著者
曽我部 真裕 井上 武史 堀口 悟郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

曽我部は、研究全体のとりまとめを行うとともに、「基本的情報の提供・流通の体制のうち公共放送のあり方」に関して、報道の任務について論じ(「任務は権力監視、独立性が生命線」Journalism328号(2017年))、また、関連して判例の検討等を行った(「2017年マスコミ関係判例回顧」新聞研究799号(2018年))。また、「補完的に民意を表明・調達する手法」として、デモ規制のあり方について検討した(「市民の表現の自由」宍戸常寿・林知更(編)『総点検 日本国憲法の70年』(岩波書店、2018年))。井上は、分担テーマである「民主政に関与するアクターの規律」について、民主政に関するフランスの憲法規定の変遷を統計的、網羅的に検討し、かつ民主政のあり方を問い直す最近の改憲議論を取り上げて、その動向を探る研究を行った(「フランス第5共和政における憲法改正:最近の改憲論議も含めて」辻村みよ子編集代表、講座政治・社会の変動と憲法:フランス憲法からの展望第Ⅱ巻『社会変動と人権の現代的保障』、信山社、2017年)。堀口は、昨年度に引き続き、分担テーマである「専門的知識を創出・供出する制度」として、学術の中心をなす機関である大学に関する検討を行った。具体的には、①高等教育の無償化が大学に与える影響(斎藤一久=安原陽平=堀口悟郎「高等教育の無償化に向けての憲法改正の是非」季刊教育法195号(2017年))、②大学運営に対する学生の参加が大学教員の学問活動に与える影響(堀口悟郎「(学会報告)学生の参加と教授の独立」比較憲法学会、2017年10月28日、同志社大学)について考察した。
著者
井上武宏
雑誌
臨床放射線
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.423-430, 2002
被引用文献数
2
著者
井上 武夫 林 典子 津田 克也
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.103-108, 2004 (Released:2014-08-29)
参考文献数
7

目的 平成 7 年に始まった愛知県瀬戸市の乳幼児期 BCG 接種技術改善努力が,小学 1 年のツ反陽性率に及ぼす影響を針痕数との関連で明らかにする。方法 平成12年,13年,14年の小学 1 年生3,409人のツ反発赤径と針痕数を計測した。BCG 未接種児童は除外した。結果 一人あたり平均針痕数は,平成12年1.8個,13年3.1個,14年6.3個であった。針痕を 1 個でも認めた児童は,平成12年25.1%, 13年38.1%, 14年70.5%であった。平成13年は12年に比べ,平成14年は13年に比べてそれぞれ有意に高率であった(P<0.001)。 ツ反陽性率は,平成12年32.5%, 13年36.5%, 14年63.7%であった。平成12年と13年とは有意差がなく,平成14年は12年および13年に比べ有意に高率であった(P<0.001)。 針痕なしの児童の陽性率は,平成12年29.4%, 13年33.1%, 14年56.1%,針痕ありの児童の陽性率はそれぞれ41.8%, 42.0%, 66.9%であり,針痕ありの児童の陽性率は針痕なしの児童より有意に高かった(P<0.005~P<0.001)。平成14年の針痕なしの陽性率は,12年および13年の針痕ありの陽性率より有意に高かった(P<0.001)。 針痕数 1~9 個と10個以上の陽性率は,平成12年40.2%と46.3%, 13年34.0%と55.7%, 14年63.9%と70.7%であった。平成14年の針痕 0 個の陽性率は12年の10個以上の陽性率より高値であった。 ツ反発赤径 5 mm 以上10 mm 未満(旧疑陽性)の児童は,平成12年32.8%, 13年30.2%, 14年20.0%であった。平成14年は12年および13年に比べて有意に低率であった(P<0.001)。 ツ反発赤径 5 mm 未満(旧陰性)の児童は,平成12年34.6%, 13年33.3%, 14年16.3%であった。平成14年は12年および13年に比べて有意に低率であった(P<0.001)。結論 乳幼児期の BCG 接種技術改善により小学 1 年のツ反陽性率を大きく高め,ツ反発赤径 5 mm 未満の旧陰性群を大きく減少させることができる。針痕数よりも針痕の残る児童の割合の方が全体の陽性率との関連が強い。平成14年は針痕なしの児童も高い陽性率を示したことから,管針を強く押すだけでなく,生菌を多く接種するための改善がなされたと推測できた。
著者
吉田 拓弥 川原 純 井上 武 笠原 正治
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL) (ISSN:21888566)
巻号頁・発行日
vol.2017-AL-165, no.16, pp.1-7, 2017-11-09

