著者
増田 智恵 今岡 春樹
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.795-804, 2002-08-15
参考文献数
14
被引用文献数
2

3次元体表曲面を密着して覆うパターン形状の分類を明確にするため,新しい衣服パターン設計を構想した。本報ではサイズを除いた密着衣服原型(密着衣)の曲面形状の特徴を抽出するため,曲面幾何学を利用した"角度による点集中のガウスの曲率(Kc=2π-θ:欠損角)"による新しい理論を導いた.5つのダーツを縫製して,3つの境界線(ネックラインなど)の穴を覆ったような密着衣閉曲面を想定した.その5つのダーツのKcの総和と3つの境界線のKcの総和の合計には一種の保存則,4π(720度)が理論的には成立する.203名の青年女子の胴部に適合した密着衣に理論を適用した結果,それぞれのモデルのKcの合計角度は720度の一定値になった.サイズに依存しない,密着衣のバストの膨らみ,背面の突出,ウエストのしまり,肩傾斜などの三次元的曲面形状の特徴を,各ダーツと各ラインのKcの配分から把握できた.これらの特徴がパターンの相似的曲面形状分類のための有効な資料であることが示唆された.
著者
増田 智恵 今岡 春樹
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.915-925, 2004-12-15

"角度に基づく点集中のガウスの曲率(Kc=2π-θ:欠損角)"による衣服パターン3次元曲面形状抽出理論を用いて,青年男子(n=15l)の青年女子(n=203)と比較したときの密着衣服原型(密着衣)の相対的な曲面形状の特徴を明確に捉えることができた.すなわち,男女の周密着衣の5つのダーツのKcの総和と3つの境界線のKcの合計は,ガウスーボネによる一種の保存則にしたがい一定の720度になって絶対的なサイズに依存しない.男子の密着衣の内部のバストダーツと側部のダーツは小さいがバラツキがあって,前と側胴部の相対的密着衣曲面形状は緩やかではあるが個人差があり,境界線で示される密着衣形状にも前後差が認められた,これに比べて女子の密着衣の3次元曲面形状は内部のバストダーツにより主に形成されていた.このことにより,個々の男子の胴部形状に適合した普遍的なパターンを設計することは難しいことが予想された.これらの特徴はパターンの相似的曲面形状分類のための有効な資料であり,さらに,現在の絶対的サイズによる衣料サイズの他に将来付加すべきと考える相対的なパターン形状表示のための基本的な情報となる.
著者
大塚 美智子 森 由紀 持丸 正明 渡邊 敬子 小山 京子 石垣 理子 雙田 珠己 田中 早苗 中村 邦子 土肥 麻佐子 原田 妙子 小柴 朋子 滝澤 愛 布施谷 節子 鳴海 多恵子 高部 啓子 河内 真紀子 増田 智恵 川端 博子 薩本 弥生 猪又 美栄子 川上 梅 渡部 旬子 倉 みゆき 丸田 直美 十一 玲子 伊藤 海織 角田 千枝 森下 あおい 上西 朋子 武本 歩未
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

2014~2016年に関東、関西、中部、中国、九州地区で3200名、約50項目の日本人成人男女の人体計測を行い、マルチン計測による3200名と三次元計測による2000名のデータベースを構築した。これにより、アパレル市場の活性化と国際化が期待でき、JIS改訂の根拠データが得られた。人体計測データの分析の結果、現代日本人は20年前に比べ身長が高く、四肢が長いことが明らかになった。また、若年男子のヒップの減少と中高年成人女子におけるBMIの減少が顕著であった。
著者
今岡 春樹 増田 智恵
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.422-429, 1996-08-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
5

衣服構成の目的は, 布という単純な面で人体という複雑な面を覆うことである.この目的から考えると, ある面が平面に展開できるかどうかが重要で, それはガウスの曲率で定義することができる.もし面の至る所でガウスの曲率がゼロであれば, 可展面と呼ばれる.このガウスの曲率に関して, 曲面内のガウスの曲率の総和と境界線上の測地的曲率の総和を加えたものは, 2π×オイラー標数と等しいというガウス-ボネの定理がある.本論文では, この定理を衣服構成の立場で議論する.特に, 裁断と縫合という技術はガウスの曲率と測地的曲率の変化と捉えることが出来る.この定理は一種の角度保存則と考えられるので, 角度の配分という考え方を導入することができる.この考え方をより明確にするために, 縫合の前後で各曲率がどの様に変化するかを示し, この関係を縫合の式と呼ぶことにする.角度の配分という考え方と縫合の式は衣服構成にとって有益であると考える.
著者
増田 智恵 乾 滋 團野 哲也 川口 順子 村上 かおり 與倉 弘子 岡部 秀彦 岡部 秀彦 松平 光男 永島 秀彦 杉山 元胤 小林 昌史 古田 和義 後藤 大介
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

