著者
小野田 公 久保 晃 丸山 仁司
出版者
一般社団法人 栃木県理学療法士会
雑誌
理学療法とちぎ (ISSN:21864861)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.15-18, 2015 (Released:2021-03-11)
参考文献数
8

Social Networking Service(ソーシャルネットワーキングサービス:以下SNS)はインターネット上でメッセージや動画・写真などの情報交換が可能である.簡単に情報をやり取りできるために非常に便利であるが,個人情報の取り扱いや情報漏えいなどの問題が指摘されている.理学療法士は,患者の個人的な情報に扱うことが多く,その情報の漏洩を防ぐために守秘義務が課せられている.しかし,SNSを利用した医療系職員や実習生による個人情報保護的観点や職業倫理観にかける記載が問題となっている.このような問題を起こさないためにSNS上での法的な権利やそれらに対しての使用に関する教育機会が必要不可欠である.
著者
木村 和樹 久保 晃 石坂 正大 伊藤 晃洋 塩見 誠
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.615-618, 2015 (Released:2015-09-03)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

〔目的〕Semmes-Weinstein-Monofilament(以下SWM)を使用して定量的に足底触圧覚を測定し,加齢変化を足底部位別に検討した.〔対象〕日常生活動作の遂行に支障のない男性62名,女性174名,合計236名(472肢)とした.年代を20-29歳群,55-74歳群,75-94歳群の3群に設定した.〔方法〕SWMを使用し両足底の母趾,母趾球,小趾球,踵の計8ヵ所を評価し,加齢と部位の影響を検討した.〔結果〕55歳までに足底触圧覚閾値は上昇し,部位別では踵が他の部位より触圧覚閾値が有意に高かった.〔結語〕加齢によって足底触圧覚閾値は上昇し,踵部がより高くなる事が示唆された.
著者
原 毅 佐野 充広 四宮 美穂 野中 悠志 市村 駿介 中野 徹 松澤 克 櫻井 愛子 草野 修輔 久保 晃 久保田 啓介
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.184-192, 2013-06-20 (Released:2018-04-12)
参考文献数
37
被引用文献数
11

【目的】消化器がん患者の周術期から自宅復帰後における身体運動機能とQuality of Life(以下,QOL)の経時的変化,各時期間の身体運動機能変化と自宅復帰後QOLの関連性について検討すること。【方法】対象は,周術期消化器がん患者42例(男性23例,女性19例,年齢60.6±11.3歳:平均±標準偏差)とした。本研究では,身体運動機能を等尺性膝伸展筋力,Timed "Up and Go" test,6分間歩行距離の3項目,QOL指標にShort-Form 36-Item Health Survey version 2のアキュート版を使用し,手術前,手術後,退院後の3つの時期に各々評価した。【結果】身体運動機能とQOLは,手術後一時的に有意な低下が認められた。退院後では,身体運動機能が手術前と同程度まで向上する一方で,QOLの身体的健康が手術前より有意に低かった。また,手術前後の身体運動機能変化比と退院後のQOLの間に有意な相関関係が認められた。【結論】消化器がん患者の周術期の身体運動機能変化が自宅復帰後のQOLと関連することがあきらかとなった。
著者
石坂 正大 久保 晃 金子 純一朗 野村 高弘 韓 憲受 貞清 香織 堀本 ゆかり
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.627-630, 2017 (Released:2017-10-23)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

〔目的〕理学療法学科学部生における興味を持つ専門分野の縦断的変化を明らかにすること.〔対象と方法〕平成28年度理学療法学科学部4学年98名とした.アンケートは7専門分野と23専門領域から最も興味のある領域を選択させた.アンケート実施は,2学年前期,3学年前期,3学年後期,4学年後期に行った.〔結果〕興味のある専門分野は,基礎,神経,内部が縦断的に増加した.専門領域は,2学年前期ではスポーツが49名(55%)と最も人気が高いが,4学年後期では運動と脳卒中に続いて3番の順となった.〔結語〕スポーツ領域に興味のある学生は,3学年前期で神経系に,4学年になると内部障害に興味が移る傾向にある.
著者
杉田 裕汰 原 毅 久保 晃
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.843-848, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
40

