著者
吉田 裕彦 井上 雅彦
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.311-323, 2008-09-30

本研究は、通常学級に在籍している自閉症児におけるボードゲーム(SSTゲーム)を利用した社会的スキル訓練の効果について検討することを目的とした。通常学級での朝の自由時問における行動を般化場面として事前に測定した。訓練は、ボードゲームをクラスの仲間とともに20分の休み時間を利用して4週間に8回実施した。ゲームにおいてプレーヤーは、サイコロをふり、出た目の数だけコマを進める。チャンスカードのマスにとまると、カードに指示されたロールプレイを仲間と演じる。正しく演じられると2人ともにポイントシールを与えられる。その結果として、ターゲットにされた社会的スキルが向上し、般化場面における相互交渉が増加した。SSTゲームの効果と有効性について考察する。
著者
大久保 賢一 井上 雅彦 渡辺 郁博
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.29-38, 2008-05-31
被引用文献数
1

本研究では自閉症児・者の保護者を対象に子どもの性教育に関するニーズ調査を実施した。調査では、性教育の必要性、性教育が必要であると考えられる時期、必要とされる性教育の内容、そして保護者の学習の場の必要性とその形態に関して質問を行った。その結果、大部分の保護者が子どもに対する性教育の必要性を認識しており、小学校(小学部)高学年から性教育が必要であると回答した保護者が最も多かった。必要とされる性教育の内容については、子どもの生活年齢、知的障害合併の有無、性別に関連して保護者の回答に違いがみられた。また、大部分の保護者が、子どもの性教育に関する保護者自身の学習の場を望んでいることが明らかとなった。保護者の性教育に対するニーズの実態、そして今後の課題について考察を行った。
著者
奥田 健次 井上 雅彦
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.69-79, 1999
被引用文献数
1 1 5

本研究は強いこだわりを持つ中度知的障害を伴う自閉症児における対人関係の改善のための指導について検討することを目的とした。本事例においては、家庭中心型指導により対象児の家庭でフリー・オペラント技法による介入を行った。その結果、対象児の自発的なかかわり行動や指導者との会話のターン数が増加し、それとともに指導者との遊びや会話内容も多様になった。さらに、指導者以外の他者に対しても自発的にかかわりを求めることが増加したことが報告された。これらの結果から、本事例におけるフリー・オペラント技法による介入の効果、般化を促進した要因について考察された。
著者
島宗 理 中島 定彦 井上 雅彦 遠藤 清香 井澤 信三 奥田 健次 北川 公路 佐藤 隆弘 清水 裕文 霜田 浩信 高畑 庄蔵 田島 裕之 土屋 立 野呂 文行 服巻 繁 武藤 崇 山岸 直基 米山 直樹
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.174-208, 2003-09-05

行動分析士認定協会(Behavior Analyst Certification Board : BACB)は、国際行動分析学会(Association for Behavior Analysis : International)が公認し、支援している、行動分析学に基づいた臨床活動に携わる実践家を認定する非営利団体である。本資料ではBACBの資格認定システムを紹介し、実践家の職能を分析、定義したタスクリストの全訳を掲載する。タスクリストを検討することで行動分析家の専門性を明確にして、我が国における今後の人材育成やサービスの提供システムについて、検討を始めるきっかけをつくることが本資料の目的である。
著者
藤坂 龍司 井上 雅彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.57-70, 2012-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

自閉症早期療育に取り組む親の会に所属する11組の親子を二組に分け、不連続試行法(DTT)を中心とする行動療育の知識と技法に関する親講習会を、時期をずらして約1カ月間実施した。その結果、親の教育技法、子どもの獲得スキルともに、トレーニング後におおむね向上し、半年後、1年後のフォローアップでもそれが維持された。親の精神健康度は講習会後改善したが、1年後は一部の親で再び悪化した。家庭療育を1年未満で中断する親も少なくなかった。これらのことから、約1カ月の親講習会はDTTを中心とする行動療育の技法を親に習得させるためには効果的だが、その後1年間にわたって安定的に家庭療育を維持させるためには不十分であることが示唆された
著者
竹田 伸也 井上 雅彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.59-69, 2001-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究では、アルツハイマー型痴呆老人へ臨床動作法を実施し、認知機能、姿勢に対する効果を検討した。対象は、特別養護老人ホーム入所中のアルツハイマー型痴呆老人3名であり、2名が重度、1名が中等度であった。週に2回、所定の場所で約30分間の介入を4か月間行い、MMSEとN式精神機能検査を用いて、認知機能と背面・側面の立位姿勢を評価した。その結果、対象者3名中2名においてMMSEとN式精神機能検査の得点が上昇し、残る1名は得点に大きな変動を認めなかった。この効果は、介入終了後3か月を経過した時点においてもおおむね維持されていた。また、姿勢についても、肩の緊張と円背の改善が認められた。以上より、アルツハイマー型痴呆老人の認知機能の維持あるいは改善、および姿勢の改善に対して臨床動作法が有効である可能性が示唆された。
著者
竹田 伸也 井上 雅彦 金子 周平 南前 恵子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.63-72, 2016-01-31 (Released:2019-04-27)