男女年齢を問わず3次元人体計測から仮想的に衣服用人台の生成と立体裁断による個人対応の基本ドレスとパンツのパターンを作成し,仮想衣服製作によるバーチャル試着を可能にして自己的・他者的な着心地確認までをほぼ自動化できた。同時に衣服選択・試着の視覚的支援体制や管理機能用としての3次元ファッションシステム開発用の人体の相同モデル化,体形イメージ分類,動作機能,デザイン感性,素材の感性予測などの情報を構築した。
著者
増田 智恵 今岡 春樹
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.343-355, 1996-04-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
10

Fifty tight-fitting patterns of the front bodice (T) were made by draping on the replicas of female trunks using sheeting. The front surface of each replica was divided into ten blocks by standard lines, and the blocks were traced. The gap lengths on each side of the blocks of T were compared with those of the front surface development patterns (D) made from the same replicas. The gap lengths of T were calculated by subtracting the side lengths of the body surfaces (B) from those of T; and the gap lengths of D were measured on the side of D. On T, most of the gaps were positive, as were those on D, showing that the side lengths of blocks on T were longer than those of B. However, on the sides of the center front and the front shoulder blocks of T covering the concave parts of the trunk, the gaps were negative. Therefore, the area of the center front blocks of T was smaller than that of D; and the curvature of the shoulder lines of T was more gradual than that of D. In order to construct a T, which fitted each individual without draping but by drafting, it was necessary to add positive and negative gap lengths to the side lengths of blocks on B which conformed to the body's concave and convex surfaces.
著者
増田 智恵 今岡 春樹
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.1017-1027, 1994-11-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15

Fifty replicas of the trunk surfaces were made by applying a gypsum method to female subjects (average are 19.3 years) in a normal posture. Each replica was developed and the flat trunk surface pattern was produced.The gaps on the surface development pattern of the front trunk were regarded as a factor for unfolding the trunk surface onto a flat plane. There were the gaps of the FCL 1 (front center line 1), FWL (front waist line) and CWL (chest width line) in all front surface development patterns. But other gaps of the FCL 2 (front center line 2), FBL 2·3 (front bust line 2 and 3) and FASL 1·2 (front arm scye line 1 and 2) did not appear to all. The surface development pattern of the front trunk was divided into ten (1-10) blocks. By examining the shape of these blocks we were able to determine the equations of the relation among the lengths of the sides of the blocks. In blocks 1, 4 and 5, the lengths of the sides including the gaps of the FCL 1 and CWL were made by those equations. The gap of FWL was made according to the lengths of the sides of the blocks 1, 2 and 5.
著者
増田 智恵 村上 かおり 平林 由果 永野 光朗
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.165-174, 2009

幅広い年齢の成人女子に適したITを利用した衣服購入用の情報を抽出するため,3次元人体形状イメージ分類を行い,体形イメージおよびサイズの異なる日本人成人女子のほぼ3世代(20-40-70代)の平均的3次元人体モデルを着衣基体として設定した.幅広い年齢の成人女子が評価可能なデザインイメージ評価用語を抽出し,それによる3次元着装シミュレーションによる実際のデザインイメージ評価を一連の研究として試みた.本報では実際の衣服選択のためのデザインイメージの分類と各イメージの特徴を示すデザイン要素,衣生活スタイル,印象などを抽出し,さらに具体的な服のデザイン要素からデザインイメージを予測した.高齢社会での消費者のためのネットなどを利用した衣服選択支援情報の抽出につながる情報が得られた.<br> 1. 3世代の平均的3次元人体モデルによる20種類の合計60のデザイン服のイメージをクラスタ分類した結果,前報で抽出した2つの主成分に対応したA1. レディ・フェミニン・A5. エレガント,A3. カジュアル,A4. スタンダード・レトロ,A2. シャープ・モダンの4つのイメージに分類された.サイズの異なる年代別でのデザイン服による大差はなく,同じデザイン服は同じ分類のイメージになった.<br> 2. 4つのイメージのデザイン要素,衣生活スタイル,印象などの主な特徴は次のようであった.A1&A5イメージ : スカートスーツやブラウススタイルなど,派手な色や無彩色の薄い素材の上衣でフット性の高い下衣など,背が高く体形カバーのあるデザインで,年上,異性,同年代の印象が良く,フォーマルおよびショッピング用の衣服傾向―A3イメージ : 上衣と下衣の組み合わせでキュロットやパンツにTシャツスタイルなど,柄物で柔らかい上衣,派手な色の下衣,若い年代や同性の印象が良く,家庭着で家族で利用可能な衣服傾向,A4イメージ : スカートスタイルに,柄のある袖やえり付きの上衣に派手な色の薄い素材でフット性のあるデザインの下衣など,家庭着でもフォーマルまた家族での利用も可能な汎用性のある衣服傾向一A2イメージ : パンツスーツやジャケットスタイルなど,明るく濃い色の上衣で,下衣は濃い色のミニ丈のものなど,細い体形に見えるデザインで若い年代での印象が良く,ショッピング用衣服傾向,であった.<br> 3. 4つのイメージを具体的なデザイン要素を用いて,2つの式 {<i>Y3</i>(R=0.98) : A1&A5-A3, <i>Y4</i>(R=0.96) : A4-A2} から精度良く予測可能とした.予測精度の高いデザイン要素でまとめると,A1&A5は主にフット性の高い下衣,派手な上衣,スカートスーツのデザインから<i>Y3</i>の予測値が大きく,逆のイメージのA3は主に鮮やかな色の下衣,柄物やTシャツの上衣で,上衣と下衣の組み合わせなどのデザインから<i>Y3</i>の予測値が小さく予測可能であった.A4は主に袖のある上衣と下衣はスカートのデザインから<i>Y4</i>の予測値が大きく,逆のイメージのA2は鮮やかな色,濃い色でフット性が高い下衣に対して,同じ濃い色,明るい色,無彩色でえりのあるミニ丈の上衣などで,パンツスーツなどのデザインで<i>Y4</i>の予測値が小さく予測可能であった.
著者
増田 智恵 村上 かおり 平林 由果 永野 光朗
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.134, 2005

