著者
竹沢 泰子 斎藤 成也 栗本 英世 貴堂 嘉之 坂元 ひろ子 スチュアート ヘンリー 松田 素二 田中 雅一 高階 絵里加 高木 博志 山室 信一 小牧 幸代
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、京都大学人文科学研究所における定期的な共同研究会と2002年に国際人類学民族学会議において東京と京都において行った国際シンポジウムをもとに、推進してきた。共同研究では年間13日間開催し、毎回5時間以上かけ2人以上が報告を担当した。これまで検討してきた人種の概念に加え、人種の表象と表現に焦点を当てながら、人種の実在性についても、発表や討議を通して研究を発展させた。本研究の最大の成果は、2002年に国際人類学民族学会議において東京と京都において行った国際シンポジウムをもとに、学術研究書をまもなく刊行することである(竹沢泰子編 人文書院 2004)。この英語版も現在アメリカ合衆国大学出版局からの出版にむけて、準備中である。本研究の特色のひとつは、その学術分野と対象地域の多様性にある。さまざまな地域・ディシプリンの人種概念を包括的に理解する装置として、編者(研究代表者)は、小文字のrace、大文字のRace、抵抗としての人種RR(race as resistance)を主張する。それによって部落差別などの意見目に見えない差別の他地域との共通性が見えてくる。さらに、それぞれの三つの位相がいかに連関するかも論じた。また人種概念の構築や発展にとって、近代の植民地主義と国民国家形成がいかに背後に絡んでいるかも考察した。具体的には、まず広告、風刺画、文学作品、芸術作品に見られる人種の表象、アフリカや南米でのアフリカ人の抵抗運動、言説分析、ヒトゲノムや形質(歯や頭骨)からみたヒトの多様性なである。地域的にも、琉球、中国、インド、ドイツ、フランス、アフリカ、アメリカ、南米などにわたった。
著者
三尾 稔 杉本 良男 高田 峰夫 八木 祐子 外川 昌彦 森本 泉 小牧 幸代 押川 文子 高田 峰夫 八木 祐子 井坂 理穂 太田 信宏 外川 昌彦 森本 泉 小牧 幸代 中島 岳志 中谷 哲弥 池亀 彩 小磯 千尋 金谷 美和 中谷 純江 松尾 瑞穂
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

文化人類学とその関連分野の研究者が、南アジアのさまざまな規模の20都市でのべ50回以上のフィールド調査を実施し、91本の論文や27回の学会発表などでその結果を発表した。これまで不足していた南アジアの都市の民族誌の積み重ねは、将来の研究の推進の基礎となる。また、(1)南アジアの伝統的都市の形成には聖性やそれと密接に関係する王権が非常に重要な機能を果たしてきたこと、(2)伝統的な都市の性格が消費社会化のなかで消滅し、都市社会の伝統的な社会関係が変質していること、(3)これに対処するネイバーフッドの再構築のなかで再び宗教が大きな役割を果たしていること、などが明らかとなった。
著者
三尾 稔 八木 祐子 小牧 幸代 中島 岳志
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

1990年代以降インドの各都市では、新しい型のヒンドゥー祭礼が姿を現し、急速に人気を集めるという現象が見られる。新しい都市型祭礼の特徴は以下の通りである。即ち、1.地縁や血縁などの伝統的な社会関係によらず自発的意思に基づく個別の参加を基本とすること。2.祭礼を挙行する主体と祭礼の観客となる大衆とが明確に分離していること。3.挙行主体と観衆の分離により、祭礼のパフォーマンス性が明確となっていること。都市型祭礼の流行現象は、経済の急速な発展、都市の新中間層の成長と消費社会化、ヒンドゥー・ナショナリズムの隆盛など、現代インドの政治・社会状況が密接に関連すると推測される。この調査では、経済発展による社会変化とヒンドゥー・ナショナリズムの台頭が著しいインド北部および西部の諸都市を対象に、新しい祭礼の広がりとその社会的・政治的背景を人類学的な観点から探求した。さらに、村落部やムスリム社会の動向をも調査し、都市のヒンドゥー中産階層との比較も行った。その結果、1.地方都市にまで消費社会化の傾向が顕著になっていること。2.どの都市のヒンドゥー祭礼にもイベント的な要素が新しく姿を現していること。3.祭礼は新中間層の青年を中心により幅広い支持を集め、一層盛んになる傾向にあること。4.社会変化は村落部にも及び村落の伝統的な社会構造が衰退していることなどが確認された。一方、ムスリムの祭礼では、世界的なイスラーム潮流を背景に祝祭性やイベント性がむしろ抑えられる傾向が見られた。また都市型祭礼とナショナリズムとの関係は、都市によってその関連の強弱に差がみられた。これには、各都市の社会構成や政治状況が反映していると思われる。各都市の個別の成立事情や社会構成を考慮に入れながら、よりきめ細かくインドの都市社会とヒンドゥー・ナショナリズムの関係を精査・分析することが今後の課題となる。
著者
小牧 幸代
出版者
高崎経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

南アジアのムスリム多住地域で観察されるイスラームの聖遺物の複製化・商品化現象は、前近代的で呪術的な信仰の残滓ではなく、9.11以降のインド・パキスタンでよりいっそう激しくなった異なる宗教運動間の対立状況と、近隣諸国・欧米諸国などとの政治経済外交関係の変化という文脈において捉え直すべきものである。したがって、「マテリアル・イスラーム」の傾向は、イスラームの「原理主義」的傾向に対抗して顕在化すると考えられるのである。