〔目的〕周術期消化器がん患者における入院中の歩行数に関わる要因を,身体機能評価,血液生化学データより検討し,明らかにすること.〔対象と方法〕周術期消化器がん患者28名とした.身体機能評価には,体組成計値,等尺性膝伸展筋力,握力,6分間歩行距離,呼吸機能評価,片脚立位時間の全6項目を使用し,血液生化学データには血清アルブミン(Alb),C反応性蛋白(CRP),総蛋白を使用した.〔結果〕歩行数においては,術前と比して術後は,有意な低下を認めた.術後歩行数と術前Alb,術前CRP,術前の体脂肪率に有意な相関関係を認めた.〔結語〕術後の代謝変化による骨格筋量の低下を考慮すると,術前より栄養状態,免疫反応,体脂肪率に着目することの重要性が示唆され,手術後の歩行数低下には,その点を踏まえたリハビリテーション介入が必要である可能性が示唆された.
著者
及川 真人 久保 晃
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.843-846, 2015 (Released:2016-01-09)
参考文献数
14
被引用文献数
4 2

〔目的〕地域在住脳卒中片麻痺者の屋外活動可否を決定する要因を明らかにすることとした.〔対象〕発症後180日以上経過し,当院に通院している60歳以上の脳卒中片麻痺者65名とした.〔方法〕Life-space Assessment(LSA)から最大自立活動範囲が寝室・屋内の者を屋内活動群,それ以上の者を屋外活動群の2群に分類し,10 m歩行時間(10 m歩行),6分間歩行(6MD),30秒立ち上がりテスト(CS-30)の群間比較を行った.また,有意差が認められた変数について,カットオフ値を算出した.〔結果〕10 m歩行,6MD,CS-30について有意差が認められた.それぞれのカットオフ値は10 m歩行が22.9秒,6MDが112 m,CS-30が5.5回であった.〔結語〕10 m歩行,6MD,CS-30から屋外活動の可否が検討できることが示唆された.
著者
貞清 香織 佐々木 拓良 杉田 裕汰 前田 聖也 遊佐 彩野 渡邉 真奈 貞清 秀成 石坂 正大 久保 晃
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.151-154, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
18
被引用文献数
3

〔目的〕家庭用身体組成計の臨床利用の可能性を検討するため従来使用されている生体インピーダンス法の身体組成計と比較した.〔対象と方法〕健常若年男性108名,女性83名とした.異なるBIA法の身体組成計で身体組成を計測し,各機器で体重,BMI,体脂肪率,全筋肉量,四肢・体幹筋肉量を測定した.統計解析は,男女別に測定値および算出値を比較し,Pearsonの相関係数を求めた.〔結果〕男性は体重,BMI,全筋肉量,左右脚・体幹筋肉量,除脂肪量,SMI,FFMIに差がみられ,女性は,体重,BMI,体脂肪率,左右脚・体幹筋肉量,脂肪量,FMIにおいて差がみられ,全項目で極めて強い相関がみられた.〔結語〕機器により測定値に違いはあるが臨床で利用可能であると考える.
著者
久保 晃 石坂 正大 貞清 香織 小野田 公 屋嘉比 章紘 原 毅 伊藤 晃洋 小林 薫 沢谷 洋平
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.719-722, 2019 (Released:2019-10-28)
参考文献数
6
被引用文献数
1

〔目的〕入試区分の相違による新入生の志願理由の違いを明らかにすること.〔対象と方法〕2018および2019年に国際医療福祉大学理学療法学科に入学し,協力の得られた199名とした.19項目の志願理由を「とても思う」,「思う」,「思わない」,「全く思わない」の4件法で調査した後,最重要項目を抽出させ入試区分との関連性を検討した.〔結果〕多くの項目で有意差が認められ,専願入学者で肯定的回答率が高かった.最重要項目上位3項目とその順位は専願および併願入学者で一致していた.〔結語〕専願と併願入学者の間には,多くの志願理由項目で有意差が認められ,志願の理由や重みづけが異なることが示唆された.
著者
屋嘉比 章紘 久保 晃
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.307-311, 2017 (Released:2017-05-02)
参考文献数
15
被引用文献数
1