ネットワーク信頼性評価とは,ネットワークの各リンクに静的な故障確率が設定されている場合に,2 頂点間が通信可能である確率を求める問題である.確率を厳密に計算する手法として,二分決定グラフ (BDD) を用いた計算方法が知られている.BDDは 論理関数を圧縮して効率よく表現できるデータ構造である.本稿では,ネットワークの 2 つ以上のリンクの故障に依存関係がある場合の信頼性評価を行う.本手法では,リンク間に存在する依存関係を BDD で表現し,依存関係を考慮しない場合に構築した BDD との二項演算を行うことで,依存関係を考慮した信頼性 BDD を生成し,確率を計算する.本手法を 3 つの計算方法で実装し,各方法を処理時間と生成される BDD のノード数の観点から比較を行う.
著者
井上 武 高橋 紀之 宮崎 敏明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.3911-3921, 2002-12-15
参考文献数
12

現行の移動体通信では,各移動端末の移動特性にかかわらずそれぞれの位置を一様に管理している.しかし,実際には多くの端末がまとまって移動している状況が見られ,位置管理システムに大きな負荷を与えている.満員電車や自動車が連なって走っている道路はその一例である.本論文では,位置登録と呼び出しを「負荷」と考え,この負荷が小さくなるように同様の移動特性を持つ端末をグループ化する手法を提案する.移動端末をグループごとに階層的に管理することによって,位置登録発生数を削減することができる.また,グループ数を調整することで,グループ形成にともなう通信オーバヘッドを抑制する手法についてもあわせて提案を行う.いくつかの状況を想定したシミュレーションを行い,大きな負荷軽減効果が得られることを検証した.Present mobile networks handle the location of mobile terminals uniformly. However, many mobiles often move together; i.e., passengers on the same train or a group of cars running on a road. They pass many location areas and issue many location update requests, which incur the heavier location management overheads. In this paper, we present an efficient location management algorithm based on the collaboration of mobiles; accompanying mobiles form groups, and mobile networks handle group locations hierarchically, which reduces the location management overheads. We also describe an unique algorithm which supresses the communication overhead caused by the collaboration. These algorithms can be implemented in a distributed manner, and so they are highly scalable. Simulation results show that our algorithms greatly reduce the location management overheads.
著者
平 朝彦 飯島 耕一 五十嵐 智秋 坂井 三郎 阪口 秀 坂口 有人 木川 栄一 金松 敏也 山本 由弦 東 垣 田中 智行 西村 征洋 鈴木 孝弘 木戸 芳樹 渡邊 直人 奥野 稔 井上 武 黛 廣志 小田 友也 濱田 泰治 室山 拓生 伊能 隆男 高階 實雄 勝又 英信 原田 直 西田 文明 南川 浩幸 金高 良尚
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.7, pp.410-418, 2012
被引用文献数
5

東北地方太平洋沖地震において関東地方を中心に前例のない広域的な液状化被害が報告されている.都市地盤における液状化現象を理解し,その対策を立てるには,液状化が地下のどこで起ったのかを同定することが極めて重要である.本報告では,千葉県浦安市舞浜3丁目のボーリングコア試料に対して,X線CTスキャン解析を実施し,非常に鮮明な地層のイメージの取得に成功した.この結果,地面下13 mまでの地層を5つのユニットに区分することができ,その中で6.15 mから8.85 mまでの間で地層のオリジナルな構造が破壊されており,液状化した層であると判定した.この手法は,今後の液状化研究に関して,大きな貢献が期待できる.
著者
井上 武史 イノウエ タケシ Takeshi INOUE