本研究の目的は、子どもに応じたアセスメントから対応まで実施できる認知行動療法プログラムを作成し、養護教諭のストレス反応や自己効力感に与える影響について検討することであった。19名の介入群と27名の統制群からなる46名の養護教諭を対象とした。介入群の養護教諭に対して、認知行動療法を応用した子どもの抱える問題のアセスメントと対応についての2時間からなるワークショップと90分からなるフォローアップ研修を実施した。その結果、本プログラムは子どもへの対応についての自己効力感を改善させることが示唆された。一方、無気力と一般性自己効力感は介入群と統制群双方で向上し、無気力以外のストレス反応は介入群と統制群双方で変化を認めなかった。
著者
宮崎 光明 加藤 永歳 井上 雅彦
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.19-31, 2014-07-30 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
1

研究の目的 無発語または発声・発語が少なく、音声によるコミュニケーション行動が乏しい自閉症児を対象に、アイコンタクトおよび発声・発語を促進するために、PECSの要求場面において、対象児が絵カードをコミュニケーション・パートナーに渡した後に動作模倣を取り入れた際の介入効果を検討することを目的とした。研究計画 ベースライン期、PECSの訓練、PECSに動作模倣を取り入れた訓練、維持テストからなるABCAデザインを用いた。場面 プレイルームにて実施した。対象児 無発語または発声・発語が少なく、コミュニケーション行動が乏しい自閉症児4名であった。介入 訓練期1ではPECSのフェイズIの訓練を行い、訓練期2では、フェイズIに動作模倣を取り入れた訓練を行った。行動の指標 絵カードを用いた要求行動を構成する行動の正反応率、アイコンタクトおよび発声・発語の生起率、動作模倣の正反応率を行動の指標とした。結果 本研究に参加したすべての自閉症児において、絵カードを用いた要求行動を構成する行動の正反応率、アイコンタクトおよび発声・発語の生起率が増加した。また、3名の動作模倣の正反応率の増加が見られた。結論 PECSの訓練手続きに動作模倣を取り入れることで、アイコンタクトおよび発声・発語が促進されることが示唆された。
著者
島宗 理 中島 定彦 井上 雅彦 遠藤 清香 井澤 信三 奥田 健次 北川 公路 佐藤 隆弘 清水 裕文 霜田 浩信 高畑 庄蔵 田島 裕之 土屋 立 野呂 文行 服巻 繁 武藤 崇 山岸 直基 米山 直樹
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.174-208, 2003-09-05 (Released:2017-06-28)

行動分析士認定協会(Behavior Analyst Certification Board : BACB)は、国際行動分析学会(Association for Behavior Analysis : International)が公認し、支援している、行動分析学に基づいた臨床活動に携わる実践家を認定する非営利団体である。本資料ではBACBの資格認定システムを紹介し、実践家の職能を分析、定義したタスクリストの全訳を掲載する。タスクリストを検討することで行動分析家の専門性を明確にして、我が国における今後の人材育成やサービスの提供システムについて、検討を始めるきっかけをつくることが本資料の目的である。
著者
奥田 健次 井上 雅彦
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.51-62, 2002-04-20 (Released:2017-07-20)
被引用文献数
1

本研究では,奥田・井上・山口(2000)の空間的視点取得課題に通過した3名の自閉症児者に対して,認知的視点取得課題において自己および他者の「知識の有無」状況を弁別可能にするための条件について検討を行った。まず,介入フェイズ1において,自己の「知識の有無」状況の弁別を獲得するための指導的介入を行った結果,自己質問に対して正答可能となったが,他者の「知識の有無」状況の弁別に転移しなかった。次に,介入フェイズ2において,自己と他者とで可視/不可視が異なる条件のみ指導的介入を行った結果,介入を行った条件での成績が向上したが,自己と他者とで可視/不可視が同一の条件での誤答が増加した。そこで,介入フェイズ3において,自己と他者とで可視/不可視が異なる条件に加え,可視/不可視が同一の条件についても指導的介入を行った。その結果,ポストテストにおいては,3名とも自己と他者の「知識の有無」状況の弁別を獲得し,指導的介入を行わなかった他者同士の「知識の有無」状況についても弁別することが可能となった。本実験の結果から,認知的視点取得課題や「心の理論」課題における課題設定の問題について検討を行った。
著者
菅野 千晶 羽鳥 裕子 井上 雅彦 小林 重雄
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.33-38, 1995
被引用文献数
3 1