〔目的〕ドローイン歩行(D歩行)前後での腹横筋(tr)筋厚の変化により,この歩行時の身体反応を明らかにすること.〔対象と方法〕課題1,2で各々成人男性10名,20名.課題1では超音波により得られるtr筋厚をD歩行前後で比較した.課題2では,時速4 kmでのトレッドミル上で通常歩行(N歩行),D歩行,エクササイズウォーキング(E歩行)の間で酸素摂取量を比較した.〔結果〕tr筋厚はD前後で有意差は認められなかった.酸素摂取量は,すべての条件下で有意差が認められた.〔結語〕D歩行前後でtrの筋厚に有意差がなく,D歩行中も腹横筋の収縮は持続されていたと推察できる.また,D歩行はN歩行と比較すると代謝活性に優れていることが示唆される.
著者
久保 晃 丸山 仁司
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学紀要 (ISSN:13424661)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.15-18, 0003

本研究の目的は、理学療法学科学部生の就職先と就職先選定における関心事項を明らかにすることである。対象は、2000から2001年に国際医療福祉大学保健学部理学療法学科を卒業した187名、平均年齢24±3歳(男性94名、平均年齢24±4歳、女性93名、平均年齢23±2歳)である。就職内定先は、医療施設が全体の80%と大部分を占めた。他は、大学院進学7%や老人保健施設3.7%であった。内定先の希望順位は、60%が第一志望であった。希望勤続年数は、5年程度以下が過半数を占めていた。就職先選定要因についての関心度は、職場の人間関係を最も重視していた。
著者
末廣 輝男 大久保 晃男 佐藤 憲夫 三浦 浩二 古賀 秀昭 太田 照明 大久 正敏 高橋 弘之
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.121-123, 1977

