著者
八村 広三郎
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-12, 2014 (Released:2017-02-15)
参考文献数
16

本稿では, 舞踊や祭などの無形文化遺産のデジタル・アーカイブに関する話題について述べる. 無形文化財は人間の身体動作が大きな要素になる. 身体動作の計測には, おもに人体の関節部分の動きや関節角度を計測するモーションキャプチャシステムが利用される. 舞踊の身体動作の計測には, 光学式モーションキャプチャシステムが広く利用されている. 一方で, 舞踊で特に重要な, 衣装などをつけた踊り手の表情などを含む 「見え」 を, 3次元情報として記録するシステムも開発されている. ここでは, これらのシステムについて紹介した後, これらを, 舞踊を中心とする無形文化財のアーカイブに利用することの意義および課題などについてふれる. さらに, モーションキャプチャにより計測した身体動作データを対象にして行うデータ解析やデータ検索の手法について述べる. 最後に, 世界遺産にも登録された大規模な祭りである, 京都祇園祭の山鉾巡行という文化遺産を対象にしたデジタル・アーカイブの試みについても紹介する.
著者
手操 俊文 坪井 昭憲 吉村 ミツ 八村 広三郎
雑誌
じんもんこん2006論文集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.117-124, 2006-12-14

おもに江戸期に出版された版本をデジタル化した画像から,それぞれの文字を切り出すための手法と,その結果を利用したキャラクタスポッティングについて報告する.文字切り出しは,汚れやシミの除去,2値化,行の切り出し,ラベリング処理による文字の分離と統合の処理などからなっている.ここでは,2値化の処理は,頁全体,行単位,さらには局所的な文字のブロック単位でという風に順次適応的に適用することにより,汚れやシミの影響をあまり受けずに文字切り出しの精度を向上させることができた.また切り出しが成功した文字図形に対して,文字図形の類似性に基づくキャラクタスポッティングを行った.特徴量として,画素値と加重方向指数ヒストグラムを用いた場合について検討した.どちらの場合もある程度の結果を得ることができ,これをコンコーダンスやKWICの作成;;へ応用できることを示した.
著者
高橋 信晴 八村 広三郎 吉村 ミツ
雑誌
じんもんこん2003論文集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.31-38, 2003-12-17

モーションキャブチャシステムによって得られる身体動作データは,無形文化財としての舞踊のデジタルアーカイブおよび舞踊の研究にも利用されるようになってきている.本報告では,舞踊の身体動作をモーションキャブチャによって計測したデータを対象として,類似している身体動作データを検索するための手法を提案し,主に日本舞踊の動作を対象とした実験の結果と評価について述べる.身体動作の類似性の定義,動作データの正規化の方法,全身での検索と身体の一部分のみに注目した検索などについて検討し,実験により良好な結果が得られることが確認された.
著者
吉村 ミツ 村里 英樹 甲斐 民子 黒宮 明 横山 清子 八村 広三郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.779-788, 2004-03-01
被引用文献数
24

本研究では,日本舞踊動作を解析して,舞踊家が師匠の技を模倣している程度,すなわち上達度を評価している.利用データは,赤外線追跡装置で取得した日本舞踊動作の3次元時系列である.筆者らの以前の研究では,このデータから注目動作部分を抽出するために,移動と回転に応じて動く3種類の動座標系を用いた.本研究ではその動座標系を改善した上で,移動,回転,向き補正,腰部揺動を同時に考慮した動座標系を考え,それを1回の変換で実現するアルゴリズムを考案している.筆者らは以前の研究で,舞踊家の上達度を客観的・定量的に表す指標として,動作の安定度と周波数特性に関する指標を定義した.本研究ではこれとは別の側面として,移動量に関する指標とガボール変換を利用したスペクトル成分の指標を定義している.ある流派の師匠と,その師匠から学んだ経験年数,性別が異なる4人の舞踊家,合わせて5人に舞踊実験を行ってもらい,注目動作の抽出と,その抽出結果を用いた指標の測定を行い,提案指標に基づいて上達度の評価を試みている.抽出が十分な精度で実現していて,指標が上達度や性による違いを表していることを確かめている.
著者
中村 美奈子 山川 誠 八村広三郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.51, pp.33-40, 2001-05-25
被引用文献数
4

