著者
薄木 理一郎 木村 俊明 金田 尚志
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.338-341, 1978
被引用文献数
3

シリコ-ン油(SO)の示すフライ油劣化防止効果の作用機構を知る目的でSOを大豆油に添加,添加濃度,重合度(粘度),加熱油の性状について検討し,つぎの結果を得た。<BR>(1) 180℃での通気加熱,およびじゃがいもフライ時とも,添加濃度は10ppmが適当と思われた。<BR>(2) 20, 200, 1000, 12500センチストークス(c/s)の4種のSO中,20および200c/sの両者により大きな効果を認めた。<BR>(3) 加熱油およびフライ油をケイ酸カラムクロマトで分画し,その特数を各々の無添加油の分画区分と比較したところ,各区分とも酸化の遅延を表わす特数値を示していたが,特にSO添加による顕著な変化は認めがたかった。これまでいわれているSOの種々の作用が各々に働き,全体として熱酸化を抑えているように思われた。
著者
山岸 恵美子
出版者
長野女子短期大学出版会
雑誌
長野女子短期大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.8, pp.27-55, 2000-12-20

終戦直後における食教育としての調理実習は、食材料である食品が著しく不足していたために、全国的に非常に困窮していた。その一端を旧制、長野県女子専門学校(県立、3年制)の調理実習ノートで検討すると、つぎの通りである。1)乏しい材料下でも調理の基本から応用、ハレの日の料理、テーブルマナーなどの専門教育が実施されている。2)料理に使った食品の残り物や廃棄物の再利用、調理過程における熱源の節約指導が徹底している。3)1・2年次とも地場生産物である豆類・種実類・野菜類の使用量は多いが、動物性たんぱく質源である魚介類・獣鳥肉類・卵類・乳類などは使用量が非常に少なく、入手困難であったことが認められる。4)米に代わるエネルギー源として、じゃがいも・さつまいも・かぼちゃなどが出現頻度高く、使用量も多い。いも麺・三色いも餅・かぼちゃの寄せ物などの料理がある。5)1年次には放出物資(ガリオア資金によるアメリカからの食料援助物資)である脱脂大豆粉やとうもろこし粉を使用した料理が目立つ。例えば、脱脂大豆粉を材料とした、とうふ・ちくわ・おやき、とうもろこし団子のおはぎなどがある。6)紅茶、コーヒーなどの飲み物は、小麦粉・大麦粉・脱脂大豆粉・黒豆粉を妙って代用している。7)さとうの使用量は1年次では非常に少ないが、2年次になると他の調味料の出回りと共に使用してきている。人工甘味料であるズルチン・サッカリンも料理に取り入れている。8)マヨネーズは塩と酢に小麦粉やじゃがいものうらごし、脱脂大豆粉などを混ぜたもので代用している。9)1食当たりの米の使用量は150gで、現在の女子学生の使用量よりも多い。また、みそ汁の濃度も、水180mlにみそ20~30gで塩分濃度は高く、当時の食生活状況が推測される。10)代表的な料理を6種類選んで作成再現し、デジタルカメラで撮影して画像で示すとともにその料理の栄養摂取状況等を検討した。その結果、脱脂大豆粉・とうもろこし粉・いも類・かぼちゃ・その他の野菜類の大量摂取によって、たんぱく質・ビタミン類・ミネラル・食物繊維などはかなり多く摂取できていることが認められた。また、脂質の摂取量が少なく、アミノ酸スコアやPFCエネルギー比率が良好な料理もあり、現在の食事改善の参考になる。
著者
尾河 和夫 阿部 幸吉
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.169-180, 1952-01-30

本報告は昭和25年8月、山形県東田川郡常万村に於て、昭和24年度に於ける酪農経営及び豚飼育及び鶏飼育経営の実態を調査しそれをまとめたものである。この調査は昭和25年度科学研究費による。かつ石川農学部長及び山形県知事室調査課の御厚意によることも多く謝意を表する。
著者
後藤 岩三郎
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.55-74, 1950-12-25

前報では主として気泡についての諸観察,研究,被害の発生地域に関する気象上の考察が報告されている。此では浮き上りと苗代の管理方法との関係,気象の影響,及び山形県庄内地方について行はれた調査等を述べるものである。此の研究の大半は,石川農学部長及び山形県知事室調査課の御厚意によって実施出来たものである。研究中懇切な御指導を戴いた佐藤正己教授に深く感謝する。気象学上の諸点については本校羽根田教官に負う所が多い。猶実験は加藤清子,桜田豊両氏の助力によって為された。
著者
金子 英世
出版者
慶應義塾大学国文学研究室
雑誌
三田國文 (ISSN:02879204)
巻号頁・発行日
no.19, pp.1-10, 1993-12