気柱の開口端で音叉を鳴らしながら気柱の長さを変化させ,音の強弱を耳で聴取して共鳴点を探る実験は従来から高校あるいは大学教養課程の物理学実験のテーマとして取上げられてきた.この実験は直接的である点で秀れているが,反面,音叉の振動が早く減衰すること,音圧最大の点を耳で判断するためにあいまいさが残ること,誤差を見積るのが難かしい等の問題がある.このため充分に定量的な実験とは言いかねる欠点があった.そこで音叉のかわりに低周波発振器と低周波増幅器に接続されたスピーカーを音源に用い,更に共鳴点ではスピーカーコーンの振幅が大きくなることを利用してスピーカーボイスコイルからコーンの振幅に比例した電圧を取出し,これをメータで読むことにより共鳴点を見出すことにした.これにより実験の精度および再現性が向上し,気柱の直径を変えた時の音速の変化等も検知することができた.
著者
遠藤 佳章 木村 和樹 三浦 寛貴 久保 晃
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0264, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】腰部多裂筋は5つの筋束から構成され,それぞれの筋束が別々の神経支配を受けることから,腰椎の微細なコントロールを可能にし,姿勢保持に関わるという報告がある。しかしながら,腰部多裂筋を研究した報告は第4~5腰椎棘突起周囲の多裂筋の筋活動を見たものが多く,その他の腰椎レベルの腰部多裂筋の筋活動を比較・検討したものは少ない。また,体幹深層筋である腰部多裂筋は脊柱起立筋と共に胸腰筋膜で1つのコンパートメントを形成している。これは腰部多裂筋と脊柱起立筋が共同して働いていることを示唆している。このことから,腰部多裂筋と脊柱起立筋の関係性をはかる必要があるといえる。よって,本研究では異なる姿勢における,第2・第5腰椎レベルの腰部多裂筋(以下,LM(L2),LM(L5)),脊柱起立筋(以下,ES)の筋厚について超音波画像診断装置を用いて検証することを目的とした。【方法】対象は,若年健常男性25名とした。年齢:22.1±1.6歳,身長:170.4±5.8cm,体重:60.4±8.8kg,BMI:20.8±2.6kg/m2(平均±標準偏差)であった。各筋厚の測定は超音波診断装置(sonosite180plus:sonosite社製)を用いた。測定部位は,右側のLM(L2),LM(L5),ESとした。測定肢位は,腹臥位・座位・立位で腰椎前後弯中間位にて測定した。測定は安静呼気時を2回測定した。得られた画像を画像解析ソフトImage Jを用いて各筋厚を算出した。2回測定した各筋厚の平均を代表値とした。各筋厚の1回目と2回目で算出された値で級内相関係数(以下,ICC)を求め,再現性について検討した。各筋厚の各肢位での変化をみるために,反復測定一元配置分散分析を行い,その後Bonfferoniの多重比較検定を行った。統計解析にはSPSS statistic 19.0を使用し,有意水準は5%とした。【結果】ICCは,すべての項目において,0.95以上の数値を示した。LM(L2)の筋厚は腹臥位で27.3±4.6mm,座位で30.4±4.0mm,立位で33.3±4.6mmとなった。同様の順でLM(L5)では30.8±4.0mm,30.1±4.5mm,34.2±4.3mm,ESでは35.8±6.1mm,40.4±6.9mm,42.1±6.6mmとなった。LM(L2),LM(L5),ESの各筋厚は,各姿勢間で主効果が認められた。LM(L2)は腹臥位,座位,立位の順で有意に筋厚が増大した。LM(L5)は,腹臥位より立位で,座位より立位で有意に筋厚が増大した。腹臥位と座位の間では有意差が認められなかった。ESは,腹臥位より座位で,腹臥位より立位で有意に筋厚が増大した。座位と立位の間では有意差が認められなかった。【結論】LM(L2)とLM(L5)とESは姿勢保持の際に作用が異なることが示唆された。LM(L2)は腹臥位,座位,立位の順で筋厚が増大することが示唆された。LM(L5)は腹臥位と座位に比べ,立位で筋厚が増大するが,腹臥位と座位の間では筋厚の変化がないことが示唆された。ESは腹臥位と比べ,座位と立位で筋厚を増大するが,座位と立位では変化がないことが示唆された。
著者
山下 欣一 有満 孝二 有村 百代 伊地知 優 上久保 晃 澤山 信二 塩満 浩二 重村 誠一 曽山 浩幸 種子田 圭司 徳永 正博 福田 雄二 福留 たける 若松 隆二
出版者
鹿児島国際大学
雑誌
社会調査実習報告書
巻号頁・発行日
vol.60, pp.E1-168, 1986-03

