬局薬剤師の加熱式タバコ使用者に対する禁煙支援に関して、禁煙外来を行っている医師の考えを明らかとするためにアンケート調査を実施した。【方 法】 禁煙外来を行っている医師(200名)を対象にアンケート調査を実施した。【結 果】 回収率は37.0%(74名/200名)だった。加熱式タバコが紙巻タバコに比べて有害性が低いと感じる医師は約3割にとどまった。加熱式タバコにより薬物治療での疾患のコントロールに影響がでたと感じた医師が19名(25.7%)いた。医師は薬局での加熱式タバコの販売を制限し、薬局薬剤師が加熱式タバコ使用者に禁煙支援をすべきと考えていた。【結 論】 加熱式タバコ使用者に対して、禁煙支援することは当たり前になってきている。医師は、薬局薬剤師が加熱式タバコ使用者に対して禁煙支援することを求めている。