著者
大津留 晶
出版者
日本病院会
雑誌
日本病院会雑誌 = Journal of Japan Hospital Association (ISSN:03859363)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.1110-1133, 2006-08-01
著者
大津留 晶 山下 俊一
出版者
日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.1271-1276, 1999-07-10
参考文献数
5

副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)は,悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症の原因物質として発見された. PTHrPのN端は副甲状腺ホルモン(PTH)と高い相同性を有し,いずれも共通のPTH/PTHrP受容体に結合し,作用を発揮する.しかし,副甲状腺より分泌され,血中カルシウムレベルを調節するホルモンであるPTHに対し, PTHrPはあらゆる臓器の様々な細胞より,時に応じて分泌され,生理的には主にパラクライン・オートクライン的に作用している.事実その受容体は全身に幅広く分布している.このためPTHrPの生理作用は不明な点が数多くあったが,発生工学的手法などの発展に伴い骨・軟骨系の新知見を始め,その機能の実態が徐々に明らかにされつつある.
著者
大津留 晶 緑川 早苗 坂井 晃 志村 浩己 鈴木 悟
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.3, pp.593-599, 2015
被引用文献数
1

甲状腺は放射線に対して発がん感受性が高い臓器の1つと捉えられている.甲状腺がんの放射線発がんリスクは,被曝時年齢が若いほど高くなる.放射線は発がん因子の1つとしても,二次発がんという観点でも重要である.原爆被曝者の調査では,外部被曝による甲状腺がんリスク増加が示された.チェルノブイリ原発事故は,放射性ヨウ素の内部被曝が発がんの原因となった.いずれも100 mSv(ミリシーベルト)以上から徐々に有意となり,線量が高いほど罹患率が上昇する,線量依存性が見られている.東京電力福島第一原発事故後,小児甲状腺がんに対する不安が増大し,福島では大規模なスクリーニング調査が開始されている.本稿では,放射線と甲状腺がんについて,これまでの疫学調査と病理報告を概説し,放射線誘発甲状腺がんの分子機構の最前線に触れ,最後に小児甲状腺がんスクリーニングについての考え方についてまとめた.
著者
山下 俊一 大津留 晶 光武 範吏 サエンコ ウラジミール 難波 裕幸
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

甲状腺がんの発症分子機構を解明する為に、手術がん組織ならびに培養細胞を用いた発がんに関連する細胞内情報伝達系異常と遺伝子不安定性の詳細を明らかにすることを研究目的としている。BRAF遺伝子との相互関連分子であるARAFやRAPA1、GNAQなどの点突然変異の有無を検索し、いずれも異常がないことを証明した。さらに遺伝子導入発がん誘発候補遺伝子群の探索成果からはARAF異常の関与をin vitroでは証明したが、in vivoサンプルではその異常は見出されなかった。染色体再配列異常や点突然変異の蓄積による細胞死や細胞死逸脱機構について解析し、DNA損傷応答と細胞周期調節機序の関連について研究成果をまとめた。放射線誘発甲状腺乳頭癌のSNPs解析は不安定かつ不確実なデータの為、現在症例数を増やしその正否を確認中であるが、甲状腺特異的転写因子の一つである染色体9番目のFOXOE1(TTF2)のSNPs関連遺伝子異常がチェルノブイリ放射線誘発がんでも関連することを証明した。さらに遺伝子多型に関するSNPs解析結果をDNA損傷応答関連遺伝子群において取り纏め一定の相関を見出すことができた。以上に対して、甲状腺進行癌の分子標的治療の臨床応用は遅々として進まない現状である。p53を標的とする治療法の有用性は証明されたが、他の細胞増殖情報伝達系を標的とする有効な分子標的薬は臨床治験が実施されず欧米の情報に依存している。グリベックを中心に放射線照射療法との併用効果について臨床治験を進め進行癌、未分化癌の一部に有効性を証明した。
著者
熊谷 敦史 Vladimir A. Saenko 柴田 義貞 大津留 晶 伊東 正博
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.297-300, 2004-09

甲状腺癌の約80%以上を占める主要な病理組織型である甲状腺乳頭癌(PTCs)には,特異的な遺伝子異常が存在する. 特に,チェルノブイリ原子力発電所事故後の小児PTCsにおける高頻度のRet/PTC遺伝子再配列異常が報告されている. 一方,成人PTCsにおいては,2003年BRAF遺伝子のエクソン15コドン599に限局した活性型点突然変異(T1796A,V599E)がその3〜5割に認められ,PTCsの発症に関与していることが報告された. その後シークエンス解析等の結果,BRAF遺伝子のヌクレオチド番号・コドン番号の表記が訂正され,これに従いHot spotはコドン600(T1799A,V600E)に訂正された. BRAF遺伝子はRAS-RAF-MAPK経路(MAPKカスケード)を構成するRAF蛋白のアイソフォームのひとつであるBRAF蛋白をコードする遺伝子であり,BRAF蛋白はセリン・スレオニンキナーゼとして細胞内情報伝達因子としての活性を持っている. BRAF蛋白は通常でも,その下流の因子であるMEK1/2に対して,その他のRAF蛋白(ARAF,RAF-1)より強い親和性を有しているとされている. 遺伝子変異によってBRAF蛋白の600番目のアミノ酸がバリンからグルタミン酸に転換すると,BRAF蛋白の構造変化を引き起こし通常よりさらに強力なリン酸化能を恒常的に発揮するようになると考えられている. また成人発症のPTCでは,BRAF遺伝子変異と遠隔転移との間に有意な相関性が認められることも指摘され,BRAF遺伝子変異が予後不良群のマーカーとなる可能性も注目されている. これに対して小児PTCsは成人例に比べて遠隔転移が高頻度に認められるにもかかわらず,予後が比較的良好であることが特徴である. そこで小児PTCsにおけるBRAF遺伝子異常の頻度を検討した. 更に,放射線汚染地域および非汚染地域でのPTCsの遺伝子異常の頻度を比較することにより,放射線被曝による変異誘発の可能性もあわせて検討することとした.
著者
大津留 晶 市川 辰樹 熊谷 敦史
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

光同調性概日リズムは、明暗刺激に同調し1日周期の概日リズムを形成する。一方、胃ホルモン・グレリンは1日4峰性ピークのリズムを持ち、このグレリン概日リズムは、従来の概日リズムとは全く別の制御メカニズムによると推測される。グレリンの日内変動が、単に食事摂取カロリーや血糖などの代謝要因にのみで規定されるのか、それとも食習慣にもとづく何らかの概日リズムに左右されているかを明らかにした。解析した結果、グレリンは摂食時に変動する代謝因子以外の、調整因子、即ち食習慣によって規定される新たな概日リズムによって制御されていることが示唆された。