昭和55年から谷山ふるさと祭は実施されていて、年々盛大に開催されてきている。昭和55年度の第一回谷山ふるさと祭を行なうようになった動機については、すでに記述してあるが、ここでさらに箇条的に要約すると次のようになる。(1)人口の急激な増加-10万人突破記念事業(2)谷山地区の主要な神祭であった伊佐智佐神社の浜下りの代りをする祭が必要となった。(3)鹿児島市のおはら祭が大型化し、鹿児島市街の中心地区で開催されるので、副都心としての谷山地区でも開催することにした。以上のように要約した谷山ふるさと祭の実施に至る背景について検討してみるとさらに次のようにもいえると思う。(1)都市化の進展とした谷山地区谷山地区の人口(男女比)職業別、産業構造などでみてきたように、谷山地区の進展は目ざましいものがある。さらに谷山地区の歴史的背景で概観したように、本地区は鹿児島市街地の近郊農村として、独特の地位を占めている。その第一に指摘できるのは平地が多く、水田地帯を中心に集落が形成されていた。そして、外城を中心に市街地があり、それに付属して野町があったことでもある。また、錦江湾にてって発展した浦と呼ぶ漁村としての集落があった。谷山地区の近世におけるこのような要素をまとめてみると次のようになろう。外城と麓(武士集落)-行政 農村-農業 野町(松崎)-商業 浦-漁業このように、都市化へと進展する要素を内部に保持し、明治期に村制を施行し、それから町制、市制、鹿児島市への合併を迎えることになるのである。ここで注意しておきたいのは鹿児島市との関係である。もともと鹿児島市は現在の上町地区を中心に発展し、甲突川が市の南限であった時代が長かった。現在の荒田は地名が示すように水田地帯であり、中郡という地名は中村、郡元村などという農村集落であり、これらの農村集落をへだてて、谷山地区があったのである。谷山地区は、小規模であったが都市的要素を持っており、主体は近郊農村であった。いわゆる、鹿児島市とは独立した地域集団を形成してきたのであった。谷山地区の人口増加は、産業、卸売団地、団地住宅などの増加によるものがその主因である。これらは、谷山地区の周辺地区に展開しており、やはり中心地区には谷山に長年生活している人々が中心となっている。鹿児島市と合併後もやはり谷山地区という地域が鹿児島市役所谷山市所(もと谷山市役所)を中心に一つのまとまりのある独立地域という意識が強いということが指摘できよう。この谷山支所周辺がもとの外城や麓地区であることからも、この意味は大きいものがあると考えることができる。しかしながら、谷山地区の都市化の進展は、昔のような谷山地区からその様相を変化させたといいえる。それは、従来のような谷山地区の人々の共同体的意識での連帯が破綻をきたしたことをも意味している。従って、新しい意味での谷山地区の人々の連帯を求めるという考え方が発生してきたのは当然のことであった。谷山ふるさと祭は新生谷山のシンボルとしての位置を占めているといえよう。(2)伊佐智佐神社の神祭との関係伊佐智佐神社の10月の浜下りは谷山地区における中心的祭礼であった。和田名という中世的余韻を残している地名の集落を組織している門という親族集団によって支えられており、久津輪崎までのみこしの巡幸は海と山という二分された世界が統一されていくことを示しているといえよう。戦後において、このみこしが松崎から谷山本通りを巡幸し、谷山支所前の谷山小学校校庭に至り、一泊して還行するということも見逃してはならない点である。松崎はもともと野町であった。前に指摘しておいたように、谷山支所、谷山小学校周辺は外城と麓であった。伊佐智佐神社のこの巡幸は、和田名という農村から出発し久津輪崎という海すなわち浦(漁村)に至り、さらに松崎(野町-商業地区)を通り、谷山支所前の谷山小学校(外城、維)に到着し、一泊するということを、すなわち、農村→漁村→商業地区→外城、麓(行政)へとの巡幸して、聖なる祝福を与えるということである。谷山地区のあらゆる地域を巡幸していくということでもある。谷山ふるさと祭が松崎から鹿児島市電停留所前までを実施する場所としているのには交通規制その他の条件もあるが、伊佐智佐神社のみこし巡行との関連において考えるとその意味は深いといえると思う。(3)鹿児島市のおはら祭との関係鹿児島市のおはら祭は、あまりにも市街地中心に偏している。従って、地域毎に小規模の「まつり」を実施している現状である。ここでいう「まつり」とは、都市における民俗的伝承による「まつり」を指示している。しかし谷山ふるさと祭は、その規模においては大規模と呼んでいい「まつり」であると思う。そして、この「まつり」は、その組織考みても理解できるように、谷山地区の行政機関、金融機関、農協から地区公民館、校区別町内会、通り会に及んでいる。組織からみると、地域総ぐるみであるといえる。そして、町内会は各戸10円、通り会は各通り会毎に30,000円の負担金を支出している。また鹿児島市は年々補助金を与えており、谷山商工会、観光協会が協賛している。従って、行政機関と地域住民の支出が中心になり谷山ふるさと祭は実施されることになっている。もちろん寄付金の占める部分は大きいが、これらはかなり流動的であることを考えると、谷山ふるさと祭の予算的基盤は確固たるものがあると考えられる。しかして、実際の実務は谷山商工会ならびに谷山商工会青年部が中心になって実施しているものである。そして、この谷山ふるさと祭には谷山商店街の活性化と振興という意味も大きいのである。鹿児島市街地中心の購売動向をいかに谷山商店街に定着させ、呼びもどすかという願いも含まれていることを忘れてはならない点であろう。谷山地区は交通の点からみても、その地位からみても、鹿児島市街地とは別にーつの中心地を形成するのに、歴史的な背景もあり、都市化の進展により、さらにその傾向は強まっていくものと考えられる。このような発展の契機としての谷山ふるさと祭は伝統にのっとり、また新しい谷山地区のシンボルとして、谷山商店街の振興にもつながるという三点の特色をあわせて保持していると思う。
著者
志村 圭太 久保 晃
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.21-27, 2016-03-31