高緯度北極に生育する地衣類の水利用と光合成活動の解明Morphological and symbiotic effects on water availability andphotosynthesis of lichens during snow-free seasons in the High Arcticglacier foreland高緯度北極に生育する地衣類の光合成活動は、雪に覆われない生育可能期間において、水制限下にあると指摘されている。しかし、野外環境下での地衣類の水利用や光合成活動は研究例が少なく、その動態はわずかな知見に基づいて推察されたものであった。本研究ではノルウェー王国スピッツベルゲン島ニーオルスンにある東ブレッガー氷河後退域(78°55′N 11°50′E)において、優占する地衣種を調査し、それらの着生基物や地衣体の内部・外部の形態で生じる水環境特性と、各地衣種の光合成活動の実態解明を目指した。植生調査により、調査域には136 種の地衣類の分布が確認され、このうち樹枝状地衣種Cetrariella delisei と固着地衣種Ochlolechia frigida は複数の地表面構成要素を着生基物として高頻度・被度で出現する優占地衣種となっていた。また、樹枝状地衣種Flavocetraria nivalis、Cladonia arbuscula ssp. mitis、Cladoniapleurota は、それぞれ維管束植物/リター、コケ/リター、クラスト上で高い出現率を示し、これらは各地表面構成要素上での標徴種とみなされた。複数の地表面構成要素上に高頻度で出現した2 種の優占地衣種では、C. delisei はリター類と礫、O. frigida はクラスト上で特に高出現率となっており、また、各地表面構成要素上で異なる地衣種が高頻度に出現したことは、着生基物のもたらす水環境の違いや、各地衣種の水獲得や光合成をはじめとする生理特性の違いによって生じたと思われたため、これら5 種を調査対象と定め研究を進めた。調査域の無雪期間には、微量の降雨が1 週間程度の間隔で生じ、大気中の湿度は降雨停止後から徐々に低下し、また、着生基物も自由可動水が数日でほとんどの失われるほどに乾燥化が進行した。地衣体の表面積/乾重が相対的に大きな4 種の樹枝状地衣(C. delisei, F. nivalis, C. arbuscula ssp. mitis, C. pleurota)については、降雨後の夜間から早朝に湿度が飽和状態となっている大気中から水蒸気を獲得することが実験的に確認され、野外においても夜間から早朝に地衣体の含水比を高め、相対的に弱い光環境で光合成を行なっていることが確認された。また、これら樹枝状地衣4 種は大気中湿度の低下に伴って地衣体から早急に水が蒸発し、日中には含水比の低下により光合成が停止していた。これに対し、調査域の地表面構成要素の中で最も湿潤環境であったクラストに広い表面積で着生していた固着地衣O. frigida は、着生基物と地衣体間に生じた水ポテンシャル差に沿って水が供給されることで、含水比が光合成可能な程度に降雨後から数日間は保たれ、日中にも光合成を行っていることが明らかとなった。本研究では次に5 種の地衣体から共生藻を分離し、光・水-光合成応答性を調べることで、共生関係による乾燥環境への適応について追求した。吸水状態での地衣体の光-光合成曲線は、樹枝状地衣4 種は弱光適応型、固着地衣O. frigidaは強光適応型の曲線がみられ、それぞれの曲線はそれらの共生藻が示すものと一致したことより、吸水状態の地衣体で実現される光-光合成応答性には共生藻の生理特性が強く表れていることが判明した。共生藻の水-光合成応答性を調べた結果、全ての共生藻は35%以下の含水比でも光合成活性を低下させない性質を示した。樹枝状地衣Cladonia 属2 種では、分子系統解析により同一種とみなされる共生藻が地衣体表面に配置され、光合成停止含水比は5%前後であった。これに対し、他2 種の樹枝状地衣では、明瞭な上・下皮層構造に囲まれた髄層中に共生藻が配置され、それら共生藻の光合成停止含水比はCladonia 属の共生藻に比べ2-5 倍程度大きな値となっていた。固着地衣O. frigida では共生藻は上皮構造によって大気側が遮断され、着生基物から水が供給される共生体下部に配置されていること、また、その共生藻の光合成停止含水比は調査した共生藻の中では最低値を記録し、乾燥に極めて強いものであった。以上の結果より、調査対象とした優占地衣種5 種はそれぞれの共生菌がつくる形態的特徴と着生基物によって、無雪期間の乾燥化進行時における利用可能な水環境に差を生じさせ、この水環境の差に応じて地衣体が獲得した水によって共生藻の光合成が活性化されうること、また、それぞれの共生藻は低含水比でも光合成を行なう能力を持つが、光合成停止含水比には種間差が認められ、地衣体が水を獲得できる時の光環境で阻害を受けずに光合成を行う生理特性を持っていることが本研究から明らかとなった。これらは共生体を構築して調査域で優占する地衣種の菌類と藻類との間に、乾燥化が進行する環境下で効率よく光合成を行うための調和的な関係が成立していることを示唆していた。
著者
井上 武夫
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.63-64, 1997-06-15
参考文献数
3