舞踊記譜法Lavanotationは、欧米では舞踊の分析や振り付けの手法および舞踊教育のツールとして広く用いられているが、日本においては、まだあまり普及していない。一方、モーションキャプチャ技術は、舞踊学の分野においても舞踊の動作分析手法の一つとして注目されてきている。本研究では、モーションキャプチャシステム、3DCG、ビデオ映像、VRMLおよび、八村研究室でこれまでに開発してきた舞踊譜作成エディタLabanEditorを統合した形での、舞踊教育のための効果的なマルチメディア教材を開発することを目的とする。Labanotation is now widely used as dance notation in Western countries. If we use hypermedia in teaching dance with Labanotation, we can expect good results in choreography and dance education. In this paper, we report on a development of multimedia teaching materials for dance by using motion capture system and Labanotation, integrating with 3DCG, VRML, video, and LabanEditor which had been developed by our laboratory.
著者
崔 雄 八村 広三郎 伊坂 忠夫 遠藤 保子 関口 博之 吉村 ミツ 丸茂 美恵子 阪田 真己子
出版者
群馬工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目標は、時間の流れとともに消失してしまいがちな舞踊の情報を、モーションキャプチャによる身体動作と各種の生体情報の同時計測によって計測・保存し、モーションキャプチャだけでは解析できない舞踊での演技者の足を使う方法(足づかい)、などを定量的に分析することである。さらに、モーションデータから類似する身体動作を検索するシステムとデジタルアーカイブされた能のモーションデータをインターネット環境に公開して、VR環境で観覧できるシステムの構築も行った。その結果、舞踊動作データの数値的解析だけでなく、VR環境におけるデジタルアーカイブを行うことによって、舞踊家や舞踊研究者は対象の舞踊についての新たな情報をフィードバックとして得ることができると期待される。
著者
遠藤 保子 八村 広三郎 仲間 裕子 山下 高行 崔 雄 古川 耕平 松田 凡 高橋 京子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

舞踊人類学やアフリカの舞踊に関する研究動向を概観し、舞踊の最新の記録法としてモーションキャプチャを利用したデジタル記録を指摘した。アフリカで人類学的なフィールドワークを行いつつ、モーションキャプチャしたデジタルデータからアフリカの舞踊の特徴(多中心的な動作や性差による相違点等)を考察した。アフリカの舞踊の教材化について論じ、小学校高学年を対象にした開発教育のための教材(DVD、指導計画)を制作した。
著者
関口 博之 八村 広三郎 崔 雄 古川 耕平
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

布の表現モデルとして今日広く用いられている、「バネ=質点モデル」の妥当性を検証するとともに、新しい布表現モデルの検討を行った。サテン、縮緬(ちりめん)、日本舞踊衣装(今回は振袖生地を使用)の3種類の生地について、モータとソレノイドを用いて外力を加えたときの布を動きを、光学モーションキャプチャシステムを用いて取得した。それぞれの生地の実際の動きと、バネ=質点モデルを用いて生成した布の動きを、生地に付けた反射マーカーの座標値をもとに比較した。その結果、縮緬のような薄く、柔らかな生地に対しては質点質量やバネ係数の変更によりバネ=質点モデルでほぼ近似することが可能であることがわかった。一方、我々がターゲットとする、振袖のような厚みのある固い生地に対しては、この種の生地で生じる、部分的な折れ曲がり現象を再現できず、従来のバネ=質点モデルによるシミュレーションには限界があることがわかった。そこで、このような生地に対する新しいモデルの開発に着手した。基本的なアイデアとして、従来モデルのように布全体を質点の集合として表すのではなく、不定型な剛体の集合体として表すことを考えた。これを検証するために、まず、互いにリンクさせた剛体の動作検証プログラムをマリオネットを題材として作成した。次のステップでは、このプログラム上で、布を剛体のリンク構造として表したモデルの動作シミュレーションを行い、その挙動を見ながらモデルの改良をを進めていく。
著者
八村 広三郎 赤間 亮 矢野 桂司 遠藤 保子 西浦 敬信 崔 雄 古川 耕平 阪田 真己子 李 亮 中村 美奈子 丸茂 美惠子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

モーションキャプチャ技術などを利用して,無形文化財のデジタル・アーカイブと,そのデジタルデータを利用して,動作解析,動作認識,コンテンツ制作などに利用するための広汎な研究を行った.具体的な成果は,複数演技者による舞踊動作における同期現象の解明,祇園祭山鉾巡行の記録とVR再現,仮想ダンスコラボレーション,身体動作データベースと身体動作の類似性に基づく,データ検索手法,舞踊譜Labanotation を用いた舞踊動作の記録と動作の再現のためのシステムLabanEditorの開発.また,これの能の仕舞動作への適用.ストリートダンス身体動作の教育支援システム,などである.
著者
平松 尚子 八村 広三郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, no.2, 1996-03-11

われわれは、人間の身体運動を記述し、そのデータを蓄積、検索、表示するためのシステムについて、研究を行っている。本報告では、身体運動をオブジェクト指向により、記述し、表現することについて述べる。人間の身体は、多様な器官から構成されており、その動作は複雑で、記述することは一般に困難である。身体運動のシミュレーションを行なう際、これらの細かい動きを逐一記述するのは大変面倒な作業である。そこで、ここでは人体モデルや動作データを、体の器官ごと、成分ごとに細分化したオブジェクトとして作成し、ライブラリ化して、これらを組み合わせて使う、という方法をとる。