自閉症生徒1名を対象に買物指導を行い、日常生活におけるスキルの般化と維持に関して検討を行った。シミュレーション訓練により、対象生徒は買物に必要な行動レパートリーを獲得することができたが、現実の店舗では、行動連鎖中、部分的に誤反応が生じることがあった。しかし、ほとんどの誤反応は支払い時に生じたため、レジの店員の援助によって買物を遂行することが可能であった。また、日常生活においては、母親が対象生徒に買物をさせる機会を積極的に提供することで、買物行動が維持されていることが明らかになった。本研究の結果、対象生徒の買物スキルが日常生活で般化・維持した背景には、店員や母親などの対象生徒をとりまく人々からの援助といった環境要因が影響を与えていたことが示唆された。
著者
奥田 健次 井上 雅彦 山本 淳一
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.7-22, 1999-03-31

本研究では、文章中の登場人物の情緒状態の原因を推論する行動について高次条件性弁別の枠組みから分析を行った。そして、中度精神遅滞を持っ発達障害児2名を対象に、文章課題において登場人物が表出している情緒状態に対して、その原因について適切な感情表出語を用いて応答する行動を形成した。そのために、課題文に対して感情表出語カードを選択する条件性弁別訓練が行われ、さらに文中の感情を引き起こした出来事と感情表出語を組み合わせて応答するための条件性弁別訓練が行われた。その結果、課題文の登場人物の情緒状態にっいて、原因となる出来事と感情表出語を組み合わせて応答することが可能となり、未訓練の課題文に対しても適切な応答が可能となった。これらの結果から、発達障害児に対する文章理解の指導において条件性弁別訓練の有効性が示され、さらに文章理解を促進するために文中の文脈刺激への反応を強化することの重要性が示唆された。
著者
井上 雅彦 小川 倫央 藤田 継道
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.11-21, 1999
被引用文献数
1

本研究は、自閉症児において、写真刺激を用いた「何」「誰」「どこ」の疑問詞音声質問に対する適切な応答言語行動の訓練について視覚プロンプトの有効性を検討した。また、未訓練の写真刺激、実際場面(自己行為、他者行為)、文章刺激、音声刺激の各情報刺激への般化、質問刺激の語順変化の影響についての検討がなされた。結果、4名中3名は正答を音声でフィードバックしただけでは適切な応答言語行動の獲得が困難であり、獲得段階での視覚プロンプトを必要とした。また、すべての自閉症児が、写真刺激に対する疑問詞質問に対して適切な応答行動を獲得し、未訓練の写真刺激、実際場面(自己行為、他者行為)、文章刺激、音声刺激の各情報刺激に般化することが示された。自閉症児の言語指導における視覚プロンプトの有効性、訓練への効果的な応用性について考察された。
著者
藤坂 龍司 井上 雅彦
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.57-70, 2012-01-31

自閉症早期療育に取り組む親の会に所属する11組の親子を二組に分け、不連続試行法(DTT)を中心とする行動療育の知識と技法に関する親講習会を、時期をずらして約1カ月間実施した。その結果、親の教育技法、子どもの獲得スキルともに、トレーニング後におおむね向上し、半年後、1年後のフォローアップでもそれが維持された。親の精神健康度は講習会後改善したが、1年後は一部の親で再び悪化した。家庭療育を1年未満で中断する親も少なくなかった。これらのことから、約1カ月の親講習会はDTTを中心とする行動療育の技法を親に習得させるためには効果的だが、その後1年間にわたって安定的に家庭療育を維持させるためには不十分であることが示唆された
著者
小田 浩伸 藤田 継道 井上 雅彦
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.21-31, 1998-09-30

本研究では、音声表出言語が全くなく、かつ、音声理解言語が殆どない重度知的障害青年4名を対象に、2つのコミュニケーション機能(マンドvsタクト)と2つのコミュニケーションモード(受容vs表出)および2つのシンボル(写真vs身振り)から成る8課題について、獲得の早さと般化・維持の容易さが条件交替デザインによって比較された。その結果、4名全員が写真と身振りを用いたマンドの受容の2課題を除く6課題を獲得した。また、6課題の中では4名全員に共通して「写真によるタクトの受容」課題の獲得・般化・維持が最も容易であり、「身振りによるタクトの表出」課題の獲得・般化・維持が最も困難であった。シンボルが写真・身振りのいずれの場合でも、全対象児にとってマンドはタクトよりも表出モードでは獲得・般化・維持が容易であった。どちらのシンボルの場合でも、全対象児にとって、タクトでは受容モードの方が表出モードよりも獲得・般化・維持が容易であった。またシンボルは、全対象児にとって写真の方が身振りよりも獲得・般化・維持が容易であった。これらの結果から、音声理解言語も表出言語も乏しい重度知的障害児にとっては、実物と類縁性の高い写真や写像性の高い身振りをコミュニケーションの媒体とし、その産出が簡単なポインティングや身振りの獲得を目指した指導の有効性が示唆された。