ペルーでは,ミイロタテハ用トラップとして人糞,腐敗した牛血などを使用してきたため,雌が採集されることは極めて稀であり,Agrias beata beata f.beatifica Hewitsonの雌変異体は報告がない.著者はロレト州イキトス周辺での雌採集を目的に,1987年からバナナトラップの使用をひろめてきた.1996年10月14日に採集された雌A.b.beata f.beatificaは前翅長47mm,前翅表面基部と後翅中央に大きな青色斑が認められる(Figs 1,3).また,前後翅ともに緑色帯の内側には青色鱗粉が認められる.後翅の青色斑は1b室から3室および中室まで拡がり,緑色帯内側の青色とは連続していない.裏面後翅には基部から第3列黒色斑内側まで拡がる黄土色の斑紋が認められる(Fig.2).第4列からの黒色斑は痕跡として淡くなっており,A.b.beata f.beatificaの特徴を示している.後翅青色斑を伴う雌Agrias beataはペルー産として3変異体,ブラジル産として3変異体が報告されてる.ペルー産はともに山地性別亜種のもので,アマゾン低地のロレト州からは報告がない.本個体はマラニョン河下流のナウタ近郊ベサイダで採集された,初のA.b.beata f.beatifica雌変異体と考えられる.
著者
井上 武夫
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.103-105, 1985-06-20

ペルー産のミイロタテハ属の雌は雄に比べ極めて数が少ない.他方,ブラジルでは雌雄ほぼ同数が採集されている.両者の相異は使用するトラップが異なるためと言われているが,それを実証した者はいない.著者は1984年9月24日から10月2日までブラジルでバナナトラップを用いて5♂,3♀のミイロタテハを採集し,同じ方法でイキトス,ティンゴマリアにて,A. sardanapalusとA.beataの雌を各1頭採集した.このような著者の経験から,ペルーにおいても従来いわれてきたような雌雄の著しい不均等は必ずしもないと考えられる.
著者
工藤 栄 田邊 優貴子 井上 武史 伊村 智 神田 啓史
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.114-122, 2009-03-30
被引用文献数
1

南極の陸域環境の植物の分布と定着は,洪水をも含む環境の物理的撹乱による制限を強く受けていると考えられる.近年(第47次観測隊以降),日本南極地域観測隊の活動を通じ,東南極宗谷海岸のラングホブデ域にある氷河池(仮称)の多年性雪の堤防に大きな穴が開き決壊したことを確認した.同様の現象は約25年前にも報告されている.以前の穴はその後閉塞し,今回の決壊直前まで氷河融解水が涵養した湖沼となっていたが,現在ではその湖水のほとんどが失われ,湖の面積は著しく縮小している.ラングホブデ南部にある隣接したいくつかの渓谷及び湖沼は,土壌藻類・地衣類・蘚類や湖底藻類蘚類群落が発達した地域として知られている.これらの中で,氷河池内やこの雪の堤防の下流側の渓谷(やつで沢)にはごく乏しい植生しか見出すことはできない.この対照的に貧弱な植生の分布と定着状態は,繰り返し発生する堤防の決壊による物理的撹乱が湖沼内及びその下流側での植物の分布・定着を制限した結果であると考えられる.この報告を通じ,著者らはこの地域の氷床の融解量の変化の評価とともに,露岩域での生態学的研究及びこのエリアで今後とも行われる観測活動に際しての安全確保という観点から,この多年性雪堤防と氷河池の長期監視の重要性を訴えるものである.
著者
井上 武 朝倉 浩志 佐藤 浩史 高橋 紀之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.458, pp.191-196, 2009-02-24
参考文献数
17
被引用文献数
2

現在のWebアーキテクチャは,RESTと呼ばれるアーキテクチャスタイル(設計指針)に基づいて設計された.しかし,RESTには,サービスのパーソナライズに欠かせない「セッション」についての設計指針がない.このため,セッションに関連する技術は指針なく開発され,整合性を欠いたまま利用されている.本稿は,RESTにセッションのための設計指針を追加し,サービスのパーソナライズに必要な特性を導く.この指針に従って設計されたアーキテクチャは,パーソナライズの基礎であるユーザの区別から,柔軟な認証手続きやサービスの連携までを実現する特性を備える.設計指針により現在のセッション実装の課題を明らかにするとともに,今後の開発の方向性を示す.