一 はじめに二 「源順百首」の趣向的特色三 結び : 遊戯技巧歌と「源順百首」の作者について
著者
熊谷 明夫
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学 : 日本応用糖質科学会誌 (ISSN:21856427)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.228-230, 2012-11-20

セルロースはグルコースがβ-1,4-グルコシド結合した直鎖状のホモポリマーで,地球上に最も豊富に存在する天然高分子である。一般的には植物細胞壁や植物繊維の主成分として知られているが,一部の動物や多くの微生物もセルロース生合成能を有しており,原索動物であるホヤの体を覆う被嚢と呼ばれる膜や,バクテリアが分担する細胞外多糖などによって構成されているバイオフィルムなどにもセルロースが含まれている。中でもバクテリアが生産するセルロースはバクテリアセルロース(BC)と呼ばれ,純粋なセルロースからなる微細繊維が複雑な三次元網目構造を形成していることから,高強度,高弾性,高保水性といった植物由来のセルロースにはみられない物理的特性を示す。一般的に知られるBCとしては,セルロース生産能の高い酢酸菌Gluconacetobacter xylinusを利用して生産されるナタデココが有名であるが,食用としてだけでなく,その優れた物理的特徴を活かした新素材としての利用が期待され,産業・医療分野において応用研究が進められている。また,G. xylinusは応用分野に限らずセルロース生合成機構解明のモデル生物として基礎研究にも利用されており,特に遺伝子工学分野では植物に先行して研究が進められ,セルロース生合成に関わる遺伝子とタンパク質,その合成機構の関係について多くの知見を与えてきた。バクテリアによるセルロース生産はG. xylinusが代表的であり,セルロース生産が直接確認されているバクテリアは少ない。しかし,ゲノム解析が盛んに行われるようになり,既知のセルロース生合成に関わる遺伝子との相向性が高い遺伝子の存在が確認され,多くのバクテリアがセルロース生産能を有することが示唆されている。また,バクテリアにおけるセルロースの役割は完全には明らかになっていないが,例えば植物に対して病原性をもつアグロパクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)においては植物への吸着,バイオフィルムを形成する大腸菌(Escherichia coli)においては凝集に関わっているのではないかと考えられている。このようにバクテリアのセルロース生産についていくつかの研究が報告されている中,我々は酢酸菌から新規のBC生産菌をスクリーニングするため,酢酸菌に属するAcetobacter属,Gluconacetobacter属,Asaia属,Kozakia属から選抜した菌株を液体培地で静置培養し,気液界面への薄膜形成からAsaia bogorensis がBCを生産することを見出したの。ここではA. bogorensisが生産するBCと遺伝子解析の結果得られたセルロース生合成関連遺伝子の特慣をG. xylinusとの比較を交えながら紹介する。
著者
植田 睦之 神山 和夫
出版者
Japan Bird Research Association
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.F33-F36, 2014

気候変動に対する鳥類の反応をモニタリングするために2005年に開始した参加型調査「季節前線ウォッチ」により収集したデータである.モズ(高鳴き),ヒバリ,ウグイス,メジロの初鳴き日,ホトトギス,カッコウ,アオバズク,ツバメ,オオヨシキリ,ツグミ,ジョウビタキの初認日,ヒヨドリの秋の渡り開始日,カルガモのヒナの初認情報も収集した.これらのデータを集計することで,どの種も年により初認時期が違うこと,温暖な地域ほど初認時期が早く,寒冷な地域ほど遅いという地理的な差があり,その差は1-2月にさえずりはじめるヒバリやウグイスでは大きく,3-4月に渡来するツバメやオオヨシキリは中くらいで,5月に渡来するホトトギスやカッコウでは小さいことなどがわかった.今後,情報を蓄積していくことで,気候変動の鳥類への影響などを解析することができると思われる.
著者
肥山 詠美子 木野 康志 上村 正康
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.27-35, 2006-01-05
被引用文献数
2

物理学には, 数値計算上「少数粒子系のシュレーディンガー方程式を精密に解くこと」に帰着する課題が多い.これにより新しい物理的知見が得られる場合もある.この目的に役立つであろう方法の1つとして, 筆者らが提唱し発展させてきたガウス関数展開法を解説する.すべてのヤコビ座標のセットを用い, 各座標のガウス関数の積を基底関数(等比数列レンジ)として全系のハミルトニアンを対角化し固有関数を得る.これにより, 関数空間を十分広く取ることができ, 種々の物理的状況に精度よく対応できる.得られた固有関数を活用して, 散乱状態をも解くことができる.普遍性の高い解法であり, 原子分子からクオーク系の計算にまで適用されてきた.個々の技法の中には, 他の課題にも利用できるものもあろう.