【目的】これまで女子大生を対象に,3次元ファッション・ファクトリ・ブティックシステムを構想し,消費者と販売間のコミュニケ_-_ションを支援する研究を行ってきた.本報では,学生を除いた成人女子の婦人服購入について,まずデザインイメ_-_ジとして捉えられている"イメ_-_ジ用語"の認識度を捉え,デザイン選択支援のための感性イメ_-_ジのキ_-_ワ_-_ド抽出を試みた.<br>【研究方法】1.イメ_-_ジ用語の抽出:2001年_から_2004年発刊のファッション雑誌約100冊から服のイメ_-_ジを表わす約1000用語を抽出,予備調査により136語にまとめた.2.イメ_-_ジ用語の分類:20代_から_70代の成人女子(九州,四国,近畿,東海,関東,東北の24都道府県在住)455名に,136用語を記したカ_-_ドを5_から_15のグル_-_プに分類,意味不明等の用語はその他として別にまとめさせた.3.分析方法:同一グル_-_プ用語を「1」,その他の用語の関係を「0」として136×136の行列を作成し,被験者単位に作成した行列を455名分合算して類似度行列を作成し,Ward法によるクラスタ分析を行った.<br>【結果・考察】1.136用語の詳細なグル_-_プとして,_丸1_レディ・ドレッシー系,_丸2_フェミニン・ゴージャス系,_丸3_大人系,_丸4_シャ_-_プ系,_丸5_モダン系,_丸6_トラッド系,_丸7_エスニック系,_丸8_カジュアル系,_丸9_レトロ系,_丸10_エレガント系,_丸11_シック系の11クラスタが抽出された.2.各クラスタの特徴をまとめると_丸1__から__丸3_は女性的,_丸4__から__丸5_はメンズライクを含む個性的,_丸6__から__丸8_は着心地の良いカジュアル的,_丸9__から__丸11_はオ_-_ソドックスで正統派的などのイメ_-_ジのデザインを示す用語となり,さらに大きくは普段非着用服のイメ_-_ジのAグル_-_プ:_丸1__から__丸5_と,普段着用服のイメ_-_ジのBグル_-_プ:_丸6__から__丸11_にまとまることがわかった.<br>本研究の一部には,平成15,16年度の栢森財団の助成を受けた.<br>
著者
與倉 弘子 増田 智恵
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は永く着用できる品質のよい衣服のための素材性能の明確化を目的とする。ここでは基本的な衣服として綿クレープ肌着に着目した。衣生活の段階として、(1)快適に着る、(2)品質の良い衣服を永く着続ける、(3)資源として使い切ることの三段階を設定した。綿クレープ肌着の伸び易さと曲げ剛さは、高温多湿な日本の夏用肌着に適していた。約1200時間着用により、ソフトさの基本風合い値が増加することを確かめた。着用後の肌着を裂いて糸にする「裂織」の技法は環境学習教材としての有効であることを確かめた。