目的:ボリビア人の血圧,酸素飽和度(以下SpO2),および体格の年齢による特徴を明らかにすること. 対象と方法:対象は,ボリビアのコチャバンバ県プナタ市(標高2,600 m)で,JICAボランティア医療分科会による健康啓発活動に参加した17歳から88歳,年齢37.7±18.0歳(平均±SD)の157名とした.年代と性を要因として,血圧,SpO2,身長,体重,Body Mass Index(以下,BMI)を二元配置分散分析で検討し,血圧,SpO2に関して性と年齢で調整したBMIとの偏相関係数を算出した. 結果:年齢では全ての項目で有意な主効果を,性では血圧,身長,体重に有意な主効果を認めた.年齢と性で調整したBMIとの偏相関係数は,収縮期血圧r=0.199(p<0.02),拡張期血圧r=0.345(p<0.001),SpO2 r=-0.207(p<0.01)といずれも有意であった. 結論:ボリビア人の血圧,SpO2,体格には,加齢や性の影響に加え,BMIの影響が存在し,疾病予防には運動,活動,食事などの生活習慣に目を向け,肥満対策に関わる必要性があると考えられた.
著者
林 悠太 久保 晃
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.143-146, 2010 (Released:2010-03-26)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

〔目的〕本研究の目的は,高齢入院患者の生活意欲とADL,体格との関連を明らかにすることである。〔対象〕対象者は,Functional Independent Measure(以下FIM)の食事項目が5点以上であった高齢入院症例71例(回復期リハ病棟:男12例,女24例,79.6±11.1歳 慢性期病棟:男10例,女25例,83.2±7.6歳)である。〔方法〕生活意欲はVitality Index scoreより求め,8点以上を高得点群,7点以下を低得点群の2群に分類し,FIMとBody Mass Index(以下BMI)を求めて分析した。〔結果〕その結果,回復期ではFIMすべての項目で群間に有意差が認められ,慢性期では運動項目の整容・トイレ動作・排泄項目とすべての認知項目,BMIに有意差が認められた。〔結語〕回復期ではADL能力全般が,慢性期では身だしなみや排泄といった人間としてごく当たり前の動作能力が,生活意欲と関連してくると考えられる。
著者
西田 裕介 久保 晃 田中 淑子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.29-31, 2002-02-20
被引用文献数
3

日本人の20歳代健常成人105名を対象に, 前腕長および下腿長と身長との関係を検討し, 各肢長と身長との関係を分析した。測定方法は, 身長は, 背臥位にて頭頂から足底までを計測した。前腕長は, 端座位にて上腕骨外側上顆から橈骨茎状突起まで(以下 : 前腕長(1)), 肘頭から橈骨茎状突起まで(以下 : 前腕長(2))を計測した。下腿長は, 背臥位にて膝関節外側裂隙から外果下端まで(以下 : 下腿長(1)), 腓骨小頭から外果下端まで(以下 : 下腿長(2))を計測した。統計学的手法には, 各肢長の測定値と身長においてピアソンの相関係数の検定を用い, また, 目的変数を身長, 説明変数を前腕長(2)・下腿長(2)とする重回帰分析を行った。ピアソンの相関係数の結果より, 全体および男性においては身長と高い相関関係を示した(男性 : r=0.65〜0.85,全体 : r=0.76〜0.86)。一方, 女性では男性および全体と比較すると相関係数が低かった(r=0.57〜0.70)。重回帰分析では, 女性においても高い相関係数が得られ(男性 : r=0.89,女性 : r=0.81,全体 : r=0.92), 重回帰分析より求めた回帰式を用いることで, 身長の推定が可能であると考えられる。このことは, 身体に高度な変形を呈する症例や立位保持が困難で身長の測定が不可能な症例に対して, 栄養状態や体格を把握した上で理学療法を実践する際に有意義であると思われる。