著者
野田 徹
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.493-498, 2004-09-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
11

われわれが物を見る際には, 眼球のレンズ系で網膜に映された映像が, 神経―脳伝達系で認識されるというプロセスがとられる. ヒトがどこまでの視力に達しうるかに関しては, 一般には眼球のレンズ性能の限界によるが, もしも眼球が理想レンズとなれば, 最終的には網膜の視細胞の密度によることになる. それを解剖学的に計算すると, ヒトの視力限界は2.0前後(空間周波数60c/deg相当)と推定される. ヒトの視覚認知は, 視標の形状をまず模様の大きさごとに分解して認識し(2次元フーリエ解析チャンネル)それを合成して認識するしくみとなっている. 眼球のレンズ系は, 細かい模様ほどコントラスト感度が低下する特性(low-pass型)をもつが, 視覚認識系全体の特性は, 視力約0.1 (3c/deg相当)付近が最も認識感度が高く, それより大きな模様でも細かい模様でも認識できるコントラスト感度が低下する(band-pass型). 近年, 天体観測技術である波面解析・補償光学技術が眼球組織内の光学測定に応用され, 生体の視細胞の観察をも可能とした. また, 逆に, 簡単な検査で, 生体網膜に視標がどのように映っているかをコンピュータグラフィックスで合成して見せることも可能となり, 視覚の質(Quality of Vision)を含めた視覚機能評価への臨床応用が期待される.
著者
関口洋美 阿子島茂美 吉村浩一 漆澤恭子 遊佐規子
出版者
教育実践学会
雑誌
教育実践学研究 (ISSN:18802621)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.1-11, 2022 (Released:2022-09-23)
参考文献数
12

本研究は,児童を対象に漢字二字で構成される熟語の読みを学習しやすくする要因について明らかにすることを目的とした。そこで,読みの組み合わせ(訓訓読みと音音読み),単語としてなじみがあるまたは知っているかどうか(なじみのある高親密熟語とあまりなじみのない低親密熟語),学習効果(2 巡目の正解率)及び学年(低学年・中学年・高学年)に関連させ 5 つの仮説を立てて実験を行った。その結果,音音読みよりも訓訓読みの方が成績は良く学習効果が高いという仮説,低親密熟語よりも高親密熟語の方が成績が良く,学習効果は低親密熟語の方が高いという仮説は部分的な支持にとどまった。学年による大きな違いは見いだせなかったが,学年が進むにつれ熟語の読みの成績における個人差が減少していくことが分かった。本結果から,低親密熟語においては訓訓読みの熟語の方が成績及び学習効果が高く,それは低学年から高学年まで一貫していることが明らかとなった。
著者
Housam Darwisheh
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
中東レビュー (ISSN:21884595)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.65-79, 2020 (Released:2020-03-27)
参考文献数
45

現代史の殆どの期間、共和国体制のエジプトと南に隣接するスーダンは緊張関係にあった。それはエジプトとスーダンの支配者の政治志向の違いや、中東・北アフリカ(MENA)地域内での対立するブロックとの連携に起因していた。物質的・観念的および外交的な資源と影響力により、そして自らの政治的目標の追求のために、エジプトはスーダンや他のナイル川流域国家の行動を抑制し左右することができていた。それはとりわけエジプトの国家的存在と繁栄が依存するナイル川の水資源の利用に関わる問題について顕著にみられた。しかしながら中東およびアフリカの角における地域的・国内的な変動、とりわけ2011年以降の同地域の地政的な変化により、エジプトのスーダンに対する影響力は顕著に後退し、水資源を巡る新たな政治力学はスーダンをナイル河畔における地政的アクターとして登場させるに至っている。スーダンはかつてナイル川の水問題ではエジプトの忠実なパートナーであったが、現在では上流の国家との連携関係やナイル川の水資源の自国での利用についてより柔軟な立場を主張するようになっている。本論は以上のような文脈でエジプト・スーダン関係を歴史的に回顧し、また2011年以降の中東およびアフリカの角地域の地政的な変動を概観しようとするものである。エジプトのスーダンおよび他のナイル川流域国家に対する影響力の低下の要因は、(1)エジプト国内の不安定化および中東地域全体への影響力の低下、(2)同国の体制維持と国内安定化のために地域の主要国にさらに依存するようになっている事、そして(3)同国のナイル川流域における覇権の喪失に拠ることを議論する。
著者
清水 学
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
中東レビュー (ISSN:21884595)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.138-156, 2015 (Released:2019-12-07)

Pakistan is geographically situated between China and the Gulf. In order to balance its strategic position against the major security threat of India, Pakistan formed a special and stable strategic alliance with China against common threats since the period of the cold war even though the two countries have neither a political ideology nor political system in common. On the other hand Pakistan established another special relation with Saudi Arabia on the basis of Islamic identity. With its expanding economic capacity, China proposed a project by the name of “new silk road economic corridor” with the intention of expanding and multiplying trade routes with the Middle East and Europe.Within this framework Pakistan is expected to expand the role of an alternative land route that connects the Gulf and China for use if unfavorable emergencies occur in the Malacca route. However, the continuous political uncertainty in Afghanistan after the pullout of US-NATO fighting forces at the end of 2014 and sporadic outbreaks of terrorist acts by Pakistan Taliban in Pakistan have increased China’s anxiety regarding Uyghur issues at home. Avoiding military options for the moment, China is trying to find ways to play an active role in the security issues of Afghanistan with help from Pakistan if available.On the other hand, it is noteworthy that the Pakistani government formed in the general election of 2008 completed its full term and transferred authority to the newly elected government in 2013, something never observed before in Pakistan’s history. Coincidently, in Afghanistan the presidential election was carried out peacefully in 2014 in spite of the Taliban threat. Although it is too early to make any definite conclusion, constitutional processes, in spite of their defects, reflected to some extent wishes for normal life of the people of Pakistan and Afghanistan who were disgusted with weak governance and the prevalence of terrorism.